はじめに
2022年は引き続き新型コロナウイルス感染症の影響を受けた生活が続き、歴史的な円安や大手テック企業での大量解雇、世界情勢を見るとロシアのウクライナ侵攻による物価高騰など激動の1年だったのではないでしょうか。
コロナ禍で生まれたデジタルを活用した新たな生活様式や働き方は、今や当たり前となりました。ビジネスにおいてもDXを全社レベルで取り組むべき最重要事項としている企業は多く、さらなる成長にはデジタル技術を活用することが必要不可欠であると引き続き実感した年でもありました。
そこで今回は、2023年にDXの進化を加速させると予想されている注目のデジタル技術をご紹介します。
忘れてはいけない「2025年の崖」
DXの進化を加速させると予想されているデジタル技術の前に、DXを促進するうえで知っておきたいキーワード「2025年の崖」をご紹介します。
「2025年の崖」は経済産業省がDXについてまとめたDXレポートの中で使われているキーワードです。DXレポートでは、もし日本企業がこのままDXを推進できなかった場合、2025年以降の5年間で、最大で年間12兆円の経済的な損失があると算出し、警鐘を鳴らしています。
12兆円もの経済損失が発生する理由として、経済産業省は「レガシーシステムに起因するシステム障害のトラブルリスク」と説明しています。
古い統合基幹業務システム(基幹システム)は長年にわたって部分的なメンテナンスを繰り返し行ったことにより、複雑化・ブラックボックス化し、仕様や設計がわからなくなり運用に大きなコストが発生しています。この複雑化・ブラックボックス化した基幹システムのことを「レガシーシステム」と呼びます。
2018年の時点でレガシーシステムに起因するシステム障害によって、約4兆円の経済損失が発生していたと推定されています。さらに今後も続くエンジニア不足やSAP ERPの保守サポート切れも加味すると、ますます保守運用にかかるコストは大きくなります。
このレガシーシステム問題は多くの日本企業が抱えている問題です。今後新しいデジタル技術を開発・導入したいと思っても基幹システムが対応することができないため、諦めなくてはならないケースもあり、企業は危機感を持ち、早急にDX推進に取り組む必要があります。
参考:経済産業省『DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~』
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2023年注目のデジタル技術 ~ガートナージャパン株式会社報告より~
2023年に企業や組織にとって注目度の高いデジタル技術を、さまざま企業が報告しています。
米国の調査会社Gartnerの日本法人ガートナージャパンは、2023年に企業や組織に重要なインパクトを与える略的技術トレンドのトップ10を発表しました。
2023年の戦略的テクノロジーのトレンドの中心テーマは最適化(Optimize)/拡張(Scale)/開拓(Pioneer)の3つとし、さらに持続可能性( Sustainability)というテーマが重要としています。それぞれのテーマについて以下のように説明しています。
信頼関係を確立する3つの「最適化」
【デジタル免疫システム】
システムの安定を脅かす障害に対応して、複数の技術を組み合わせた仕組み(免疫)を作り、障害に対する耐性を向上させるシステムのことです。この免疫のおかげで障害発生リスクを抑制するだけでなく、もし障害が発生したとしても、即時回復できるように備えておくことで不具合やセキュリティの問題などによって顧客体験が損なわれない環境を目指します。
【オブザーバビリティの応用】
データを戦略的に用いることで、作業の最適化が進むだけではなく、経営層の戦略や施策の効果などさまざまな意思決定をスピード感をもって実施することです。経験からくる勘や思いつきではなく、データを元に判断するため信頼できる数的根拠を持った判断を下すことができます。
※ビジネスで重要な役割を持つデータ活用について、詳しく知りたい方は以下のコラムにてご紹介しています。
⇒進化するデータ活用!~取り組むメリット・注意点・最新事例をご紹介~
【AI TRiSM】
AIの信頼性(Trust)、リスク(Risk)、セキュリティ管理(Security Management)を組み合わせた造語です。AIの行動に対しての責任や、プライバシー保護の観点でまだ不安を感じている企業が多くあるのも事実です。3つの観点から積極的にAIの管理をし続ける組織はAIプロジェクトにおいて高い成果を出していることがわかっています。信頼性の高いAI活用をするために正しい対策を実施する必要があります。
成長を加速させる3つの「拡張」
【インダストリ・クラウド・プラットフォーム】
業種に特化した機能を提供するサービスのことです。業界特有の課題や利用シーンにマッチしたプラットフォームを作成することによってビジネス価値の提供をします。利用者は業界に合わせた機能を独自に作る必要がなくなるため実運用にかかる時間を短縮させることができます。
【プラットフォーム・エンジニアリング】
ソフトウェアシステムの成功に欠かせない重要な土台でありシステムの組織または構造を示し、それがどのように機能するかを説明するソフトウェアアーキテクチャの複雑化に対応したアプローチのことです。企業に固有の開発プラットフォームを作成し運用することで、開発チームの仕様把握などの認知負荷を軽減し生産性を高めます。
【ワイヤレスの高付加価値化】
ワイヤレスと聞いて想像されるのは電子機器などではないでしょうか?実際にはWi-Fiサービスや5G回線など、ワイヤレスを活用したサービスは数多く存在しています。今後もワイヤレスを活用したサービスは拡大し幅広い分野で利用されると予測されています。
変革を実現する3つの「開拓」
【スーパーアプリ】
ひとつのスマホアプリの中に、さまざまな機能をもつミニアプリを統合することです。ユーザーは複数のアプリを立ち上げ使いこなす必要がなく、ひとつのアプリ上ですべて完結するため、利便性の向上が見込まれています。日本国内ではLINEやPayPayなどがスーパーアプリの事例です。
【アダプティブAI】
これまでのAIでは対応ができなかった急激な環境変化に対応するためのAIアプローチのことです。既存のAIを超える機能の追加・高度な自動化を目指しています。
【メタバース】
バーチャルな世界で人々がさまざまな交流や経済活動などいろいろな活動ができる仕組みのこと。メタバース空間上での体験を向上させるためのデジタルデバイス開発なども進み、今後の成長が見込まれています。
※メタバースについて、詳しく知りたい方は以下のコラムにてご紹介しています。
⇒①いまさら聞けない!メタバースの基礎―メタバースが注目される理由とは―
⇒②今注目のメタバース-ビジネス活用事例を紹介-
持続可能性
SDGsやカーボンニュートラルなど環境や社会に配慮したデジタル戦略が企業に求められていますが、今後もこの持続可能な社会を目指す取り組みは不可欠です。今後の企業には新しいデジタル技術を取り入れる取り組みだけではなく、社会に対して何を還元することができるのかが求められます。企業経営戦略には「持続可能性」があるかの観点を取り入れる必要があります。
まとめ
2022年は世界的な情勢の影響を大きく受ける年でした。またデジタル技術の進歩も目まぐるしく、DXを全社レベルで取り組むべき最重要事項としてあげる企業も増加しました。企業が解決しなくてはならない2025年の崖は目前に迫っています。まずはじめに、自社のDXを実現するために何をやるべきなのかを明確にしましょう。社内での課題解決が厳しいようであれば外部ベンダー企業の協力を受けることも有用です。
2023年に注目されるデジタル技術は今後の有用性が期待されています。ぜひ自社導入を検討してみてはいかがでしょうか。