コラム
2021/07/08更新

なぜ健康経営は始めた途端迷走するのか?

ホワイト500制度変更が物語る
企業を健康体質に導く成功条件とは

1. 健康経営の持続的な成果は、社内の健康状態を把握することから

健康経営は2014年度以降、国を挙げて積極的に推進され、企業内では従業員向けに健康関連セミナーが開催されたり、新しい健康サービスや福利厚生を導入するなど、この数年で様々な取り組みが行われてきました。しかしながら、企業の健康経営担当者から聞かれる声は決して明るいものばかりではなく、「従業員が健康になっている実感が沸かない」「本当に意味のある健康施策ができているのだろうか」という迷いもある状況です。

そして2019年度、健康経営優良法人の認定制度が改定され、ホワイト500の認定取得がより厳しくなったことはご存知のとおりです。制度の変更点は大きく2つに集約することができます。1つは「認定法人枠が減った」ということ、そしてもう1つは「認定基準がより本質的になった」ということです。この制度変更は果たして、これから健康経営に着手する企業や組織にとって、どのような意味をもたらすのでしょうか?

その議論に入る前に、2つの制度変更点について、もう少し詳しく述べていきます。

健康施策の実行だけでは不十分。その後の評価と改善が重要

まず「認定法人枠が減った」ことについて述べていきます。2018 年度までは、経済産業省は健康経営優良法人として認定した法人を通称「ホワイト500」としてきましたが、その実数は 821法人にも上りました(その後認定取消し等があり813法人に変更)。そこで2019年度からは、これら健康経営優良法人に認定された法人のうち、上位500法人を限定して「ホワイト500」と認定することとなりました。つまり、あいまいとなっていたホワイト500認定法人数に明確な線引きができ、より狭き門となったのです。

そして2つ目の変更点です。健康経営を具体的に進めていく上で、その推進がPDCAサイクルに則ったものかという点が評価されるようになりました。これはどういうことなのか、まず下の図をご覧ください。

1.経営理念・方針 2.組織体制 3.制度・施策実行 4.評価・改善 5.法令遵守・リスクマネジメント

※各企業の点数をフレームワークごとに偏差値評価に換算した後、ウエイトを掛け合わせ、健康経営度を測る。
※⑤は、定量値ではなく適否判定のためウエイトは非設定
出所 経済産業省 第21回次世代ヘルスケア産業協議会 健康投資ワーキンググループ2019年7月19日開催資料 より

これは経済産業省が毎年発表する、健康経営度調査回答法人が評価されるポイントをまとめたものです。回答法人が、経営基盤から現場施策に至るまで、健康経営優良法人としてふさわしい状態にあるか、五つのフレームワークにおいて評価がなされます。注目すべきは、その評価ウェイトにあります。「①経営理念・方針」と「②組織体制」の比重は2018年度と2019年度では変わりなかった一方、「③制度・施策実行」と「④評価・改善」の比重が、2018年度は3:2であったのに対して、2019年度から2:3と逆転しました。つまり、具体的な健康施策の実行だけでは不十分であり、その後の評価や改善につながるPDCAサイクルの仕組みがきっちりと組織に備わっているかという点が重視されるようになりました。

PDCAサイクルに基づく健康経営の実践がホワイト500認定につながる時代に

我が国は、2018 年度までは「まず健康経営に意識を向けよう」という普及フェーズにあったと言えます。多くの組織が健康経営に意識を向け取り組むことで、職場主導による健康への啓蒙は間違いなく進みました。そして、それらの成果を短期的なものに終わらせず、いよいよ持続的な健康経営の推進に重きが置かれる時代にシフトしたと言えます。健康経営はあくまで「経営」であり、中長期的なビジョンの下語られるべきです。その意味で、PDCAサイクルがうまく機能し推進されることは必要不可欠です。

では健康経営にPDCAサイクルを取り入れるにはどうすればよいのでしょうか。それは、まず自社の健康経営における現状を把握することから始まります。冒頭でも触れたとおり、これまで多くの法人組織が健康施策を実施してきたにも関わらず、必ずしもそれらすべてが計画に根ざした形で行われてきたとは言えません。健康経営におけるゴールや KPI の設定はおろか、現状課題の把握すら充分だったとは言い難いのです。これでは本当に必要なところに、然るべき対策を講ずることはできません。

2. 健康経営の着実で持続的な成果は、まず社内の健康状態を把握することから

社内の現在の健康状態を正確に把握するために、PDCAサーベイは極めて有効です。PDCAサーベイとは、従業員ひとり一人の健康状態を「食事」「睡眠」「運動」「飲酒」「喫煙」「間食」の 六つのカテゴリーにおいて定量的に測定することで、個人の健康課題はもちろん、部課・事業部単位、それに職種別など、あらゆる切り口で組織の健康課題の傾向を知ることができます。

下の表をご覧ください。図1は運輸会社の営業部門の「食事」「運動」カテゴリーにおける調査結果をもとに、それぞれどのような健康施策を実施すべきかをまとめたものです。

図1:部門別の課題と施策

カテゴリー 生活習慣課題 生活習慣に対する意識
①無関心層 ②問題認識層 ③改善意欲層
運動
  • ストレッチが週1日以下の従業員が68%
  • 1日1時間以上歩くことが週1日以下の従業員が52%
  • 体力測定イベント
  • 運動会
  • 歩数イベント
  • 職場内体操
  • 社内ジム
  • 社内サークル補助
  • エクササイズ
  • IoTデバイス&アプリ
  • 外部ジム利用補助
食事
  • 1日2食以上の栄養バランスよい食事を週3日以下しか摂れていない従業員が59%
  • 炭水化物の大盛り・おかわり等が週4日以上の従業員が34%
  • 就寝前2時間以内に週3回以上食事を摂っている従業員が32%
  • 血管年齢・糖化度 測定イベント
  • 時間限定無料残食の提供
  • ヘルシー社食メニュー
    ヘルシー弁当
  • 栄養セミナー
  • 食事管理アプリ・ダイエットアプリ
  • 栄養相談窓口・カウンセリング

図1のような部門の傾向としては、炭水化物中心の外食が多くカロリー過多となりがちで、なおかつ就寝前に食事をとる割合が比較的高くなっており、日中はデスクワークが多いことで運動不足であることが分かります。健康に無関心な層には、まずは健康意識を高めるための施策を立てるべきです。体力測定イベントや運動会の企画が手段として考えられます。逆に、健康意識の高い営業従業員には、自助努力の手助けとなる施策が有効です。自己の健康管理に便利な IoT デバイスやアプリの導入など、組織として従業員をサポートしていける環境を整えていくことが、同社の健康レベルをさらに向上させていく一手となります。

次に図2は健康への問題意識と改善意欲の分類表です。健康施策としては図2の矢印の通り、①の無関心層→②問題認識層→③改善意欲層と推移するように行うのが理想ですが、②の問題認識層は①の無関心層に戻りがちであるため、②の問題認識層が③の改善意欲層に移行するように注力して、③の改善意欲層の割合を増やすことが、健康カルチャーの醸成には必須です。

図2:問題意識×改善意欲

改善意欲
問題認識 ①無関心層 -
②問題認識層 ③改善意欲層

大切なことは組織をあらゆる角度から分析し、課題を抱える部分をはっきりとあぶり出すことです。PDCAサーベイにより現状課題の把握ができれば、ゴールを描けます。明確な目標を打ち立てることができれば、その実現のためのKPIを設定し、具体的な健康施策に落とし込んでいくことが可能です。

3. PDCAサイクルに基づいた健康経営が成功の鍵

健康経営を成功させる上で最も重要なことは、中長期的なPDCAサイクルに基づいた健康施策を立て、それを着実に実行し、フィードバックを経て改善し、さらに推し進めていくことです。これは、継続的にホワイト500の認定を目指す法人にとって、大変重要な考え方になるとともに、実際に健康効果を実感できる組織となるために必要不可欠であることは間違いありません。

そういう意味で、2019年度の健康経営優良法人の認定制度変更は、健康経営に取り組むすべての法人にとって、より本質的な推進のための道標となると言えます。しかし、ホワイト500はあくまで通過点です。結果的に、ホワイト500の認定を受けた法人も、そうでない法人も、健康経営に取り組む以上、組織全体として持続的により健康体質へと向う社内文化を創り出していくことこそが、本来の目的であることは言うまでもありません。

著者名:パソナ・健康経営コラム編集部

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