はじめに
近年IT技術を活用し、業務効率化や生産性の向上に取り組む企業が増えています。クラウドサービスを導入する企業も増加傾向にあり、総務省の調査では約7割の企業が「クラウドサービスを一部でも利用している」と回答している状況です。
さらにテレワークやフレックスタイム制など、ライフスタイルに合わせた働き方が当たり前となった昨今、柔軟性と多様性を兼ね備えた企業経営が求められており、クラウド化はそのための有効な手段の一つといえるでしょう。
この記事では、社内システムをクラウド化する必要性やメリット、クラウド化を進める際のポイントについて解説します。
「クラウド化」とは
クラウドに対して、漠然としたイメージを抱いている方も多いのではないでしょうか。まずは「そもそもクラウドとはどのようなものか」について、説明します。
クラウドとはネットワークを介してコンピューター機能を利用する仕組み
クラウドとは「インターネットなどのネットワーク経由でコンピューター機能を提供または利用する仕組み」のことです。
従来は、特定の機能を使いたい場合、ソフトウェアやハードウェアを購入し、インストールしていました。
一方クラウドでは、ネットワークを介して必要な機能を利用できます。このように、デバイスにソフトウェアをインストールせずに、オンライン上で利用しデータのやり取りが可能となるのがクラウドの特徴です。
クラウド化とは既存システムをクラウドサービスに移行すること
「クラウド化」とは、自社に設置している既存サーバーやソフトウェアを、クラウドサービスを利用する方式に移行することです。
クラウドサービスの導入により、いつでも・どこでもデータにアクセスできるようになります。場所に縛られずアクセスができることで、働き方の多様性につながるでしょう。
また、クラウド化にはシステム管理の利便性だけでなく、コスト削減というメリットもあります。自社サーバーを設置する場合は、設置場所の確保や、サーバーの維持・管理に手間がかかります。それに対し、クラウドサービスの管理や保守はサービス提供事業者が担当するため、社内の業務負荷軽減やコスト削減につながるのです。
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クラウド化は多様な働き方の実現・BCP対策に有効な手法
クラウド化は、利便性の向上に加え、事業の継続性向上にも有効な手法です。クラウド化が必要とされる理由について、具体的に見ていきましょう。
多様化した働き方に対応できる
クラウド化が求められる理由の一つは、テレワークや在宅勤務といった働き方の多様化が挙げられます。
テレワークの普及に伴い、セキュリティ対策の強化が求められている昨今、テレワーク環境におけるセキュリティは、ネットワークの安全性の確保から、データの暗号化、アクセス制御の厳格化まで多岐にわたります。テレワーク時のセキュリティ対策においては、ゼロトラストセキュリティの導入を検討する場合があります。ゼロトラストは、全てのアクセスを常に検証することで、内部からの脅威に対する防御を強化します。
また、セキュリティ対策としては多要素認証(MFA)の活用も欠かせません。MFAを利用することで、パスワードの漏洩を防ぎ、より強固な認証システムを構築することが可能になります。
加えて、従業員へのセキュリティ教育も欠かせません。最新の脅威情報を共有し、フィッシング詐欺などの手口について理解を深めることで、組織全体のセキュリティ意識を高めることができます。
これらの対策を組み合わせることで、テレワーク時のセキュリティをより強固なものにすることができ、多様化する働き方においても安心して業務を行うことが可能になります。
BCP対策になる
クラウド化はBCP対策としても有効です。
BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、企業が緊急事態に遭遇した場合に、事業資産への損害を最小限に抑え、事業の継続・早期復旧を可能とする方法を取り決めておくことです。つまり、BCP対策とは「緊急時に中核事業や優先事業を迅速に再開するための対策」を意味しています。
企業が備えるべき緊急事態とは、自然災害・大火災・テロ攻撃など、さまざまなものが挙げられます。近年、日本では地震や洪水などの自然災害が頻発しています。いずれも災害の規模によっては事業存続が危ぶまれる可能性があり、事前に対策を講じておくことは非常に重要です。
クラウドサービスを導入すれば、サーバーや自社データは遠隔地で管理されることになります。そのため、災害時にオフィス自体が物理的なダメージを受けても、重要なデータを損なうリスクは回避できるでしょう。
インターネット環境が整っていれば場所を問わず業務遂行できるため、有事でもスムーズな事業復旧が期待できるのです。
クラウド化する4つのメリット
社内システムのクラウド化には、コスト削減や業務効率化といったメリットが存在します。クラウド化のメリットについて、具体的に紹介します。
導入コストを抑えやすい
クラウドサービスは、オンプレミスと比べて導入コストが抑えやすいメリットがあります。
社内にサーバーや周辺機器の設置が不要なため、設備機器の購入費用がかかりません。そのため、初期費用や管理コストの削減に有効です。クラウドサービスの利用プランは、従量課金制が一般的です。利用量は企業規模に合わせられるため、コストの最適化に役立ちます。
運用・管理の負担を軽減できる
クラウドシステムの運用・保守は、おもにサービス提供事業者が担当します。オンプレミスのサーバーやシステムの利用には、これらの維持・管理をする人材が社内に必要です。
それに対し、クラウドサービスはシステムのアップデートやデータ管理などはサービス提供事業者に任せられます。どの程度ユーザーの管理が必要かはサービスによって異なりますが、自社内で管理業務を担うよりも業務負荷を大幅に減らすことが可能です。
いつ・どこからでもアクセスできる
クラウドサービスの導入は、働き方改革の推進にも役立ちます。
クラウドは、インターネット環境さえ整っていれば、いつでも・どこからでも利用できます。自社オフィスで働く社員はもちろん、在宅の社員でもリアルタイムでデータを確認・編集でき、共同作業やデータ共有も可能です。
リモートワークや在宅勤務がなかなか進まないと感じている場合は、クラウドサービスの導入でこれらの課題が解決するかもしれません。
情報セキュリティの安全性が高い
クラウドサービスの導入を検討する際、セキュリティ面が課題となることは少なくありません。クラウド化では、インターネット上にデータ保管するため、サイバー攻撃の被害に遭いやすいイメージを抱く方も多くいるでしょう。
しかし、クラウドサービスの多くでは、強固なセキュリティが構築されています。サイバー攻撃は日々進化しており、セキュリティ対策も常に見直していく必要があります。クラウドサービスは、重要なデータを守るため、サービス提供事業者によって高いセキュリティレベルが確保されているのです。
社内に専任スタッフを置かずに、高いセキュリティレベルを維持できる点は、クラウド化の大きな魅力の一つといえるでしょう。
管理部門におけるメリットと活用のポイントを解説した記事もぜひご一読ください。
クラウド化の3つの種類
クラウドサービスは、提供するサービスの種類によって「SaaS」「PaaS」「IaaS」の3種類に分けられます。クラウド化を進める際は、自社にとってどのサービスが必要かを理解しておくことが重要です。クラウド化の種類について、詳しく見ていきましょう。
SaaS(Software as a Service)
SaaS(読み方:サース、サーズ)は、インターネットを介して「アプリケーション」を提供するクラウドサービスです。SaaSを導入すると、「ソフトウェア」をクラウド化できます。
従来は、パソコンやサーバーにソフトウェアをインストールして利用するのが一般的でしたが、SaaSの活用で、インターネットを通じてソフトウェアをブラウザから利用できるようになります。オフィスソフト、Webメール、オンラインストレージなどが代表的なSaaSの例です。
単にクラウドサービスと表現する場合は、SaaSを指すことが一般的です。アプリケーション単位でクラウド化できるため、クラウドサービスのなかでも導入しやすい種類といえるでしょう。
PaaS(Platform as a Service)
PaaS(読み方:パース、パーズ)は、インターネットを介して「開発プラットフォーム」を提供するクラウドサービスです。PaaSの導入で、ハードウェアやOSなどのアプリケーションを作動させる仕組みである「開発環境」をクラウド化できます。
PaaSをクラウド化するメリットは、開発環境を構築する手間がかからなくなる点です。また、開発日数やコストが抑えられることで、経費や業務負荷の削減にもつながります。
代表的なPaaSには、Amazonの「AWS」、マイクロソフトの「Microsoft Azure」などがあります。
IaaS(Infrastructure as a Service)
IaaS(読み方:アイアース、イアース)は、ネットワークやサーバーなどの「ITインフラ」を提供するクラウドサービスです。IaaSを導入することで「社内のITインフラ」をクラウド化できます。
ITインフラとは、サーバーやネットワークといったITシステムの基盤として整備するものを指します。IaaSの導入で、インターネット上にITインフラの構築が可能になります。サーバーの選定やメモリ容量などの自由度が向上し、自社に合ったITインフラを比較的容易に構築できることがメリットです。
IaaSの代表的なクラウドサービスには、Amazonの「AWS」、マイクロソフトの「Microsoft Azure」などが挙げられます。
クラウド化を実現するためのステップ
クラウド化を実現するためには、計画的なステップを踏むことが重要です。
クラウド化する目的を明確にする
クラウド化する目的を明確にし、目的に合ったサービスを導入することが大切です。クラウド化する目的は企業によってさまざまです。例えば、業務効率の向上、ITシステムの維持・管理の負担軽減、コスト削減などがクラウド化の目的として挙げられます。
クラウドサービスには、複数の種類があります。目的が曖昧なままでは、目的と機能があっていないクラウドサービスを導入してしまう可能性があります。そのような場合は、クラウド化しても思うような成果が得られないでしょう。
「なぜクラウド化するのか」を明らかにすることは、自社に適したサービスを選ぶうえで非常に重要です。
オンプレミスからクラウドへの移行については、別の記事『オンプレミスからクラウドへ切り替えるメリットとその方法』も併せてご覧ください。
必要なクラウドサービスの選定
クラウドサービスの選定においては、企業の業務内容や組織体制に応じた適切な選択が重要です。まず、SaaS、PaaS、IaaSの違いを理解して、自社のニーズに最適なクラウドサービスを選ぶ必要があります。例えば、特定の業務アプリケーションをすぐに利用したい場合はSaaSが適していますが、カスタマイズ性や開発環境が必要な場合はPaaSやIaaSが選ばれることがあります。
セキュリティと運用コストについては、クラウドサービスの選択時に重要な比較要素となります。たとえば、クラウドプロバイダーのセキュリティ対策がどの程度のレベルにあるのか、またその管理がどのように分担されるのかを確認することが重要です。また、隠れたコストや契約条件に関しても、長期的な視点での検討が求められます。
最終的に、選定するクラウドサービスが自社のITリソースとどのように統合されるのか、既存のシステムとの連携がどの程度可能かを検証することが重要です。サービスの切り替えや運用開始時の手続きにも注意を払い、スムーズな移行を目指すための準備を入念に行うことが成功の鍵となります。
運用体制の整備
運用体制の整備として重要なのは、まずクラウドサービスの選択肢を正しく評価することです。基幹システムをクラウド化する際には、SaaS、PaaS、IaaSといったサービスモデルを検討し、自社のニーズに最適な選定を行う必要があります。次に、クラウド環境での運用体制を整えるためには、適切なセキュリティ対策を講じることが不可欠です。特に、データの暗号化やアクセス制御、監視体制の強化が求められます。また、運用に関わるスタッフの専門知識が重要となるため、クラウド技術に精通した人材の育成や教育制度の充実も必要です。システム移行後には、運用プロセスの見直しとともに、ITリソースの効率的な管理が鍵となります。クラウドサービスのメリットを最大限に活用し、スケーラビリティやコスト削減を実現するためには、定期的な評価や改善が不可欠であり、プロアクティブな運用体制が求められます。
サポート体制の注意点3つ
クラウドサービスは、提供事業者によってサービス内容や料金プランが異なります。複数のサービスを比較・検討したうえで、サポート体制が整っているかもしっかり確認しましょう。
クラウドサービスのなかには、クラウドの導入時や運用中のサポートに力を入れているサービスもあります。具体的には、以下の3点について確認しておくとよいでしょう。
● クラウドの導入やシステム構築が依頼できるかどうか
● 24時間体制でトラブル対応が可能かどうか
● 問い合わせ手段が豊富かどうか
クラウドサービス利用中にトラブルが発生した場合、迅速なサポートがなければ業務がストップしてしまう可能性もあります。導入時のサポートに加え、運用中にどのようなサポートが受けられるのかを導入前によく確認する必要があります。
クラウド化におけるシステム連携のポイント
クラウド化におけるシステム連携のポイントとして、現存するシステムとの相互運用性を検討することが重要です。システムの互換性を確保し、運用負担を軽減するためには、クラウドサービスの選定を慎重に行う必要があります。マルチクラウド戦略も視野に入れつつ、各サービスの特徴を理解し、自社のニーズに最も適したソリューションを選ぶことが成功の鍵です。こうした取り組みを通じて、クラウド化による業務の最適化と効率化を図ることが可能となります。
既存システムとの連携メリットと注意点
既存システムとの連携は、クラウド化において特に重要な要素となります。メリットとして挙げられるのは、複数のシステム間のデータ共有が容易になり、これまでの業務プロセスが効率化されることです。既存のシステムを単独で運用するのではなく、クラウドサービスを介して統合することで、データの一貫性が保たれ、情報の可視化が向上します。これにより、リアルタイムでの意思決定が可能となり、ビジネスの俊敏性が向上するでしょう。
しかし、注意点も存在します。一貫した運用体制を確立するためには、既存システムとクラウドサービス間のインターフェースを正確に設計する必要があります。互換性の問題は、システムの稼働に影響を及ぼす可能性があるため、事前の技術的な検証が不可欠です。また、セキュリティの観点からも、システム連携時にはデータ保護に対する強固な対策を講じる必要があります。特に、データの移行や保存に際しては、暗号化などのセキュリティ手法を適用し、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることが重要です。
さらに、クラウドサービスに依存しすぎると、特定のベンダーに依存してしまい、他社への移行が困難な状態であるベンダーロックインのリスクが高まります。解決策として、複数のクラウドサービスを活用し、柔軟に運用することが推奨されます。この方法により、サービスの停止や障害が発生した際にも、迅速に代替手段を講じることが可能です。以上の点を考慮し、既存システムの連携を進めることで、効率的かつ安全なクラウド化を実現できます。
まとめ
社内システムをクラウド化することで、テレワークや在宅勤務といった多様な働き方へ柔軟に対応できる職場環境の構築が可能となります。また、クラウド化は頻発する地震や洪水などの自然災害への備えとしても有効です。
クラウドサービスの登場当初は、セキュリティ面が問題視されていましたが、現在では多くのサービスが強固なセキュリティレベルを確保しています。そのため、「企業情報の安全性を確保するため」にクラウド化を選ぶ企業も多いのではないでしょうか。
しかし、さまざまなクラウドサービスのなかで、最適なクラウドの選び方やどこまでをクラウド化すべきかの判断は難しいものです。
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