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人的資本経営とは?
人材を資本と捉えて企業価値の向上につなげる経営手法を解説

#DX人材  #スキル 

2024.9.24
DX人材育成 DX

人的資本経営とは?
人材を資本と捉えて企業価値の向上につなげる経営手法を解説

はじめに

人的資本経営という言葉を近年よく耳にするようになりました。人材を資本として捉え、企業価値の向上を目指すこの手法について詳しく知りたいと思っている方も多いことと思います。また、人的資本経営は具体的にどう進めれば良いのか、実際の事例や効果について疑問を持つ方も少なくないでしょう。

そこで、本コラムでは、人的資本経営の基本概念から具体的な取り組み事例について詳しくご紹介します。自社での取り組みを進めるためのヒントの一つにしていただけますと幸いです。

人的資本経営とこれまでの人材戦略の違い

人的資本経営とは、人材を単なる労働力ではなく、企業の重要な資本として捉える考え方です。この経営手法では、人材のスキルや知識、経験を資本として評価し、長期的な企業価値の向上を目指します。一方、これまでの人材戦略は、人材をコストとして扱い、効率的に人件費を管理・削減することを目的としてきました。

人的資本経営の最大の特徴は、投資視点を持っている点です。人材に対する教育や研修、キャリアパスの提供を通じて、長期的な成長を支援し、企業全体のパフォーマンスを向上させることを目指します。

人的資本経営を導入することで、組織全体のパフォーマンスは飛躍的に向上します。具体的な例としては、社員のエンゲージメントの向上が挙げられます。社員が自身の成長を実感し、企業の一員としての誇りを持つことで、生産性が向上し、離職率の低下にもつながるのです。また、革新的なアイディアが生まれやすくなり、企業全体の競争力も強化されます。

このように、人的資本経営は人材を企業の重要な資産として捉え、その成長を通じて企業価値を高めることを目的としています。従来の人材戦略とは一線を画し、企業の持続的な成長と競争力強化を実現するのです。

人的資本経営の重要性を示した経済産業省の人材版伊藤レポート

人的資本経営の重要性を強調した経済産業省の人材版伊藤レポートは、大きな注目を浴びています。このレポートは、企業が人材を単なる労働力としてではなく、重要な資本として捉える必要性を訴えています。

人材版伊藤レポートはこちら

人材版伊藤レポートでは、企業の成長における人的資本の役割が詳細に説明されています。具体的には、社員のスキル向上やキャリア開発、働きがいの向上が企業全体のパフォーマンス向上に直結すると強調されています。人的資本経営を推進することで、企業は持続可能な成長を実現し、社会的価値を創出することが可能となります。

実際にこのレポートに基づいて人的資本を活用している企業の事例も多く紹介されています。

例えば、大手企業の中には社員の能力開発に力を入れ、社内でのキャリアアップの機会を提供することで、社員のモチベーションと企業の競争力を同時に高めているケースがあります。また、働きやすい職場環境の整備や福利厚生の充実を図ることで、長期的な人材確保につなげている企業も少なくありません。こうしたベストプラクティスは、他の企業にとっても参考になるはずです。

人材版伊藤レポートは、人的資本経営の重要性を広く認識させ、その実践がいかに企業の未来を左右するかを示す重要な指針となっています。今後も企業はこのレポートを活用しながら、人的資本経営を推進し、その効果を最大限に引き出す努力を続けることが求められています。

人的資本経営が注目されている背景

企業が競争力を強化する上で、人材はますます重要な資産となっています。デジタル化や自動化が進展する中で、特定のスキルや知識を持つ人材の需要が急速に変化しているため、適切な人材の確保が企業にとって大きな課題となっています。加えて、労働市場も絶えず変動しており、有能な人材を確保するのはますます難しくなっているのです。

また、持続可能なビジネスモデルの構築においても人的資本は重要な役割を果たします。企業が長期にわたって成長を続けるためには、単に技術や設備に投資するだけではなく、社員一人ひとりが持つ知識やスキルを最大限に活用し、これを企業全体の価値につなげることが必要です。人的資本経営はこうした背景から注目を集めており、人材を単なるコストではなく、企業価値を高めるための重要な資本として捉える視点が求められているのです。

人的資本経営のメリット

前述した通り、人的資本経営とは企業が人材を資本として捉え、企業価値の向上を目指す新しい経営手法です。しかし、どのようにして生産性を向上させ、社員のエンゲージメントを強化し、イノベーションを促進していくのか、具体的な取り組み方法に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで、ここからは人的資本経営の基本から具体的な取り組み事例など、詳しく解説します。

生産性を向上させる取り組み

人的資本経営において「生産性の向上」は重要な成果の一つです。その方法は三つあります。
まず一つ目に、社員のスキルアップとトレーニングの効果について考えてみましょう。社員が新しいスキルを習得し続けることで、個々の能力が向上するだけでなく、会社全体の生産性も向上します。

二つ目に、チームワークと協力の重要性についてです。チームメンバーが互いに協力し合うことで、個々の力だけでは解決できない問題に対処することが可能になります。チームワークが強固であればあるほど、プロジェクトの進行がスムーズになり、結果的に生産性も向上するのです。このため、リーダーシップ研修やチームビルディング活動などが重要な役割を果たします。

三つ目に、労働環境の改善も忘れてはなりません。良好な労働環境は、社員の心理的なストレスを軽減し、集中力を高めます。例えば、快適で安全なオフィス環境を整える、柔軟な働き方を導入する、あるいはメンタルヘルスのサポート体制を強化することが挙げられます。こうした取り組みが社員の満足度を高め、生産性に直結します。

最後に、効果的なコミュニケーション戦略についてです。情報の共有が円滑に行われることで、社員同士の理解が深まり、ミスコミュニケーションが減少します。これには、定期的なミーティングやフィードバックセッション、オープンで透明性のあるコミュニケーションツールの導入などが考えられます。社員が自分の意見やアイディアを自由に発言できる環境を整えることが、組織全体の生産性向上に寄与します。

これらの要素を組み合わせて、人的資本経営を実践することで、企業は持続的な生産性向上を実現することができます。

社員エンゲージメントを向上させる取り組み

社員エンゲージメントは、社員が自分の仕事に対して高い熱意を持ち、献身的に取り組む状態を指します。このエンゲージメントが高いと、社員は自分の役割や会社の目標に対して強い責任感を持ち、結果としてモチベーションが向上します。そのため、社員エンゲージメントは企業の成功に欠かせない要素となります。

エンゲージメントを向上させるためには、さまざまな施策が必要です。例えば、定期的なフィードバックは非常に効果的です。フィードバックが頻繁で質が高いものであれば、社員は自分のパフォーマンスを理解しやすくなり、改善点や強みを認識することができます。さらに、オープンなコミュニケーション環境を築くことで、社員が意見を自由に述べられる雰囲気を作ることも大切です。

また、エンゲージメントが高い社員は意欲的に業務に取り組み、高いパフォーマンスを発揮します。離職率の低下につながる点も大きなメリットです。社員が会社に対する愛着や満足感を持つことで、離職が減少し、企業は優秀な人材を長く確保することができます。結果として、長期的な視点で企業価値の向上につながります。

企業ブランディングを向上させる取り組み

人的資本経営が企業ブランディングにとって大きな影響を与える背景には、まず社員のスキルと企業のブランド価値が深く結びついているという点が挙げられます。社員が高いスキルや専門知識を持っていることで、顧客に対するサービスや製品の質が向上し、結果として企業全体のブランド価値も上昇します。例えば、人的資本経営を導入している企業では、社員のスキルアップを定期的にサポートし、研修や教育プログラムを積極的に展開しています。これにより、社員は自分の成長を実感し、それが仕事に対するモチベーションともなります。

人的資本経営を導入した企業の成功事例として、大手製造企業では、社員一人ひとりのスキルを詳細に把握し、それに基づいてキャリアパスを設計しています。その結果、社員は自分の将来を見据えた働き方ができるようになり、仕事に対するエンゲージメントが高まりました。このような取り組みがブランド価値向上につながり、業績も好調に推移しています。

また、人的資本経営は企業の社会的責任との関連性も強めます。社員の成長と幸福が企業の成長に直結するため、企業は社員を大切にする姿勢を内外に示すことが重要です。消費者や取引先からの信頼も高まり、企業の社会的イメージアップにも寄与します。人的資本経営によって、企業ブランディングがいかに向上するかを理解することが、これからの経営戦略においても極めて重要なポイントとなるでしょう。

まとめ:人的資本経営のメリットを踏まえ、実践に向けて動き出しましょう

現代の企業経営では、人的資本の活用が非常に重要です。企業がどのようにして人的資本を活かし、持続可能な成長を実現するのか、まずは基本概念やメリットを理解し、現在の人材戦略からシフトする方法を検討することが重要になります。
解説したメリットの一つ、社員エンゲージメントの向上において、ツールを活用して効率的に定期的なフィードバックを行うことも一つの手です。パソナの「kintoneHR Powered by PASONA」は人事業務のあらゆる場面で利用できる機能が揃っていて、採用や研修・教育の管理効率化、社員の目標管理や評価、昇給昇格へのステップの見える化などができる人事業務に特化したカスタマイズサービスです。

このツールを活用することによって頻繁で質の高いフィードバックも可能になります。ぜひ社員エンゲージメント向上のために参考にご覧ください。

これからの企業経営において持続的な成長を目指すために、人的資本の重要性を理解し、効果的に活用する方法を一度考えてみていただければと思います。


関連サービス

今回ご紹介した課題に対してパソナでは以下のサービスで解決させていただいています。


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