はじめに
前回の記事ではアプリの維持費について、具体的な内訳を解説いたしました。今回は維持費の節約術を徹底解説します。無駄なコストを削減し、より効果的なアプリ運用を目指しましょう。ぜひ最後まで読んで、貴社のアプリを最大限に活用してください。
自社アプリの維持費を劇的に下げる5つの具体策
アプリの維持費は、一度決めたら変わらない固定費と捉えられがちですが、工夫次第で削減できる変動費としての側面も持ち合わせています。本章では、開発会社との契約見直しといった契約面から、クラウド構成の最適化といった技術面まで、すぐに実践できる5つの具体的な節約術をご紹介します。
契約内容を見直す|保守範囲とSLAを明確化
アプリケーションの維持費削減には、まず現在の保守契約書を徹底的に見直すことが不可欠です。契約内容が曖昧だと、「契約範囲外のため別途費用」「緊急対応は追加料金」といった予期せぬコスト増加を招くおそれがあります。システム保守契約では、業務範囲が明確でないとトラブルに発展しやすいため、内容の具体化が重要になります。
「月額料金に含まれる作業一覧」と「含まれない作業一覧(および料金単価)」をベンダーから提示させ、費用対効果の低い項目を洗い出すことで、無駄な支出を削減できます。
SLA(サービス品質保証)の設定も、重要な見直しポイントです。システムの稼働率や障害発生時の復旧時間が、ビジネスの重要度に対して過剰に設定されていないか確認しましょう。影響の少ない機能や時間帯のSLAレベルを見直して引き下げることで、コスト削減につながる可能性があります。
契約更新のタイミングは、開発・保守会社と協議し、契約内容を見直す絶好の機会となります。複数のベンダーから相見積もりを取得し、料金引き下げの交渉材料とすることも有効です。自社の要望を明確に伝え、双方納得のいく契約内容へと調整し、長期的なコスト最適化を目指しましょう。
クラウド構成を最適化する|オートスケール設定などで無駄を削減
アプリケーションのクラウド費用が想定より高額になる主な原因は、アクセスが少ない時間帯にも、ピーク時に合わせた過剰なリソースを確保し続けていることにあります。この無駄を削減するには、クラウド構成の最適化が不可欠です。
アクセス数に応じてサーバーの台数やスペックを自動で増減させる「オートスケーリング」機能の活用を推奨します。これにより、常に必要最低限のリソースで運用可能となり、無駄なコストを大幅に削減できます。
また、安定稼働が期待できるサービスであれば、1年や3年といった長期利用を前提に契約することで割引が適用されるプランを積極的に活用しましょう。これらの戦略的な活用により、クラウド費用を大幅に最適化できるでしょう。
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外部サービスを賢く利用する|無料体験や低コストプランの活用
アプリの維持費削減には、外部サービス(SaaS/PaaS)の適切な活用が非常に有効です。決済、地図、プッシュ通知、認証といった専門的な機能を自社で一から開発し、保守するには、多大な時間とコストがかかります。一方、外部サービスを活用すれば、開発工数だけでなく、その後の運用・保守費用も大幅に削減でき、高い費用対効果が期待できます。
特に注目すべきは、多くの外部サービスが提供している「無料での体験」です。
小規模なアプリや開発段階であれば、これらの無料での体験を最大限に活用することで、導入前に検討することが可能です。
サービスの規模や必要な機能に応じた料金プランの選択も重要です。従量課金制と固定料金制を比較検討し、自社の利用状況に最適なプランを選び、定期的に見直しましょう。高価で有名なサービスだけでなく、十分な機能を持ちながらも安価な代替サービスやオープンソースの活用も検討することで、さらなるコスト削減が期待できます。
機能の優先順位をつける|費用対効果の低い機能は後回しに
アプリケーションの維持費用を最適化するには、すべてのユーザー要望やアイディアを計画性なく実装するべきではありません。限られた人材、予算、時間といったリソースのなかで、無秩序な機能追加は開発・保守コストを増大させ、結果としてアプリケーションの品質低下を招く恐れがあります。優先順位が曖昧なままではリソースが分散し、効率的な開発が難しくなるため注意が必要です。
そこで、ユーザーの利用データや事業への貢献度(売上、顧客獲得率など)を詳細に分析し、費用対効果(ROI)の高い機能から開発や改修に着手することが極めて重要になります。
費用対効果(ROI)は「(純利益÷総投資額)×100%」で算出され、投資に対する利益の割合を明確にする指標です。この指標をもとに、より高い効果が見込める機能にリソースを集中させることで、投資に対する効果を最大化できます。
反対に、利用頻度が低い機能や事業への影響が小さい機能については、改修を後回しにするか、場合によっては機能を廃止することも有効なコスト削減策となります。定期的に機能の棚卸しを行い、開発ロードマップを見直すことで、リソースを最も効果的な部分に集中させ、アプリケーションの本質的な価値を損なうことなく、効率的な運用を実現できます。
複数の開発・保守会社から相見積もりを取る
現在のアプリ保守費用が適正か判断するためには、複数の開発・保守会社から相見積もりを取得することが非常に重要です。これにより、自社アプリの保守・運用にかかる市場相場を正確に把握でき、適正な価格交渉の材料にもなります。依頼範囲や条件を明確にしておくことも不可欠です。
ただし、見積もりを比較する際は、提示された金額だけを見るのではなく、サービス内容を詳細に確認することが重要です。具体的には、以下の項目を同一の条件で細かく比較検討し、自社のニーズに合致しているかを見極める必要があります。
•保守範囲
•対応時間
•SLA(サービス品質保証)のレベル
•緊急時の対応フロー
単に安さだけで業者を選定すると、保守品質の低下や障害発生時の対応遅延といったリスクを招く可能性があります。
過去には「リリース後の対応が雑だった」という失敗談もあるため、価格だけでなく技術力や品質管理体制、プロジェクト管理能力をしっかりと評価することが重要です。保守費用を必要以上に安くしすぎないよう、予算と品質のバランスを見極め、長期的なパートナーシップを築ける信頼性の高い会社を選定することが大切です。
どこまで自社でやる?コスト削減の鍵は「内製」と「外注」の最適な線引き
アプリの運用コストを効果的に削減するためには、どの業務を自社で行うか(内製)、そしてどの業務を外部に委託するか(外注)の最適な線引きが鍵となります。
アプリの業務を内製化するか外注するかを検討する際の主なポイントは以下の通りです。
•内製化の場合
•長期的なコスト削減の可能性、社内へのノウハウ蓄積
•専門人材の確保や育成に時間と費用が必要、急なリソース変動への対応が困難
•外注の場合
•自社リソースの温存、専門性の活用
•ノウハウが社内に蓄積されにくい、コミュニケーションの課題、追加費用発生のリスク
アプリの特性や自社のリソース状況に合わせて業務内容を適切に切り分けることが、コスト最適化には不可欠です。本章では、どのような作業が内製に適しており、どのような作業が外注に適しているのか、具体的な判断基準とともに詳しく解説します。
【内製向き】軽微な修正や日常のデータ管理
専門的なスキルを必要とせず、頻繁に発生する業務は、アプリ運用の内製化に最適な機会と言えます。これらの作業を自社で担うことで、コストと時間の両面で大きな削減効果が期待できるでしょう。
例えば、アプリ内の「お知らせ更新」「テキスト文言の修正」「画像の差し替え」といった軽微な修正作業は、専門知識がなくても対応可能です。CMS(コンテンツ管理システム)を導入すれば、非エンジニアでも直感的な操作でこれらの更新作業を簡単に行えるため、外部委託費用を削減できるでしょう。
また、「ユーザーからの問い合わせ内容確認」「コンテンツの登録・更新」「簡単なアクセスデータ集計」といった日常的なデータ管理も、内製化に適した業務です。これらを自社で行うことにより、迅速な状況把握と対応が可能になるだけでなく、アプリ運用に関する貴重なノウハウを社内に蓄積できるという大きなメリットがあります。結果として、外部への依存度を低減し、アプリの改善サイクルを加速させることにもつながるでしょう。
【外注推奨】専門性が高い大規模改修やセキュリティ管理
高度な専門知識や豊富な経験が必要な業務は、無理に社内で対応するよりも専門業者に外注する方が、品質を保ち、リスクを減らす上で賢明な選択です。
特に、事業の根幹に関わる大規模な改修作業は、外注が推奨されます。例えば、失敗した場合の影響が大きい以下の開発は、実績豊富な専門家へ依頼することが重要です。
•OSのメジャーアップデートに伴う抜本的なシステム再構築
•アプリケーションのアーキテクチャ刷新
•AI機能の導入
大規模なフルスクラッチ開発では数千万円規模になることもあり、高度な技術力が求められます。
また、アプリケーションを取り巻く脅威が日々進化するなかで、セキュリティ管理も高い専門性が求められる分野です。定期的な脆弱性診断、インシデント発生時の調査といった業務は、最新の脅威に対応できる専門家による継続的な監視と対応が不可欠です。セキュリティ対策の充実度によって、費用も大きく変動します。
これらの専門業務を外注すれば、自社のエンジニアは、ユーザー体験の向上や新機能の企画・開発といった、事業成長に直結する中核業務にリソースを集中できるという利点があります。
判断基準は自社のリソースとアプリの複雑性
アプリの維持管理において、内製と外注の最適なバランスを見極めるには、自社のリソースとアプリの複雑性という2つの軸で現状を正確に評価することが不可欠です。
まず、自社のリソースを以下の4つの観点から棚卸ししましょう。
•人材:エンジニアのスキルや人数
•設備:開発環境やインフラ
•資金:予算
•情報:運用ノウハウやデータ
例えば、自社に専門性の高いエンジニアが不足していれば、人材リソースは限定的と判断できます。特に人材のマネジメントは重要であり、スキルや経験だけでなく、モチベーションといった感情要素も生産性に影響を及ぼします。
次に、アプリの複雑性を評価します。具体的には、アプリの機能数、外部API連携の有無、扱うデータの機密性、求められるセキュリティレベル、そして将来的な機能拡張の計画などが判断材料となります。例えば、ユーザーの機密情報を扱うアプリは、サイバー攻撃の高度化に対応するため、特に高いセキュリティレベルと専門知識が不可欠になります。
これらのリソースと複雑性の2軸を組み合わせたフレームワークで判断することで、最適な線引きが可能です。
まとめ:定期的な見直しで、アプリ維持費を最適化しよう
本記事では、アプリ開発後に発生する維持費について、その全体像から具体的な内訳、そして費用相場までを詳しく解説しました。アプリ市場は常に変化しており、効率的なマーケティング施策、安定的な収益化、ユーザー定着策の強化が継続的に求められています。適切な維持費の管理は、アプリの安定稼働とユーザー満足度の向上につながり、結果としてビジネスの持続的な成長を支える強力な基盤となるでしょう。
