はじめに
「新規事業開発担当になったが、何から始めたら良いか?」といったご相談をよくいただくようになりました。そもそも新規事業とはどのようなもので、どう進めれば良いのか分からない方も多くいらっしゃると思います。
今後急速に変化していくビジネス社会で企業が生き残っていくためには、新規事業開発がとても重要であることは、皆さまもご存じかと思います。
今回のコラムでは、新規事業開発においてどのような点が企業で課題になっているのか、それを解決する方法は何か、についてご紹介をさせていただきます。
ぜひ参考にご覧いただけますと幸いです。
新規事業開発でつまずくポイント
新規事業開発の課題
新規事業開発を推進する企業ではどのような課題が発生しているのでしょうか。他社の課題を事前に把握しておくことで、対処できる内容もありますので、ぜひ参考にしてください。
『企業の新規事業開発における組織・人材要因に関する調査』(パーソル総合研究所 シンクタンク本部)を参考に新規事業開発の課題を紹介します。
新規事業開発担当者が感じている組織マネジメントの課題として最も多く回答されていたものは「担い手となる人材の確保」(38.9%)、「知識・ノウハウ不足」(38.6%)がともに4割近くの数字となりました。次いで「意思決定の遅さ」と「評価制度の不適合」が約3割となり、課題感が強いことが分かります。一方で「経営層の関与」や「社外との連携」、「担当者の士気」に対する課題感は弱いことが判明しました。
新規事業開発担当者が感じている組織マネジメントの課題
この課題のなかで特に注目すべきが「意思決定の遅さ」です。新規事業開発担当者がなぜこのスピード感を課題と感じているかというと、既存事業と新規事業に必要なスピードに違いがあることが挙げられます。
既存事業は、これまでの知見を活かしどのような投資がどのような効果となるのか目途を立てることができます。そのため、意思決定に対して適切な投資をすれば効果が見えるものが多いと思います。
しかし、新規事業は“そもそも事業として成り立つのか”をPDCAを回しながら検証していく必要があり、意思決定のスピードも上げなければなりません。こうした進め方の違いが「意思決定の遅さ」という課題を生み出してしまっています。
また、新規事業開発の成功度を見ると「非常に成功している・どちらかと言うと成功している」との回答が32.9%であったのに対し「全く成功に至っていない・あまり成功に至っていない」の回答は36.4%と若干高い数字でした。このように成功している企業が少ない状況のなかで、スピード感を持って新規事業開発を進めていくためには、アジャイル開発の考え方が大変重要になります。
アジャイル(Agile)とは、そのまま直訳すると「素早い」「頭の回転が速い」という意味です。
アジャイル開発とは、プロジェクト開発手法のひとつで、小単位で実装とテストを繰り返していく手法のことです。
新規事業開発は仮説の検証も多く、自然と失敗の数も増えてしまうと思います。
最小限で仮説検証可能なアジャイル開発の考え方を念頭におき、スピード感を持って仮説検証を繰り返し行うことで、成功へつながる可能性を広げていくことができます。
新規事業開発の成功度
新規事業開発で活かせるローコード開発
高速検証ができるローコード開発
ここまでは、いかにスピード感を持って新規事業開発を進めていくことが重要かについて述べました。
スピード重視で進めていくために効果的なものが「ローコード開発」です。すでにご存じの方も多いかと思いますが、ローコード開発 (Low code development) とは、プログラミング作業を減らし、マウス操作などで用意された部品を組み合わせてアプリケーションやシステムを開発する手法です。
これまでやっていたITベンダーに委託をして開発する形態と比較して、ユーザー自身が開発をするためコスト削減を実現できます。日常業務を気軽にアプリケーション化することで、生産性の向上にもつながります。
何より、アジャイルで高速に検証/開発を進めることができる点がメリットとして挙げられます。ローコード開発を活用することでスクラッチ開発(ソフトウェアやシステムをゼロの状態から作り出す開発手法)より格段に早くシステムプロトタイプ(システムの試作機)を構築することができます。
用意されたパーツを画面上で組み合わせるだけで最適なコードが自動で生成されるため、1からコードを自分で考える必要がなくなります。コードを1から作る場合、システム開発に要する時間は短くても数カ月~1年くらいと言われています。 ローコード開発は1から考える必要がないため、工数を減らして開発時間を大幅に短縮することが可能になるのです。
特に「大規模でないシステム開発」や「新規事業開発に向けたテストの開発」で活用できると良いと思います。
また、システム開発のハードルが下がるため、社内での開発体制を整えることも可能になります。現場のニーズに寄り添い、すばやくソフトウェアを内製で開発することもローコード開発なら可能です。
IT人材が不足している現在、誰でもスピード感を持って高速な検証ができるのは企業にとって大きなメリットです。
新規事業開発において新規事業開発担当者が課題に感じている「意思決定の遅さ」もローコード開発の活用によって解消できるでしょう。
おすすめのローコード開発ツール
Microsoft Power Apps
Windowsでおなじみ、Microsoft社が展開するローコード開発ツールです。
「Microsoft Power Apps」はさまざまなアプリケーションを開発できることに加え、Microsoft社が提供する多数のクラウドサービスと連携させることも可能です。その連携によって、より高度な拡張ができる点がメリットとして挙げられます。
おすすめポイント
・PowerPointやExcelの利用経験がある場合、直観的に操作ができる
・テンプレートが多数あるため、ドラッグ&ドロップで簡単に操作ができ、スピーディな開発が可能
・Power BIやPower Automateなどの他のシステム開発ツールや、多くの人が使い慣れているSharePointやExcelとも連携できるため、作れるものの範囲が広がる
活用例
部署内やグループ会社とのやり取りや承認フロー 対外的なやり取りをアプリ化
部署内やグループ会社とのやり取りをメールで行っていて、情報が整理できないままになっているケースをよく伺います。
Power Appsで承認フローをアプリ化できれば、情報も整理できますし、現場のスタッフ自身が容易にできるため、これまでIT部門もしくは協力会社に外注した場合に発生する「待つ日数」を大きく削減することができます。
作成したアプリとMicrosoft Teamsを連携
Power Appsの活用を検討しているほとんどの企業は、Microsoft Teamsを導入されていることが多いです。
Power AppsはTeamsとの連携が可能なので、作成したアプリをTeams上でシームレスにご利用いただけます。
また、アプリ上でアクションがあったタイミングでTeamsの通知をする、なども自由に設定することができます。
kintone
サイボウズ株式会社が提供しているローコード開発ツールです。
日本製のローコード開発ツールで、導入実績は2万社以上と人気の高いサービスです。
近年では、自治体が活用していたり、コロナ禍対応のためのシステム開発にも活用されています。
IT部門や開発担当者ではなく“現場の担当者が開発できるツール”というところにこだわりを持っていて、知識やスキルがなくても簡単にできる点で他社より評価を得ています。
おすすめポイント
・他ローコード開発ツールに比べてSNS機能が充実している
・リッチテキストやチェックボックスなどのパーツが複数用意されていて、組み合わせて簡単にアプリケーションを開発することができる
・タスク管理や勤怠などの日常業務のデジタル化に役立つアプリケーションを開発できる
活用例
BtoB(BtoBtoC)のビジネスに関わる企業全般、幅広い業種・業態で利用可能なツールです。
新規事業開発を推進していくためには、裏側(社内)の整理や進捗共有が必須になります。活用シーンに合わせた機能を内包したアプリを組み合わせ、生産性アップに寄与できます。
まとめ
ITがビジネスを左右する時代の象徴と言える技術「ローコード開発」、実は国内企業の37.7%がローコード開発もしくはノーコード開発の基盤を導入済みという調査データがあります。2023年は新規事業開発の6割がローコード開発・ノーコード開発が占めると予測もされていて、その注目度がよくわかります。
今後新規事業開発を進めていくにあたって「担い手となる人材の確保」や「知識・ノウハウ不足」、他社との厳しい戦いに勝つための「スピード感」は今後も課題になり得ると思います。ローコード開発ツールを活用して、まずは「大規模でないシステム開発」や「新規事業開発に向けたテストの開発」、身近な業務効率化で試してみてはいかがでしょうか?
ぜひ前向きに検討を進めていただければ幸いです。