はじめに
スマートフォンやタブレットの普及を受け、アプリ開発をしたいと考えている企業も多いのではないでしょうか。そのアプリ開発における費用の見積もりは、多くの企業担当者にとって悩みの種です。新しいアプリを立ち上げたいけれど、どのくらいのコストがかかるのか明確に理解できず、計画を進めるのが難しいと感じている方もいるでしょう。
そこで、この記事では、アプリ開発に必要な費用がどのように決まるのかを詳しく解説し、相場を知ることで適切な予算設定を行い、コストを抑えるための方法についてお伝えします。この記事を読み終わる頃には、アプリ開発にかかる費用の全体像を把握し、コストを賢く管理するための知識を得られるでしょう。ぜひ、ご参考にしてください。
アプリ開発の費用は人件費×開発期間で決まる
アプリ開発の費用は、主に人件費と開発に要する期間の掛け合わせで決まります。具体的には、プロジェクトに関わるエンジニアの数やスキルレベル、そして開発が完了するまでの時間が大きな要因です。優秀な人材を多く揃えるほど人件費は増加しますが、開発期間を短縮できる可能性もあります。効果的に人件費と開発期間を管理することが、費用の最適化につながります。また、サービスを維持するための固定費なども必要になるため、事前にどの程度の予算が必要になるのかをしっかり把握しておくことが重要です。
まずは、アプリ開発のおもな費用について見ていきましょう。
費用の大枠は「エンジニアの人件費」と「開発期間・開発工数」で決まる
アプリ開発にかかる費用の大部分は、開発メンバーの人件費と開発期間・開発工数に左右されます。プログラマーをはじめシステムエンジニア、プロジェクトマネージャー、その他専門性の高いエンジニアなどがチームでシステム開発を進めることが一般的です。
役割や専門分野で人件費は異なりますが、一般的にプログラマーの月額単価は50万円以上となります。さらに、上級システムエンジニアであれば月額単価120万円以上ともいわれています。また、プロジェクトの開発期間は、複雑さや要求される機能の数によって変動します。
開発工数が増えれば増えるほど、必要な開発者数や労働時間が増大し、それに比例して人件費も増加します。加えて、開発期間が長引くと、全体のコストが膨らむため、プロジェクト管理と計画が費用面での成功に重要です。これらの要素を把握し最適に調整することが、無駄のないアプリ開発の鍵となります。
アプリを維持するには「固定費」が必要
アプリは一度開発をすれば終わりではなく、リリース後もシステムを維持・管理するための固定費が必要です。おもな固定費には、ドメイン取得料金・SSL証明書費用・サーバーの維持管理・機材や設備の管理費用・アプリストアへの登録料などが挙げられます。また、OSのアップデートに対応する保守費用も重要です。スマートフォンのOSは定期的に更新されるため、それに対応するための開発作業が必要となります。そして、不具合の修正やユーザーサポートも避けられない固定費と言えるでしょう。アプリ開発後も固定費は継続して発生するため、一定の予算を確保しておきましょう。
デザインを外注する場合は「デザイン費用」もかかる
アプリ開発において、デザインを外注する場合は「デザイン費用」が発生します。この費用は、デザインのクオリティや要件の複雑さ、さらにデザイナーの経験によって大きく異なりますが、システム開発と同じく人件費と制作期間によって決まるのが一般的です。プロフェッショナルなデザインはユーザーの印象を左右し、アプリのブランド価値を高めるため、特に重要です。適切なデザイナーを選ぶことで、開発の初期段階からスムーズに進めることができ、完成したアプリの魅力を向上させます。UI/UXに配慮したデザインを考え、システムに落とし込む作業を委託した場合は、月に80万円~100万円ほどの費用が必要です。
アプリ開発費用の相場について
アプリ開発費用の相場は、プロジェクトの複雑さや機能の数によって大きく変動します。一般的に、シンプルなアプリの場合は数百万円から始まり、機能が増えると数千万円に達することもあります。スタートアップ企業や中小企業にとって、この相場は参考にしつつ、具体的な要件に合わせた見積もりを依頼することが重要です。開発の規模に応じて適切なパートナーを選び、無駄のないコスト管理を心掛けましょう。
開発費用の相場はアプリの種類によって異なる
アプリにはさまざまな種類があり、開発費用を外注する際の相場もアプリの種類によって異なります。
【アプリの種類別の開発費用例】
● EC系アプリ:100万円~300万円
● カタログ・フリーペーパー系アプリ:50万円~100万円
● コミュニケーションツール系アプリ:100万円~500万円
● ゲーム系アプリ:300万円~1,000万円
● チャットボット系アプリ:50万円~100万円
● 管理ツール系アプリ:50万円~300万円
EC系アプリでは、機能や規模によりますが、おおむね100万円から300万円程度が相場です。商品管理や決済システムを含めた開発が求められるため、比較的高額になる傾向があります。
カタログやフリーペーパー系アプリは、情報の閲覧が主目的のため、50万円から100万円と比較的リーズナブルです。
メッセージングなどのコミュニケーションツール系は、機能の複雑さにより100万円から500万円と幅があります。
ゲーム系アプリはグラフィックやサウンドの質、プレイ体験に関する開発が必要となるため、開発費は300万円から1,000万円とかなり高額です。
手軽に情報をやりとりできるチャットボット系アプリは、機能が限定的であることから50万円から100万円で開発が可能な場合があります。
業務効率化を目指す管理ツール系アプリは、必要となる機能やカスタマイズによって50万円から300万円程度の範囲で開発できる場合が多いです。
開発するアプリによって搭載する基本機能は異なり、機能を増やすほど費用が大きくなるため、多機能なアプリの開発費は高額になりやすいです。
アプリに最低限必要な機能や、利便性を向上させるために必要な機能などを洗い出し、開発コストと機能が見合っているか事前によく検討しておきましょう。
アプリの維持コストについて
アプリの維持にはサーバーやアップデート費用が必要です。
アプリをリリースしたあとのおもな維持・運用コストについて、具体的に見ていきましょう。
サーバー保守費用
サーバー保守とは、サーバーが安定して稼働するための監視や、トラブル発生時の復旧・修理作業などのサーバーメンテナンス業務全般です。
アプリを安定稼働させるためには、アプリのリリース後もサーバーの保守が欠かせません。サーバーの安定性やセキュリティを維持するために、定期的なアップデートや監視が不可欠です。ここにかかるコストは、サーバーの規模やトラフィック量により異なるため、予算に応じたプランを選ぶことが重要です。予算を組む際は初期費用に加え、サーバーの維持費用やメンテナンス費用などのランニングコストも加味する必要があります。
保守契約を外部に委託する場合、サポート内容や対応スピードも考慮し、契約内容をしっかりと確認することで将来的なトラブルを未然に防ぎましょう。
OSのアップデート対応
AndroidやiOSのOSは、定期的にアップデートされます。アプリ運営者はOSのアップデートでアプリがどのような影響を受けたのかを把握し、適切に対応しなければなりません。
アップデート内容によってはテストや修正を行う必要があり、対応にはエンジニアの工数がかかり、その分だけ費用が増加します。さらに、新しいOSバージョンの機能を積極的に活用したい場合も追加の開発が求められることがあります。これにより、アプリの品質を保ちつつユーザー満足度を高めることが可能です。
不具合の修正
アプリ開発が完了しても、不具合が発生することは避けられません。不具合の修正には、まず不具合の原因究明が重要です。これにはエンジニアチームがログやユーザーフィードバックを分析し、問題箇所を特定します。修正にはコーディングが必要となり、想定以上の時間とリソースが費やされることもあります。特に複雑な不具合は、修正後のテストも含めて慎重に対応しなければなりません。迅速で正確な対応が求められ、これが開発コストに影響を与える要素の一つです。
アプリ開発費用を抑える方法
アプリ開発では、数百万円規模の費用がかかることも少なくありません。「できるだけ開発費用を抑えたい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、アプリ開発の費用を抑える方法についての具体的なポイントを説明します。
アプリの要件・機能を具体的に設定する
費用を抑えるには、いかに開発をスムーズに進められるかという点が重要です。
開発中に内容を変更したり、新たな機能の追加を依頼したりすると開発期間が延びて費用も膨らんでしまいます。また、多くの機能を搭載しても、ユーザーが不要と感じれば「使いにくさ」につながってしまうこともあります。
このような事態を避けるためには、アプリの目的やターゲットユーザーを明確にし、それに基づく必要な機能をリストアップ、開発の優先順位を整理することが重要です。優先順位の高い機能から開発を進めると、プロジェクト全体の予算やスケジュールが管理しやすくなります。また、必須機能と追加機能を区別し、最小限のプロダクトで市場に投入してフィードバックを得るMVP(Minimum Viable Product)戦略を採用することも効果的です。これにより、ユーザーの求める機能に基づく最適なアプリ開発が可能となります。
最低限必要となる機能の洗い出し、それに機能を追加していくことで優先順位をつけることが重要といえます。
アプリに搭載する機能をしっかり精査できれば、開発もスムーズに進められるでしょう。
具体的な要件定義は、開発開始前にしっかりと時間をかけることになりますが、結果的に費用対効果の高いアプリを生むカギとなります。
自社で対応できる部分を洗い出す
アプリ開発を制作会社に依頼する場合、すべてを任せるのではなく、自社でできる部分は社内で対応する方法もあります。社内で対応可能な工程があれば、外注する作業量が減り開発コストを抑えられます。
例えば、アプリ開発にはニーズ分析や基本的な要件定義が不可欠ですが、これらは社内での会議や市場調査を通じて対応可能です。
コンテンツ作成もマーケティング部門が強い企業であれば、内製化を検討する価値があります。さらに、簡易なプロトタイプやモックアップは、無料または低コストのツールを利用しながら社内で制作することができます。これにより、外部に依頼する前に自社のリソースを最大限に活用し、初期費用を削減することが可能になります。
ただし、アプリ開発の工程を自社で引き受けると、社内業務の負担が増える点には注意してください。自社で工程の一部を引き受ける際には、事前にメリットとデメリットについてよく検討する必要があるでしょう。
パソナでは総合力でお客様に伴走できる内製化支援を実施し「新しい価値を産みだすとともに、不要なものは捨てていく」ことを一緒に実現します。
ご相談は社内にエンジニアがいない状況からでも可能です。また、特定の技術こだわらず、ニーズに合わせて柔軟なソリューションをご提案いたします。
詳しくはこちらのページにてご紹介しております。
レベニューシェアを検討する
レベニューシェアとは、アプリの開発や運営において、売上を開発者や運営者と事前に取り決めた割合で分け合うビジネスモデルです。レベニューシェアの大きなメリットは、初期費用を大幅に抑えられるという点にあります。制作費用を依頼者側と制作会社で分担するため、大規模なアプリ開発でも費用を抑えることができるのです。
レベニューシェアでは、アプリの成功が制作会社の収益にも直結します。そのため、制作会社に提案する際「このアプリが確実に利益につながる」ことを論理的に説明し、納得させられるだけの企画力と交渉力が求められます。
レベニューシェアでは、アプリのリリース後に売上が伸びなかった場合も、赤字リスクを通常より抑えられるという利点もあります。その反面、アプリが成功した場合の利益も2社で分配するため、小さくなるという点は覚えておきましょう。
アプリ開発で失敗しないためのポイント
アプリ開発で失敗する要因はさまざまです。その一つに「予算の見積もりが不十分」が挙げられます。開発費用はもちろん、維持費用、突発的に必要な費用など、あらゆることを加味して予算を確保しておくことが大切です。
ここでは、アプリ開発で失敗しないための具体的なポイントを2つ紹介します
開発以外の費用も考慮する
アプリ開発を進める際には、開発そのものにかかる費用だけでなく、アプリを開発したあとの費用にも目を向ける必要があります。
アプリの運営者は、ドメイン・サーバーの維持・管理費、SSL証明書費用、アプリ配布用のアカウント登録費用、ストア登録料、セキュリティシステムの維持・管理費用など、開発後にも細かい費用がかかります。
これらの費用は固定費として発生し、月単位や年単位で継続して支払わなくてはなりません。アプリ開発を検討する際は、初期費用以外にもこれらの費用も考慮した開発計画を立てることが求められます。
アプリ運用後のリスクへの対応予算を確保する
アプリ運用後のリスクに対して適切な予算を確保することは重要です。運用開始後に発生しうるリスクには、サーバートラブルやセキュリティ上の問題、ユーザーからの予想外なフィードバックが含まれます。これらのリスクに迅速に対応するためには、予算の一部を運用後のトラブルシューティングやアップデートに割り当てておくことが賢明です。また、リスク対応予算を適切に管理することで、アプリの信頼性を維持し、ユーザーからの信頼を失わないよう努めることができます。
まとめ
アプリ開発の費用は、開発期間や開発工数、人件費によって大枠が決まります。そのため、開発期間が長引くほど費用が膨らむ特徴があります。
アプリ開発の費用を抑えるには、要件定義にしっかり時間を割き、必要な機能の洗い出しが大切です。開発前に時間をかけて検討を重ねることで、その分無駄なコストが生じるのを防げるでしょう。要件定義では、ビジネスフレームワークを活用することで、より具体的な戦略立案や状況把握ができます。
当サイトでは、アプリ開発と密接に関連する、新規事業に関するビジネスフレームワークに関するコラムも掲載しております。
新規事業開発とは?フレームワークや必要スキルについて
自社で対応できる部分を外注内容から省き、その分の費用を抑える方法もあります。しかし、その分の社内業務は増えるため、通常業務に支障が出るおそれがあります。どこまで制作会社に依頼するか、さまざまな角度から検討することをおすすめします。
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