はじめに
AIの台頭により、生産性の向上、業務効率の改善、顧客満足度の増加が期待されています。また、AIの可能性を存分に引き出し、持続的な成長を実現するには、AIを理解し、自ら開発し運用する「内製化」が有効的だと言われています。これには、組織のビジョンと戦略を全社員が共有し、ビジネスモデルが企業の価値観と一致していることが重要です。本記事では、現代ビジネスにおける人材不足の実状と課題、AI導入によるビジネスの可能性を効果的な内製化戦略と共に解説します。
日本が抱える人材不足問題とAIの関係
日本国内では、少子高齢化による労働人口の減少が進んでおり、人材不足が深刻な問題となっています。厚生労働省の推計によると、2020年の生産年齢人口(15歳~64歳)は7,597万人でしたが、2030年には6,313万人、2040年には5,024万人と、20年で約2,580万人減少するそうです。
出典:「情報通信白書令和2年版」(総務省)
IT人材不足の現状とその影響
現代ビジネスにおいて、IT人材の不足が深刻な問題になっています。IT人材の不足は、企業の成長や競争力に直接的な影響を及ぼします。プロジェクトの遅延や品質低下、顧客満足度の低下などを引き起こすだけでなく、新しい技術を迅速に導入できないことで、市場競争において遅れを取るリスクも高まります。そのため多くの企業がITスキルを持つ人材を必要としていますが、優秀な人材は人数が少なく、特に高度なスキルを持つ専門家は顕著で、AI、クラウド、サイバーセキュリティなどの分野では人材の確保が難しいとされています。優秀な人材ほど給与も高くなりますし、適切な人材が見つからない場合は、外部のコンサルやアウトソーシングに依存することになり追加コストとなります。
新しい技術が続々と登場するIT業界において、この人材不足は重大な課題であり、企業はIT人材の育成や確保に対して戦略的なアプローチが求められます。社内教育や研修プログラムの充実、リモートワークや柔軟な働き方の推進など、人材の獲得と維持を支援するための取り組みが必要です。併せてAIや自動化ツールの導入により、限られた人材の中で成果を上げられる環境造りも重要です。
このような状況下では、今後、ますます働く人が減っていき、採用することも難しくなっていくでしょう。だからこそ、人でしかできない仕事に人材を配置し、人でなくてもできる仕事をデジタルに置き換えることが重要であり、その手助けをしてくれるのがAIの力なのです。多くの企業がAIを活用して、業務を効率化したり、新たな価値を創造したりすることで、人材不足の課題を軽減しようとしています。
人材不足を補うAIとして、音声や言語を理解し人の動きを補助するもの、人の代わりに他の機器に指示を出すもの、人の指示に応じて物を作り出すもの、さまざまなAIが存在しますが、ChatGPTをはじめとした、人と対話形式でユーザーの指示を実行したり、情報を提供したりする生成AIが企業の既存システムとの親和性も高く、比較的導入しやすい技術だと言われています。
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(生成AIについては【AI活用ステップ3】でご紹介します)
AI内製化で、競争優位性を効果的に獲得
AIを社内で開発・運用することで、人材不足だけでなくさまざまな効果を得ることができます。
顧客満足度の向上と人材育成
AIを社員が開発するため、自社のビジネスプロセスや顧客ニーズに完全に合わせたAIソリューションを提供することができ、市場のニッチな要求にも迅速に対応できます。これにより、他社製品ではカバーしきれない独自の価値を生み出し、顧客の満足度とロイヤルティを向上させることができます。加えて、顧客の生の声をリアルタイムに受けることで教育と育成の機会が常に発生し、社員のスキル向上を促します。つまり、AI内製化は、技術の進歩と優秀な人材を確保すること、両方を同時に進めることができる戦略と言えるでしょう。
コスト削減とセキュリティ強化
AI内製化は外注依存からの脱却を図ります。これにより、ライセンス料やカスタマイズ費用などの長期的なコスト削減が可能になるだけでなく、自社独自の技術を開発・所有することで、他社には真似できない独自のサービスを提供することができます。またセキュリティの観点でも企業の重要な情報を社員だけが扱うことになるため情報漏洩などのリスクヘッジにつながります。機密性の高いデータを扱うBtoB市場では、セキュリティの高さが信頼を獲得する重要な要素になるでしょう。
AI内製化による人材育成とキャリアパス
AI内製化は企業の競争優位性を高める戦略的な手段として注目されていますが、このプロセスは同時に人材育成とキャリアパスの構築にも寄与しています。企業は社内でAI技術を開発することで、社員に対して専門的なスキルと知識を提供し、成長を促進しています。具体的には、社内のAIプロジェクトに参加することで、社員はデータサイエンス、アルゴリズムの設計、システム統合といった分野で実践的な経験を積み、将来的なキャリアアップに直結します。こうした人材育成の取り組みは、社員のキャリアの幅を広げ、会社にとっても素晴らしい人材へと成長していくことになります。
AI内製化のための3つのステップ
AI内製化を成功させるためには、単に新しいツールとして導入するだけでは不十分です。企業のビジョンや長期的な戦略に基づき、AIをどのように活用するかを具体的に計画する必要があります。この過程で、業務の自動化や効率化などAIによる変化を社員全員が理解し受け入れることにより、AIを活用したビジネスモデルの発展がスムーズに進行します。つまり組織全体が一丸となってAIを取り入れ、活用することが、内製化の成功つながるのです。
具体的に、以下の3つのステップで、AI内製化を進めていきます。
企業ビジョンや戦略の明確化
全社員に対して積極的にビジョンや戦略を伝え、社員からはフィードバックが返ってくるような、相互コミュニケーションが取れる環境が理想的です。そしてAI導入により、どのような課題が解決できるのかを明確にし、それに対するAIの適用範囲を定義します。例えば、顧客データ分析、需要予測、プロセスの自動化などが考えられます。これにより、プロジェクトの方向性が定まり、リソースの効率的な配分が可能になります。また、目標を具体的に設定することで、進捗状況の評価や成果の測定が容易になります。
AI理解と文化の浸透
企業全体でAIの活用を理解し、推進する文化を醸成することで、AI内製化は大幅に前進します。AIを受け入れやすい環境を作り上げるためには、経営層のリーダーシップのもと、社員への教育を積極的に行う必要があります。具体的なAIの活用事例などをAIの目的やメリットと共に全社員に周知し、AIでできることの理解を深めるのも効果的です。また、社員の評価にもAI導入に関連した項目を作り、ビジネスに沿った戦略になっているのか、どのくらい貢献できたのかを的確に評価することで、社員のエンゲージメントと企業との共感を一層促進できます。AIの開発や運用に携わる人材だけでなく、全社員がAIを活用できるような教育・研修を実施したほうが良いかもしれません。
パソナでは、AI導入の支援だけでなく、AI人材の育成研修もご提供可能です。
(詳しくは「AI導入支援」をご覧ください。)
AI推進チームの構築とスキルアップ
AI内製化を推進するチームを立ち上げます。チームには、経営層、事業部門の責任者、AIに関する専門知識とスキルを持った人材など、AI内製化に必要なメンバーが参画します。
AI推進チームを立ち上げるためには、企業のビジョンと戦略に精通する適切な専門家を集結させることが不可欠です。また、既存の社員に対してもAI関連のトレーニングを提供し、スキルアップを図ります。これにより、外部リソースに頼らずに、継続的な学習と成長を促進することができ、プロジェクトの長期的な成功につながります。AI推進チームは、企業内でAI技術を戦略的かつ効果的に導入し、ビジョンの実現に向けてリーダーシップを発揮します 。
AIが与えるビジネス世界への影響と、変革への対応
AIは、社会のあり方を大きく変え、業界全体に大きな影響を与えています。技術がどんどん進化する中で、私たちは多くの仕事を自動化し、効率的なやり方や全く新しいビジネスの形を生み出すでしょう。例えば、顧客のニーズをリアルタイムで把握し、パーソナライズされたサービス提供はマーケティングの質を根本的に変えるでしょう。また、社員は雑多なタスクに追われることなく、戦略的で創造的な本来やるべき仕事に集中することができます。
しかし、AIを使った変革で最も重要なのは、これからの未来にうまく対応することです。企業戦略にAIを組み込むことで、変革の波を乗り越え、ビジネスの継続的な成長を続けるには、新しい技術のトレンドを把握し、継続的な学習と革新を重ねることが必要です。AIの変革と未来予測を念頭に置きながら、今こそ企業は新たな時代への対応策を考えるべきなのです。
変革を推進する組織のあり方
企業が変革に対し柔軟に対応するためには、計画的な戦略と強いリーダーシップが必要です。AI時代を勝ち抜くためには、技術と人とが協働する文化を作り出す必要があります。リーダーは、明確な目標を伝え、人材の育成に注力し、あらゆる変革への抵抗を減らすことが求められます。そのためには戦略的にAI技術を取り入れ、その可能性を最大限に活用する体制を整えることが、重要になります。
まとめ:AI内製化成功のポイント
企業がAIを内製化することは、競争に勝つためにも、人材不足を解決するためにも重要になります。
このプロセスを成功に導くためには、柔軟な文化と継続的な改善が鍵となります。社員一人ひとりが企業文化を理解し、変革を恐れず継続的に学び続けなければいけません。AI技術は常に進化しているため、企業は変化に対応できる柔軟さを持っていなければならず、プロジェクトの進行中や完了後も継続的な評価と改善を行い、常に最適な状態を維持します。
AI内製化への投資と長期的な企業ビジョンの重要性
AI内製化によって、企業が競争優位性を確立するためには長期的な企業ビジョンと持続可能な投資戦略に強く依存します。AI技術の進化は速く、短期間での成果に注目が集まりがちですが、内製化のプロセスは一朝一夕には達成されません。持続的な研究開発とスキルアップが必要であり、これには充分な投資と時間が不可欠です。結論として、AI内製化を成功させるためには、将来にわたるビジョンを設定し、それを遂行するための資金と人材の確保が重要なのです。
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