DXコラム

顧客のニーズに答える新規事業創出
~顧客の課題を明確にする~

#DX推進  #新規事業  #ジャベリンボード 

2023.1.30
 アプリ開発  システム開発

顧客のニーズに答える新規事業創出
~顧客の課題を明確にする~

はじめに

昨今、企業の皆さまが新規事業を立ち上げていらっしゃいますが「想定している成果が上げられない」「そもそも進め方がわからない」といった声を多く伺います。さまざまなサービスが市場に出回るなか、自社でも何か行わなければと思い、まずは事業化させることを目標に置いている企業さまもいらっしゃるかもしれません。しかし、事前準備を入念に行わなければ新規事業は失敗に終わってしまう可能性が高いです。では、どのような準備を行えば良いのでしょうか。今回は、新規事業立ち上げ準備の最も重要な「顧客の課題」に焦点を当てて、解説いたします。

新規事業立ち上げ時の「顧客の課題」について

現在、多くの企業が新規事業を立ち上げようと動かれています。チーム内でアイディアを持ち寄り、事業化させるにあたり何が必要なのか模索されているかと思います。しかし根拠がなく、アイディアの裏付けを行わないまま事業化を進めているケースをよく伺います。
新規事業を進めるのであれば、まずは「顧客の課題」を明確にして進めていく必要があります。なぜなら「顧客の課題」がわからない状態で進めてしまうと、自己満足なサービスになってしまう可能性が極めて高いからです。
事業化させるために、アイディアを形あるプロダクトに落とし込んで企画開発していくことは、担当者にとって「できた」というやりがいもあり、目に見える成果として感じられるかと思います。その行動は、上司にもアピールしやすい内容であり、かつ、アイディアが既にある場合すぐにプロダクトを作成していきたいという気持ちはとてもよくわかります。しかし、それでは「顧客の課題」を軽視して進めてしまいがちになり「誰のためのサービスなのか」がわからなくなってしまいます。プロダクトありきのサービスを考えるのではなく、あくまで「顧客の課題」に沿って新規事業を立ち上げることができれば、おのずとどのようなプロダクトを作成・活用していけば良いのか見えてくるでしょう。

課題把握の大切さ

顧客の理解

現在想定している新規事業のアイディアでは「顧客の課題」が本当に解決できるのでしょうか?自社のソリューションで「顧客の課題」は解決できると考えて新規事業を立ち上げているかと思いますが、客観的に見てその課題を解決するベストなソリューションなのでしょうか。自社が進める新規事業に愛着がわくと、課題を解決できるだろうという思い込みは強まるため、顧客視点に立ち返ることができる主軸が必要になります。
主軸とする手法の1つとして、具体的なユーザーを明確にできる「ペルソナ」があります。「顧客の課題」を明らかにするためには、想定する顧客が何歳なのか、どのような企業に属しているのか、どういう性格なのか、業務にどんな課題を感じているのか、業務上のゴールは何か、などのペルソナを設定していきます。ペルソナを設定することで「顧客が今どのような気持ちでいるのか」という顧客目線を主軸にして、自社のソリューションが顧客の課題解決につながっているのかという心理状態を客観的に見ることができます。また、チームで新規事業を進めている場合、メンバー間で同じペルソナを持つことで認識相違を防ぐことができます。同じ認識で「顧客の課題」に取り組む必要がある新規事業において、この認識相違は絶対に避けなくてはなりません。
ペルソナを設定することは、客観的に顧客目線に立つことができるだけではなく、チーム内で共通認識を持てるため、作成は必須事項になります。

課題とその仮説を洗い出し、検証する

では「顧客の課題」が明らかになれば、すぐにプロダクトの作成フェーズに移っても良いものでしょうか。答えはNOです。「顧客の課題」を客観的に把握することはできましたが、本当に顧客が課題と感じているのかについては、現時点では判断がつきかねます。課題設定が間違っていないかについて「検証」を行う必要があります。
顧客の課題検証については、ジャベリンボードという手法を活用するととても効果的です。

※ジャベリンボードとは
アメリカのJavelin社が開発した手法。顧客、課題、前提条件ソリューションを1つの仮説にセットにして、実際の顧客との対話を通じて、課題とソリューションを検証する手法

ジャベリンボードの目的は「新規事業における正しい仮説を洗い出すこと」です。先ほど記述した通り、実際に洗い出した課題が、本当に顧客が感じている課題であるのか検証し、的外れな課題でないか確認することが必要です。検証を行わなければ、解決するべき「顧客の課題」がぶれることになります。

ジャベリンボードを活用することによって、下記メリットが得られます。

仮説検証の質を高める

「顧客」「課題」「ソリューション」「前提条件」という4つの項目より仮説条件を検討することで、さまざまな角度から仮説を検討することができるため、精度の高い検証を実施することができます。

仮説検証におけるプロセスを可視化できる

新規事業を進めるうえで、仮説と検証は何度も行う必要があります。プロセスを常に可視化することにより、過去~現在に至るまでにどのような仮説と検証を行ってきたのかなど振り返ることができます。つまり、新規事業立ち上げ~現在までの仮説検証のプロセス全体を把握することができるのです。

仮説の前提条件を明確にする

顧客が抱える課題がどのような状況であれば解決することができるのかという前提条件を可視化することができ、検証する項目としてピックアップすることができます。

進め方は、作成したペルソナを元にジャベリンボード表の上から順に記載をしていきます。チームでブレストを行い、最も該当する・有効である内容を記載していきます。ソリューションまではわかりやすく進められるかと思いますが、躓きやすいポイントは「最も不確かな前提条件」だと思います。この前提条件を設定することが、ジャベリンボードの特徴です。
「課題に与える影響が大きく、不確かな前提」を洗い出すことが、ここでいう「最も不確かな前提条件」です。

例えば「お客さまから受け取る紙の書類の管理ができていない」という課題があると仮説を立てます。この課題の前提条件についてもブレストを行い、下記のように「前提条件」が崩れたときにもたらすサービスへのインパクトの大小と検証の必要性についてマッピングを行います。そうすると、現在最も検証が必要であるインパクトの大きい前提条件を洗い出すことができます。
この例の場合、前提条件はたくさんありますが、最も検証が必要で不確かな前提条件の1つは「自社がデジタル化しきれていない」ことです。

その後、検証方法と基準についてもブレストを行います。検証については、実際に設定したペルソナとなる顧客にヒアリングをしたり、アンケート調査をしたりすると効果的でしょう。

ジャベリンボードを使用した検証は、何度も繰り返し行う必要がありますが「検証は完了した」とするには下記項目が挙げられます。プロダクトの作成フェーズに移る際に、ぜひ参考にしてみてください。

■顧客が認識/言語化できていなかった課題を見つけることができた
■課題を持っている顧客イメージ(ペルソナ、カスタマーストーリー)を明確にすることができた
■課題を持っている顧客の心理状態を言語化できた
■課題を持っている顧客の組織相関図などを明確にできた

まとめ

新規事業の立ち上げにあたり、先立ってプロダクト作成を検討している企業が多いかもしれません。しかし、新規事業はどれだけ「顧客の課題」を明確にできるかが肝となります。新規事業におけるアイディアはもちろん大事になってきますが、顧客の課題を把握することができれば、何が必要であるのか見える化でき、事業化するまでの近道となります。
また、迷われた際は「顧客の課題」に立ち返ると、自分たちの現在の施策が客観的に見て課題解決につながっているのかを確認することができます。
今回紹介しました手法はあくまで一例です。新規事業を立ち上げるにあたり、自社に合った適切な手法をぜひ活用してみてください。新規事業の創出で大切なポイントである「顧客の課題」の把握ができているのか、今一度見直してみてはいかがでしょうか。


DX関連サービス

今回ご紹介した課題に対してパソナでは以下のサービスで解決させていただいています。

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SERVICE FEATURE Azure OpenAI Service導入支援の特徴 SERVICE IMAGE AIを使ってできること Azure OpenAI Service リファレンスアーキテクチャ賛同パートナー マルチクラウド・マルチAIの対応


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