はじめに
ビジネスの場ではさまざまなデータが扱われています。データは企業の大切な資産であり、自社で蓄積したデータを活用することはビジネスの発展に不可欠な要素です。
しかし、データをただ収集するだけではその価値を発揮できません。データ本来の資産価値を見出すためには、適切な管理・運用を行う「データマネジメント」が必要です。
本コラムでは、データマネジメントの言葉の意味や、データマネジメントの必要性・手法など、ビジネスの成長との関係性について解説します。
データマネジメントとは?
データマネジメントとは、データを管理することです。
企業の持つデータの品質管理や、どのように運用・維持していくのかを考え、実行していくことを指します。
データマネジメントとは、ただデータを整理して保管するだけではありません。データをビジネスに活かせるよう、設計・管理・保守することを総合してデータマネジメントと呼びます。そのため、データをより効率良く安全に利用できるよう、社内体制などを整えることもデータマネジメントの一つといえるでしょう。
企業の持つデータは、その企業の大切な資産です。ビジネスを発展させるためにはデータの活用が不可欠であり、適切に運用することが求められます。「企業の目的・目標の達成にはどのようなデータが必要で、そのデータの入手にはどのような手法が最適なのか」を提案し実行することが、データマネジメントの役割です。
なぜデータマネジメントが必要なのか?
なぜデータマネジメントが必要なのかというと、ただ大量のデータを登録・保管しているだけでは、それらのデータを活用することが難しいからです。
データベースが整理されていない状態では、データの重複が起こる可能性があります。それにより、正しい統計を導き出せなかったり、安全なデータ使用の妨げになったりすることも考えられます。
データを適切にビジネスに活かし、十分なパフォーマンスを発揮するためには、データを管理・運用するデータマネジメントが重要です。そうでなければ、企業の資産であるはずの情報が活かしきれません。
データマネジメントを行うメリット
データマネジメントを行うことで、さまざまメリットが得られます。
主なメリットは以下のとおりです。
● 必要データを発見しやすくなる
● 信頼できるデータを参考にして経営戦略を立てることができる
● 統計から自社の課題を導き出せる
● 客層に応じた戦略を立てることができる
● データの取捨選択がスムーズになり、仕事のパフォーマンスが向上する
● 適切なセキュリティ運用ができる
● データ管理の属人化を防止できる
データマネジメントを行うことによって、顧客や従業員へ適切で迅速な対応が可能です。これにより、顧客満足度向上や、従業員の働きやすさの改善にもつながるのです。
データマネジメントの方法
実際に、データマネジメントを進めるには、どのようにすればよいのでしょうか。その手順・方法を次の4つに分けて解説します。
データマネジメントの目的や目標を明確にする
データマネジメントでは、目標を達成するためのプロセスを考え、それに必要なマネジメントを行います。
この順序が逆になると「せっかくデータを整理したのに、結局目的や目標に沿わなかった」というように、達成までのプロセスに無駄が生じてしまうことも考えられます。
そうならないよう、最初にデータマネジメントの目的・目標を明らかにすることが重要です。
データの収集・整理を行う
次に、データマネジメントの下準備として必要なデータを収集・整理し、マネジメントを行える状態に整えていきます。
データの整理では、中身の確認とともに、内容に重複がないかを確認します。
例えば「(株)と株式会社」「電話番号の全角・半角」など、表記ゆれによって情報が重複していないかを確認することが必要です。
この工程では、データをわかりやすい方法で管理し、必要時に簡単に取り出せる状態にすることが重要となります。
データの扱いに関して社内方針を決め、社内に周知する
データを適切に運用できる環境整備も、データマネジメントの一環です。
データの扱いに関して社内方針を決め、社員に周知する方法を検討しましょう。
社内方針では、データを安全に扱うための情報セキュリティに関する取り決めや、データの使用範囲などの取り決めを行います。これらの取り決めを社内に周知し、データを適切に運用する体制を整備しましょう。
整理されたデータを、ビジネスに活用する
収集・蓄積して整理したデータは、活用してこそ意味があります。
最初に明確にした目的・目標に沿って必要なデータを活用し、ビジネスの発展に役立てていきましょう。
データマネジメントにおける5つのポイント
データマネジメントを行う際には、主に5つのポイントがあります。
データは常に最新状態にする
引き出したデータが古いと、適切なマネジメントを行うことができません。そのため、データマネジメントでは、データの鮮度を保つことが重要です。
一度データを収集・整理した後も常に最新情報に更新し、引き出した情報の信頼性を確保できるようにします。
あらかじめ、新しい情報は常に追加・更新できるような体制を整えておくとよいでしょう。
データを活用する目的に合致したシステム構築をする
データマネジメントの目標が定まらない状態でシステムだけ整えてしまうと、実際にデータ運用をする際に使いにくかったり、適さなかったりする場合があります。
データマネジメントは、あくまでもビジネスの目的を達成するための手段にすぎません。
「目標達成のためにはどのようなデータが必要か」という前提のもと、データを導き出すためにどうマネジメントを行えば良いかを考え、システムを構築しましょう。
データマネジメントは小規模から開始する
データマネジメントは、小規模な部分からスタートしましょう。
いきなりすべての社内データを対象にするといった大規模なマネジメントを行うと、社内で混乱が起こったり、失敗した場合のフォローが大変になったりします。
まずは小規模から開始し、徐々に範囲を広げていくとよいでしょう。
データマネジメント後に適切なデータ運用を行う
データマネジメントをする際には、データマネジメントをすること自体が目的とならないように注意しましょう。
データマネジメントは、あくまでもビジネスを発展させるための手段です。
データを適切に管理・運用し、ビジネス発展に向けた目標達成のために活用することが大切です。データを使いやすいかたちに整理するだけで終わらず、ビジネスに活かすことを常に考えて運用するようにしましょう。
データマネジメント後に改善が必要になることもある
データマネジメントは「一度やって終わり」というものではありません。
実際にデータを運用すると、新しい課題や利便性をより向上させる案が出ることもあります。
必要に応じて、データマネジメントの見直し・改善を行うことで、最適なデータ活用に近づけられるでしょう。
DMBOK(ディンボック)におけるデータマネジメント
データマネジメントを考える際に参考となる「DMBOK(ディンボック)」を紹介します。
DMBOKとは、世界に80の支部を持つ国際的な非営利団体の米国DAMAインターナショナルが刊行した、データマネジメントの知識を体系的にまとめたガイドブックです。
日本語版の初版は2011年に、第二版は2018年に刊行されました。
DMBOKは「Data Management Body of Knowledge」から頭文字を取った略称であり、直訳すると「データ管理の知識体系」を意味します。DMBOKは、データマネジメントの概念をいくつかの領域に分けて定義し、各領域をデータマネジメントに必要な機能と考えています。
各領域は以下のとおりです。
● データガバナンス:データマネジメント活動を統制すること
● アーキテクチャ:データ戦略や計画立て
● モデリングとデザイン:データ開発
● ストレージとオペレーション:データ設計・実装基盤の構築
● データセキュリティ:データ保護・リスク回避
● データ統合と相互運用性:データ収集の仕組み構築・システム連携
● ドキュメントとコンテンツ管理:ドキュメントや画像などの非構造化データの管理
● 参照データとマスタデータ:データの品質向上・データ統合コスト削減
● データウェアハウス:データ収集・分析の自動化
● メタデータ:メタデータの収集・分析
● データ品質:データ品質の向上
このように、DMBOKでは領域ごとにデータマネジメントの活動が定義づけられており、その定義は100種類以上あるとされています。
これらの領域については、データマネジメントによって達成すべき目標などに合わせ、必要な要素を取り入れていくとよいでしょう。
ビジネスの成長にはデータマネジメントが必須!
企業の持つデータが十分なパフォーマンスを発揮するためには、データマネジメントが必要不可欠です。
データはただ収集するだけではなく、活用するために情報を整理し、更新・保管することが求められます。
適切なデータマネジメントを行うためには、マネジメントの目標を明らかにし、そこに至るプロセスに必要なマネジメント手法を選択することが重要です。
データマネジメントをする際は、いくつか押さえるべきポイントがあります。データマネジメントはビジネスの成功に必要な手段ですが、マネジメントの導入方法を間違えると社内に思わぬ混乱を招きかねません。
データマネジメントを行う際はスモールスタートを意識し、徐々にマネジメント範囲を拡大していくとよいでしょう。
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