はじめに
採用、労務管理、研修など、多岐にわたる人事業務は、企業を支える重要な役割である一方、どうしても煩雑になりがちです。
特に、限られたリソースで業務をこなす中小企業においては、人事業務の効率化は喫緊の課題と言えるでしょう。
そこで本記事では、煩雑な人事業務課題を解決するための最適なツールの選び方をご紹介します。
ぜひ、本記事を参考に人事戦略をさらに加速させてください。
人事業務はなぜ多忙?今こそ効率化が急務とされる3つの背景
日々の定型業務に加え、突発的な対応に追われる人事担当者は少なくありません。ある総合研究所の2023年の調査によると、人手不足や業務効率化が上位の課題として挙げられています。また「突発的な業務が多く発生するから」と回答した人事担当者も半数に達し、予測困難なタスクへの対応も負担を増大しています。さらに、2025年4月時点で正社員の「人手不足を感じる」企業が51.4%に上るなど、労働力不足は年々深刻化しており、この傾向は今後も続くと予想されます。こうした状況は、人事部門に求められる役割の変化と相まって、業務の多忙さを加速させています。
そこで本セクションでは、なぜ今人事業務の効率化が急務なのか、その背景を以下の3つの観点から詳しく見ていきましょう。
・深刻化する人手不足
・働き方の多様化に伴う労務管理の負担増
・ノンコア業務から脱却し戦略的人事へ移行する必要性
深刻化する人手不足と採用活動の複雑化
少子高齢化が進む日本では、生産年齢人口の減少が避けられない現実となり、企業間の人材獲得競争は年々激化しています。帝国データバンクの調査によると、2025年1月時点で正社員が「不足」と感じている企業の割合は53.4%に達し、コロナ禍以降で最も高い水準となりました。ある総合研究所の推計では 、2030年には644万人の労働力が不足すると見込まれており、この傾向は今後も続くと予想されます。
このような環境下で人材を確保するためには、従来の求人広告だけでなく、ダイレクトリクルーリング、リファラル採用、SNS活用など、多様な採用チャネルを駆使する必要があります。しかし、チャネルが増えるほど応募者情報の管理は複雑になり、情報が分散して一元管理が困難になるという課題が生じます。さらに、候補者体験(CX)の重要性が増しており、選考辞退を防ぐためには、一人ひとりの候補者に対してより迅速かつ丁寧なコミュニケーションが求められるようになりました。結果として、採用担当者の工数は増大し、大きな負担となっています。
働き方の多様化に伴う労務管理の負担増
近年、リモートワークやフレックスタイム制、時短勤務といった柔軟な働き方が普及したことで、労務管理は一層複雑になっています。従業員一人ひとりの勤務形態が多様化し、それぞれの勤怠時間や給与計算を個別に対応する必要が生じているためです。手作業での管理ではミスが発生しやすく、確認作業にも多大な時間を要するようになりました。
こうした多様な働き方や雇用契約に対応するため、従来にはなかった管理業務が急増しています。例えば、以下のような業務です。
・個別の労働条件通知書や雇用契約書の作成・管理
・社会保険や雇用保険の手続き
・就業規則の頻繁な見直し
これらの業務は人事担当者の負担を著しく増大させており、効率化が喫緊の課題となっています。
ノンコア業務から脱却し「戦略的人事」へ移行する必要性
給与計算や社会保険手続きといった日々の定型業務、いわゆる「ノンコア業務」に追われている人事担当者は少なくありません。これらの業務は確かに企業の運営に不可欠ですが、一方で、企業の経営目標達成に直接貢献する人材配置や育成計画の策定といった「戦略的人事(コア業務)」は、現代のビジネス環境においてますますその重要性を増しています。
少子高齢化による労働力人口の減少や、グローバル競争の激化に直面する中、企業の競争力を高め、持続的に成長するためには、経営戦略と連動した人事戦略が不可欠です。単なる「管理部門」としてではなく、経営の根幹に関わる戦略的な役割を担うことが、人事部門に求められています。
ノンコア業務の負担を軽減し、人事担当者が戦略的な業務に時間を投下できるようになれば、従業員のエンゲージメント向上施策や組織開発、企業文化の醸成といった、企業の未来を創る付加価値の高い業務に注力できるようになります。これにより、適材適所の人材配置が進み、組織全体の生産性向上も期待できます。
したがって、人事部門が戦略的な役割を果たすためには、まずノンコア業務の効率化が急務と言えます。ツール導入は、この効率化を実現し、戦略的人事への移行を加速させるための重要な第一歩となるのです。
パソナでは人事業務を効率化し、社員の成長を支援するサービスを展開しています。kintoneの機能を活用して人事業務効率化に特化したカスタマイズサービスです。
初めてでも失敗しない!自社に最適なツールの選び方3つのポイント
人事業務効率化ツールは数多く存在するため、やみくもに探し始めても最適なものにたどり着くのは困難です。失敗を防ぎ、自社にフィットするツールを見つけるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。これから、ツール選定に不可欠な3つのポイント「解決したい課題の明確化」「利用者の操作性」「費用対効果の見極め」について詳しく解説していきます。
「何のためか」を明確に|解決したい課題の優先順位をつける
ツール導入を成功させるための最初のステップは「何のために導入するのか」という目的を明確にすることです。この目的が曖昧なままツールを選んでしまうと、機能が多すぎて使いこなせなかったり、現場に浸透しなかったりといった失敗につながるリスクが高まります。導入目的が明確でなかったり、情報管理の方針が社内で統一されていなかったりすることが、システム導入後の混乱や失敗の一因となるケースも見られます。まずは、自社の人事部門が抱える具体的な課題を深く掘り下げて洗い出すことから始めましょう。
具体的な課題の洗い出しにあたっては、まず人事担当者へのヒアリングを実施し、日々の業務でどのような非効率を感じているかを聞き取ることが重要です。また、採用活動や労務管理、評価業務など、各業務プロセスにかかる時間や手間を客観的に可視化することも有効な手段です。
洗い出した課題は、すべてを一度に解決しようとせず、優先順位をつけることが肝心です。例えば「緊急度」と「重要度」の2軸で課題を整理し、最もインパクトの大きい課題から着手することを検討します。この優先順位付けによって明確になった最優先課題こそが、導入を検討すべきツールの「必須機能」となります。
「誰が使うか」を意識|ITが苦手でも直感的に使える操作性か
ツール導入の成否は、システムを導入した部署の担当者が、日々の業務で迷わず使いこなせるかに大きく左右されます。特に人事部門には、ITツールの利用経験やスキルに個人差があることも珍しくありません。そのため、誰でもすぐに操作を習得できる、直感的でシンプルな操作性を備えているかどうかが、ツール選定において非常に重要なポイントです。
操作性を確認する際には、以下の点に注目しましょう。
・マニュアルなしで基本的な操作ができるか
・専門用語が多すぎず、画面の指示に沿ってスムーズに作業を進められるか
さらに、日々の定型業務である従業員情報の登録や更新、勤怠データの修正といった作業が、少ないクリック数で完了するかどうかも重要なチェック項目です。複雑な画面遷移がなく、直感的に目的の操作にたどり着けるかを確認しましょう。使いやすいツールは、業務効率化だけでなく、利用者のストレス軽減にもつながります。
「費用対効果」を見極める|料金体系と無料トライアルの活用
ツール導入を検討する際は、単なるコストではなく、将来への「投資」として捉える視点が重要になります。導入費用だけでなく、ツール活用によって削減できる人件費や時間的コスト、得られる生産性向上といったメリットを総合的に評価し、費用対効果を正確に見極めることが不可欠です。ツールがもたらす全体的な付加価値をしっかりと把握することが重要です。
料金体系はツールによってさまざまで、月額固定制や従量課金制などがあります。自社の従業員規模や利用頻度、予算計画に合っているかを確認すると同時に、将来的な従業員の増減や事業拡大に伴う機能拡張も視野に入れ、長期的なコストパフォーマンスを比較検討する必要があります。
多くのツールが提供する無料トライアルやデモは、積極的に活用すべきです。無料トライアルやデモを最大限に活用するためには、以下の点を意識しましょう。
・単に機能を確認するだけでなく、実際の業務フローに沿ってツールを試用し、操作性や効果を検証する
・可能であれば複数の担当者に試してもらい、現場の声を収集する
・トライアル期間中に、サポート体制や他システムとの連携性なども確認しておく
これらの点を実践することが、導入後のミスマッチを防ぎ、スムーズな運用へとつなげる鍵となります。
まとめ:データに基づいた人事業務で、企業の成長を加速させよう
本記事では、深刻化する人手不足や働き方の多様化、そして「戦略的人事」への移行の必要性といった、人事業務が多忙を極める背景について掘り下げて解説しました。その上で、効率化の余地が大きい「採用」「人材育成・評価」「データ管理」という3つの主要な業務領域を特定し、それぞれの領域が抱える課題とツールによる解決策を示しました。
人事業務効率化ツールの導入は、単にルーチンワークの負担を軽減するためだけのものではありません。それは、日々のノンコア業務に費やしていた時間を、企業の経営目標達成に貢献する戦略的な人事活動へシフトさせるための重要な投資と言えます。ツールを活用することで、人件費や時間的なコストを削減し、業務品質を向上させ、結果として組織全体の生産性向上を実現することが可能になります。これは、変化の速いビジネス環境において、企業の競争力を維持・強化する上で不可欠な取り組みと言えるでしょう。
最適なツール選定のためには、まずは本記事でご紹介した選び方を参考に、自社の人事部門が抱える具体的な課題を改めて整理し、解決すべき優先順位を明確にすることから始めてください。
人事業務効率化ツールの導入は、より付加価値の高い業務に集中できる環境を整備し、専門性をさらに高める機会を与えてくれます。戦略的な視点を持って人材マネジメントに取り組めるようになれば、従業員の能力を最大限に引き出し、組織全体の活力を高めることにつながります。その結果、企業全体の業績向上や持続的な成長に大きく貢献できる存在へと進化していくでしょう。ぜひ、この機会に人事業務の効率化に踏み出し、攻めの人事部門を目指してください。
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