はじめに
企業や組織は、さまざまな業務が連なり合って運営をしています。これらの業務の流れは一般に「業務プロセス」と呼ばれます。
業務プロセスのなかに存在する「ムリ・ムダ・ムラ」は、生産性低下や長時間労働などさまざまな負が生じる原因です。このような場合は、業務プロセスを改善する必要があるでしょう。しかし、改善点や方策が曖昧な状態では、改善に取り組んでも十分な成果は得られません。
この記事では、業務プロセス改善の具体的な進め方や、業務プロセス改善を成功させるポイントについて解説します。
業務プロセス改善の基礎知識
まずは「業務プロセス」と「業務プロセス改善」とは具体的にどのようなものを指すのかを理解しておきましょう。
業務プロセス=組織における一連の業務の流れ
「業務プロセス」とは、企業や組織が目的を達成するための「一連の業務の流れ」を表します。
企業や組織が利益を得るには、製造、営業、事務、経理など、さまざまな業務が必要です。各業務は企業を構成する重要な要素であり、企業は複数の業務が関わることで成り立っているといえます。
業務プロセスとは、これらの業務の連なりや、サービスを提供するための全体の流れ・構成のことです。
業務プロセス改善=業務の流れの最適化
「業務プロセス改善」とは、企業や組織の目的達成のための活動を、より最適化・効率化する取り組みです。
近年は少子高齢化による人材不足が社会問題となっており、業務効率化や生産性向上に対して課題を抱えている企業は少なくありません。業務プロセスに課題がある場合は、一連のプロセスのなかから改善点を洗い出し、生産性を下げる要因を取り除くなどの対策を講じる必要があります。
業務プロセスが改善できれば、企業は「利益を得る」という目的を、より迅速・低コスト・低リスクで実現できるようになるのです。
業務プロセス改善のメリット3つ
業務プロセス改善は、おもに「業務の効率化」従業員のモチベーション向上」「サービスレベルの向上「リスクマネジメント(業務の標準化)」といった目的で実施されます。それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
業務効率化
日常的に行っている業務のなかには、ムダな作業が存在したり、非効率的なオペレーションとなっていたりすることも珍しくありません。
ルーティンワークは作業に慣れてしまうと、ムダ・ムラなどの不便さを感じにくくなるため、指摘されることで初めて改善点に気付くケースもあります。
業務プロセスを見直し、日々の業務が内包するムダをなくしていけば、それぞれの業務をより効率化できます。組織全体の生産性向上やコストの適正化も期待できるでしょう。
従業員のモチベーション向上
業務プロセス改善により、業務量や労働時間が適正化されれば、労働環境の改善にもつながります。
労働環境が改善し、ワークライフバランスが実現しやすくなれば、従業員のモチベーション向上やエンゲージメント向上も期待できます。
サービスレベルの向上
業務プロセス改善は、作業ミスの防止になり、顧客へのサービス提供にも良い効果を与えます。
リスクマネジメント
日々の業務は、属人化やブラックボックス化しやすい傾向にあります。
業務の属人化・ブラックボックス化とは、ある業務の詳細や進め方を、担当社員のみが理解している状態です。この状態を放置すると、担当社員が異動や離職などをした場合、業務を遂行できなくなるおそれがあります。
業務の属人化やブラックボックス化を防止するには、業務プロセスを見直して、業務を標準化することが重要です。業務を標準化すれば、特定の社員に依存する体制が改善され、継続的に成果を生み出せる仕組みを構築することが可能となります。
【関連コラム】業務効率化の方法やツールについて解説しているコラムもございます。
ぜひ参考にご覧ください。
業務効率化の具体的な方法5選!具体的なツールと注意点も合わせて解説
業務プロセス改善とITは切り離せない関係になった
業務プロセスを改善する際は、自社の抱える課題を解決するために、新しいITシステムを導入することも少なくありません。
例えば、これまで紙ベースで行っていた業務をデジタル化したり、業務を自動化したりして、業務効率化を図ることもあります。このような場合は、業務を見直して潜在化するムダ・ムラ・ムリを明らかにし、問題を改善するためのITツールを導入・運用することができます
つまり、ITツールをうまく活用すれば、業務効率化の実現に近づけるのです。
ただし、ITツールを導入する際は、導入後のフォロー体制を整えておくことも重要です。たとえ最新のITツールを導入したとしても、現場での活用が進まなければ意味がありません。具体的には、事前にITツールに関する研修を実施したり、導入後の運用をサポートできる人材を社内に確保したりするなどの対策が必要です。
業務プロセス改善の進め方
業務プロセスの改善を行う場合は、まずゴール(あるべき姿)を明確にします。そのうえで現状を分析し、現状とゴールの差が発生する問題を洗い出します。そして、ゴールに大きな影響を与えている問題への対策を優先的に立てる必要があります。
また、業務プロセス改善は一度実施して終わるわけではなく、継続的に改善を繰り返していくことが重要です。
業務プロセスを改善するための取り組みについて、具体的な進め方を解説します。
1. ゴール(あるべき姿)を具体的に設定する
最初に、ゴール(あるべき姿)を設定します。
業務プロセス改善では、ゴールと現状との差を明確にし、その差が発生する問題へ対策を講じます。そのため、ゴールをできる限り具体的に設定することが重要です。
2.現状を分析する
ゴール設定が完了後は、現状を分析します。
リアルな業務プロセスの状態を知る方法として、現場スタッフへのヒアリングを実施するのも有効です。また、各業務の工程を細分化・可視化すれば、業務の重複やムダが見えやすくなり、問題の発見にも役立ちます。
3. 問題を洗い出し、優先順位を決める
ゴールと現状の差(問題)を洗い出し、問題の優先順位を決めます。
業務プロセスを見直すなかで、複数の問題が顕在化することも珍しくありません。業務プロセス改善では、一度にすべての問題解決に着手するのではなく、優先度の高い問題から取り組んでいくことが大事です。
すべての問題を解決したくなることも少なくありません。しかし、リソースは有限です。現在発生している「ゴールと現状の差」に影響度の高い問題点から取り組むのがいいでしょう。
4. 優先度の高い問題への対策を実施する
問題を洗い出し、優先順位を決めたあとは、優先順位が上位の問題に絞り改善案を作成します。
改善案を作成する際には、それを行うことにより、いつまでに・何が・どの位改善されるのかなど、KPI(重要業績評価指標)を設定しておくと、目標や行動がより明確になり、改善案実施後の評価もしやすくなります。
また、改善案を実施する際は、優先度の高い問題のなかでも、比較的「小規模で効果の出やすい施策」から取り組むのがポイントです。
業務プロセス改善は、施策の実施から改善に至るまで、長期にわたることも少なくありません。大規模な改善から着手すると、効果が得られるまでに時間がかかり、成果がなかなか見えない状態が続いてしまいます。
小規模でも実績を積みやすい対策から取り組めば、現場のスタッフも改善の実感が得られるため、仕事のモチベーションにもつながるでしょう。また、課題改善が進むことで、経営層の理解も得やすくなります。
5.施策を評価する
施策を実施したあとは、施策による効果を測定・評価します。
KPIで目標達成率を評価し、十分な成果が得られない施策があった場合は、その問題を分析します。
6.評価を踏まえて次のアクションにつなげる
実施施策に対する評価を踏まえ、次のアクションにつなげます。
業務プロセス改善は、一度で成功するとは限りません。改善策の立案、実施、評価、分析のサイクルを回しながら、徐々に業務プロセス改善の完成度を高めていくことが大切です。
業務プロセス改善を成功させるポイント
業務プロセス改善を成功させるために押さえておきたい、2つのポイントを説明します。
現場の理解を得る
業務プロセスの改善は、組織全体で取り組む必要があります。実際に改善に取り組むのは現場にいる社員のため、十分な説明をし、理解を得ることが重要です。
業務プロセス改善の取り組みでは、現場の社員は普段と異なる手順で業務を進めることになったり、不慣れな業務を担当したりすることも少なくありません。
最終的に業務効率化が実現するとしても、施策を始めてしばらくは現場の負担は重くなります。現場が納得できない施策を無理やり導入しても、現場の協力が得られず、業務プロセス改善を効率的に進めるのは難しいでしょう。
業務プロセス改善に取り組む際は「現状の課題」と「業務プロセスを改善することによるメリット」を具体的に説明し、現場の理解と協力を得ることが大切です。
継続的に業務プロセス改善を実施する
業務プロセス改善は一度やって終わりではなく、PDCAを意識しながら長期的な視点で取り組む必要があります。
業務プロセス改善の施策を実施したあとも「新しい業務プロセスが現場に定着しているか」「成果(利益)に結びついているか」を定期的に確認し、改善を重ねていきましょう。
また、業務プロセス改善を担える人材の育成や、ノウハウをまとめたマニュアルを整備するなど、業務プロセス改善を長期で継続できる組織づくりを進めることも大切です。
まとめ
日常的な業務のなかには、さまざまなムダや非効率が内包されています。個々の影響は小さくとも、それらの課題が蓄積していけば、組織全体に大きな影響をおよぼす可能性もあります。
業務プロセス改善とは、あらゆる業務工程を細分化・可視化することで、潜在化しているムリ・ムダ・ムラを明らかにし、それらを改善するための取り組みです。業務プロセスを見直すことで、各業務が効率化され、長時間労働の是正、労働環境の改善、社員のエンゲージメントの向上などの効果も期待できます。
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