女性の健康支援に関する取り組みは、ここ数年の間、多くの企業で着実に進められてきました。生理やPMS、更年期などのテーマで社内研修を実施し、女性社員本人だけでなく、管理職や男性社員も含めて学ぶ機会を設ける企業も増えています。一方で、こういった取り組みをスタートさせて3~4年目に差し掛かる頃、しばしば担当者の方から次のような声を耳にすることがあります。
・ひと通りの研修は実施してきたが、次に何をすればよいか見えにくい。
・「やるべきことはやってきた」という実感はあるが、これで十分なのか確信が持てない。
これは女性の健康支援が「立ち上げ期」から「深化・定着フェーズ」へ移行しているサインだと言えます。ではこの先、女性の健康支援を継続的な成果につなげていくためにどうすれば良いのでしょうか?
本稿では、女性の健康支援を組織全体で定着させていくための重要な起点として、「リテラシー教育」に焦点を当て解説します。
女性の健康支援を仕組みとして捉え直す
まず、リテラシー教育の具体的な内容に入る前に、女性の健康支援そのものをどのような枠組みで捉えるべきか整理しておきましょう。継続的な成果につなげていくためには、個別の研修や施策を積み上げいく発想から一歩進み、取り組み全体が相互に連動する「仕組み」として捉え直すことが重要です。この考え方を具体化するために、次の3つの軸に沿って支援を進めていきます。
<女性の健康支援3つの軸>
① 女性の健康に関する社内のリテラシー教育
② 女性の健康に関する社内環境・制度の整備
③ 取り組みが機能しているかを確認する効果測定
これら3つの軸は、それぞれが独立して存在するものではありません。互いに影響し合いながら連動し、各々が女性の健康支援を組織に根づかせていく役割を担っています。以下の図をご覧ください。
まず「①リテラシー教育」の役割は、社員一人ひとりが女性の健康に関するリテラシーを高めることで問題意識や気づきを得ることです。「②環境・制度の整備」の役割は、問題解決に向けた行動が無理なくとれる環境を整えることです。「③効果測定」の役割は、①と②が進むことで得られた結果を適切に測定し、女性の健康支援の進捗を客観的かつ定期的にチェックできるようにすることです。
これらは、必ずしも「①教育→②環境→③測定」の順序で進めていくものではなく、すでに環境が整っている企業もあれば、環境と教育を並行して進めてきた企業もあるでしょう。大切なことは、この3つを連携させながら、女性の健康支援を継続的に機能する仕組みとして運用していくことだと言えます。
リテラシー教育を「やり切った」と感じたとき、立ち止まって考えたいこと
多くの企業では、女性社員向けの基礎研修や、管理職・男性社員向けの理解促進研修をひと通り実施した段階で、「一定の対応はできた」と感じられることが多いようです。ただ、女性の健康課題を取り巻く状況を踏まえると、リテラシー教育もここから次の段階に進めていく必要が出てきます。というのも、症状の有無や年代、立場、ライフイベントによって課題は大きく異なり、一律の理解だけでは対応しきれないフェーズに、組織は必ず直面するからです。
リテラシー教育は「知識提供」を起点に「視点の更新」を促す
リテラシー教育の最終目的は、知識を身につけることではありません。知識を得ることで、女性の健康を正しく捉えられるようになり、その理解を日々の行動変容へつなげていくことにあります。たとえば、今起きている不調を「我慢するもの」として受け止めるのではなく、対処や予防を考える対象として捉え直すこと。また、健康課題を個人だけの問題とせず、職場全体で支えていくテーマとして理解すること。そして、自分自身や周囲の変化に早い段階で気づき、状況に応じた選択ができるようになること。こうした視点の更新を促すことこそ、リテラシー教育の本質と言えます。
そのために、リテラシー教育は段階的に設計し、組織の成熟度に合わせて深化させていく必要があります。
女性の健康リテラシー教育は「5つのステップ」で再設計する
効果的なリテラシー教育には、段階的なアプローチが必要です。弊社パソナでは、以下の5ステップで設計することを推奨しています。
ステップ1 女性が女性自身を理解する
まずは、女性社員自身が自分の身体やその変化を正しく理解することが出発点です。月経、PMS、更年期など女性特有の健康課題について、医学的な基礎知識とセルフケアの考え方を学びます。「知らなかった」状態から、自分の心身の変化や不調のサインに気づき、選択肢を持てる状態へと進むことが目的です。
ステップ2 男女・管理職による相互理解
次に必要なのが、周囲の理解です。女性の健康課題はいまや個人の問題ではなく、組織全体の課題です。男女の性差理解や、管理職が適切な声かけを学ぶことで、現場でのコミュニケーションの質が大きく変わります。
ステップ3 多様性尊重の促進
ここからが、多くの企業で十分に踏み込めていない領域です。プレコンセプションケア、治療や育児・介護との両立、男性更年期障害など、健康課題は個人によって大きく異なります。多様な状況を前提とした理解が進むことで、社員が自分の状態や変化を言葉にしやすくなり、周囲もそれを自然に受け止められる職場環境が育っていきます。
ステップ4 行動変容の促進
さて、ステップ1~3の学びにより、女性の健康課題や多様性への理解が進みます。周囲への配慮や当事者への適切な対応ができるようになる人が増える一方で、現在健康に大きな課題感のない社員は、「自分は今のところ大丈夫」と感じがちです。周囲を支える視点は身についても、自分自身の健康を守る行動には結びつきにくいのが実情なのです。
そこで必要になるのが、健康な状態にある社員自身にも、「自分ごと」として捉えてもらうためのアプローチです。このステップでは“他者で起きている現在の健康課題”を伝えるのではなく、本人の性別や年代、将来のライフステージと重ね合わせながら、“自分自身の健康リスク”を考えられる形で示していくことが重要になります。こうした視点に触れることで、社員一人ひとりが「これは特定の人の話ではなく、いずれ自分にも関係してくるテーマかもしれない」と感じるようになります。その結果、日常の中で無理のない予防行動や選択をとるきっかけが生まれてきます。
ステップ5 健康風土の醸成
ステップ1~4を通じて、社員は健康課題を「知る」だけでなく、自分自身や周囲の変化に気づき、必要に応じて行動を選択できるようになります。その結果、健康は一部の社員や特定のタイミングだけのテーマではなく、誰にとっても身近で、日常的に意識されるものへと変わっていきます。このような状態が積み重なることで、健康に関する話題が特別なものとして扱われるのではなく、業務やキャリアの話と同じように自然に共有されるようになります。
「生理がつらいから」「更年期の影響があるから」「治療や介護と両立しているから」といった事情も、気がねなく言葉にできるようになります。言われた側も「お互いさま」という感覚で受け止め、行動で支え合える関係性が育っていきます。
病気や治療経験の有無によって誰かを特別視するのではなく、それぞれの状況を前提として働き続けられることが当たり前になる。こうした組織のあり方こそ、健康を「施策」ではなく「価値観」として共有できている状態と言えるでしょう。対象や課題に応じた研修を統合的に設計し、理解・行動・対話が日常の中で循環する組織風土を育てていくことが、女性の健康支援を継続的な成果へとつなげていきます。
女性の健康支援は「ここからが本番」
以上に見てきたとおり、女性の健康支援は、単発の研修や制度整備だけで完結するものではありません。しかしながら、これまで一定の取り組みを積み重ねてきた企業だからこそ、その成果を土台に、リテラシー教育を深化させ、行動変容や組織全体の定着へと取り組みを広げていくことができます。
近年の健康経営度調査の動向からもわかるように、女性の健康支援で今後問われることは、「実施したかどうか」ではなく、社員一人ひとりの理解や行動が組織全体の価値観としてどこまで定着しているかです。 リテラシー教育を再設計し、自己理解から他者理解、そして行動変容へと段階的に広げていくことで、女性の健康支援は個別施策の集合体から、健康経営を支える中核的な取り組みに発展させることができます。すでに基礎的な施策を進めてきた企業にとって、女性の健康支援は「ここからが本番」です。次の一手をどう設計するか、これにより今までの取り組みをより確かな成果へと結びつけることができます。
さて、こうした取り組みを検討する際の参考として、弊社パソナが提供する女性の健康サポートプログラム「Kira+sup(キラサポ)」では、産婦人科医 高尾美穂先生による研修動画コンテンツをご用意しています。本稿で解説したリテラシー教育5つのステップに沿って、段階的に学びを深められる構成となっております。そして今年1月からSTEP4に該当する「性別×年代別の健康」をテーマとした新たな研修動画が加わりました。
新動画では、未病・健常層を含むすべての社員が、自身のライフステージと重ねながら、性別・年代ごとに起こり得る健康課題を理解できるよう整理されています。あわせて、それぞれのリスクに応じた生活習慣の改善のための具体的なアクションも学ぶことができます。
ご興味をお持ちの方は以下のバナーより、「Kira+sup(キラサポ)」ご案内ページをご覧ください。フォーム入力の上、サンプル動画・サービス資料をダウンロードいただけます。リテラシー教育を次の段階へ進める際の一つの選択肢としてご活用下さい。