はじめに
多くの企業が、競うようにAIの技術を取り入れはじめています。AIの導入は、これからのビジネスにおいて優位性を発揮するためのカギとなる可能性があるためです。
その一方で、まだ流れに乗り切れていない企業も少なくありません。「自社でも早々にAIを取り入れなければ競合に遅れをとってしまう」と、焦りを感じている方もいるでしょう。
そこで本記事ではさまざまな企業がAIに注目している理由や、AIを取り入れた開発の流れ、その際に社内で必要となるスキルなどについて説明していきます。
なぜ企業はAI(人工知能)に注目するのか
AIが注目される理由は、単に最先端のテクノロジーだからというだけではありません。まずはビジネスの観点から、なぜ今多くの企業がAIに注目し、導入を決断しているのかについて説明します。
保有データを活用してビジネスを進化させられる
AIは、既存のデータから何らかのパターンを発見できる技術です。この能力をビジネスに応用しようというのが、AIを導入する企業の狙いだといえます。端的にいえば、データを読み解いて得られた新たな知見から、従来の発想では乗り越えるのが難しかったビジネス課題に解決策を見出そうということです。
ここで、AIを活用するにはデータが必須だということがわかるでしょう。実際AIには、多様なデータから繰り返し「学習」させることで、用途に応じて鍛え上げていける性質があります。大量のデータを用意できる企業ほど、ニーズに合うAIを手に入れられる可能性が高いといえます。
そこで注目されているのが、いわゆるビッグデータとの組み合わせです。業務データや顧客情報、その他市場から収集したさまざまなデータがすでに社内に蓄積されているという企業は少なくないでしょう。そうしたデータを活用できる環境を整えさえすれば、AIの導入によってビジネスを進化させられる可能性が見えてきます。
競争上の優位を保つのに必要となる
AIを導入する企業の本質的な狙いは、より競争力のあるビジネスを確立することにあります。AIだからこそ可能になる既存事業の効率化や画期的な新サービスの開発によって、競合に勝てる状況を生み出そうということです。
ところが、多くの企業が当たり前のようにAIを利用しはじめたことで、AIに注目すべき理由はこれだけではなくなりました。AI導入を先送りにしている企業は競争力を高めるどころか、周囲の変化から取り残されてしまう恐れも出てきているのです。今やAIを導入しないことが一つのリスクだといえるでしょう。
AIは現在も急速に発展を続けている技術です。AIを取り入れた企業のビジネスも、速いスピードで進歩していくと予想されます。市場から閉め出されないようにするためにも、まだAIを活用しきれていない企業には早期の決断が求められています。
AI開発における4つのフェーズ
AIを導入する際には、AIを用いたシステム開発がどのような流れで行われるのかを把握しておくことも大切です。ここでは開発のフェーズを4つに分けて、それぞれについて説明していきます。
構想フェーズ:目的を決めて効果を見積もる
まずは、自社のビジネスにAIを導入する目的を明確に絞り込むことが求められます。どの課題を解決するために、どのようなAIが適しているのかを考えるということです。少なくとも現代の技術では、人間のように自由な思考をもつ万能型のAIを作ることはできません。そのため「これから開発するAIは何に特化したものか」を、あらかじめ決めておかなければならないのです。
具体的には、ビジネス課題の解決に求められる要件を洗い出す作業が必要になるでしょう。併せて、それらの要件の実現が、最終的に期待した効果をもたらす見込みがあるかどうかを判断します。開発に必要な体制や期間などからコストを見積もり、ROI(Return On Investment/投資利益率)を計算して定量的に評価するのがよいでしょう。
PoCフェーズ:実現可能か確認する
PoC(Proof of Concept/概念実証)とは、思い描いたコンセプトが実現可能なものだといえるか検証することです。ここでは、構想フェーズで決めた目的に沿って実際にAIを開発できるかどうかを確認します。
具体的には、ある程度の動作をするプロトタイプ(モックアップ)を作成してみる方法が考えられるでしょう。これにより本格的な開発に着手する前に、最後まで作りきれそうかどうかの手応えを得ておくことができます。AIに読み込ませるデータを十分に用意できるか、その結果として期待した振る舞いを得られそうかといった点についても、このフェーズで確認しておくとよいでしょう。
実装フェーズ:システムに組み込む
次は、AIを本格的に開発し、実際の業務で使えるようにするフェーズです。ここでの作業は「AIモデルの開発」と「システムの構築」に大きく分かれます。また、これら2種類の作業を受け持つエンジニアには、AIの専門性と一般的なシステム開発スキルの両方が求められます。
AIモデルは、データから学習済みのAIの本体のようなものだと考えればよいでしょう。「機械学習」と呼ばれる手法により大量のデータを適切に分析することで、実用的なAIモデルを実現していくのが一般的な流れです。
完成したAIモデルは、システムに組み込むことで利用可能になります。これは、構想フェーズで決定したAI導入の目的に沿って、要件を満たすシステムを構築するということです。
運用フェーズ:運用しながら改善していく
AIを組み込んだシステムが、最初のリリースから満足のいくものになるケースはそれほどありません。多くの場合は、実際に運用して得られた結果をもとに、さらなる学習でAIモデルの精度を高める必要があります。そのため、AI開発においては運用を開始してからの期間もフェーズの一つとして数えるのが一般的です。
このフェーズでは「PDCA」のサイクルを回し、よりニーズに合うシステムになるよう段階的な改善を施していきます。より安定してビジネスに貢献できるシステムとするためにも、改善を継続させることを重視するとよいでしょう。
AI開発プロセスはウォーターフォールかアジャイルか
AIの開発プロセスには、ウォーターフォールが採用される場合もあれば、アジャイルのほうが好まれることもあります。どちらのほうがAI開発に向いているかという点については、意見が分かれるところでしょう。
フェーズが明確で複雑な要件でもしっかりと計画を立てて進めていくことができるのがウォーターフォールの特徴です。そのため、4つのフェーズを通し、一貫して要件の達成を目指しながら開発が進んでいく点に着目すれば、ウォーターフォールが向いているといえます。また、変更が発生した場合のコストが高くなる可能性はあるものの、初めてのリリースでも一定の品質を安定して出すこともできます。
一方アジャイルの場合、仕様変更にも柔軟に対応でき、素早くリリースすることに長けています。そのため、リリース後も改善のサイクルが続くことを重視するなら、アジャイルのほうがフィットするでしょう。一方で、要件が複雑な場合や、一つのミスも許さないような開発をしたいのであれば、不向きともいえます。
例えば、前述のとおり、実装を「AIモデルの開発」「システムの構築」の2つに分けた場合、変更が多く発生する可能性の高い「AIモデルの開発」はアジャイルで行い、AIモデルから提供されたデータをもとに構築することが前提の「システムの構築」はウォーターフォールで行う、などが考えられます。
AIエンジニアに求められる知識・スキル
AIは最先端の技術のため、効果的に用いるには専門性の高い知識とスキルを備えたエンジニアが必要です。ここでは、AIエンジニアにどのようなスキルが求められるのかについて説明します。
数学や統計学の基礎知識
データに基づいて動作するというAIの基礎には、データサイエンスと共通する部分が少なくありません。そのため、AIエンジニアにはデータサイエンティストとしての素養が求められます。なかでも数学と統計学は、AIの仕組みを正しく理解し、適切な機械学習の手法を選択するために重要な知識です。
また、AIを用いて構築したシステムが、ビジネス課題をどの程度解決できたかを知りたい場面も出てくるでしょう。そのような場合にレポートをまとめる能力も、データサイエンティストと同様に求められる部分です。
AIの理論や手法の理解
AIは、さまざまな理論と手法に支えられている技術です。解決したい課題に対してより効果的にAIを適用するには、理論と手法についての幅広い知識と理解が欠かせません。
例えば「機械学習」を実施する際には「ディープラーニング」や、その基礎となる「ニューラルネットワーク」の理論に関する理解が求められます。その際に用いられる手法も多数あり「教師あり学習」と「教師なし学習」「強化学習」に大別されます。最終的により良く課題を解決できるAIを完成させるには「項目を分類したい」「これから起こることを予測したい」などの目的に応じて手法を使い分けられるかどうかが重要です。
フレームワークとデータを扱うスキル
AIモデルの構築には、プログラミングのスキルが必要です。よく使われるプログラミング言語は「Python」などの一般的なものが中心ですが「TensorFlow」や「PyTorch」といったAI独特のフレームワークを用いるため、一般的なシステム開発と比べると専門性の高いスキルだといえます。
また、AIに学習させるために大量のデータを扱うというのも、場合によっては特別なスキルを必要とする作業です。例えばビッグデータに蓄積されたデータを適切に操作するには、データエンジニアと共通する能力が求められるでしょう。
AIで競合優位性を確立するなら早期導入がカギ
AIは、これからのビジネスに革新をもたらす可能性のある技術です。企業が競争上の優位を確立するためには、早期にAIを導入できるかどうかがカギとなるでしょう。
ただし、AIは最先端の技術であるため、効果的に活用するには知識とノウハウが欠かせません。開発を担うエンジニアにも、専門的なスキルが求められます。競合に遅れをとらないためにもAI人材採用、社内人材の育成に着手するとともに、実績のある外部サービスの手を借りることも検討するのがよいでしょう。
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また、ビッグデータに蓄積されたデータを活かせる、新たなビジネスモデルを模索している企業も少なくないでしょう。その場合は「IoT/データ活用支援サービス」が最適です。要件定義からビジネスへの反映、運用までワンストップで対応いたします。
人材確保については「DX人材開発支援サービス」の活用もぜひご検討ください。
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