コラム
2024/01/12 更新

女性活躍を目指す組織に必要な健康経営5つの基礎対策とは?

近年、女性活躍の推進は企業にとって重大なミッションとなっています。女性活躍の実現に欠かせないのが、女性の健康づくりです。しかしながら、いざ女性の健康づくりをスタートさせようとしても、往々にして、さまざまな弊害が出てくることがあります。これまで男性中心の組織体制であったことから、「なぜ女性だけ?」という声が聞かれることもしばしばで、施策は思うように進みません。本稿では、企業が女性活躍を見据えた「女性の健康づくり」をスムーズに推進していく上で、まず取り組むべき基礎となる対策5つを紹介致します。

 

 

 

女性支援のための社内制度が形骸化する理由

今や、女性活躍は国をあげた課題として位置付けられています。女性活躍推進法の改正、人的資本情報の開示義務化、そして政府は現在、2030年までに上場企業の女性役員比率を30%以上にすることを目指しています。企業もまた、この方針に従う形で、女性社員が働きやすい制度づくりを積極的に進めてきました。しかしながら、実際のところ、社内制度はあっても使われないというケースが少なくありません。「多忙過ぎる」「周囲の目が気になる」「制度を使える雰囲気ではない」といった声が聞かれ、本当に女性にとって働きやすい環境が整ってきたとは言い難いのです。

こういった状況が起こり得る背景に、従来の日本型組織の企業風土が大きく影響していることがわかります。これまで男性中心の組織体制であったことから、女性の健康や働きやすさを意識した企業風土が育ってこなかったというのが現状なのです。制度があっても、それらの利用に抵抗を感じるようであれば、形骸化してしまいます。制度づくりと風土づくりは両輪です。女性活躍時代に即した新しい組織風土づくりは、制度の整備同様に、不可欠と言えるのです。



女性支援のための社内制度が形骸化する理由

9割の会社が取り違える女性活躍のあるべき姿とは?

では、どのような風土づくりを目指せばよいのでしょうか?ここまでお読みいただいた読者の方であれば、「女性への理解がある風土づくりを目指すべき」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。実際のところ、これでは男性社員の反発を招きかねず、逆効果となる恐れがあります。そこで、「“男女”が互いに理解する風土づくりを目指す」というのが答えとなるのですが、これは方便ではなく、れっきとした理由があります。

従来の日本型組織では、性差による役務や役職などの違いがあったことは否定できません。男女の職場環境での互いの接点は今ほど多くはなく、その関わり方も現在に比べれば希薄だったと言えます。女性活躍とは、女性社員の役務や役職の多様化を意味します。従来型の男性中心の組織ではなく、男女混合の新しい組織づくりが求められているということです。つまり、女性活躍は「男性は女性を理解すべき」というメッセージではなく、「一方を優遇すれば、もう一方が立たず」というトレードオフの視座から脱することで、これまで同性理解だけであった職場に、異性理解の風土を取り入れようという考え方なのです。男性は女性への理解を進め、女性は男性への理解を進めることで、互いが働きやすい環境を作って行こうというのが、女性活躍の本筋と言えます。

働く女性が活躍しやすい環境づくり
何からはじめる?

女性活躍推進法の改正により、企業にはますます働く女性が活躍しやすい環境づくりが求められています。一方で、では何をすればよいのかがわからないという声も。
取り組むべき内容とそれらがもたらす効果を知ることで、「働く女性の健康推進に取り組むべき理由」が見えてきます。

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女性活躍が進む企業風土づくり5つのポイント

それでは、男女が相互に理解し合える風土づくりを進める上で、どのようなことに取り組めばよいでしょうか?ここでは、最も重要な基礎となる5つのポイントをまとめます。

(1)女性自身が女性の健康課題について知る

男女理解を進める上で、最も大切なことは、まず女性自身が女性特有の健康課題について知ることです。「男性は男性自身について知る必要はないの?」という意見があるかと思いますが、もちろん必要です。ただ、まず「女性が女性について知る」と言うのには、理由があります。これまで、職場におけるヘルスケアは基本的に男性の健康管理に特化した内容でした。例えば、定期健康診断では、主に男性に見られるメタボリックシンドロームの判定に照準が合わせられてきました。そのため、男性が男性自身の健康課題について理解する機会は一定レベルで整っていたと言えます。一方、女性が女性特有の健康課題について理解を深める機会は、ほとんどありませんでした。女性特有の健康課題とは、主にホルモンバランスによる体調の変化に関することです。事実、多くの女性は、義務教育または高等教育での保健体育教育以降、これについて学んでいません。つまり、従来の職場におけるヘルスケアの在り方を考えれば、まず着手すべきは、ビハインドしてしまった女性による女性の健康課題への早急な理解であると言えるのです。

 

 

女性自身が女性の健康課題について知る

(2)男女の共通理解を育む

男性が女性を、女性が男性を理解し、性差に対する共通理解を組織全体で育んでいくことも重要です。これまで、生理や更年期など女性特有の健康課題について、男性が触れることはタブー視されてきました。男性が女性の不調を理解できる環境になかったと言えます。これは職場の話だけでなく、例えば、20代男性は一人暮らしが多い傾向にあり、女性の家族と一緒に暮らしているケースは少数派です。30~40代の子育て経験のある既婚男性でさえ、女性のホルモンによる体調変化がどういうものなのか知らないことが少なくありません。同様に、女性による男性理解も進めていくことが大切です。これまで明らかにされてこなかった男性の更年期など、男性特有の不調や病気についても、女性側から率先して理解を深めていく必要があると言えます。こうして互いの性差による健康課題の違いを学べば、社員個々人が性差を越えて、心身の不調に配慮しながら働くことを“自分ごと”として捉えられるようになります。

 

 

男女の共通理解を育む

(3)経営層・管理職も例外としない

(2)で述べたことは、経営層や管理職も例外ではありません。経営層や管理職も、一般社員と同じ研修を受けるなどして、ともに男女の性差への理解を深めていくことが重要です。例えば、男性上司が女性の健康課題をきっちり理解しているという共通認識が社内にあれば、女性の部下は上司に相談してみようと思えます。多くの女性は、「不調を伝えても、男性の上司にはわかってもらえない」と考えがちです。しかし、上司が同じ研修を受けていると知っていれば、女性部下は、「まずは不調を伝えてみよう」と行動に移しやすくなります。一方、実は男性上司の側からも、「部下が辛そうに見えるけど、自分からは声を掛けづらい」と考えているケースもしばしばで、ここでも同じ研修などを受けていれば、躊躇なく配慮の声をかけられるようになります。

(4)風土づくりには時間がかかることを理解する

男女の相互理解がある風土づくりは、長期的な取り組みとなります。例えば1日や数日程度の研修では、ほとんどの場合、社内に変化は見られません。風土づくりは、さまざまな施策をあらゆる角度から、伝え方を変え、取り組み方を変え、タイミングを変え、何年も繰り返し行っていきます。そうすることで、重層的な理解が進み、ようやく行動変容が起き、効果が目に見えて現れてきます。男性中心の職場環境が当たり前になっている企業にとっては、成果を実感できるまでに数年かかることさえあります。焦らず、じっくりと腰を据えて取り組みましょう。

 

 

風土づくりには時間がかかることを理解する

(5)風土づくりを下支えする環境の整備

風土づくりは、長期的な戦略をとる以上、研修や社内イベント等の単発施策の連続となります。しかしながら、毎日あるいは数日スパンで施策を連続開催することは、予算的にもマンパワー的にも現実的ではありません。そこで、効果的なのが健康相談窓口の設置です。研修で習いっぱなしになるのではなく、例えば、不調の原因が理解できたのであれば、それにどう対処すればよいのか、個別に健康相談できる窓口があることで、社員一人ひとりが改善に向けて、次なるアクションを起こせます。ここでは、社員自身の健康相談だけでなく、異性の上司や部下に関する健康相談もできるようにします。例えば、女性部下の不調を案ずる男性上司にとって、部下への配慮や接し方が具体的に相談できることは大きな助けとなります。また、社員の家族の健康や育児、介護に関する相談などもできるようにします。男女それぞれの各ライフステージで起こり得る特有の課題について、いつでも気軽に相談できる環境があれば、相談することが習慣化され、不調やデリケートなライフイベントに対する配慮意識が組織全体として高まってきます。

 

 

風土づくりを下支えする環境の整備

 

 

人的資本時代における、「年代別・男女の健康課題」にどう向き合うか

社員がいかにイキイキと働けるかということは企業にとっても重要です。女性には特有の健康課題があり、また男性も肥満や喫煙など気を付けるべき健康課題がたくさんあります。企業として従業員の健康にどのようなサポートができるのかをテーマにしたウェビナーを実施しました。現役産婦人科医から年代別かつ男女の健康課題を交えてお話しています。

セミナーアーカイブ動画のご視聴はこちら

男女の相互理解を育む組織風土づくり、はじめの一歩

以上、男女が相互に理解し合える組織風土づくりのための5つの重要ポイントをまとめました。女性活躍のためにやるべきことは、決して女性優遇ではなく、男女の相互理解であることがおわかりいただけたかと思います。性差による健康課題の違いを互いに認識し合うことで、組織全体として、体調や各々のライフステージに配慮した働き方ができるようになります。それが、結果として女性活躍を実現させます。先述の通り、学校教育以来、これまで男性が女性の、女性が男性の健康課題について、体系的に学ぶ機会はありませんでした。この空白が、多くの会社の女性活躍を立ち往生させている原因と言えます。これから男女の相互理解を進めるために出来ることはたくさんあります。ぜひ上記で紹介した(1)~(5)をご確認いただきながら、新しい組織風土づくりにチャレンジしてみて下さい。

また、弊社パソナでは、女性活躍をサポートするヘルスケアプログラム「キラサポ(Kira+sup)」をご案内しております。

 

女性活躍をサポートするヘルスケアプログラム「キラサポ(Kira+sup)」

キラサポでは、本稿で述べたように、男女の健康課題について相互理解が進む動画プログラムを配信しております。導入企業の従業員の皆さまは、いつでも場所を選ばず、学習していただくことができます。また、産婦人科・小児科に特化したオンライン相談窓口を設けており、24時間365日体制で従業員の皆さまからのご相談を受け付けております。キラサポに関する詳しい内容は、サービス紹介資料にまとめております。以下から資料ダウンロードページにアクセス頂き、今すぐダウンロード下さい。

働く男女の健康について共通理解を育み 女性活躍が進む風土づくりをサポート

・産婦人科医・産業医の高尾美穂先生による研修動画にアドバンス編(短編集)を追加。
男性・女性それぞれに多い病気やメンタルケア、不妊治療、両立支援など、46のテーマについて1分から学べます。
・動画研修の後は、男女が自分の家族も含め相談できるオンライン相談でセルフケアや周囲へのサポートを実践できます。

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