はじめに
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、2004年にウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念です。その後、経済産業省は2018年に「DX推進ガイドライン」を公表し、2022年には内容を改定した「デジタルガバナンス・コード2.0」を発表、2024年6月には更なる改定を施した「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」を発表しています。
経済産業省は、DXを次のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
引用:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」
DXは、企業価値向上を実現するために取り組むべきものです。しかし、DXの必要性を認識しつつも、思うようにDX化を進められない企業も少なくありません。なぜなら、DX化には、DX化のノウハウや、DX推進ができる人材が必要だからです。そのため、企業のDX推進をサポートする「DX支援サービス」のニーズが高まってきています。
この記事では、DX支援サービスの種類や、DX支援を受けるメリット、DX支援サービスを選ぶ際のポイントについて解説します。
DX支援とは
DXを推進するには、事業戦略の見直しや、自社の課題の洗い出し、DX人材の育成、基幹システムの整備など、さまざまな壁が存在します。自社内だけでDXを進めるのは非常に難しいといえるでしょう。
そのようなDXに関する悩みを抱える顧客(企業)に対し、DXのサポートを実施するのが「DX支援サービス」です。具体的には、以下のような総合的なサポートを受けられます。
● DX化の目的の顕在化
● 顧客の課題を解決できる最適なITソリューションの選定
● ITソリューションの導入
● ITソリューションの運用
初めてDXに着手する企業だけでなく「DXに取り組んだが成果を得られなかった」という場合に対応しているDX支援サービスも存在します。
DX支援サービスの種類
DX支援サービスは、サポート内容によって「デジタル技術支援サービス」と「ビジネス変革支援サービス」の2種類に分けられます。DX支援を依頼する場合は、自社に必要なサポートが受けられるサービスを選ぶことが重要です。
デジタル技術支援サービス
デジタル技術支援サービスは、おもに「デジタル技術の導入」を支援するサービスです。
さまざまなデジタル技術が存在するため、DX支援サービスの内容も多岐にわたります。例えば、基幹システムの設計・構築、データ分析、IoT・AIの活用などは、デジタル技術支援における代表的なサービス内容といえるでしょう。
ビジネス変革支援サービス
DXの目的は、単にデジタル技術を導入することではありません。デジタル技術を導入し、ビジネスに革新的なイノベーションを起こして、競争上の優位性を確立することが目的です。
ビジネス変革支援サービスでは、DXを推進するにあたり「ビジネスをどのように改革するか」に重点を置いた支援を行います。
例えばパソナがご提供している「ビジネス変革内製化支援サービス」では以下のようなサポートが受けられます。
<企画> 事業創出のためのアイディエーションワークショップ
<企画> 顧客視点のサービスデザイン体験
<構想> プロトタイプ開発による実現可否・事業化是非の判断
<設計・実装> さまざまなスキル・開発経験を持つエンジニアによる共創型開発
<設計・実装> 「アジャイル」手法の活用・ノウハウの蓄積
“何から始めれば良いのか?”“実際にどう進めていくのか?”
“企画はあるが実現するための体制やリソースがない”
パソナの『内製化支援サービス』はビジネス創出とお客様の自らの力だけで自走できる組織づくりを実現します。
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ビジネス変革内製化支援サービス
政府によるDX支援
経済産業省では、企業のDX推進に向けてDX推進指標を策定し、補助金や助成金制度も設けています。
DX推進指標の策定
DXでは、デジタル技術を用いて新たな価値を創造することが求められます。しかし、多くの企業は、DX推進において「どのような価値を創出するか」ではなく「どのようなツールを導入するか」という発想に陥りがちです。
DX推進指標は、DX推進に向けて企業が自社の現状や課題、とるべきアクションを把握することを目的として作成されました。DX推進指標を用いて自社の課題を診断し、その結果をもとに具体的な行動につなげていきます。
DXは漠然としたイメージだけで進めても、自社に適したアクションを起こすことは困難です。DX推進指標を用いた自己診断は、DXの目標を明確にし、効果的な取り組みを実施するうえで有効な手段の一つといえます。
参考:独立行政法人情報処理推進機構『「DX推進指標」とそのガイダンス』
補助金・助成金制度
DXに取り組む企業に対し、政府や自治体が補助金・助成金制度を設けています。
<DX推進支援の補助金・助成金制度の例>
● IT導入補助金
● ものづくり補助金
● 事業再構築補助金
● 地域新成長産業創出促進事業費補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者を対象とした補助金で、ITツールの導入に活用できる制度です。通常枠のほか、複数社連携IT導⼊枠、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠など複数の申請枠があります。それぞれ申請スケジュールや要件などが異なるため、事前に公式サイトで最新の情報を確認してください。
参考:中小企業庁「IT導入補助金2025」公式サイト
DX支援を受けるメリット
DX支援を受けるメリットについて、具体的に見ていきましょう。
DX導入時の目的の明確化
DXを導入する際は、DXの目的を明確にすることが非常に重要です。
DXにおけるITツール導入やデジタル化は、ビジネスモデルを変革するための手段にすぎません。しかし、DXの目的が明確化されていないと、IT化が目的となってしまい、DXが失敗することも考えられます。
DXの目的を明確化するには、企業の課題を分析したうえでビジネスモデルを設計する必要があります。DX支援サービスを活用すれば、企業のDX化に精通したコンサルタントによるサポートを受けられるため、より自社に合ったDX推進が可能となります。
DXを叶える最適なソリューション技術の選定
企業のDXでは、新たなITツールやシステムを導入することが多くあります。
しかし、新たなITツールを導入しても、ツールが社内のニーズに合っていなければ、課題解決やビジネスモデルの革新にはつながりません。
DX支援を受けることで、DX実現のために最適なITソリューションを選定することができます。自社の抱える課題に対し、課題解決に必要なツールの導入が可能です。
DX導入後の運用・人材育成を含めた内製化支援
DXは一度推進すれば終わるというものではなく、継続して取り組む必要があります。そのため、DX推進を担える人材を社内で育成することが重要です。
DX支援サービスのなかには、導入後の運用や、社内のDX人材育成をサポートするプランも存在します。DXの知見を持つコンサルタントのアドバイスを受けながら、社内にDXを継続できる体制を構築できるのは、DX支援を利用する大きなメリットといえるでしょう。
DX支援サービスを選ぶ際のポイント
DX支援サービスを提供する事業者は増えており、自社に適した支援を受けるためには複数のサービスを比較・検討して決めることが重要です。ここでは、DX支援サービスを選ぶ際にどのような点に着目すれば良いのかを解説します。
得意分野で選ぶ
DX支援は、サービスごとに得意領域が異なるため、自社のニーズと得意領域が合うサービスを選ぶことが重要です。
得意領域は、おもにデジタル技術支援、ビジネス変革支援に分けられます。事業戦略の立案からサポートを受ける場合はビジネス変革支援・デジタル技術支援の両方に長けたサービスを選ぶことで、一貫したサポートを受けることが可能です。
DX支援実績が豊富なサービスを選ぶ
DX支援の実績確認も、サービス選定の重要なポイントです。実績が豊富なサービスであれば、蓄積したノウハウを活かした柔軟な支援を受けられるでしょう。
DX支援の実績を確認する際は、自社のニーズと近しい実績があるか、自社の業界における実績・知見があるかに着目してみてください。これらの条件をクリアしているサービスであれば、DX支援が良い結果に結びつきやすいといえます。
パソナではDX人材開発支援のサービスをご提供しております。
サービスについて詳しくご覧になりたい方は以下のリンクにアクセスください。
DX人材開発支援
DX支援を受ける際のデメリットや注意点
DX支援サービスの利用は、DXを効率良く進めるのに有効な手段です。しかし、DX推進は長期間におよぶことも多く、費用や期間の見積もりが不十分な場合は予算や事業計画に支障が出る可能性があります。
DX支援サービスを受ける際は、事前にどのような点に注意すべきかを認識しておくことが重要です。DX支援を受ける際の注意点について、具体的に見ていきましょう。
導入するツールの費用対効果をきちんと考える
新しいITツールを導入する場合、ITツールの初期費用や維持コストがかかります。そのため、継続的に発生するコストも加味した予算を組む必要があります。
ITツール選定の際は、ツールの機能だけでなく、費用対効果や導入後の運用方法もしっかり考えることが重要です。DX支援を活用すれば、多種多様なITツールのなかから、自社に適したツールの提案が受けられます。
ツール導入後のフォロー体制を整える
「ITツールが現場に浸透しない」「ツールを使いこなせる社員が少ない」など、ツール導入後の悩みを抱える企業は少なくありません。
新しいITツールを導入する場合は、現場の社員がツールを使いこなせるよう、フォロー体制を整えることが大切です。ツールに関する研修の実施や、マニュアルの作成など、ツールが現場に浸透するための取り組みも求められます。
PDCAを回していく必要がある
DXは一度目標を達成して終わりというものではなく、継続することで成果につなげる取り組みです。DX推進後も、社会やビジネスの状況に応じて社内システムの見直しや、改善・変更をしていく必要があります。
また、DX支援サービスを利用しても、DXの成果が出るまで時間がかかることや、思うような効果が得られない可能性もあります。そのような場合は、何度も分析や評価を繰り返し、試行錯誤しながらより良い成果を目指していくことが重要です。
このように、DX支援サービスの依頼期間が長期になる可能性がある点は、あらかじめ理解しておきましょう。
まとめ
DX推進のためには、IT技術に関する幅広い知見や、人材育成能力、コンサル能力など専門性の高いスキルを有した人材が必要不可欠です。しかし、社内にDX人材がいない企業も多く、DXが進められずにいるケースも少なくありません。
企業が抱えるDX推進の問題を解決する手段の一つが「DX支援サービス」の活用です。
なかには、DXをどのように進めるのか、自社の現状や課題はどのような点なのかなど、DX戦略の策定からサポートを受けられるサービスも存在します。ITリテラシーに不安のある場合でも、専門家の知見を活かしたDX推進を行える点は大きなメリットといえるでしょう。
DX支援サービスを選ぶ際は、どのようなサポートが必要なのかを洗い出し、自社のニーズとマッチしたサービスを選ぶことが重要です。DX支援の実績が豊富なサービス提供会社であれば、自社に適した支援を受けられるでしょう。
パソナでは、DXを推進できる人材の育成や、DXによる新たなサービスの創出など企業のDX推進を総合的にサポートする「DX人材開発支援サービス」を提供しています。DX人材不足や、DXの成果が得られずに悩んでいる方は、以下の問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。