はじめに
昨今、あらゆる最新技術が世の中で活用されています。そのなかで昨年「ChatGPT」がリリースされ、たくさんの方に注目されています。今回のコラムでは「ChatGPT」の機能やその有効性、ビジネスへの活用方法や人との共存について解説します。
ChatGPTとは
2022年11月に人工知能研究所であるOpenAIが「ChatGPT」というチャットボットを公開しました。AIが日々大量のデータを学習し、まるで人間が発話しているような自然なやり取りを実現させた検索型のチャットボットモデルです。
ChatGPTで活用されているAI技術「GPT」は文章の自動作成やオンラインゲームのなかでの会話を生成する特徴を持っています。このGPTは、インターネット上にある膨大なテキストデータを学習することができ、複雑な文章の表現などを理解したうえで、適切な回答をすることができます。
ChatGPTは、これまで流通しているチャットボットと比べると高性能な対話を可能とし、関心を集めています。リリース後、わずか2カ月ほどで1億人のユーザー数が確認できているそうで、史上最速に成長しているアプリと言われています。他のサービスと比較すると、1億人のユーザー数が確認できるまでに、TikTokでは9カ月、Instagramは2年半、Facebookは4年半の時間がかかっているようです。
ChatGPTが対応できることとできないこと
ChatGPTは、従来のAIのイメージを覆すほど高性能であり、自らの状況を察知して、試行錯誤をし、最善策を講じるという学習を繰り返しています。
これまでインターネット検索はGoogle一強とも考えられていましたが、 ChatGPTのリリース後、インターネット検索の概念を一変させる可能性があるため、Google社が不安視しているという話を耳にした方もいるのではないでしょうか。
実際にGoogle社においても2023年2月に「Bard」という新たな対話型AIを試験公開する旨を発表しました。それほどChatGPTの影響力は強く、かつ、今後私たちの生活に浸透していくことが容易に予想できます。では、具体的にChatGPTで何を実現することができるのでしょうか。
ChatGPTが対応できること
・人間と対話しているような検索結果の回答(前後の対話の理解)
・さまざまな画像・音声の認識及び解析
・関数やプログラミング言語の記述
・簡単な文章だけでなく、小説なども作成
・文章の要約・翻訳、文法の確認
・機械学習やディープラーニング技術の応用
現在、ChatGPTによって少なくとも上記が実現できると言われています。今まで人が時間をかけていた作業を短縮することができるのです。
では一方で、現時点で対応が難しいとされていることは何でしょうか。
ChatGPTで対応が難しいこと
・デタラメな回答が返ってくる可能性があり、正確性に欠ける
・対応できる質問事項に限りがある
・複雑な問題に対応できない
ChatGPTは高性能ではありますが、日々学習しているため必ず正しい回答が返ってくるという保証はありません。また、AIが理解できる文章の量には限りがあります。そのため、現在は短い問いかけに適していると言えます。
イレギュラーな質問事項や、発生した問題に対しての回答もまだ難しい状況です。
ただ、日々精度が上がっているため、昨日デタラメな回答が返ってきていたとしても、後日同じ質問をしたら文面の精度が上がっているなどということは往々にしてあり得ます。
ビジネスにおけるChatGPTの活用シーン
昨年リリースしたChatGPTですが、既にビジネスにおいて有効であると感じている方は多く、API連携を開始した企業が増えています。どのようなビジネスシーンで活用されているのかご紹介します。
クラウドソーシングサービス企業
クラウドソーシングサービス企業は「エンジニアやデザイナーなどの個人事業主として活躍したい」と考える方向けに、自身のスキルや職歴・悩みごとをChatGPTでサポートできるようにAPI連携を開始しました。
個人事業主を目指す方が見栄えの良いプロフィールを作成するために、アシストしてくれる機能をChatGPTによって実現しました。この機能は、スキル・職歴などを箇条書きにするだけで自動的にプロフィール案を提案してくれるとのことです。
ビジネスデザイン企業
ビジネスデザイン企業では、お客さまの問い合わせ窓口としてLINEのチャットボットを活用していましたが、さらに性能を上げるべく、ChatGPTとの連携を開始しました。これまでお客さまから補助金に関するさまざまな問い合わせがありましたが、チャットボットだけでは限界があり、人間が確認しなければならない書類の記述や提出期限のチェックなど細かな業務が発生していました。
そこで、この業務を自動化できる仕組みを作りました。ChatGPTを活用することで、書類の書き方のレクチャーや提出期限のリマインド連絡ができ、スムーズな申請を促すことができるようになったとのことです。
業務自動化プラットフォーム開発企業
既存のSaaSとの連携をよりスムーズにするために、業務自動化プラットフォーム開発企業ではChatGPTとAPI連携をして、業務の自動化の幅を広げています。
すでに「メールから必要なテキスト(企業情報など)の抽出」「ユーザーからの口コミのラベリング」「商品説明の作成」「議事録の要約」などの業務に活用することを予定しています。
英語学習アプリ運営企業
英語学習アプリ運営企業では、ChatGPTを活用し、各種シチュエーションを想定したスピーキングアプリを開発しました。
このスピーキングアプリはChatGPTによって人間らしい対話を可能にしています。
学習者が発話したことに対して音声で回答をしてくれるため、これまでよりスピーキングの機会を10倍以上増やすことができたとのことです。
その結果「読み・書き」だけでなく「話す」ことで、学習者のスキルアップにもつながっています。
ChatGPTは人の仕事を奪うのか
10年前にはここまでAI技術が発展するとは考えられていませんでしたが、今や当たりまえのように、コンピュータと人が共存する時代となりました。なかでもChatGPTは、とても便利で身近で活用しやすく、さまざまなシーンでの活用が期待されていますが「今、人が行っている業務を取られるかもしれない」という不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
「ChatGPTは人が行う業務を人以上に、正確に早く行える」という考察結果まで出ているほどです。人が行っている業務が奪われる可能性はないとは言い切れません。少しでもその可能性があるのであれば、人が行うべき業務をきちんと見出してAI技術と共存していくやり方を考えていく必要があるでしょう。
AIはAI自身が一人歩きするものではなく、あくまで、人の仕事や活動を豊かにするために利用していくべきものです。例えば、文章作成を苦手とする方がChatGPTを用いて文章を作成すれば、今まで以上に質の良い文章を書くことができるでしょう。また、細かなプログラミング修正に時間がかかってしまっていた方もChatGPTを活用することで業務負担を軽減することができます。
ChatGPTを活用することで既存業務以外のことに取り組む時間が増えれば、従来のサービスや業務をより良い状態にしたり、業務効率化を推進させたりすることができる可能性が高くなります。企業の事業拡大に向けて、社員も新たな業務に挑戦することができるようになるのではないでしょうか。
また、前述の通り、ChatGPTは複雑な問題には対応することはできません。デタラメな回答をされる可能性も大いにあり得ます。そのため全てをChatGPTに頼らず、最終確認は人が行っていく必要があります。ChatGPTとうまく共存していくためには、自らがChatGPTを使えるようになっていくべきでしょう。
まとめ
今回は最新技術である「ChatGPT」について紹介しました。ChatGPTが今後の生活に影響を与えることになるのは明らかです。
ChatGPTによって、簡単なチャットボット程度に留まっていたAI技術への印象はがらりと変わり、あらゆる企業が改めてAI技術の重要性やその性能について、再度確認し出しています。
ビジネスにおけるAI技術の活用方法の可能性は無限大です。目まぐるしい情報社会で企業が生き残るために、改めてAI技術をビジネスで活用することを検討してみてはいかがでしょうか。