はじめに
生成AI「ChatGPT」が、テレビのニュースなどでも取り上げられるほど大きな話題になっています。AIを活用した革新的なサービスとして、エンジニアだけでなく一般ユーザーにも広く注目されていますが、プライバシーなどについて懸念する声も少なくありません。
そこで本記事では、ChatGPTで何が可能になり、仕事で使う際にはどのような点に注意すべきなのかを説明します。
なお、AIの技術は急速に進化しており、本記事を企画した2023年8月以降にも新サービスなどが登場している可能性があることをご了承ください。
ChatGPTとはチャット形式でテキストを出力する生成AIのこと
学習済みのデータに基づいてコンテンツ(テキストや画像など)を出力できるAIモデルを「生成AI(generative AI)」と呼びます。ChatGPTは、チャット形式でテキストを出力する生成AIのサービスです。
ユーザーが入力した質問に対し、まるで人間が書いたかのような自然な文章でAIが回答するのが特徴です。ときにはジョークさえ言うこともあり、人間味のある高精度な回答は、SNSなどでもたびたび話題にされてきました。ChatGPTはWebのほか、スマートフォンアプリ(iOS/Androidに対応)で利用できます。
提供元の「OpenAI」は、アメリカの非営利団体です。AIにより画像を生成する「DALL·E 2」や音声認識を文字起こしなどに利用できる「Whisper」など、さまざまなAIサービスを手がけています。マイクロソフト社と提携し技術提供を行うなど、急速に進展するAI分野の牽引役としても注目されている企業です。
ChatGPTで無料でもできること4選
ChatGPTでは、人に話しかけるのと同じような言い回しで質問(=命令)を入力すれば、文章で答えが返ってきます。チャット形式のため、使い方もそれほど難しくありません。コンピューターを相手に日常会話を行うような感覚ですが、使い方次第でアシスタントのような役割も果たしてくれます。
ChatGPTのサービスには有料プランもありますが、ユーザー登録さえすれば基本的な機能は無料で利用可能です。ここではまず、無料プランでできることについて説明します。
小説などの原稿を書く
ChatGPTは、任意のテーマを与えるとそれに関する文章を書くことができます。インターネットから収集した膨大なデータに基づいて、AIがアイデアを出してくれるようなイメージです。例えば物語のあらすじを考えたり、内容を膨らませたりしてくれます。
自然な言い回しで日本語の文章が出力されることに、驚く人も多いかもしれません。小説やエッセイなどの創作、ブログ記事の執筆などを行う際のヒントとして活用できるでしょう。
文章を翻訳する
ChatGPTは日本語の文章を外国語に翻訳したり、外国語の文章を日本語に翻訳したりできます。1つの文章を、まとめて複数の言語に訳してもらうことも可能です。人間の翻訳家ほど気の利いた表現はできないかもしれませんが、自動翻訳としての精度は十分だといえます。
IT業界のトレンドや開発者向けのドキュメントなどは、はじめは英語で発信されることも多いため、グローバルな情報を必要とするエンジニアにも重宝する使い方でしょう。
プログラミングの補助に使う
ChatGPTを使えば、プログラムを書くことも可能です。どのようなプログラムにしたいか、用途や仕様を伝えると、対応するソースコードを生成してくれます。また、自分が書いたソースコードを見せて、問題を指摘してもらうこともできます。
AIにとっては、日本語や英語といった自然言語よりも、ルールが明確なプログラミング言語のほうが相性が良いのでしょう。ChatGPTはAI開発に多く用いられるPythonのほか、JavaやRust、PHPなど多様な言語を扱えます。開発の効率化につながるとともに、新しいプログラミング言語の習得などに活用できるでしょう。
ほかにもある意外な使い方
ChatGPTは、用途が限定されているわけではありません。質問のしかたを工夫すれば、ここまでに紹介した以外にもさまざまな目的に活用できます。例えば、以下のようなことに利用可能です。
● 新製品のキャッチコピーを考えてもらう
● SNSに投稿予定の文章が炎上しそうかどうかを判定してもらう
● お礼状など、あまり書き慣れていない文面を代筆してもらう
● 冷蔵庫の余りものを伝えて、レシピを提案してもらう
● 英単語を指定して、例文を書き出してもらう
ChatGPTは、仕事はもちろんのこと、家事や勉強など暮らしに関することにも役立つサービスだとわかるでしょう。
ChatGPTに関連する有料プラン
ChatGPTは無料でもさまざまなことに活用できますが、ChatGPTの開発元であるOpenAIは有料プランも提供しています。ここからは、ChatGPTの有料プランとAPIサービスについて紹介します。
ChatGPTの有料プラン「ChatGPT Plus」
「ChatGPT Plus」は、ChatGPTの有料プランです。サブスクリプション方式で利用でき、以下のような特徴があります。
● サーバー混雑時も利用可能
● 応答が高速
● 新機能が優先的に提供される
これだけだと基本的な機能は無料プランと変わらないようにも見えますが、ChatGPTの「頭脳」ともいえるAIモデルとして最新の「GPT-4」を選択できる点は大きな違いでしょう。無料プランでは、前バージョンの「GPT-3.5」しか選択できません。
また、ChatGPTの回答は2021年9月までの学習済みデータがもとになっています。それ以降の出来事や最新の情報について、ChatGPTは基本的に何も知りません。しかし、有料プランではプラグインが提供されています。このプラグインにはウェブブラウジング(URLを渡すとその内容も含めて回答してくれる)が可能なものがあり、こちらを有効にすることで、回答に最新の情報を含めることができます。
(2023年8月15日現在)
なおプラグインは、ウェブブラウジング以外にもさまざまなものがあります。活用することでより便利なサービスにカスタマイズできる点も魅力の一つでしょう。
アプリケーション開発に利用できるAPIサービス
OpenAIは、AIを用いたアプリケーション開発のためのAPIサービスも提供しています。複数のAIモデルから用途に合うものを選択できるようになっており、ChatGPTと同等の性能をもつオリジナルのサービスを立ち上げることも可能です。自前のデータで追加の学習も実施できるので、カスタムAIモデルを構築するのもよいでしょう。
導入方法や使い方についてはドキュメントにまとめられているほか、例も豊富に提供されています。利用料は、使用量に応じて支払う従量課金制です。最初に3ヵ月間有効な5ドル分のクレジットを受け取れるので、本番の開発に着手する前に、ある程度試用できます。
ChatGPTを適切に活用するための2つのガイドライン
ChatGPTを便利に使うためには、リスクをふまえたうえで適切に活用する必要があるでしょう。ここからは、そのための指針となる2つのガイドラインについて紹介します。
JDLAによるガイドラインを活用する
JDLA(日本ディープラーニング協会)は、生成AIの利用ガイドラインを公開しています。これは個人向けではなく、ChatGPTをはじめとする生成AIを業務に取り入れたい企業や組織向けのものです。個人情報や権利の問題をクリアしながら、ChatGPTを便利に使えるようにするための一般的な検討事項を把握できる内容となっています。
生成AIをスムーズに導入するには、活用の目的に合わせたルール作りが必要となるでしょう。本ガイドラインはその際のひな形として、適宜修正を加えながら利用することが想定されています。
文部科学省の方針を参考にする
文部科学省は、学校での生成AIの利用についてガイドラインの策定を進めています。生成AIの急速な普及により、教育現場においても個人情報の流出や権利侵害のほか、AIの不適切な使用が学習の妨げになるなどの懸念の声があがっています。しかし本ガイドラインでは、生成AIを適切に使いこなすことも「情報活用能力」の一環だとする方針です。
2023年7月4日には「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」が公表されました。こちらは小中高の児童・生徒を対象とするものですが、すでに学校教育を終えたエンジニアにも参考にできる部分はあるでしょう。
ChatGPTを仕事に使う際の3つの注意点
ChatGPTは個人で利用するには楽しく便利なものですが、仕事で使うとなると気を付けたほうが良い部分もあります。ここでは、特に注意を要する3点について説明します。
回答内容が正しいとは限らない
ChatGPTの知識量は膨大です。しかし、これはAIが人間と同じようにものごとを理解しているという意味ではありません。AIはテキストデータから、言葉同士の関連性を把握しているに過ぎないのです。
実際に、AIが不適切な回答をすることは少なくありません。それらしい文章で書かれていても、事実に反する内容になっている場合があるため注意が必要です。また、論理的には筋が通っていても、倫理上の問題が含まれるケースも考えられます。ChatGPTが出力した情報を精査せずに仕事で使うのは、一定のリスクをともなう行為だと認識する必要があるでしょう。
個人情報を開示してしまう恐れがある
ChatGPTは、インターネットに公開された膨大なデータを学習に用いています。そこには個人データも含まれていると考えるのが自然です。プライバシー侵害にあたる回答をしないように配慮されてはいるものの、ChatGPTが個人のメールアドレスを開示してしまったケースなども報告されています。個人情報を保護する観点からも、ChatGPTから得た情報は精査が必要だといえるでしょう。
また、ChatGPTはユーザーとの会話内容をシステムの改善に利用する場合があります。チャットに入力する文章にも、個人情報や仕事上の機密情報などは含めないように注意しましょう。
データの権利が問題視される場合がある
AIに学習させるためには、大量のデータが必要となります。ChatGPTが人間のように自然な表現の文章を出力する能力を獲得できたのは、インターネットにある膨大なデータを学習に利用したためです。ここで気を付けたいのが、データはそれぞれ作成者や所有者に著作権が発生する場合がある点でしょう。オリジナルのサービス開発などでChatGPTが出力したテキストを扱う際に、学習に利用したデータの権利が問題視されるかもしれないということです。
国内向けのサービスだと、日本の著作権法において問題がないことを確認すれば十分かもしれません。しかし、海外のユーザーも利用するサービスでは、国や地域ごとの法令によりデータの権利が問題視されるケースがないか、十分に確認する必要があります。
ChatGPTを仕事でよりセキュアに使う方法
上記でChatGPTを仕事に使う際の3つの注意点をご紹介しましたが、セキュリティーやガバナンスの観点から、実際に仕事でChatGPTを使用することを、迷う企業も少なくないでしょう。
そのような場合には、Microsoft社が提供する「Azure OpenAI Service」を検討するもの1つの方法です。
「Azure OpenAI Service」とは、Microsoft Azureと呼ばれるクラウド上で、OpenAI社が開発した最新AIモデルにアクセスできるサービスです。ChatGPTと同様の使い方もでき、外部との通信を管理することができるため、セキュリティー面も安心なサービスです。
「Azure OpenAI Service」を導入する際に、データ活用の選定や、仕事適用のためのインテグレーション、チューニングを行う事ができます。それにより、ただChatGPTを使うのに比べ、より仕事に役立つ機能を体感できるでしょう。
パソナでは「Azure OpenAI Service導入支援」を行っております。ご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
ChatGPTはリスクを理解して活用すれば便利なツール
「ChatGPT」は、文章で質問を入力するだけで、チャット形式で回答を出力してくれる生成AIのサービスです。無料で使い始められ、さまざまな目的で活用できます。有料プランの「ChatGPT Plus」では最新の機能にアクセスできるほか、APIを利用すればオリジナルのサービスも構築可能です。プライベートな用途に便利なのはもちろん、アイデア次第では革新的な新規事業の開発にもつながるかもしれません。
一方、ChatGPTから得た情報は、そのまま用いると倫理上・権利上の問題を引き起こす恐れもあります。特に事業などに使う際には、十分な精査が必要です。リスクをふまえたうえで、適切な利用を心がけましょう。
パソナでは ChatGPTなどにも使われている、AIについての活用サービスをご提供しております。
AIに興味をお持ちでしたら、下記に詳細な資料がありますので、確認いただきお気軽にお問い合わせください。
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