はじめに
昨今、生成AIが話題となっていますが、AWSは2025年にエージェント型AIワークスペースである『Amazon Quick Suite』を公開しました。この新サービスを活用したハンズオン型イベント「Quick Suite一番風呂の会」に、パソナの営業が参加しました。
本記事では「Amazon Quick Suite」や「エージェンティックAI(Agentic AI)」について深堀し、イベントでの体験内容もご紹介いたします。
Amazon Quick Suiteとは?BIツールからの進化を解説
Amazon Quick Suiteは、AWSが提供する生成AIを活用した次世代のビジネスインテリジェンス(BI)サービス群です。Quick Suiteは、従来のBIツールと比べて、単にデータを見るだけでなく「データで動く」存在へと進化しました。AIエージェントがユーザーと協働し、複雑な質問への回答や詳細な調査、さらには定型業務の自動化までを行う、統合された体験が可能となります。この大幅な進化を支える核となるのが、セキュアでアクセスしやすい自然言語での体験を可能にする「Amazon Q in QuickSight」や、自律的に動く「エージェント機能」といった新しい生成AI機能群です。これらの機能が、これまで専門知識を要したデータ分析や意思決定のプロセスを根本から変革し、ビジネスの未来を切り拓きます。
自然言語でデータ分析!中心機能「Amazon Q in QuickSight」とは
Amazon QuickSightの中核をなす生成AIアシスタント機能が「Amazon Q in QuickSight」です。これは、普段私たちが使う自然な言葉でAIに質問するだけで、複雑なデータ分析や視覚的に分かりやすいグラフ作成を可能にする機能です。例えば「先月の商品カテゴリ別売上トップ5を円グラフで表示して」と入力すると、数秒で求めるグラフが自動生成されます。これにより、SQLクエリの知識やデータモデルの理解といった専門スキルがなくても、誰もが直感的にデータ分析を行えるようになります。
さらに、Amazon Q in QuickSightは単なるデータの可視化にとどまらず、AIが分析結果から重要なインサイトを抽出し、それを分かりやすい文章で説明する「データストーリー」機能も提供しています。これにより、データから得られる知見の要約や注目すべきポイントを自動でレポートとして提示するため、報告書作成の手間を大幅に削減できます。従来はデータアナリストのような専門家が時間をかけて行っていた作業を、経営層や現場担当者が自身で迅速に進められるようになるため、データに基づいた意思決定の加速が期待されます。
話題の「エージェンティックAI」をわかりやすく解説
「エージェンティックAI」とは、自ら目標達成のための計画を立て、行動できる賢いアシスタントのような存在です。従来のAIが人間の指示に基づき決められたタスクを実行するのに対し、エージェンティックAIは与えられた目標に対し、自律的に判断し、行動を最適化する点が大きな特徴です。
人間が最終的な目標を設定するだけで、AIが次の一連のプロセスを自動で進めます。
エージェンティックAIが自動で進めるプロセス
•計画立案
•必要なツールの選択と使用
•タスクの実行
•結果の評価と自己修正
この特徴は、単に質問に答えたり、データを分析したりといった受動的なAIとは異なり、環境と相互作用しながら自律的に目標を遂行できることを意味します。2025年には「AIエージェントの年」になるとも予測され、この自律型AIはビジネスの常識を根本から覆すゲームチェンジャーとして、今まさに注目を集めています。
従来のAIアシスタントとの根本的な違いは?
従来のAIアシスタントは、ユーザーから具体的な指示を受け、決められたタスクを実行する「指示待ち」の存在でした。SiriやAlexaなどがその代表例で「今日の天気を教えて」といった単発的な質問や命令に受動的に応答します。これらは人間が設定した手順やデータに基づいて動くため、想定外の状況には柔軟に対応できません。あくまで「作業の補助」に留まる存在です。
一方、エージェンティックAIは根本的に異なります。与えられた目標に対し、自ら計画を立て、必要な情報を収集・分析し、タスクを遂行する「自律的な実行者」です。例えば「来週の出張計画を立ててほしい」と指示すれば、交通手段や宿泊先の調査、スケジュールの調整までをAIが自律的に実行します。この違いは単なる機能の拡張に留まらず、従来のAIが「作業の補助」である一方、エージェンティックAIは「業務の代行や自動化」を可能にします。これにより、ビジネスにおける効果は飛躍的に高まり、企業の生産性向上に大きく貢献するでしょう。
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「Quick Suite一番風呂の会」について
イベント体験会では、各企業の共通の課題として次の3点が挙げられました。
1)情報収集:ファイルが散在し、情報が分断されている
2)分析:データが複雑で洞察が難しく、属人化が進む
3)実行:単純なタスクすら非効率で、複雑なプロセスほど進めにくい
こうした課題に対して、Quick Suiteは「エージェントが自律的に考えて動く」仕組みを提供しており、その機能群をハンズオンで網羅的に体験できるイベントでした。イベント中に紹介された各機能および、機能を使用した際の感想を以下にまとめました。
Quick Suiteの機能群
Quick Suiteの特徴的なポイントは、人間が指示を出すのではなく「チームにAIエージェントを加える」という発想です。そのAI機能についてご紹介します。
「Spaces」
各種ドキュメントや動画など、チームのナレッジを集約し、チャットエージェントの“ベース知識”として活用することができます。社内の知見が生きるナレッジハブにすることができます。
「Chat Agents」
自然言語を通じてデータやワークフローと対話できる分析支援エージェントです。SlackやTeams、Salesforceなどに接続可能で、タスクの実行までAIが担う、まさに“行動するエージェント”です。
「Quick Sight」
会話形式のプロンプトを使用することで、ダッシュボードや要約を作成することができます。専門的なスキルがなくても高度な分析が可能となり、ダッシュボードの開発時間も短縮できます。チャット形式でインサイトを深掘りできるのが特徴です。
「Quick Research」
企業内のデータと外部ソースを包括的に調査し、文脈に沿った実用的な洞察を短時間で提供する強力なツールです。市場分析など時間のかかるリサーチも自動化可能で、新規市場レポートなども生成することができます。
「Quick Flows / Automate」
技術的な知識がなくても、自然言語でワークフローを説明するだけで、誰でも繰り返し行うタスクを自動化できます。複数エージェントの協働によるプロセス自動化も可能です。
ハンズオンの感想
Quick Suiteの中核機能を一通り体験することができました。
「Chat agents」や「Quick Research」は、操作性も良く、チャット型のインターフェースを活用したUIのため、非エンジニアのユーザーでも直観的に操作可能で、素早く効率化を実現できる機能だと感じました。
「Quick Flows / Automate」は、設定の難しさを感じた面もありますが、複雑なフローの自動化など、業務改善効果については大きな効果を得る事が出来る機能だと感じました。
Quick Automateの機能の中でも印象に残ったのが、”UIエージェント”という画期的なエージェントが内包されていた点です。自然言語の指示を理解し、Web サイトを自律的に操作し、フォーム入力を完了、データを抽出するなど「エージェント自体に目があるイメージ」として機能していました。
パソナのエンジニアが運営しているコラムにもエンジニア目線での体験記を掲載しております。ぜひこちらもご覧ください。
「Quick Suite一番風呂の会」で見た! “Agentic AI” の可能性とリアルな使い心地
まとめ
Quick Suiteが提唱する”エージェンティックAI”はいくつかの原則があります。
・技術は人間の能力を拡張するためのもの
・データ品質の確保がすべての基盤
・変化を受け入れ、教育を続ける姿勢
これらは、AI時代のチーム運営にも通じる重要な視点ではないかと感じました。Quick Suiteは、単なるAIチャットではなく、「AIが動き、チームに参加する」新しい働き方を提案するプラットフォームです。情報整理から意思決定、実行までをAIが一貫して支援する世界が、いよいよ現実味を帯びてきたという、未来への期待感を抱かせてくれた実りあるイベントでした。
