コラム
2021/09/30 更新

女性社員が会社に求める健康支援とは?660名のアンケート調査から分析

企業が女性の健康支援を進めていく上で、自社の女性社員がどんな課題を抱えているかわからないという声が聞かれます。本稿では、働く女性660名へのアンケート結果から、今、企業に求められる女性の健康支援について、最も大きな課題を2つ示しました。それから、これらの課題に対して、今すぐできる女性社員への具体的な健康施策についても述べています。以下のような健康経営担当者の方は、是非ご一読下さい。女性の健康支援について、具体的なヒントが得られるはずです。

  • 婦人科健診の受診率をもっと上げていきたい。
  • 育児や介護の制度づくりには取り組んでいるが、他に何をすればいいかわからない。
  • 一部の女性社員だけでなく、全社的に広く女性の健康づくりを進めたい。
  • PMSや更年期など、女性特有の健康施策にも具体的に取り組みたい。
  • 女性の健康支援に対して、社内の理解が得られず困っている。

10月はピンクリボン月間です。是非、この機会に女性の健康支援ついて、取り組みの強化、体制の見直しをしてみて下さい。それでは、まずアンケート結果から、女性の健康づくりに関する課題を見ていきましょう。

 

 

 

1. 働く女性の多くが抱える潜在的な2つの健康課題とは?

今回の女性の健康づくりに関するアンケートでは、オフィスワーカーとして働く20代から50代の女性、660名に調査を行いました。

まず、着目すべきは、回答者660名のうち、普段仕事をしながら「不調を抱えている」と答えた女性が7割以上もいるということです。さらに、そのうち6割以上の女性が「仕事に影響があった」と回答しています。

女性の健康づくりに関するアンケート サマリー

 

不調に関して、直近3年以内で発生した症状や病気として、以下のような回答が得られました。

不調・病気の発生状況

20代~40代では月経関連の症状や疾病、PMSが多く、30代に関しては妊娠・出産に関する症状や疾病も高い割合です。40代~50代では更年期障害が多く見られ、貧血に至っては、ほぼ全年代で悩みを抱えていることがわかります。

それでは、具体的な「仕事への影響」とはどういったものでしょうか?以下がその回答です。

仕事への影響

作業効率や集中力の低下など、仕事のパフォーマンスへの影響が全年代で高い割合を占め、遅刻や欠勤など、勤怠への影響も大きいことがわかります。

そして、仕事への影響がこれほど如実にある一方、不調や病気に対する本人たちの理解度は低いことが、以下の回答結果から伺えます。

不調や病気に対する理解度

不調や症状については、そのメカニズムを理解し原因を知っているにも関わらず、具体的な対策方法までは知らない女性が多いと言えます。また、病気のメカニズムに至っては、充分に理解している女性がまだまだ少ない状況です。

最後に、以下の回答結果にも着目しておきたいと思います。不調などの際に、受診や相談をしたことがあるかという設問に、4割以上の女性が「ない」と回答しています。

受診・相談

受診・相談をしない理由として、「忙しいから」「どこに相談したら良いかわからないから」という回答が、全世代で目立っています。また「そこまで深刻な症状ではないから」と考える人が圧倒的に多いことにも注意すべきです。これには、「みんな、こんなものだろう」という声が聞かれることもあります。しかし、生理痛が辛いと感じながら過ごしてきた人は、将来的に子宮内膜症になる可能性が高まるという報告もあります。

(出所:Treloar SA et al.:Am J Obstet Gynecol. 2010)

こういったメカニズムへの理解が乏しい個人が、自己の判断で症状を放置し、不調をやり過ごすことは、大きな重症化リスクをはらむことになるのです。

以上のアンケート結果から、現代の働く女性の健康には、2つの潜在的な課題があると言えます。1つめは、不調や症状への対策の不足。女性特有の病気に関しては、きちっとした理解がないことです。つまり、リテラシーが低いということです。2つめは、安心して気軽に相談できる環境がないことです。

2. 成功事例からみる女性の健康課題に応える具体策

そこで企業は、女性の健康づくりに対して、「リテラシーの向上」と「相談環境の整備」の2つの支援を行っていくことが重要と言えます。具体的にどのような支援をすればよいか、これには、実際に女性の健康支援に力を入れる企業の事例が参考になります。

株式会社ポーラ・オルビスホールディングスでは、同社の発表によると、女性の健康をテーマにしたイベントやセミナーの開催、動画チャンネルの開設など、女性の健康に関して、女性社員だけでなく、組織全体としてリテラシーを高める活動に積極的です。それから、婦人科在籍の産業医や医師を配置し、全国の従業員が気軽に相談できるオンライン面談を導入しています。また、メールによる婦人科専用相談窓口も開設しています。
同社では、婦人科健診の受診率が毎年80%を超えていますが、この高い水準は、決して補助の充実だけによるものではないと考えられます。つまり、女性社員が普段から健康課題に対して、自分事化できる知識と対策方法を学んでおり、また、組織全体としても女性の健康に対する理解が進んでいるため、結果として受診率も高まっていると言えるでしょう。

(出所:ポーラ・オルビスホールディングス)

花王株式会社でも、女性産業医を配置し、女性の健康に関する相談窓口を設け、メール相談ができる仕組みを整えています。また、セミナーやイベントの開催以外に、イントラネット上で、年に4回、「若い世代」「妊娠出産期」「更年期」「それ以外」の4つの分野にわけた情報配信を行っています。

(出所:花王 Kirei Lifestyle Plan Progress Report 2021)

ヤフー株式会社では、「女性の健康検定」を受検できる体制を作り、正しい知識を持った社員を増やすことで、身近なメンバーにも相談をしやすい環境を整えています。男性社員や管理職、経営陣の間でも、女性の健康に関するリテラシーが向上することで、女性社員が気おくれすることなく、相談や受診に赴きやすい空気づくりができます。

(出所:株式会社日本総合研究所 働く世代が抱える見過ごされている健康課題への対応の必要性)

これらの事例はほんの一部ですが、一貫して言えることは、女性の健康支援に積極的なリーダー企業の多くが、「リテラシーの向上」と「気軽に相談できる環境整備」に力を入れているということです。

3. 「なぜ女性だけ?」の声にどう社内理解を得ていくか

女性の健康支援を進めていく上で、企業によっては、「なぜ女性だけ?」という声が聞こえてくるかもしれません。男性社員や、場合によっては経営陣からも、理解を得られないことがあります。しかし実は、これまでの一般的な産業保健や健康経営の施策では、気づかぬうちに、男性中心の健康支援に偏ってしまっていたと言えます。

例えば、メタボや生活習慣病の多くは男性にあらわれ、ゆえに現在の特定保健指導も、大半が男性に行われている傾向にあります。一方、PMSや更年期障害、貧血、痩せなど、女性特有の健康課題に対する支援は、ほとんど行われてきませんでした。今、企業の現場で求められる女性活躍をいかに推進していくか、これにはもっと女性目線で健康支援を行っていく必要があるのではないでしょうか。

「なぜ女性だけ?」の声にどう社内理解を得ていくか

4. 女性の健康へのリテラシー向上と相談環境の整備のために

本稿で述べてきたとおり、女性の健康支援について、企業がやるべきことは「リテラシーの向上」と「相談環境の整備」の2つです。

リテラシーの向上のポイントは、PMSや更年期の症状など、現在の不調がどんなリスクにつながるのか、どんな対策をすべきかを専門家目線で伝えられる機会を作り、女性社員にきっちりと自分事化してもらうことです。不調や症状に対して、適切な対策がとれれば、仕事への影響を最小限に抑えられます。また、女性特有の病気に関しても、メカニズムを理解し、重症化リスクを見極められれば、最悪の事態を避けられます。

それから、リテラシーの向上は、男性社員や上長、経営陣にとっても必要不可欠です。周囲が正しい知識をもち、会社として理解が進むことで、受診や相談がしやすい環境を作れます。その上で、実際にいつでも気軽に相談できる窓口を設置することが、働く女性の健康支援におおいに役立つのです。

弊社パソナでは、今年の9月から女性の健康支援を検討する法人様向けに、女性の健康サポートプログラム「キラサポ」をリリース致しました。キラサポは、「リテラシー向上」と「相談環境の整備」のために最適な3つのサービスから構成されています。①産業医で産婦人科医でもある高尾美穂先生による研修動画、②24時間365日、産婦人科医や小児科医にオンライン相談ができる相談窓口の設置、③日々の実践をサポートする健康コンテンツの定期配信です。

女性の健康サポートプログラム

研修動画は、期間内であれば、いつでも視聴可能です。テレビや女性雑誌でおなじみの高尾美穂先生がお話されるので、楽しみながら、ご視聴していただけると思います。また、今年の健康経営度調査では、女性向け健康施策の参加率が問われています。調査票の提出期限が迫っておりますが、より高い評価を得るためにご活用下さい。

なお、研修動画のダイジェスト版(2分)が、以下から無料でご視聴いただけます。また本稿で紹介したアンケート結果について、さらに詳しく解説したウェビナー動画(20分)もご視聴いただけます。今すぐ是非ご覧ください。

 

 

 

著者名:パソナ・健康経営コラム編集部

健康経営・産業保健の推進パートナーとして健康経営の「着実な一歩」を伴走サポートするパソナが運営しています。
企業のご支援経験だけでなく、パソナ自身が健康経営銘柄に初選出、ホワイト500を7年連続取得する過程で得たノウハウを踏まえ、皆様にお役に立つ情報を発信しています。
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