コラム
2024.11.26 更新

「新人が辞めない職場」に変わる保健師活用3つの秘訣

「元気だと思っていた新人が突然休職に入った」
「入社したばかりの若手社員から退職届けが出された」

近年、多くの企業が人手不足に直面する中、新たに採用した若手社員がメンタルを崩し、短期間で休職や退職に至るケースが増えています。なぜ相談してくれなかったのか、どうして誰も気づかなかったのか。普段の本人の様子や仕事ぶり、上長や同僚との関係性は人事担当者からは見えづらく、休退職に至った経緯や本当の理由を知ることは容易ではありません。センシティブでブラックボックス化するこの課題に企業としてどう向き合えばよいのでしょうか?本稿では、新入社員が抱えやすいメンタル不調の背景を分析し、実際に効果が期待できるサポート策についてご紹介します。ここでキーパーソンとなるのは保健師です。新入社員のメンタルヘルスケアは保健師と連携することで、そのクオリティを飛躍的に向上させることができます。

 

 

秋から冬にかけてメンタル不調が増える背景

新入社員の多くは、春の配属から数か月が経ち、秋に入る頃には仕事や新しい生活に慣れ始めます。一方、この時季はメンタル不調が目立ってきます。とりわけ秋から冬にかけては、日照時間の減少や気温の低下により心理的・生理的な影響を受けやすく、季節性のうつ(冬季うつ)にも繋がりやすいことがわかっています。新入社員のメンタル不調を防ぐには、早期の気づきと適切なサポートが欠かせません。

秋から冬にかけてメンタル不調が増える背景

新入社員がメンタル不調に陥る要因

多くの場合、新入社員が抱えるメンタルの悩みには、以下のような背景があります。

先輩社員とのコミュニケーションの悩み

本人にとって、身近にやさしい先輩がたくさんいる場合でも、相談できないことがしばしばあります。「こんなことを相談したらどう思われるだろうか」と人の目が気になり、思いとどまってしまうのです。また1on1を組む場合でも、メンターとの相性が良くなかったり、過剰なマイクロマネジメントに悩んだりすることがあります。良いメンターに恵まれたとしても、2年目に外れた際、相談相手がいなくなり孤立を感じてしまうこともあります。

理想と現実のギャップに苦しむリアリティショック

希望とは違った部署への配属、想像以上に厳しい上司からの指導など、理想と現実に激しいギャップを感じた時、うまく対応できずメンタル不調となる場合があります。また女性が少ない会社の場合には、社内にロールモデルとなる先輩社員がいないことで、キャリアへの強い不安や失望感を抱えることもあります。

新入社員がメンタル不調に陥る要因

環境や生活の著しい変化

一人暮らしや初めての勤務地など、生活環境の著しい変化、それに起因する生活習慣の変化もメンタルに影響することがあります。ひとりでいることが多く、支えがないように感じる新入社員ほど、心身の不調を訴えやすい傾向にあることがわかっています。

環境や生活の著しい変化

※パソナ作成「新入社員向けメンタルヘルス研修」資料より抜粋

新入社員のメンタル不調を防ぐ3つの対策

新入社員のメンタルヘルスケアには、3つの側面から対策を打っていくことが効果的です。すなわち、①本人自身によるセルフケア、②相談できる環境づくり、③管理職や人事の適切なケア提供です。対策は人事担当だけで推し進めていくことも可能ですが、保健師が関わることで、効果を飛躍的に高めることができます。なぜか。以降では①~③の順に、取り組むべき対策を紹介するとともに、各々にどう保健師が関わることで“新人が辞めない職場づくり”を実現していけるか具体的に説明していきましょう。

① 本人がストレスを自覚しセルフケアできる力を育てる

まずは、本人自身がストレスに気づき、セルフケアできる力を育てることが大切です。これには外部のメンタル研修を活用することも効果的ですが、その際は、その場限りの単発施策にならないように注意が必要です。新入社員は入社後、多くのことを短期間で学び、即戦力となることが求められます。ストレスを感じやすい時期が続き、その要因も刻一刻と変わっていきます。そのため、状況に合わせて内容を変えながら継続的に研修を取り入れていくことが推奨されます。例えば、入社すぐにはセルフケア研修を行い、その半年後、仕事や新しい生活に慣れてきた頃にフォローアップとしてコミュニケーション研修を実施、2年目に入るタイミングで全員面談を行うといった風に、年間を通したプラン組みをしていきましょう。これら一連の流れは人事担当だけでも出来ますが、保健師が入ることで、人事部や上長、先輩社員以外にも相談できる人がいるという安心感を与えることができます。

本人がストレスを自覚しセルフケアできる力を育てる

② 相談できる環境を整える

不調や過度なストレスを感じるなど、何かあった際に相談できる先が人事部以外にあることは極めて重要です。新入社員のフォロー体制として1on1を組む会社も多くありますが、先述の通りメンターが必ずしも本意をくみ取れる関係性にあるとは言えません。保健師であれば、職場関係から切り離された相談相手となります。守秘義務があり、医療的な視点でも相談に乗ることができるため、新入社員にとって安心した相談環境をつくることができます。コロナ世代やロックダウン世代とも言われる若手社員にとっては、学生時代にカウンセラーにかかっている人も少なくありません。そういった意味でも、相談相手に医療職や心理職がいることは安心材料のひとつとなります。

また、相談機会を定期的に設けることも効果的です。例えば、健康相談を人事評価面談の前後や配属から数か月後のタイミングで実施します。この施策は弊社パソナが多くのクライアント企業で健康管理室業務を受託運営してきた経験から、高い効果が得られることがわかっています。ほかにも、健康診断やストレスチェックの結果が出る時期に併せて、保健師との全員面談を設けることも有効です。健診結果の通知後に社員一律に全員面談をする方針をとっておけば、問題を抱えている社員が目立つことなく、自然に相談の機会を得ることができます。加えて、本稿の主旨からは外れますが、健診やストレスチェックの結果が悪かった社員へのフォローもでき、早期発見や重症化予防に繋げることができます。

相談できる環境を整える

③ 管理職や人事が適切なケアを提供できるようにする

昨今では、管理職や人事担当が社員のメンタルヘルスケアを支えるために、ラインケア研修を受講することが多くなってきました。しかし、研修で知識を得ても、いざ実際にメンタルヘルスの問題が発生した時、適切な対応をとるのが難しいという声が聞かれます。研修だけではイメージしづらい部分は、具体的に対応フローやマニュアルを用意しておくことで、各々が実践しやすくなります。以下に対応フローの例を載せておきたいと思います。

管理職や人事が適切なケアを提供できるようにする

もちろんラインケアの対応フローには保健師が入ることで、より迅速で的確なオペレーションを築くことができます。保健師は相談者と人事部、また人事部と産業医・専門機関の間に立ち、状況に合わせた対応をとることができます。メンタルヘルスケア体制のハブとなり、組織的な対応を可能にしてくれます。

メンタル不調による休職・復職が発生した際の人事対応のポイント

ここからは予防策ではなく、休復職が発生してしまった場合の対応方法について、人事担当として気をつけるべき点を述べていきます。休職中の従業員が復職に向けて前向きな行動をとるには、会社側は以下の3つのステップでコミュニケーションを図るようにしましょう。

メンタル不調による休職・復職が発生した際の人事対応のポイント

※パソナ作成「産業看護職が4分で解説!休復職対応のポイント」動画より抜粋

これは心理学に基づいたコミュニケーションの流れです。まず「感情面への寄り添い」を心がけ、本人と対話していくことが最も肝心な復職支援の第一歩となります。これをせず、会社が期待する行動を一方的に指示するだけでは、本人は「理解してもらえていない」と感じてしまいます。これでは往々にして行動変容は進みません。そのため、傾聴を徹底し、時には会話の中で相手の話す言葉を“オウム返し”するなど、相手に関心を寄せた態度を心がけましょう。復職に向けた定期面談でも、いきなり本題に入らず、アイスブレイクに雑談を挟むなどして、安心できる雰囲気を作るようにします。心を合わせることで、「肯定され、理解されている」と感じてもらうことが重要です。

また、コミュニケーションをとる中で、人事担当が把握しておくべきポイントが大きく4つあります。以下にまとめましたのでご参考下さい。

メンタル不調による休職・復職が発生した際の人事対応のポイント

※パソナ作成「産業看護職が4分で解説!休復職対応のポイント」動画より抜粋

特に「病識・通院」と「適応性」に関しては、その後の職場順応や再休職防止のためにとても重要な項目となります。しっかりと情報共有ができ確認し合えれば、互いに安心できる復職に繋げることができます。

4分でわかりやすく解説!休復職対応のポイント

休復職中の従業員とのコミュニケーションについて、不安を抱えながら対応されているご担当者の方も多いのではないでしょうか。 本動画では現役産業看護職が、休復職中の従業員との対応ポイントや産業医の判断基準について、分かりやすく解説しています。

動画を視聴する

「保健師活用ブック」をお手元に

以上に見てきたように、新入社員にとってこの時季はメンタル不調を抱えやすい状況が続きます。そして、不調には外部要因が影響するケースも多く見られ、すべて本人の努力や工夫次第で改善できるというものではないことがわかりました。“新人が辞めない職場づくり”のために会社として取り組むべき対策は、①セルフケアができる力を育てることに加え、②安心して相談できる環境づくり、さらには③ラインケアの知識を形骸化せず、具体的に実践できる体制を整えることです。そしてこの体制づくりに、もはや保健師は欠かすことができません。以下のダウンロード資料「保健師活用ブック」は、これから保健師の活用を検討されるすべての人事担当者のために準備致しました。産業保健における保健師の役割をわかりやすくまとめています。保健師に任せられる業務一覧、保健師の活用年間スケジュール例、給与相場、採用手段や雇用形態など、「保健師活用ブック」では保健師との連携を具体的にイメージできるよう必要な情報を網羅しております。ご検討にあたり、ぜひお役立て下さい。

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保健師の活用を具体的にイメージできるよう必要な情報を網羅しました。(以下は目次の一部)
・産業保健師について
・産業保健師を導入するメリット
・産業保健師に任せられる業務
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・産業保健師活用における契約形態
など

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