はじめに
近年、DXというキーワードとあわせて、DXを推進するための内製化という言葉をよく耳にすることが増えてきました。それはなぜでしょうか?
本記事では、DXを推進するための内製化を検討されている方々に向けて、なぜ今DXを推進するための内製化が必要と言われているのか、メリットと乗り越えるべき壁について詳しく解説していきます。
また、日本のDXを推進するための内製化の状況についても紹介し、最近のトレンドや変化についても触れていきます。
DXを推進するための内製化が必要な理由
まずDXの定義のおさらいをすると下記のようになります。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
出展:経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0 2022/9/13改訂
わけて書くと下記のようになります。
・デジタル:デジタルを使いこなして、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すること
・ビジネス:業務・組織・プロセス・企業文化・風土を変革すること
DXは、デジタル化のみを行うこととは違います。従来行われてきたデジタル化に留まらず、デジタルを使いこなし、ビジネスモデルを変革しつづけるということです。
また、デジタルを使いこなすためにも、業務・組織・プロセス・企業文化・風土を変革する必要があるのです。
つまりDXとは、上記の2つ「デジタル」と「ビジネス」の両方を進めていくことにより「競争上の優位性」を確立することなのです。
それを実現するために有効な手段の1つが、DXを推進するための内製化です。(以下内製化と言います。)
今までのように外製化をしながら「デジタル」と「ビジネス」の両方を進めようとするとどうでしょうか。
企業によっては、どうしても技術やビジネスのノウハウがたまらない、自社内と外注先との相互理解にコミュニケーションが必要になるなどの課題が発生するのではと思います。
それが、内製化を行うことで、上記に記載した課題を解決するだけではなく、DXを推進するための様々なメリットが生まれるのではないでしょうか。
もちろん、外製化が有効という企業もありますので、本コラムにある、内製化のメリットと乗り越えるべき壁を読んでいただき、自社が「DXを推進するにはどうすればいいのか」を考える、材料の一つとしていただけますと幸いです。
DXを推進するための内製化の、メリット
内製化にはさまざまなメリットがあります。その中でも特にメリットで大きいと言われているものをご紹介します。
ビジネス変革のスピードと柔軟性がアップする
自社内で使用するシステム開発運用を例とすると、システムにも社内の業務プロセスにも詳しい人材が社内にいることで、システムと業務プロセス両方の観点から、アイデアや連携が生まれやすくなります。それにより、スピードが上がるのはもちろん、より成果のだせるシステムに変更することも可能となります。
近年、生成AIの進化により、各社がさまざまな業務効率化、ビジネスモデル変革を打ち出しています。自社内の業務を熟知した社内の人材ならではの着眼点から生まれるアイデアだからこそ、自社ビジネスにマッチした柔軟な技術利用が可能になります。
各社が、ビジネス変革のスピードを上げる中、自社も遅れをとらないように、ビジネス変革のスピードを上げていくためには、内製化は非常に魅力的な手段ではないでしょうか。
ノウハウの蓄積が可能になる
外部委託の場合、システムに関するノウハウは外部に蓄積されます。その為、いつまでたってもシステムのノウハウが蓄積されず、他のシステム企画も外部に頼ることになります。しかし、内製化であれば、社内にシステムに関するノウハウが蓄積され、将来的に自社で企画を行う際にノウハウを役立てることができます。
また、外部委託の場合、社内の業務プロセスを十分に理解した人材がシステムを開発するわけではありません。双方の認識がずれないように緻密な設計の認識合わせが必要となり、その作業には時間が必要になります。しかし、内製化であれば、社内の業務プロセスを理解した人材がシステム開発を行うため、関係者内での設計の認識合わせも行いやすく、比較的早い設計が可能になります。
社内人材の育成のチャンスになる
今後のビジネス変革にはデジタル人材が必要です。ただし、慢性的な人不足の日本では、採用だけでデジタル人材を確保するのは難しいでしょう。その為、内製化をするとともに、社員のリスキリングも行っていく必要があります。
デジタル人材の育成状況についてPwCグループが行った調査によると、「DX先進」の61%が「期待以上の効果が出ている」と回答し「DX先進」ではない企業と大きな差がでました。
そこから推測されたこととしては「全社的に育成プログラムを展開し、システム開発・運用を自社内で完結(内製化)することにより、人材育成を期待以上に進めることが可能」という事です。
※本調査での「先進」とは「アジャイル開発手法展開状況」「パブリッククラウド活用状況」「マイクロサービス、コンテナ、サーバーレスなどのクラウドネイティブと呼ばれる新技術要素の活用状況」を全面的に採用している企業とします
出展:2022年DX意識調査―ITモダナイゼーション編―
内製化を行うということは、社員の育成のチャンスにもなるということでしょう。
リスキリングについては、こちらのコラムもご覧ください。
→リスキリングとは?メリットや導入手順・成功のポイントについて解説
DXを推進するための内製化の、乗り越えるべき壁
メリットをご紹介しましたが、一方で内製化には乗り越えるべき壁も存在します。
2023年に経済産業省が発表した「デジタルフォーメーション調査2023の分析」では、DX銘柄に選ばれる企業と、そうでない企業の違いについて、大きな差があるのは「挑戦を促す仕組み」や「人材育成・確保」である旨の記載があります。
これは、実施したくとも、実施するのは困難であることとも受けとれます。また、内製化当初から言われている「初期投資のコスト」も引き続き問題としてあるでしょう。これらの乗り越えるべき壁ついて、ご紹介します。
社内の体制や意識を変える必要がある
内製化をするという事は、今まで外製化していた「社外にまかせる」という体制を変え、挑戦を促す仕組みづくりが必要です。しかし、社内に根付いた体制や意識を変えていくのは、容易なことではありません。
内製化の目的を明確にし、社内の状況を把握しながら、段階的に進めていく必要があります。
人材育成、人材確保が必要になる
メリットの「社内人材の育成になる」でも触れましたが、内製化を行うためには、システム開発のスキルや知識を有するデジタル人材を確保する必要があります。しかし、近年、デジタル人材の不足が深刻化しており、特に高度なスキルや知識を有する人材は、獲得が難しい状況です。
そのため、内製化を検討する際には、社内にどのような人材がいるのかを把握し、人材育成や採用などの対策を検討・実施する必要があります。
パソナでは、DX人材育成サービスもご提供しております。ご興味がありましたら、ぜひお問い合わせください。
初期の設備投資にコストがかかる
内製化を進める際、初期投資は避けられません。新しい設備や技術への投資が必要であり、これには一定の初期コストがかかります。しかし、この投資は将来的な収益やコスト削減につながり、企業の競争力を向上させる重要な一歩です。初期の費用に対して中長期的な利益を見据え、計画的な試算をする必要があります。
国内外のDXを推進するための内製化の現状
国内ではここ数年、内製化の方針に進んでいます。
ガートナージャパンの調査によると、所属する企業の方針が内製化の方針にあるという回答は54.4%で半数を超えたとの記載があります。外製化の方針との回答は35.4%でした。
出展:日本におけるソフトウェア開発の内製化に関する調査結果2023/1/18
ただし、国内で内製化が進んでいると言っても、海外と比べると、そこにはまだ大きな差があります。
国内では、企業のDX意識が高まりつつある一方で、伝統的な業務プロセスへの執着やリスク回避の傾向が見受けられます。このため、内製化への移行が比較的慎重な一面もあります。
大手企業が先行している一方で、中小企業のDXへの取り組みはこれからという実情です。
一方で、海外では積極的なDX推進が進んでおり、内製化が一般的です。特にアメリカや欧州では、新たなテクノロジーやアジャイルな開発手法の導入が進み、企業は変革をリードする意識が強いです。外部ベンダーへの依存を減らし、自社内で技術開発を主導することで、市場での競争力向上を狙っています。中小企業も積極的に内製化に着手しており、地域や規模に関係なくDXが浸透しています。
これに対し、海外では内製化が浸透していることから、将来的には国内もさらに内製化が進むと考えられます。その時に、はやくから内製化に取り組んでいた企業と、そうでない企業の優位性の差はより大きくなっているのではないでしょうか。
DXを推進するための内製化を検討する際のポイントと留意点
内製化を検討する際には、いくつかのポイントと留意点があります。
まず、内製化の実施方法とステップをしっかりと計画することが大切です。内製化には時間やリソースが必要ですので、プロジェクト管理をしっかりと行いましょう。
また、人材の確保も重要です。内製化における必要なスキルを持ったデジタル人材を採用や育成することが必要です。リスク管理とコスト削減のバランスも考慮しなければなりません。内製化によって得られる品質や効率化のメリットを最大限に活かしつつ、コストを抑えることが求められます。そのため、内製化は短期的ではなく、長期的な戦略性を持つ必要があるでしょう。
DXを推進するための内製化は、企業優位性を確立するための有効な手段
冒頭でもふれたとおり、内製化は「企業優位性」を確立するための有効な手段です。なぜならば、DXとは「デジタル」と「ビジネス」の両方を進めていくことで「競争上の優位性」を確立することであり、内製化にはそれを行う上で様々なメリットがあるからです。
もちろん、乗り越えるべき壁にあげた、内製化を行ううえで困難なこともありますので、その点を念頭に置いて計画的に進める必要があります。自社のみで内製化を進めるのが困難な場合は、内製化支援サービスを利用することもおすすめです。
内製化のステップやリスク管理、人材の育成・確保など、内製化に関する専門的な知識やノウハウを持ったサービスを活用することにより、内製化が進みやすくなるでしょう。
パソナでは、多数の内製化支援の実績があり、お客様の課題にあわせた内製化支援サービスをご提案いたします。
まずは情報交換からでも可能ですので、お気軽にお問合せください。
内製化を検討されている方々に、この記事が少しでも参考になりますと幸いです。
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