はじめに
DXへの積極的な取り組みを促進するために、政府はあらゆる施策を行なってきました。そのなかの一つである「DX認定制度」をご存じでしょうか。DXにおける優良な取り組みを行なっている企業が認定される制度です。IT技術の急成長を考えると、さまざまな変革が求められるDX認定制度は企業の強みになりうるでしょう。
この記事では、DX認定制度を受けることのメリットや、認定を受けるために必要な取り組みについて解説します。今後のDX社会で競争力を高めるためにも、DX認定制度について理解を深めてください。
DX認定制度とは
DX認定制度は政府が行なっている施策の一つで、DXに取り組んでいる企業を後押しする目的が含まれています。どのような企業が認定されるのかについて解説しますので、DXに取り組んでいる、あるいは今後取り組む予定のある方は、ぜひ参考にしてください。
優良なDX取り組み事業者の証
そもそもDXへの取り組みは、デジタル技術の活用によってビジネスモデルの新たな構築や変革を実現し、組織における競争力の強化などを目指すために行なわれます。
DX認定制度は、2020年5月15日施行の「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づいた認定制度です。認定された企業は、DXへの取り組みを行なっている優良企業として国から認めてもらえます。
一定の要件を満たした事業者であれば、すべての事業者が対象となる制度のため、公益法人を含む法人、個人事業主でも申請可能です。なお、パソナグループも2021年4月にDX認定制度 認定事業者として登録されています。
DX認定を受けた際には、DXに取り組んでいることを証明するロゴマークの使用が認められます。これにより、各方面へのPRが可能となるため、企業の信頼性がより高まるでしょう。
認定基準
経済産業省が発行する「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」によれば、DX認定制度の認定基準は、ガバナンス・コード(経営者に求められる企業価値向上に向け、実践すべき事柄)に紐づいた4つのレベルに分類されています。
1. DX-Excellent企業
2. DX-Emerging企業
3. DX認定事業者(DX-Ready)
4. DX-Ready以前
今回解説するDX認定制度は「DX認定事業者(DX-Ready)」の基準を満たす事業者を認定します。認定を受けられる企業は、デジタル技術の活用による組織変革(DX)の準備(Ready)が整っている状態の企業です。
上位レベルの「DX-Excellent企業」や「DX-Emerging企業」は、DX認定事業者のなかから選定されるため、まずはDX認定事業者(DX-Ready)の認定を受けなければなりません。
DX認定制度に申請するメリット
DX認定制度に申請すれば、企業にとって有利に働く要素が非常に多いため、DXに取り組む際は認定制度に申請する前提で進めるのがおすすめです。
ここでは、DX認定制度に申請することで得られるメリットを具体的に解説します。DX認定制度を検討する際の参考にしてください。
DXに向けた自社課題が明確になる
DX認定を受けるためには、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)に所定の事項を申請しなければなりません。申請書の設問内容に回答し、自社企業が認定基準を満たしていることを示します。
申請書の設問内容は、DXを推進するための経営体制や、DX達成の指標など、DX推進における具体的な方針についての確認です。設問への回答にあたり、自社の状況を認識する必要があるため、自社が抱えている課題が明確になります。
計画性のないDX推進を行なったとしても、自社にとって効果的な戦略につながるとは限りません。DX認定制度の設問に回答することで、DXに必要な情報や論点を整理し、自社の状況に適したDXの推進が可能になるでしょう。
企業価値などの向上により信頼性が高まる
DX認定を受けた事業者は、経済産業省のウェブサイトやIPAウェブサイトの「認定事業者一覧」など、あらゆる場所で企業名が掲載されます。公的機関のウェブサイトに掲載されるとなれば、取引先や関連企業、顧客からの信頼が高まるきっかけとなるでしょう。
経済産業省のウェブサイトにおいては、DX注目企業として掲載されるため、国からDXへの取り組みを認められた証明となり、ブランド力や企業価値の向上が期待されます。社会に対する価値提供の高さも評価され、競争力の強化にもつながるでしょう。
また、業務効率化や組織変革が実現していることが証明できるため、人材採用時のアピールポイントになります。応募者に良い印象を与えることで、より優秀な人材を獲得できる可能性が期待されるでしょう。
DX認定制度を受けるために効果的な取り組みとは
DX認定制度に申請する場合、DXを実現できる環境を整えておくことが重要です。特に、デジタル技術やデータを活用できる状態であるのが有効といえるでしょう。
ここでは、DX認定制度の申請までに進めておきたい取り組みについて解説します。自社の業務に採用できるものは、積極的に取り入れてください。
RPAの活用
RPAとは、ロボットが人間に代わり業務を行なってくれる仕組みのことで、集計や入力などといった単純作業の自動化を実現します。単純作業に割く時間が軽減され、プライオリティの高い業務に注力できる環境が整うでしょう。
手動による作業では、どれだけ注意していてもヒューマンエラーが発生してしまう可能性があります。ミスによる作業のやり直しを行なわなければならず、業務負担が大きくなるでしょう。RPAを活用すれば、一定のパフォーマンスを保てるため、ムラのない業務が可能です。また、業務が自動化されることで、従業員の作業負担が大幅に抑えられ、人件費の削減にもつながります。これにより、休日出勤や残業を最小限に抑え、従業員の健康面も守られるでしょう。RPAの導入により、業務効率化だけでなく企業の利益にも大きく貢献します。
IoTの活用
IoTはあらゆるモノをインターネットに接続することにより、センサーでのデータ収集が可能です。身近にあるIoTデバイスでいえば、指紋センサーやGPSなどが搭載されているスマートフォンが挙げられます。IoTの活用は、人が行なう業務とシステムなどを連動させ、業務における負担を軽減する環境が整うでしょう。IoTで取得したデータを分析すれば、改善すべき業務フローや新たな課題の発見につながります。これにより、品質改善や生産性の向上が見込めるため、DXの推進で大きな役割を果たすでしょう。
ITツールの活用
DXを進めるにあたり、ITを活用した業務効率化や顧客情報のマーケティングデータ化は有効な対策と考えられます。これまで紙でやり取りしていた業務がデジタルデータとなり、資料の作成や手渡しの労力が軽減されるでしょう。
DXを行なうためには、電子決裁システムやワークフローシステムなどのクラウドサービスを活用し、データの管理や必要な手続きを自動化する環境が有効です。特に、一連の流れが決まっているプロセスなどの電子化は、自動化によって作業効率が大幅に向上します。
ITツールの活用は、業務効率化から生産性の向上へとつながり、さらにデータ消失のリスクも軽減されます。DXによる組織変革は、企業にあらゆるメリットをもたらすでしょう。
DX認定の申請方法を解説
DX認定制度に申請する際は、行政サービスへのログインに必要な「gBizID」を事前に取得しておく必要があります。
IPAのウェブサイトにて「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」を確認し、申請の手順および準備する必要のあるものをチェックします。
IPAウェブサイトにある「認定申請書」と「申請チェックシート」をダウンロードし、申請書に記載されている設問に回答してください。申請書の書き方については、すでに認定されている企業が提出したファイルの閲覧が可能なため、参考にするとよいでしょう。
なお、補足資料が必要な項目などもあるため、忘れずに準備してください。
準備が整ったら、IPAの「DX推進ポータルサイト」から必要書類の提出を行なうことで申請が完了します。なお、申請内容や必要書類の確認は十分に行いましょう。
申請の受付後、IPAによる審査が始まり、経済産業省による認定手続きが完了すればIPAから事業者にメールで結果が送られます。審査結果が届くのは、おおむね60日前後です。
DX認定制度に申請し自社業務の品質と信頼性を高めよう
DX認定制度への申請により、自社課題などが明確になることで、DXに必要な環境の整備が行なえます。また、業務品質を高める機会となり、あらゆる側面のメリットが期待されるでしょう。
DX推進の税制支援には適用期限が設けられていることや、取引先や顧客からの信頼が高まる可能性も高いことから、DX認定制度の申請に向けた体制を早めに整えるのが賢明です。