はじめに
自社で運用しているアプリの保守費用について、「本当にこの金額が適正なのだろうか?」と疑問を感じることはありませんか。多くの企業が同様の悩みを抱えており、アプリの成長に伴い保守コストが想定以上に膨らむケースも珍しくありません。アプリの維持費は一般的に、開発費用の年間約15%が目安とされていますが、この数値が実態と大きく乖離していると感じる担当者もいるのではないでしょうか。
今回は、多くの企業が頭を悩ませる「自社アプリの保守費用」について、その最適化に焦点を当てた完全ガイドをお届けします。
本記事では、保守費用の相場から、コスト削減を実現するための具体的な方法、そして内製化を成功させる秘訣まで、詳しく解説していきます。ぜひ最後までお読みいただき、貴社のアプリ運用にお役立てください。
まずはおさらい|アプリ保守と運用の違いとそれぞれの役割
アプリを継続的に稼働させ、その価値を最大化していく上で、「保守」と「運用」はどちらも欠かせない活動です。しかし、これら二つの用語はしばしば混同されがちであり、それぞれが担う役割と目的は明確に異なります。
保守は リリース後に発見された不具合の修正など、アプリを正常に保つための技術的対応を指し、OSアップデートへの対応、機能改善、バグ修正などが主な業務です。一方運用 は、システムが安定稼働している状態を保つためのサポートを指し、データのバックアップやシステム監視といった日常的な管理活動を含みます。
以下に、アプリの運用と保守の主な違いをまとめます。
アプリの運用と保守の違い
| 保守 | 運用 | |
| 目的 | アプリを正常に保つための技術的対応 | システムの安定稼働を維持するためのサポート |
| 主な業務 | 不具合修正、OSアップデート対応、機能改善など | データバックアップ、システム監視などの日常的な管理活動 |
これらの定義と具体的な業務内容を正しく理解することは、アプリのコスト構造を把握し、費用を最適化するための重要な第一歩となるでしょう。
保守業務:システムの安定稼働を支える技術的メンテナンス
システムの「保守」とは、システムが予期せず停止したり、不具合が発生したりしないよう、安定稼働を維持するため、継続的に技術的なメンテナンスを行う活動です。開発されたシステムを常に最適な状態に保ち、利用者が快適に利用できる環境を維持することを目的としています。
保守業務の具体的な内容は多岐にわたりますが、主に以下の活動が含まれます。
•障害発生時の原因究明と迅速な復旧作業: 突発的なシステムエラーやインシデントの原因を特定し、緊急の対応を行うことで、システムのダウンタイムを最小限に抑えます。
•プログラム内の不具合(バグ)の発見と修正(バグフィックス): システムの安定性を確保するため、プログラムコード内の不具合を見つけ出し、修正します。
•OSやライブラリ、ミドルウェアの更新に伴うプログラム改修: 新しい環境への適応を促し、システムの陳腐化を防ぐために、必要なプログラムの変更を行います。
•セキュリティ脆弱性への対応: 新たなセキュリティ上の弱点に対応するため、セキュリティパッチの適用などを実施します。
•パフォーマンスの監視と改善: システムの動作状況を継続的に監視し、必要に応じて改善を行うことで、快適な利用環境を維持します。
運用業務:アプリの価値を最大化する日常的な管理活動
運用業務とは、アプリを通じてユーザーに価値を提供し、ビジネス目標を達成するための活動を指します。システムの安定稼働を目的とする「守り」の保守業務に対し、運用はサービス価値の向上を目指す「攻め」の活動と言えるでしょう。
具体的な業務としては、以下の活動が挙げられます。
•コンテンツ管理(お知らせや商品情報の更新など)
•サポート業務(ユーザーからの問い合わせ対応など)
•アプリの利用状況モニタリングとデータ分析
•マーケティング施策(プッシュ通知、キャンペーン設定など)
例えば、飲食店のアプリのように、スタンプカードや期間限定メニューの紹介を通じてユーザーの利用頻度を高める活動も運用の一環です。これらの運用活動で見つかったユーザーの要望や利用データ分析の結果は、保守業務における機能改善やバグ修正のきっかけとなるため、両者は密接に連携する必要があります。
適切な運用は、ユーザー満足度を高め、アプリの継続利用を促進し、ひいてはビジネスの成長に直接的に貢献する、極めて重要な活動です。
自社アプリの保守費用、相場はいくら?内訳を徹底解説
アプリの保守費用は、その規模や複雑さ、提供されるサービス内容によって大きく変動しますが、一般的には開発費用の年間10〜20%が相場とされています。この費用が適切であるかを見極めるためには、具体的な内訳を正確に把握することが重要です。
保守費用は、多岐にわたる項目で構成されます。主な内訳は以下の通りです。
•サーバーやドメインなどのインフラ関連費用
•OSアップデートやセキュリティ対応
•障害発生時のバグ修正にかかる人件費
•機能追加や改善に伴う開発費用
次章からは、これらの費用について詳しく解説します。
保守費用の相場は「開発費の年間10〜20%」が目安
アプリの保守費用は、一般的に初期開発費用を基準に算出されます。具体的な相場としては、初期開発費用の年間10〜20%が目安です。例えば、開発に1,000万円を要したアプリであれば、年間の保守費用は100万円から200万円程度と計算されます。この割合は、システムの安定稼働を維持し、その価値を継続的に提供するために必要なエンジニアの人件費、サーバーやドメインなどのインフラ関連費用、OSアップデートやセキュリティ対策にかかる費用といった多岐にわたるコストを考慮した経験則に基づいています。
ただし、この相場は一般的な目安であり、全てのアプリに一律に適用されるわけではありません。保守費用が大きく変動する要因としては、以下の点が挙げられます。
•アプリの規模や機能の複雑性
•求められるセキュリティレベル
•バージョンアップや機能追加の頻度
特に高度なセキュリティ対策が必要なアプリや、頻繁な機能更新が求められるアプリでは、この目安を上回るケースも少なくありません。自社のアプリの特性や運用体制に合わせて、適正な費用を見極めることが重要です。
サーバー・ドメインなどのインフラ関連費用
アプリをインターネット上で稼働させ続けるためには、サーバーやドメインといったインフラ基盤が不可欠です。これらの維持にかかる費用は、アプリ保守費用の基本的な要素となります。
具体的な内訳は以下の通りです。
•サーバー利用料
•ドメイン名の年間更新料
•通信を暗号化しセキュリティを確保するSSL証明書の費用
サーバーの利用料には、月額500円から1,000円前後のレンタルサーバーのほか、AWS、Google Cloud™、Microsoft Azureといった従量課金制のクラウドサーバーがあります。特にクラウドサーバーは、アクセス数やデータ量に応じてコストが変動する特徴があるため、利用状況に応じたきめ細やかな管理が求められます。これらのインフラ関連費用は、サーバープランの見直し、不要なリソースの整理、契約期間の変更などによって最適化できるでしょう。
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OSアップデートやセキュリティ対応費用
iOSやAndroidなどのOSは定期的にバージョンアップされるため、これらに対応することが必要です。対応を怠ると、アプリが正常に動作しなくなるだけでなく、Apple App StoreやGoogle Playストアの規約や仕様変更に適合できなくなり、最悪の場合、配信停止のリスクも生じます。特に、明らかな技術的問題を抱えるアプリは、両ストアの審査ガイドラインに基づき公開が却下されたり、削除されたりする可能性があります。
また、日々新たな脆弱性が発見されるため、セキュリティ対策も欠かせません。利用しているライブラリのアップデートや最新のセキュリティパッチ適用を怠ると、情報漏洩といった重大なインシデントにつながり、企業の信頼を大きく損なう危険性があります。これらの対応は、アプリを安全に利用してもらう上で重要な作業です。
具体的には、以下のような多岐にわたる専門的な作業が発生します。
•OSの新バージョンでの動作検証
•非推奨APIの修正
•脆弱性診断の実施
•セキュリティパッチの適用
これらの作業には高度な知識を持つエンジニアの工数が必要となるため、その費用が保守コストとして計上されます。
障害対応・バグ修正にかかる人件費
アプリの安定稼働を維持するために不可欠なのが、予期せぬ障害やバグへの対応です。これには、エンジニアがいつでも対応できる状態を保つための「待機コスト」が基本的な部分を占めます。障害の発生時は、その規模や原因究明の難易度によって対応工数が大きく変動します。特に、緊急性の高い対応や夜間・休日の対応は、人件費が高騰しやすい項目の一つです。
保守契約の形態も人件費に影響を与えます。例えば、月額固定で一定の工数までを含むプランや、対応時間に応じた従量課金プランなどがあります。また、複雑なコードや古いシステム、いわゆる技術的負債を抱えるアプリでは、障害発生時の原因特定や修正に時間がかかり、結果として人件費を押し上げる大きな要因となる点に注意が必要です。
アプリ保守費用を最適化する4つの戦略的アプローチ
高騰し続けるアプリの保守費用は、単に削減するだけでなく、戦略的なアプローチによって「最適化」が可能です。ここでいう最適化とは、単なる出費を抑えることだけを指すのではありません。事業の成長を妨げない適切な投資判断を行うことで、アプリの価値を最大化し、将来的なビジネスリスクを低減させる重要な経営判断です。
本章では、肥大化した保守費用を多角的に見直し、削減へと導くための具体的な4つの戦略を紹介します。レガシーシステムからの脱却といった技術的負債の解消から、保守契約の見直し、さらには内製化に向けた体制構築まで、幅広い視点から解説をします。
戦略1:レガシーシステムからの脱却(モダナイゼーション)
自社アプリの保守費用が高騰する要因の一つに、古い技術や複雑な構造を持つ「レガシーシステム」が挙げられます。レガシーシステムが抱える主な課題は以下の通りです。
•古い技術や複雑な構造は技術的負債となり、保守・改修の難易度とコストを高めます。
•COBOLなど古い言語で構築されたシステムでは、エンジニアの減少により属人化が進み、維持コストが増大します。
•サポートが終了したOSやプラットフォームの使用は、セキュリティリスクを高める懸念があります。
•設計がブラックボックス化したシステムの場合、小さな改修であっても解読時間の長期化を招くことがあります。
このような課題を解決するのが「モダナイゼーション(システムの近代化)」です。これは、既存のシステム資産を有効活用しつつ、最新の技術やアーキテクチャへと刷新していく戦略を指します。モダナイゼーションの実施により、開発効率の向上と障害対応の迅速化が実現されるため、結果として改修コストの長期的な最適化が期待できます。初期投資は発生するものの、システムの陳腐化リスクや高額な維持費を考慮すれば、TCO(総所有コスト)の観点からも、未来に向けた有効な投資戦略と言えるでしょう。
戦略2:不要な機能の整理と要件の再定義
稼働中のアプリには、リリース当初は必要とされたものの、時間の経過と共に利用されなくなり、陳腐化した機能が潜んでいる場合があります。こうした使われない機能も、OSアップデート対応やセキュリティ維持の対象となり、いわば「技術的負債」として保守コストを圧迫します。不必要に複雑なコードや古いバージョンのフレームワークが残っている場合、それが負債を増大させる要因となることも珍しくありません。
この問題に対処するには、次の取り組みが重要です。
•アクセスログを分析し、利用頻度の低い機能を特定
•ユーザーアンケートを通じて、「サイト/アプリに追加してほしい機能」や「改善してほしい点」を具体的に洗い出す
これらの客観的なデータに基づき、単に機能を削除するだけでなく、現在のビジネス要件に合わせて機能の統廃合や簡素化を行うことで、アプリ全体の価値を再定義できます。
要件を再定義し、保守対象を絞り込むことは、開発リソースをコア機能の改善に集中させ、コスト削減とアプリの価値向上を両立させる効果が期待できます。これにより、無駄な保守コストを削減しつつ、ユーザーにとって真に価値ある機能に投資を集中させることが可能になります。
戦略3:保守契約の見直しと相見積もりの徹底
現状の外部委託先との保守契約内容を綿密に確認し、サービスレベル合意(SLA)や対応範囲が現在のニーズに合致しているか、あるいは過剰なサービスが含まれていないかを検証することは、コスト最適化に必要なステップです。SLA(サービスレベル合意)は、サービスの稼働率や障害対応の速度などを具体的に定める契約です。自社の実態に即しているかを見直すことで、不要な支出を抑えられます。
また、複数の保守ベンダーから相見積もりを取り、自社アプリの保守にかかる適正な市場価格を把握することが重要です。単なる価格比較に留まらず、正しい評価基準に基づいて最適な委託先を選定することが大切です。過度に安価な見積もりは、要件定義の不備やサポート不足など、将来的なリスクを招く可能性があるため、慎重な見極めが求められます。
戦略4:内製化に向けた体制構築
アプリ保守の内製化は、単なるコスト削減にとどまらない長期的な戦略です。自社にノウハウが蓄積され、開発スピードが向上するメリットは、企業の競争力強化に直結します。内製化を成功させるためには、適切な推進体制の構築が不可欠です。まず、開発、インフラ、プロジェクト管理といった必要なスキルセットを明確にし、既存社員の育成と中途採用を組み合わせた、バランスの取れたチームを編成することが重要です。例えば、開発経験が少ないメンバー中心のチームでも、適切な育成を通じて成果を出す事例も存在します。内製化には「スモールスタート」が成功の鍵となります。まずは一部の簡単な保守業務から始め、段階的に範囲を広げていくことで、リスクを抑えつつ着実に成功体験を重ねられるでしょう。
コスト削減と自走化を実現!保守内製化のためのツールの紹介
アプリ保守の内製化は、単なるコスト削減に留まらず、ビジネス環境の変化に迅速に対応できる「自走化」体制を築く上で、極めて有効な戦略と言えます。自社内に技術的なノウハウが蓄積されることで、開発スピードや品質の向上が期待でき、企業の競争力強化に直結します。運用コストの最適化や柔軟なカスタマイズが可能になる点も、大きなメリットとなるでしょう。ツールや手法を選定する際には、自社の現在の技術レベル、利用可能な予算、そして保守対象となるアプリの特性を深く理解することが重要です。
kintone:現場主導で業務アプリを素早く改善
保守コスト削減のための内製化において、サイボウズ株式会社が提供するクラウド型業務改善プラットフォーム「kintone」は、有効な選択肢の一つです。kintoneは、プログラミングの専門知識がなくても、ドラッグ&ドロップなどの直感的なGUI操作で業務アプリを簡単に作成・改修できるノーコード・ローコードツールとして知られています。
数千時間規模での業務効率化にも貢献しており、保守コストの最適化と内製化の第一歩として、大きな効果が期待できるツールと言えるでしょう。
パソナでは人事業務に特化したkintoneサービス kintone HRをご提供しております。
まとめ:保守費用の最適化は未来への投資!自社に合った戦略でコスト削減を実現しよう
本記事では、自社アプリの保守費用に焦点を当て、その現状、相場、そして具体的な最適化戦略について詳しく解説しました。特に内製化は、ローコード開発ツールなどを通じて、開発速度の向上、ノウハウの蓄積、コスト削減、そして自社の競争力強化に直結する重要な戦略です。
しかし、保守費用の最適化は、単なるコストカットに留まるものではありません。むしろ、変化の激しい市場でアプリの競争力を維持し、将来の事業成長を支えるための「未来への投資」と捉えるべきです。ブラックボックス化しがちな保守費用を透明化し、適正なコスト構造を確立することは、長期的な事業戦略に不可欠です。
まずは自社のアプリ保守費用の現状を詳細に分析することから始め、自社の状況や目指す方向性に合った戦略を選び、着実に実行していくことが大切です。すべてを内製化するのが難しい場合でも、信頼できる外部委託先と連携し、最適な保守・運用体制を構築できます。外部委託と内製化の双方を視野に入れ、アプリの持続的な成長とビジネス価値の最大化を目指しましょう。
