はじめに
マーケティングは、新規事業を立ち上げる際に重要な要素の一つです。どのようなマーケティングを行うかによって、事業から得られる収益は大きく変わってきます。
まずは、企業にとってマーケティングとはどのような役割を担うものなのかについて整理しておく必要があるでしょう。そのうえで、本記事ではマーケティングの流れと、その際に用いられるフレームワークなどを紹介していきます。新規事業におけるマーケティングの効果を最大化するために、ぜひ参考にしてください。
マーケティングとは
「マーケティング」という用語は、さまざまな文脈で使われています。何を指しているのかが曖昧なままで、会話が進んでしまうこともあるでしょう。マーケティングが担う役割について整理するために、まずは「狭義のマーケティング」と「広義のマーケティング」の2つについて紹介します。
狭義のマーケティングは製品・サービスを売り込むこと
「マーケティング」というと「宣伝」や「販売」をイメージする方も多いのではないでしょうか。自社がもつ製品やサービスの存在を広くアピールし、買ってもらうための活動です。これらの活動は、マーケティングの役割の一部にすぎないため「狭義のマーケティング」と呼ばれます。
狭義のマーケティングは、企業が事業を行ううえで重要なものです。宣伝をせず、販売の努力もしなければ、どれほど優れた製品やサービスでもユーザーに届けることは簡単ではありません。企業の最終的な売上げは、狭義のマーケティングによって達成されているのだといえます。
ここで、宣伝や販売は、すでにあるものを対象として行う活動だという点に留意すべきでしょう。既存の製品・サービスを「欲しい」と思ってくれるユーザーが十分にいなければ、売上げを伸ばすのは難しいということです。大きな成果を達成するには、より広い意味でのマーケティングに取り組む必要があります。
広義のマーケティングは製品・サービスが売れる仕組みを構築すること
どのような製品・サービスにするかがまだ決まっていない企画段階からでも、より多く売るために何をすべきかを考え始めることは可能でしょう。その際は、さまざまなデータを分析し、市場のニーズを把握することが重要です。
このような「売れる仕組みを考える」活動から、その仕組みを具現化し製品・サービスを顧客に売り込むまでの経営活動すべてを「広義のマーケティング」と呼びます。
ここで、狭義と広義のマーケティングは別々の概念ではなく、密接に関係する活動だという点に留意しましょう。
広い意味においては、マーケティングは製品・サービスが最小限の努力で売れていくような状況を作り出します。とはいえ実際に売上げを達成するには、その状況を最大限に利用して宣伝や販売を行うことも必要です。
新規事業におけるマーケティングの流れ
新規事業のマーケティングでは、ニーズに応えるにはどのような製品・サービスが適しているかを考えたうえで、それを実際に市場に送り出しユーザーに届けられるようにしなければなりません。その際のおおよその流れについて、5つのステップに分けて説明していきます。
1. 市場調査でユーザーのニーズを把握する
マーケティングの最初のステップは市場調査(マーケティング・リサーチ)です。「これから作ろうとしている製品にニーズはありそうか」「競合サービスはどの程度の価格設定になっているか」などについて調査します。
どれだけ優れた製品・サービスを開発したという自負があったとしても、市場のニーズからの乖離が大きいと「思うように売れない」などの事態になりかねません。また、いざ売り出そうという段階で軌道修正の必要性に迫られないためにも、市場調査は入念に実施しておくことが肝心です。
市場調査の際は、併せて環境分析も実施しておくのがよいでしょう。環境分析とはユーザーや競合他社との関係性、市場の状況など、企業を取り巻く経営環境について整理・把握することです。
2. 製品・サービスのターゲットとポジションを決める
次は、市場調査の結果をもとにターゲットとポジションを決めるステップです。どのような製品・サービスも、すべてのユーザーの、あらゆるニーズに応えられるわけではありません。そのため、自社が最も強みを発揮しやすい選択をすることが大切だといえます。
ターゲットとは、市場において自社が選ぶセグメントのことです。得意ジャンルやブランドイメージなどに基づいて、どの層のユーザーを対象とするのかを決めるのがよいでしょう。
ポジションは、市場における自社の立ち位置を決めるものです。競合が存在するなかで、自社の製品・サービスをユーザーにどのように認識してほしいのかを明確にしましょう。
3. 価値の提供方法について計画する
マーケティングのステップを順序良く進めれば、新たな製品・サービスを通して提供すべき価値もしだいに見えてくるはずです。ユーザーが求めており、競合には真似のできない自社独自の価値を見出すことができれば望ましいといえます。その価値を、実際にどのようにしてユーザーに提供していくのかを計画しましょう。
ここでは、マーケティング・ミックスの考え方が有効です。すなわち、製品・サービスをユーザーに届けるのに望ましい状況を作り出すために、複数のマーケティング・ツールを組み合わせていきます。どのような製品をどの程度の価格とするか、ユーザーにどのように働きかけ、どこで販売するかというようなことです。
4. ここまでの計画を実行に移す
ここまでのステップでは最初に調査と分析を行い、次に立ち位置を決め、そのうえで提供方法を計画してきました。次はいよいよ、マーケティングを実施するステップです。入念な調査に基づいて根拠のある計画を立てていれば、迷うことなく実行に移せるでしょう。
裏を返せば、見切り発車のマーケティングは弱いということです。近年の新規事業には「ひとまず立ち上げてから考えよう」とするケースもよくみられますが、その場合、軌道修正をせずにうまくいく見込みは低いといえます。
評価とフィードバックを行う
最後のステップは、ここまでのステップを評価することです。マーケティングを実施した結果から事前の分析は正しかったのか、方法は妥当だったのかを確認し、今後の活動にフィードバックします。
良かった点については継続するとして、想定どおりにいかなかった部分については理由を考え、修正していくことが大切です。
新規事業のマーケティングに役立つフレームワーク3選
ここでは、マーケティングの初期段階で環境分析を実施する際に活用できるフレームワークを3つ紹介します。いずれも、自社の強みをふまえた効果的なマーケティングのために役立てやすいでしょう。
PEST分析
PEST分析は、市場について知るためのフレームワークです。自社のみの施策ではコントロールすることが難しい外部的な要因について洗い出し、そこからどのような影響を受ける可能性があるのかを把握するために用いられます。
以下の4つの要因に着目するのが、PEST分析の特徴です。
● Politics:法改正や規制緩和のような、市場のルールを変えてしまうかもしれない政治的要因
● Economy:物価や為替、原材料価格の動向といった、自社にも影響する経済的要因
● Society:人口の推移や世論、文化といった、ユーザーのニーズを左右する社会的要因
● Technology:新たなインフラや技術革新など、競争のあり方そのものを変えてしまう可能性のある技術的要因
3C分析
3C分析は、自社を取り巻くビジネス環境について知るためのフレームワークです。市場の状況を整理することで、自社の事業を成功させるための必要条件を見出すために用いられます。
頭文字が「C」の3つの単語が表す要素に注目するのが、3C分析の特徴です。
● Customer:市場において、ユーザーのニーズはどのように変化しているか
● Company:競合がいるなかで、自社が成功するためにはどのような条件が必要となるか
● Competitor:ニーズの変化に対して、競合はどのような対策を講じているか
SWOT分析
SWOT分析は、自社が置かれている状況を把握するためのフレームワークです。内部環境と外部環境、プラス面とマイナス面の2つの軸をもつのが特徴です。
内部環境については、以下2つの要素に着目します。
● Strength:現在の競争力につながっている、自社の強みといえる部分
● Weakness:競合に対して足りていない、自社の弱みとなりうる部分
外部環境については、以下2つの要素に着目します。
● Opportunity:自社のビジネスにおいて追い風となるような、市場の変化や機会
● Threats:自社が強みを発揮しづらくなるような、市場の変化や動向
新規事業なら押さえておきたい2つのマーケティングの手法
上でも触れたとおり、近年ではひとまず事業を立ち上げてから、必要に応じて軌道修正していくケースもよくみられるようになりました。入念に準備されたマーケティングに比べれば、あまり堅実な方法とはいえません。
しかし、やり方しだいではメリットを得られる可能性もあります。ここでは、場合によっては新規事業に役立つ可能性のある、2つの手法について簡単に紹介します。
デジタルマーケティングで小さく始める
マーケティングにおいて、デジタル活用はぜひ考えておきたい要素です。一般的には次のような方法が考えられます。
● Webサイトを公開してブランドイメージを広く伝える
● SNSを通してユーザーと直接コミュニケーションをとれるようにする
● メールマガジンを発行して製品やサービスに関する情報を発信する
これらはテレビCMのようなコストのかかる方法を抜きにして、小規模からでも始められる方法です。加えて、ユーザーからのダイレクトな反応を得やすく、定量的な分析も行いやすいというメリットがあります。
例えば、X(Twitter)アカウントを作成し、製品に関する質問などを受け付けるようにする場合、以下のようなステップで進められます。
◇コンテンツ戦略の策定
何を、どのように発信するかを計画します。新製品の情報、使い方のヒント、業界のトレンドなど、フォロワーにとって有益な情報を提供しましょう。
◇定期的なポスト
X(Twitter)などのSNSは更新頻度が重要です。毎日または決まった曜日に定期的に投稿をすることで、フォロワーとの関係を維持・強化します。
◇フォロワーとの対話
ユーザーからの質問やコメントに対して、積極的かつ迅速に返信を行い、コミュニケーションを活発にします。
◇特別なキャンペーンの実施
新製品の発売記念や季節のイベントなどに合わせて、割引コードを提供するなどの特別なキャンペーンを実施します。
◇データ分析と改善
X(Twitter)のアナリティクスを利用して、どの投稿が人気だったのか、どの時間帯にフォロワーが最もアクティブなのかなどを分析し、戦略を改善していきます。
◇他のSNSやデジタルプラットフォームとの連携
X(Twitter)だけでなく、Instagram、Facebook、LinkedInなど他のSNSも活用し、それぞれのプラットフォームの特性に合わせたコンテンツを共有します。また、これらのSNSから直接Webサイトにトラフィックを導くことで、製品やサービスへの興味を高めます。
◇メールマーケティングとの連携
SNSで集めたリード(潜在的な顧客)に対して、メールマガジンを送信し、深い関係を築いていきます。例えば、X(Twitter)で新規フォロワーが増えたら、メールニュースレターの登録を促すなど、クロスチャネルのマーケティング戦略を練ります。
クラウドファンディングでニーズをテストする
やや大胆ではあるものの「ひとまず売ってみる」というのはユーザーのニーズを知るための一つの選択肢です。そのためにクラウドファンディングで新しい製品・サービスを提案し、ユーザーの反応を見るということも行われるようになってきました。
支援者がどれくらい集まるかによって、どの程度のニーズがありそうかを把握しようというわけです。
この方法には、検討中のビジネスが市場に受け入れられるかどうかを早い段階でテストするという意味があります。
もちろん良い反応が得られたからといって、市場の調査や分析が不要になるわけではありません。とはいえ、新規事業が成功する見込みについての判断材料の一つにはなるでしょう。
人材を確保して効果的なマーケティングを
ニーズに合う製品やサービスをユーザーに届けたい企業にとって、マーケティングは非常に重要な要素です。目的を理解し、ポイントを押さえて実施することで、新規事業においても効果的なマーケティングが可能になります。その際には、いかに人材を確保するかが課題となるでしょう。
社内教育で担当者に知識を獲得してもらう、経験のある人材を社外から招き入れるといった施策が必要です。
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