はじめに
多くの企業が業務改善の必要性を認識しながらも、その実現にはさまざまな課題があります。特に、外部コンサルタントへの過度な依存や、導入・運用にかかる高額なコストは、多くの企業にとって共通の課題です。外部に業務を委託すると、業務プロセスに関するノウハウが自社内に蓄積されにくいため、結果として継続的な委託を余儀なくされるケースも少なくありません。また、外部ベンダーへの依存が進むと、自社の意向とベンダーの方針にずれが生じ、目まぐるしく変化する市場環境への迅速な対応が困難になる可能性があります。さらに、仕様変更や修正のたびに高額な追加費用が発生し、予算超過のリスクも無視できません。
このような課題を克服し、持続的な成長を実現するには、自社内で継続的に業務改善を進める「内製化」が不可欠です。内製化は、DX推進のためのノウハウや知見を社内に蓄積し、システムのブラックボックス化を防ぐことで、市場の変化に迅速に対応できる体制を構築します。
また、この内製化を効果的に推進する鍵となるのが「ワークショップ」です。ワークショップを通じて、従業員一人ひとりがDXの意義を理解し、主体的に業務改善に取り組むことで「部門間の連携強化」「イノベーティブな 発想の促進」「社内全体のDXリテラシー向上」などの効果が期待できます。
本記事では、ワークショップを活用し、業務改善の内製化を成功させるための具体的な進め方、実際に企業で成果を上げた成功事例について解説します。これらの情報を活用し、貴社が現場主導で業務改善を推進し、組織全体の生産性向上を実現するための実践的なヒントを見つける一助となれば幸いです。
業務改善の内製化とワークショップの基本
多くの企業が直面する業務効率の課題に対し、業務改善は不可欠です。業務改善のアプローチには外部委託と内製化の二通りがありますが、本記事では特に内製化に焦点を当てて解説します。内製化は、自社にノウハウや知見を蓄積し、持続的な競争力向上を目指す重要な戦略です。この内製化を効果的に推進する強力な手法が、社員の主体性を引き出し、創造的な解決策を生み出すワークショップです。
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業務改善の「内製化」とは?外部委託との違い
業務改善の「内製化」とは、外部のコンサルタントやベンダーに依存せず、社内の従業員が主体となって業務プロセスの課題発見から改善策の実行までを担う体制を指します。これにより、自社の特性に合わせた柔軟な対応が可能となり、競争力の強化につながるでしょう。
一方「外部委託」は、業務改善の専門知識を持つ外部企業に分析や改善提案、実行を依頼する手法です。専門家の知見を短期間で活用できる点がメリットとされます。
なぜ今、内製化が注目されるのか?3つの大きなメリット
業務改善の内製化が注目される背景には、企業が持続的な成長を遂げる上で不可欠な、いくつかのメリットがあります。主なメリットとして、以下の3点が挙げられます。
•長期的なコスト削減
•ノウハウの蓄積とスキルアップ
•意思決定と実行スピードの向上
まず、一つ目のメリットは、外部コンサルタントへの依存を減らし、長期的なコスト削減につながることです。外部委託の場合、高額な依頼費用や、仕様変更時の追加コストが発生しがちです。しかし、内製化を進めれば、これらの外部費用を抑制し、中長期的にはコスト効率を高めることができます。委託先へ支払う費用が削減されるため、全体としてコストダウンにつながるでしょう。
二つ目のメリットは、業務改善のノウハウが社内に蓄積され、従業員のスキルアップと組織全体の課題解決能力が向上することです。内製化を通じて、DXを推進するための知見や経験が社内に蓄積され、従業員一人ひとりのデジタルリテラシーやITレベルが向上します。これにより、企業は外部に頼らず、自らの力で継続的な改善に取り組めるようになります。
三つ目のメリットは、現場の従業員が主体となることで、実態に即した改善策が生まれ、意思決定から実行までのスピードが速まることです。外部委託では調整に時間がかかりやすい一方、内製化では内部で完結するため、市場の変化や顧客ニーズに迅速に対応できる開発体制を構築できます。
内製化を加速させる「ワークショップ」の効果と役割
ワークショップは、業務改善を「自分ごと」として捉える当事者意識を参加者に醸成する強力な手法です。従業員自身が変革の担い手として主体的に関与するプロセスを生み出すことで、自発的な行動を促し、内製化の第一歩となるでしょう。これにより、社員自らがDXの意義を理解し、積極的に取り組む姿勢を育むことにもつながります。
普段は関わりの少ない部署のメンバーが集まり、率直に意見を交わすことができる点もワークショップの大きな利点です。これにより、これまで属人化していた課題や暗黙知となっていたノウハウが共有され、組織全体の課題解決能力向上に貢献します。現場の本音を引き出し、部門間の連携を強化することで、座学だけでは生まれにくい革新的な発想も促されるでしょう。
ワークショップは、具体的に以下の効果と役割をもたらします。
•当事者意識の醸成と内製化の促進:参加者が業務改善を自分ごとと捉え、主体的な行動を通じて内製化を推進します。
•組織全体の課題解決能力の向上:部署間の連携を強化し、属人化していた課題やノウハウを共有することで、組織全体の課題解決力を高めます。
•実践的なスキル習得と改善活動の定着:課題発見から解決策立案までの一連のプロセスを体験することで、実践的なスキルが身につき、改善活動が組織に定着しやすくなります。
さらに、参加者全員で課題発見から解決策の立案までを一貫して体験することは、座学では得られない実践的なスキルを習得する貴重な機会となります。DXの推進プロセスやその効果を直接体験することで、改善活動が組織に深く定着しやすくなる効果も期待できます。ワークショップは、課題の発見、アイデア創出、合意形成といった一連のプロセスを体験する「場」を提供し、企業が自律的な改善サイクルを回すための強力なエンジンとして機能するのです。
【事例紹介】ワークショップで実現!企業の業務改善・内製化ケーススタディ
本セクションでは、業種や抱える課題の異なる3つの企業のケーススタディを紹介します。
各事例では、ワークショップが現場の従業員をどのように巻き込み、内製化を成功に導いたのか、その具体的なプロセスと成功の秘訣に焦点を当てて解説します。これらの事例を、貴社の課題解決のヒントとして読み進めてみてください。
事例1:【製造業】若手リーダーの主体性を引き出した「超体験型」研修
ある製造業では、若手リーダー層が指示待ちの姿勢に陥り、現場からの自発的な改善提案が少ないという課題に直面していました。品質、コスト、納期といった製造現場の根幹を強化し、変化に対応できる継続的な改善を推進するためには、若手リーダーの主体性向上が不可欠でした。また、従来の縦割り組織の弊害により、現場レベルでの自主的な意見発信が滞りがちな状況も見られました。
そこで、同社は「超体験型」研修を導入しました。この研修は、単なる座学に留まらず、工場の生産ラインを模したシミュレーションゲームを実施しました。参加者は自ら意思決定を行い、その結果を実体験として肌で感じながら理解を深めました。加えて、実際の現場で発生している課題を見つけ出し、グループで解決策を立案するワークショップも取り入れ、当事者意識の醸成を強く促しました。
研修の結果、若手リーダー層には以下のような変化が見られました。
•主体的な改善活動への移行
•具体的な改善提案件数の前年比大幅増加
•チーム内コミュニケーションの活性化
•課題解決におけるチームでの相談・協力文化の醸成
この成功のポイントは、知識のインプットに留まらず、「体験」を通じて課題を自分ごととして捉えさせ、実践的なリーダーシップや問題解決能力を身につけさせた点にあると言えます。
事例2:【食品製造業】生産性が39%向上した物流・情報管理の効率化
ある食品製造業では、物流と情報管理に関して複数の課題を抱えていました。紙ベースの煩雑な業務は情報共有の属人化を招き、正確な在庫把握を困難にしていました。その結果、出荷ミスが頻発し、小ロットや多頻度での輸送や厳格な品質管理が求められる食品業界において、生産性の低迷とコスト増大が大きな課題となっていました。
このような状況を打開するため、同社は物流部門と情報管理部門の担当者を集め、ワークショップを開催しました。業務フローの「見える化」を徹底することで、情報伝達の遅延や属人化している作業といったボトルネックとなっている問題点の洗い出しに注力しました。
ワークショップで立案された改善策は、情報共有ツールの導入と在庫管理方法の刷新でした。具体的には、QRコードを活用したトレーサビリティソリューションや、全社的な情報共有プラットフォームを導入し、業務の「標準化」と「共有化」を推進しました。その結果、紙の使用量を75%削減、棚卸時間を25%短縮するなど、情報管理が大幅に効率化され、最終的に生産性を39%向上させることに成功しました。
事例3:【老舗旅館】専門家とITツールを併用し業務プロセスを刷新
120年以上の歴史を持つ老舗旅館では、伝統的な「おもてなし」を強みとしていたものの、予約管理や顧客情報の共有が属人化し、紙ベースのアナログ業務に依存していました。これにより、従業員の長時間労働が常態化し、サービス品質にばらつきが生じるという大きな課題を抱えていたのです。特に、ITツールに不慣れな従業員が多かったため、デジタル化への一歩を踏み出せない状況でした。
そこで同旅館は、外部の専門家をファシリテーターとして招き、現場スタッフ全員が参加するワークショップを実施しました。ワークショップでは、日常業務の現状プロセスを詳細に可視化し、情報伝達のボトルネックや非効率な作業を洗い出すことに注力しました。参加者からは率直な意見が募られ、改善点について活発な議論が交わされました。
ワークショップで洗い出された課題や意見を基に、チーム連携を促進するDXツール「Lark」、情報共有ツール「Chatwork」、さらに自社予約システム「DYNA IBE(旧称 Direct In S4)」といったITツールを導入しました。これにより、アナログな予約台帳や顧客管理からデジタルシステムへの移行が段階的に進められ、従業員はツールの基本的な使い方から実践的な活用方法までを習得しました。
結果として、社員一人あたり月間10時間以上の業務時間削減を実現し、従業員の負担を大幅に軽減することに成功しました。また、情報共有が円滑になったことで、顧客一人ひとりに対するきめ細やかな「おもてなし」の質が向上しています。専門家の客観的な視点と現場の意見を取り入れたITツールの活用が、老舗旅館の業務改善と内製化を強力に後押ししました。
まとめ:明日からできる小さな一歩が会社を変える。現場主導の業務改善を始めよう
本記事では、業務改善の内製化が企業にもたらす長期的なメリットや、それを加速させるワークショップの有効性について解説しました。
変化の激しいビジネス環境に柔軟に対応し、持続的な成長を実現するためには、業務改善を外部任せにするのではなく、現場の従業員が主体的に取り組む「内製化」が不可欠です。ワークショップは、従業員一人ひとりが業務課題を「自分ごと」として捉え、部署間の連携を強化しながら創造的な解決策を生み出すための強力な手段となります。
業務改善への道のりは一朝一夕ではありませんが、完璧な計画を待つ必要はありません。この記事でご紹介したポイントや事例を参考に、まずは部署やチーム単位で、小規模なワークショップを試してみてはいかがでしょうか。現場から始まる小さな一歩が、やがて会社全体の大きな変革へとつながり、企業の未来を形作る礎となるでしょう。
