コラム
2021/07/08

従業員のメンタル不調を防ぐ健康経営の最新施策。保健師による「全従業員健康面談」とは?

テレワークが進み、働く環境や生活リズムが変わったことで、メンタル不調や体調不良をおこす従業員が増えたと、最近、多くの企業様からご相談を受けます。
こういった企業様が抱える課題は2つで、1つは今発生している人事労務部門への相談に、健康管理の専門家として応対できる担当者がいないこと。2つめに、増え続けるメンタル不調や体調不良をいち早く食いとめ、今後起こることがないように予防することです。

いずれの課題にも産業保健師の活用を強くお勧めするのですが、昨今、とくに保健師による「全従業員健康面談」を実施することで、予防対策に大きな効果を上げ始める企業が出ています。また、健康経営度調査でも保健師の活用を問う項目が多くみられ、認定法人を目指す企業にとっては、より有意義な保健師との連携に「全従業員健康面談」が大変有効です。

本稿では、保健師による「全従業員健康面談」とはどのようなもので、なぜテレワークが進む昨今、多くの企業で実施されているのか、その有効性と実施事例について、ご紹介したいと思います。

1. 保健師による「全従業員健康面談」とは?

全従業員健康面談とは、その名の通り、保健師が従業員全員と一対一で個別面談を行い、健康状態のヒアリングやアドバイスをする健康経営施策のことです。これを聞くと「そんなに予算のかかることはできない」という健康経営担当者の方もいらっしゃるかもしれませんが、実は極めて小予算で実施できる方法もあります。是非、最後までお読みください。

さて、全従業員健康面談は、より質の高い健康経営を進めていく上で、素晴らしい効果を発揮します。なぜ今、多くの企業で実施され始めているのか、その理由を3つのメリットとともに説明しましょう。

実施メリット1:テレワークに最適な健康施策

全従業員健康面談を実施する第一のメリットは、テレワーク環境に適した健康施策であるという点です。コロナ以前であれば、お互いに顔が見える中で働いていたため、不調が出ても、周りの誰かがすぐに気づけました。たとえ"待ち"の状態であっても、そういった情報は人事部に自然と集まり、社内の異変に気づくことができたのです。ところが、テレワークが始まり、従業員同士の顔を合わせる機会が減ってしまった今、もはや受動的な形では異変をキャッチすることができません。

全従業員健康面談は、人事労務部門から能動的に従業員に働きかける健康施策です。3か月や1年単位で、全従業員が保健師との健康面談の機会を持ちます。そうすることで、高い確率で従業員の不調やその前兆に気づくことができ、改善につなげられます。今は不調でない従業員にも、健康状態を維持していくための定期的なアドバイスを行うことができます。

また、すでに保健師がいる企業にとっては、保健師に相談することのよさを従業員一人ひとりに知ってもらうきっかけとなります。

実施メリット2:健康意識の低い従業員も巻き込める

普段、健康セミナーやオンラインイベントに積極的に参加する人は、健康意識の高い従業員ばかりで、毎回同じ顔ぶれになりがちです。一方、全従業員健康面談は、基本的に社長発信で、全社をあげて取り組む重要施策であることを伝えるため、普段のセミナーやイベントとは違い、参加率が格段に上がります。そのため、健康意識の低い従業員にも健康改善のきっかけを与えることが充分期待できます。

実施メリット3:健康経営度調査で有利になる

健康経営度調査には、保健師の活用について回答する項目がたくさんあります。下図に示した質問項目は、すべて産業保健業務に関連するものです。これらすべてが保健師の活用によりカバーできる業務範囲で、さらに「④健康相談対応」に関しては「メンタル不調予防」や「食生活改善施策」など、専門家である保健師がいて、はじめて成り立つ施策と言えます。

健康経営度調査における健康相談:相談窓口の拡充が問われている

ところで、全従業員健康面談に取り組もうとする一方で、予算がかかりすぎる場合には、面談対象者を絞って実施することをお勧めします。例えば、40歳の節目を迎える従業員に対象を絞ったり、役職のみ対象としたりするだけでも、充分な効果が得られます。まずは、経営陣のみで実施することもおススメです。経営陣が保健師との面談の意義に気づけば、全社的な取り組みとして浸透しやすくなるメリットがあります。

それでは、具体的に全従業員健康面談を実施する企業の事例を2つ紹介しましょう。保健師の工数、実施期間、面談の内容や一人あたりにかける時間など、企業ごとに検討する必要がありますので、是非ご参考いただければと思います。

2. 全従業員健康面談の事例1(ウイングアーク1st株式会社)

帳票・文書管理関連のクラウドサービスおよびソフトウェア開発・提供を行うウイングアーク1st株式会社では、1年間を通して、全従業員健康面談が実施されています。約600名いる従業員のうち、5割ほどがITエンジニアで、2020年から全従業員を対象に原則テレワークとする業務体制をとっています。

同社の全従業員健康面談は、シンプルな編成で実施されています。稼働する保健師は1名で、従業員は健診結果が返ってきた順番に、30分のオンライン健康面談を受けていきます。

成果を一部紹介しましょう。下の表では、2020年6月から11月まで面談を行った119名の経年変化を見ることができます。面談後、大きな変化が見られたのは、食事および間食の改善です。面談を行った従業員のうち、実に8割の従業員が食事の改善を試み、約半数の従業員が間食も改善したという結果が得られました。

保健師面談実施・未実施におけるスコアの改善状況:保健師面談実施者は未実施に比べて、特に食事・間食習慣の改善が顕著であった。

全従業員健康面談の特徴は、保健師から従業員個人の状況に合わせたヒアリングやアドバイスがなされることです。例えば、ある従業員は「普段、何を食べていますか?」と改めて聞かれることで、炭水化物に偏りがちな食事に気づき、食習慣の改善に繋がりました。また別の従業員は、面談中に保健師から家のカーテンが閉めっぱなしであることを指摘され、自宅の働く環境を改善するきっかけを得ました。

同社Wellness推進室の鳥越美由紀さんは「保健師が従業員一人ひとりと直接話すため、具体的な改善に繋がりやすい。また、様々な人の意見を吸い上げることができ、健康施策のブラッシュアップや新たな企画にもつながる」と言います。

全従業員健康面談は、社内の健康状態を個人レベルまで掘り下げてリサーチできる施策です。PDCAサイクルを着実に回し、より効果的な健康経営を進めて行くことができると言えます。

3. 全従業員健康面談の事例2(株式会社富士通ゼネラル)

株式会社富士通ゼネラルは、2017年から全社員健康面談を実施しています。規模としては、川崎本社で約1800名、岩手県一関の工場で約300名の健康面談を、一人あたり15分とり、3~4名の常勤・非常勤の保健師および看護師で行いました。

同社の全社員健康面談は、健康経営がスタートした年に早速開始されました。健康経営推進部の佐藤光弘さんによると、「当初から健康経営推進部門を社長直轄の部門におき、社長発信で、全社員健康面談が会社として取り組む重要な施策であることを社内に意識づけられた点が成功要因」となりました。

長期にわたる大掛かりな取り組みにも関わらず、保健師と従業員の面談をこれほど重視することには理由があります。佐藤さんは「社員にとって人事に直接相談しにくいことも、日頃の業務から離れた立場にいる保健師であれば、何でもフラットに相談できる相手となる」と言います。面談で初めて保健師と話す機会を得た従業員が、今度はひとりで気軽に相談に来ることもよくあります。そこには、普段の食事や運動に関する相談、時には会社の人間関係や家族の介護に関する悩みなど、放っておけば重大になりかねない問題も多くあります。一人で抱え込むことなく、気軽に相談できる保健師との関係を作るきっかけとなるのが、全従業員健康面談の意義でもあるのです。

※下図は同社の健康経営の取り組みのうち、「メンタルヘルス施策全体像」を表したもの。全従業員健康面談が、職場の活性化を促す"土台"となっていることがわかる。

全従業員健康診断→メンタルヘルス対策、職場活性化→チームビルディング、ワークショップ、チーム力発揮のための情報共有、学び・体感 で職場を「いきいき職場」に

出所:富士通ゼネラル

4. 従業員の声を傾聴できる仕組みづくりを

従業員同士の顔が見えづらくなり、働く環境の変化が激しい今だからこそ、従業員の声を能動的に傾聴できる仕組みが必要です。そして、まさに保健師はその役割を担う最適な存在と言えます。全従業員健康面談を一度でも実施すれば、思わぬ従業員の実態が見え、健康面における具体的な改善ポイントが浮き彫りになってくることでしょう。テレワーク時代の健康経営はそこから始まると言えます。

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著者名:パソナ・健康経営コラム編集部

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