はじめに
近年、市場を取り巻く環境は非常に速いペースで変化を続けています。そのような状況のなか、多くの企業では事業継続の手段を見つけることが課題の一つです。
そのため、既存事業の継続性を高めることや将来への投資として、新規事業の立ち上げを考えている方も多いのではないでしょうか。
新しい事業を開発するには入念な準備が必要です。この記事では、新規事業開発における以下の点について解説します。
・ 新規事業開発をするうえで重要なアイデア出しの順序
・ 新規事業開発をサポートするフレームワーク
・ 新規事業開発に必要なスキル
・ 新規事業開発を成功させるためのポイント
新規事業開発はアイデア出しの準備が重要
新規事業開発とは、文字どおり「新しい事業を開発する」ことです。
既存事業で実績がある場合、過去の経験を活かして比較的容易に新規事業を始められると考える方もいるかもしれません。しかし、新規事業開発はゼロベースで事業を創出することになるため、新しく企業を立ち上げるのと同等の労力が必要です。
近年では、ユニークなビジネスが数多く登場しており、新規事業開発の難易度も高くなっています。そのため、事業内容のアイデア出しの段階で、入念な準備が必要となるのです。その反面、事業開発に時間をかけすぎると、市場ニーズに合わなくなるおそれもあります。
新規事業開発では、市場の動向をよく観察し最適なタイミングで参入する判断力も求められるでしょう。
新規事業開発のアイデア出しの順序
どのような事業にするのか、というアイデア出しは非常に重要です。新規事業開発のアイデア出しは、まずデータ収集から始まり、仮説を立て、アイデアを具体化するという流れで行います。それぞれの工程について、詳しく見ていきましょう。
1.データ収集・精査
アイデア出しの材料となるデータ収集を始め、集めたデータをもとに、顧客ニーズや市場の動向、自社の課題や強みなどを洗い出していきます。
集めたデータのなかから、内容を精査し必要なものだけを抽出して扱います。収集データをそのまま用いた場合、情報の重複や不要な情報が含まれていることでアイデア出しの妨げになる可能性があるのです。
アイデア出しをスムーズに進めるためにも、収集データの精査は非常に重要な工程といえるでしょう。
2.データから仮説を立てる
次はデータから仮説を立てていきます。
具体的には、抽出したデータに対して仮説を立て、仮説が正しいのかを検証する作業です。例えば「○○の状況であれば、△△の売上が伸びるのではないか」「○○を実現するには△△が必要なのではないか」などのさまざまな仮説を立てて検証し、徐々に仮説の範囲を広げていきます。
仮説の根拠となるデータがあれば、仮説からより具体性のある予測が可能です。
3.仮説からアイデア化する
検証した仮説をもとに、アイデアを具体化していきます。
アイデアを裏付けるデータがあれば、説得力のある企画立案が可能となります。そのため、あらゆる角度から仮説を立て、検証しておくことが非常に重要なのです。
アイデア出しは一人よりも、事業開発の担当者全員で時間をかけて議論を重ねることが望ましいです。なぜなら、新規事業に関するアイデア出しは、一つのユニークなアイデアを出せば良いというわけではないからです。アイデア出しが不十分だと、実行段階で想定外の壁にぶつかった際に失敗する原因にもなります。より多くのアイデアを集めるためにも、複数名で取り組むとよいでしょう。
ただし、新規事業開発では時間をかけすぎると、市場に参入する機会を逃してしまうおそれがあります。アイデア出しは重要な工程ですが、期間を決めて取り組むよう心掛けてください。
4.アイデアを具体的なプランにする
考えたアイデアのなかから、具体的な実現性があり、ビジネスとして有望なものを選択していきます。
アイデア出しを十分に行うことで、アイデアを比較したり、アイデア同士を組み合わせたりできるため、より良質なアイデアを生み出すことにつながります。
新規事業のアイデアが決まったら、フレームワークを活用して具体的な事業開発のプランを決めていきましょう。
新規事業開発をサポートするフレームワーク
アイデアをより広げるためには、フレームワークを軸に分析をすることをおすすめします。ここでは、新規事業開発をサポートするフレームワークを2つ紹介します。
SWOT分析
SWOT(スウォット)分析とは、4つの要因から自社の状況を分析するためのフレームワークです。SWOTという名称は、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の頭文字をとって命名されています。
SWOT分析では、自社がどのような環境に置かれているかを、客観的に考えることができます。事業課題や市場機会は、新規事業を立ち上げるうえで事前に知っておく必要があるのです。状況を俯瞰してとらえ、冷静に判断するために有効な手法といえるでしょう。
PEST分析
PEST分析とは、企業が影響を受ける外部環境を分析するためのフレームワークです。いわゆるマクロ環境分析に特化しており、政治(Politics)、経済(Economy)、社会・ライフスタイル(Society)、技術(Technology)の4項目における影響を分析する手法です。
社会変化への柔軟な対応は、安定した事業継続のために必要不可欠です。事業に影響する世の中の動きを分析することで、現状を正しく理解し将来的なリスクを把握することが可能となります。
ビジネス戦略立案に役立つフレームワークについては、別のコラム『DX戦略に欠かせないビジネスフレームワーク』でも詳しく触れています。
新規事業開発に必要なスキル
新規事業開発では、アイデア出しから実行までさまざまな工程を経て進めていきます。チームでプロジェクトを進める際、メンバーに求められるスキルとはどのようなものなのでしょうか。
データ収集能力
新規事業開発では、あらゆるデータを収集・分析し将来性のあるアイデアを創出していきます。また、データを精査して有益なデータを抽出することも求められます。
新規事業の市場の動向や、顧客ニーズといった多種多様なデータを必要とするため、データ収集能力は非常に重要なスキルの一つでしょう。
ロジカルシンキング
仮説を検証し、客観的かつ論理的に考えられる人材も求められています。状況を俯瞰でき、多角的な視点で物事をとらえられる人材は、事業開発を成功させるために重要な存在です。
また、上層部や関連部署の理解を得るために、合理的でわかりやすい説明能力や、コミュニケーションスキルも欠かせません。
プレゼン能力
素晴らしい事業案を持っていても、プレゼン能力がなければ魅力やメリットを十分に伝えられません。
新規事業の戦略や活動計画は、関係部署へ正確に共有する必要があります。そのため、プレゼン能力や、アイデアを適切に言語化できる能力は必須なのです。
実践的イニシアティブ
新しい事業の立ち上げは、ゼロベースで行うことになります。まだ社内にノウハウの蓄積がなく、自ら考えて行動できる人材が必要不可欠です。メンバーに実践的に活動できる人材がいることで、周囲も動きやすくなります。さらに組織全体の風通しも良くなっていくでしょう。
しかし、すべてのメンバーが能動的に動ける組織はなかなかありません。理想の人材を集めるのに時間をかけすぎると、市場参入の機会を損失するおそれもあります。
新規事業開発を成功させるためのポイント
新規事業開発の成功には、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。ポイントについて、具体的に見ていきましょう。
既存技術を応用して初期コストを抑える
基本的にゼロベースで進めていくため、高額な初期投資が必要な場合も多くあります。
しかし、既存事業のノウハウを活かした事業開発に着手することで、既存事業と重なる分の投資コストを削減可能です。知見がある分、失敗のリスク軽減にもつながります。
社内で事業開発を担える人材を育成する
社外から新規事業の経験者を獲得し、その知見を事業開発に活かす方法もあります。経験者がいることで、事業開発を効率的に進められるでしょう。また、成功や失敗の経験を知れるというメリットもあります。
経験者の持つノウハウから社内で人材育成をすれば、事業の継続的な成長も期待できます。
実行・検証・改善のサイクルをスピーディーに行う
事業は、立ち上げ後に「実行・検証・改善」のサイクルをスピーディーに回すことが非常に重要です。市場に合わせてこのサイクルを繰り返すことで、よりニーズに沿った施策を講じることができます。
また、検証結果に合わせて、ビジネスモデルや提供サービスを柔軟に修正していくことも大切です。
ターゲットとニーズを正確に把握する
新規事業を成功させるには、サービスのターゲット層や顧客ニーズを正確に把握することが求められます。
アイデア出しで顧客ニーズを予想しますが、ニーズは仮説段階と実行段階で異なる場合も少なくありません。より正確なニーズを把握するために、データの検証を繰り返す必要があります。
ターゲットの潜在ニーズを引き出せれば最適な価値提供につながり、ビジネスを軌道に乗せられるでしょう。
まとめ
近年、市場ニーズはスピーディーかつ多様に変化を続けています。事業の継続性を高めることや将来への投資として、新しい事業開発に乗り出す企業も増えています。
新規事業開発では、市場のあらゆるデータを収集し、精査・分析を重ねることが重要です。有益なデータをもとに実現性の高いアイデアを創出することで、説得力のある提案が可能となります。
新規事業開発の成功には、市場ニーズに合わせたビジネスモデルを柔軟に変化させていく必要があります。メンバーに事業開発経験者がいれば、そのノウハウで効果的な施策を講じることもできるでしょう。
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