はじめに
少子高齢化が進み、労働人口減少にともなう人材不足や長時間労働などは、多くの企業が抱える課題となっています。業務改善による業務効率化は、健全な労働環境を構築するために欠かせない取り組みといえるでしょう。
しかし、業務改善の必要性を認識しつつも「どのような視点で業務改善に取り組めば良いのかわからない」という方も多いかもしれません。
この記事では、業務改善の必要性やメリットに触れつつ、業務改善が失敗する原因や、失敗しないために押さえるべきポイントについて解説します。
業務改善が必要な理由とは
まずは、業務改善とは具体的にどのようなものなのか、なぜ今業務改善が注目されているのかについて、理解を深めていきましょう。
そもそも「業務改善」とは何か
業務改善とは、業務のゴール(あるべき姿)と現状の差を埋めることです。
具体的には、業務におけるゴール(あるべき姿)と現状をそれぞれ明確化し、その差が発生している問題を洗い出します。さらに、その問題のなかで影響度が大きいものから原因を分析し、解決を行います。
業務改善の必要性
近年、業務改善が注目されているのは、多くの企業が「労働人口減少による人手不足」と「働き方改革による労働環境の見直し」を求められていることが理由として挙げられます。
少子高齢化が進み、多くの企業で労働力不足が深刻化しています。人手不足に対応するには、少ない労働力で成果を上げるための仕組みづくりが欠かせません。
また、働き方改革によって、社会全体にワークライフバランスの意識が普及しました。労働時間を適正化する必要があり、従来の「労働力不足は労働時間で補う」という考え方では、組織の維持が難しくなっている状況です。
業務改善では、従来の業務フローを見直し、潜在化している業務のムリ・ムダ・ムラを削減することで、これらの課題に対応します。業務効率化が進めば、労働時間を削減しながら、生産性を向上させることも可能となります。
業務改善を実施するメリット
業務改善にはさまざまなメリットがあります。ここでは「業務の効率化」「生産性の向上」「コストの削減」「労働環境の改善」「事業の安定性向上」に着目して解説します。
業務の効率化
業務改善では、これまで見えていなかった業務のムダをなくすことができます。ムダな作業がなくなることで、効率良く業務を遂行できるようになるのは大きなメリットといえるでしょう。
現場が既存業務に課題を感じていない場合でも、業務フローや各工程にムダやムラが生じていることは珍しくありません。業務改善の実施をきっかけとして新たな課題が見つかることもあるため、ゼロベースで業務を見直すことが大切です。
生産性の向上
業務効率が改善されることにより「重要度は高いものの、今までできなかった業務」も行えるようになります。同じ時間で多くの業務が行えるため、現在よりさらに組織全体の生産性が向上するでしょう。
ムダなコストの削減
業務改善により業務が効率化されれば、労働時間や社員数の適正化も可能です。その結果、残業代などの人件費削減、人材の採用や教育に関するコストの適正化も期待できるでしょう。
ただし、コストを見直すことは重要ですが、無計画にコストを削減するだけでは、サービスの品質低下につながるおそれがあります。コスト削減に取り組む際は、業務改善によってムダが生じている業務を明らかにしたうえで、コストの最適化を図ることが大切です。
労働環境の改善
業務改善は、健全な労働環境づくりを目指すためにも有効な手段です。
残業が多い職場環境を放置すると、従業員が定着せず、離職率が高くなるおそれがあります。その点業務フローが効率化されれば、ムダな業務にかかっていた時間が短縮でき、長時間労働の改善につながるでしょう。
業務改善のために、新しいITツールを導入するケースも多々あります。業務のデジタル化が進んで社外でも業務を遂行できるようになれば、テレワークや在宅勤務なども普及させやすくなります。
事業の安定性向上
また、業務の属人化の改善も期待できます。業務の属人化とは、特定の業務についての進捗状況や工程を、担当社員だけが理解している状態のことです。業務の属人化が生じていると、担当社員が異動や離職でいなくなった場合、その業務を遂行できなくなるリスクがあります。業務改善によって属人化している業務を明らかにし、その業務を標準化できれば、事業の安定性も向上させられるでしょう。
業務改善に失敗する原因とは
健全な企業経営を目指すうえで、業務改善は欠かせない取り組みです。しかし、業務改善に取り組んだものの、思うような成果が得られない場合や、業務改善が進まないケースも少なくありません。
業務改善に着手する際は、事前に失敗する原因について理解し、必要な対策を講じたうえで業務改善に取り組むことが重要です。
業務の可視化や課題の洗い出しができていない
業務改善に失敗する大きな理由は、業務の可視化や課題の抽出が不十分なまま、業務改善の取り組みを進めてしまうことが挙げられます。
業務改善に取り組む際は、業務におけるゴール(あるべき姿)と現状を明確化し、その差が発生している問題を洗い出します。そして、影響度の大きい問題から原因を分析し、解決していきます。そのため、各業務にかかる時間や工数がわからなければ、どの部分にムダな業務や非効率なフローが生じているかが見えません。
自社で行われている業務をすべて可視化するには、時間と手間がかかります。そのため、ITツールで自動化するなど、可視化の作業も効率化するとよいでしょう。
業務改善のゴールが明確になっていない
そもそも、なぜ業務改善を行い、どのようなゴールを目指すのかが把握できていなければ、改善の取り組み自体も曖昧なものになってしまいます。そのため、業務改善の計画を立てる際は、まず業務改善のゴールを明らかにすることが重要です。
業務改善のゴールは、できるだけ具体的かつ理解しやすい内容にしてください。定量的なゴールを設定しておけば、改善策を実施したあとの評価・分析もしやすいでしょう。
ITツール導入後のフォローができていない
新しいITツールを導入して、業務フローの改善に取り組むケースも多く存在します。これまで手作業で行っていた業務をITツールで自動化できれば、大幅な業務改善が期待できるでしょう。
しかし、導入したツールが現場で活用されず、定着しないという失敗も少なくありません。
ITツールによって将来的に業務効率が改善するといっても、ツールに慣れるまでは「業務負荷が増えた」と感じる社員もいるかもしれません。また、新しいツールの導入により業務フローも変わるため、少しでも不便さを感じた場合は、ツールを使用せずに従来のやり方で業務を遂行する可能性もあります。
現場に新たなITツールを導入する場合は、現場の社員に対して「業務改善が必要な理由」と「ツールを導入する目的」をしっかり説明し、理解と協力を得ることが重要です。
業務改善に失敗しないためのポイント
業務改善を成功させるには、具体的なゴールを設定し、自社の課題解決に適したツールを導入することが重要です。業務改善に失敗しないための3つのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
具体的なゴールを設定する
「業務改善によってどのような成果を得たいのか」というゴールを具体的に設定することで、取り組みに対する成果も明確になります。
業務改善の流れについて、各段階に応じたゴールを設定しておきましょう。「各ゴールを達成することで、最終的にどのような状態にしたいのか」を明確に定めておくことで、方針にブレが生じるのを防止できます。
また、複数の改善施策を同時に実施する場合は、それぞれの施策が矛盾していないかも検討することが重要です。
自社の課題解決に適したITツールを導入する
ITツールを導入する際は「自社の課題を解決するために必要な機能が備わっているか」「誰にとっても使いやすいものか」という点をよく確認する必要があります。
また、ITツールを使用する従業員全員が、同じレベルでツールを使いこなせることも大切です。使用スキルに差があると、業務改善の成果が十分に得られない可能性があります。事前に研修を実施するなど、ツールをスムーズに導入・運用するための対策を講じることも検討しましょう。
多種多様なITツールが存在しており、初期費用やランニングコストが高額になる場合もあります。導入ツールの選定では、予算と効果が見合っているか、導入後のサポートが充実しているかも確認してください。
社内のコミュニケーションを活性化させる
業務改善では、部署間の連携が必要な場合や、複数の部署に施策の影響が生じる場合もあります。業務改善の効果を評価・分析する際は、特定の部署だけでなく「組織全体で見たときに改善の成果が出ているか」という俯瞰してとらえる視点を持つことが重要です。
「改善の効果が感じられるか」「施策で見直すべき点はないか」など、社内の声を広く拾うことで新たな課題が見つかることもあります。現場のリアルな声をより反映できるよう、社内のコミュニケーションを活性化させることも大切です。
まとめ
業務改善は、企業や組織にとって欠かせない取り組みです。
ムダな業務や非効率な業務フローを改善できれば、業務効率化によって生産性が向上し、より良い職場環境の構築にも役立ちます。業務からムダがなくなることで、業務時間が短縮でき、労働時間や各種コストの適正化も期待できるでしょう。
業務改善の効果を高めるために、ITツールを導入することも多々あります。ITツールを選ぶ際は、自社の課題を解決するために必要な機能を備えているか、費用に対して十分な効果が期待できるかを十分に検討してください。
ITツールの導入では「現場の社員がツールを使いこなせない」「IT人材が不足しており社内のフォロー体制が不十分」など新たな課題が生じる可能性があります。業務改善を継続的に実施するためにも、社内のIT人材育成は非常に重要です。
パソナでは、IT人材の育成や、お客様の課題解決に適したITツールの選定・導入サポートなど、業務改善に役立つサービスを提供しています。自社の業務改善を検討している方や、人材育成に悩んでいる方は、以下の問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
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