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リスキリングとは?メリットや導入手順・成功のポイントについて解説

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2023.8.29
 DX人材育成

リスキリングとは?メリットや導入手順・成功のポイントについて解説

はじめに

ビジネスモデルの変化や技術革新など、急速に移り変わる時代の流れに柔軟に対応するための手段として「リスキリング」があります。
経済産業省がリスキリングを通じたキャリアアップ支援制度を展開したこともあり、リスキリングという言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、リスキリングという言葉を知っていても、それがどのような取り組みなのかを知らない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、リスキリングの基礎知識や、企業がリスキリングに取り組むメリット、リスキリングの導入手順などについて、具体的に解説します。

リスキリングとは?

最初に、リスキリングがどのような取り組みなのかを解説します。

リスキリングとは、社員が新たな知識やスキルを習得すること

リスキリング(Reskilling)とは、ビジネスの変化や革新に対応するため、新たな知識やスキルを習得すること、または、習得するための取り組みのことです。リスキリングは、「職業で価値を創出し続けるために必要なスキルを習得すること」に重きを置いているという特徴があります。
最近では、DX推進の必要性の高まりを受け、DXに必要なスキルを習得することを目的として、リスキリングを導入するケースも増えています。

リカレント教育との違い

「リカレント教育」はリスキリングと混同されやすい言葉です。
リカレント教育とは、社員がそれぞれの意思・タイミングでスキルを習得し、仕事に戻ることを繰り返す仕組みのことです。リカレント教育は、休職や離職など、一度仕事を離れて大学などの教育機関で学び直すという特徴があります。
リカレント教育に対してリスキリングは、取り組みの主体が企業であり業務を遂行しながら新たなスキルの習得を目指すという点が異なります。

アンラーニングとの違い

また、リスキリングと似た意味の言葉に「アンラーニング(unlearning)」というものもあります。
アンラーニングとは、過去に得た知識やルーティンを振り返り、スキルの取捨選択をすることです。その特徴から「学習棄却」とも呼ばれます。
アンラーニングは、既存スキルのうち有効でなくなったものを手放し、代わりに新しいスキルを取り入れます。アンラーニングは不要なスキルを捨てることに重きを置く考え方といえるでしょう。
アンラーニングに対してリスキリングは、新たな知識・スキルを習得することに重点を置く考え方で、必ずしもスキルの取捨選択をするわけではありません。

リスキリングが注目される理由

DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するには、ITに関する専門知識・スキルを持つIT人材の存在が必要不可欠です。このことから、DX推進を担えるIT人材を確保するため、社員に新しいスキルを習得させるリスキリングが注目されるようになりました。
また、新しいビジネスモデルが次々と生み出される現在、新たな分野のスキル習得がどんどん求められるようにもなっています。これも、リスキリングへの関心を一層高める要因となっています。

リスキリングと産業革命

2020年に開催されたダボス会議(世界経済フォーラム年次大会)でも、リスキリング革命が主要な議題に上げられました。この会議では、第4次産業革命の技術変化に対応するため、2030年までに全世界で10億人をリスキリングすることが発表されています。

産業革命とは、技術革新による産業の変革と、それにともなう社会構造の変革を指します。
18世紀半ばからの第1次産業革命では、工場の機械化や、鉄道や蒸気船による輸送技術の変化が起きました。また、19世紀後半の第2次産業革命では、電力を導入することにより大量生産が可能となりました。

20世紀半ばからの第3次産業革命では、コンピューターの導入により業務の自動化が進み、製品をより効率的に量産できる仕組みが構築されたという特徴があります。
第4次産業革命のコアとなる技術には、IoTやAI、ビッグデータが挙げられます。これらの技術を取り入れることで、あらゆる分野のデジタル化が促進されています。その変革に対応するため、リスキリングが注目されているのです。

リスキリングによる3つのメリット

企業がリスキリングに取り組むことで、以下の3つのメリットが期待できます。それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
● 業務効率化が期待できる
● 新しいアイデアが生まれやすくなる
● 会社の文化や風土を継承できる

業務効率化が期待できる

DXに必要なスキルを社員がリスキリングで習得すれば、DX推進にそれらのスキルを活用できます。
例えば、社員が新たにデジタル技術に関するスキルを習得した場合、人の手でしていた作業を自動化したり、データ活用による調査・分析時間を短縮したりできるようになり、業務効率化が期待できるでしょう。
また、業務効率化が実現すれば、労働時間や人的コストの適正化、ワークライフバランスの実現にもつながります。

新しいアイデアが生まれやすくなる

社員が新しい知識を習得し、視野が広くなることで、新しいアイデアが生まれやすくなります。
柔軟で斬新なアイデアが増えれば、新規事業の開発、イノベーションの創出、既存事業の拡大などにつながる発想が出てくる可能性もあるでしょう。
新しいアイデアが生まれやすい環境を構築することで、日々変化するニーズに対して、柔軟にビジネスモデルを変化させていくことができるようになります。

会社の文化や風土を継承できる

自社の社員をリスキリングの対象とすることで、企業文化を活かしつつ、新たな知識・スキルを業務に応用できるというメリットもあります。
DX人材を新しく大量に採用した場合、新しいスキルの習得は進められるものの、これまで培ってきた企業文化を継承することが難しくなるという課題があります。
それに対し、既存の企業文化を理解している社員をリスキリングすれば、新しいアイデアと企業文化をバランス良く融合させることができるでしょう。

リスキリングの導入手順

ここからは、実際にリスキリングを導入するための4つの手順について解説します。

1. 新たに習得すべきスキルを明確にする

最初に、リスキリングで習得するスキルを明確にします。
リスキリングは企業の経営戦略と連動するため、習得するスキルの内容や、リスキリングの対象となる人材の基準は、企業ごとに異なります。
まずは、自社の現状と理想(ゴール)について把握し、経営戦略の実現に必要なスキルを洗い出します。そのうえで、現在社員が持っているスキルを可視化し、リスキリングするスキルを決めましょう。

2. リスキリングのプログラムを考える

リスキリングで習得するスキルが決まったら、リスキリングのプログラムを考えます。
学習方法には、社内研修、オンライン講座、eラーニング、OJTなどさまざまな方法があります。習得するスキルの内容や、講師を務められる人材の有無などを考慮し、学習方法を選択しましょう。
リスキリングでは、学習の順序を工夫し、社員が無理なく、効率的に学べるプログラムにすることが大切です。もし、難易度の高いスキルを先に学習させたり、覚えることが膨大であったりした場合は、学習意欲の低下や、習熟度の低下を招く可能性もあります。

3. リスキリングの実施

学習プログラムに沿って、社員に学習を始めてもらいます。
リスキリングは働きながら学習をしていくことが前提となります。そのため、社員が就業時間内に学習できるよう、学習環境を整えることも重要です。就業時間内にリスキリングを実施すれば、業務に必要な学習であるということを社員が自覚しやすくなるというメリットもあります。
一方で、業務時間外に学習することになると、社員の負担が大きくなり、離職につながる恐れもあるため注意しましょう。

4. 新たに習得した知識・スキルを活用する機会を設ける

リスキリングで学習した知識やスキルは、実際に業務に活用することが重要です。
新たに習得したスキルを業務で活かせる機会を設けたり、シミュレーションする場を用意したりして、社員がスキルを実践できるようにしましょう。
実践することで、スキルの習熟度が上がり、応用力も身に付きます。

リスキリングを成功させるためのポイント

リスキリングを成功させるには、社員から理解・協力を得ることや、学習環境づくりが大切です。その理由について見ていきましょう。

社員にリスキリングの重要性を説明し、理解を得る

実際にリスキリングに取り組むのは社員です。そのため、リスキリングを導入する目的を明確にしたうえで、なぜリスキリングが必要なのかを社内に説明し、社員の理解を得られるよう努めましょう。
リスキリングを成功させるには、学習に対して本人が前向きな姿勢で取り組むことが重要です。リスキリングの対象者を決める際は、本人に意思を確認したうえで、人員を選定するとよいでしょう。
もし、理解が得られないままリスキリングを始めてしまうと、単に業務負荷が増加したように感じ、反発を招く恐れがあるため注意が必要です。

学習モチベーションを維持できる仕組みをつくる

リスキリングは継続的な取り組みとなるため、学習へのモチベーションを維持できる仕組みを構築することも大切です。
例えば、学習タイミングを個人が調整できるようにしたり、社員が学び合える場(勉強会など)を提供したりすることが挙げられます。リスキリングの取り組み状況に応じて、インセンティブを支給するのも効果的です。
一度の学習ではスキルが身に付かない可能性もあります。実務レベルのスキルを習得できるよう、継続的に学習できるプログラムにすることも重要です。

リスキリングはDX推進・人材不足解消に有効な手法

近年、ビジネス環境の変化に柔軟に対応するための手段として、リスキリングが注目されています。

リスキリングでDX人材を育成し、DXを推進することも可能です。DXは長期的な取り組みとなるため、社内にDXを担える人材を確保し、DXを継続できる体制づくりは欠かせません。しかし、DX人材は需要が高く、採用難易度が高いという問題があります。リスキリングは人材不足の課題を解決するうえでも有効な手法といえるでしょう。

リスキリングで新たに習得するスキルや、リスキリングの対象となる人材の基準は、企業ごとに異なります。自社の課題や最終的に目指すゴールを明確にし、どのようなスキルが必要なのかをしっかり洗い出したうえで、リスキリングの計画を立てることが大切です。

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