コラム
2022/04/22 更新

健康投資ワーキンググループに参加してわかった令和4年度健康経営度調査に役立つ3つの視点

3月24日、健康投資ワーキンググループ(以下、健康投資WG)が開催されました。健康投資WGとは、経済産業省が2014年に設置した、健康投資の促進などに関する有識者会議です。毎回の健康経営度調査の方針や運営方法は、ここで議論された内容が大きく反映されます。ホワイト500や健康経営銘柄を目指す企業は、健康投資WGの動向をチェックしておくことで、いち早く今後の健康経営度調査に向けた対策を立てていくことができます。

本稿は、今回の健康投資WGに一般傍聴で参加してきた弊社の健康経営コンサルタントの視点から、重点レポートとしてまとめた内容になっております。今年度、健康経営を推進していく上で、担当者がキャッチアップしておくべき重要ポイントを3つピックアップしてあります。

令和4年度健康経営度調査を見据え、これから半年間、自社の健康経営のどの部分にテコ入れしていくべきか、お役立て頂けると思います。

 

 

 

1. 2000社分のフィードバックシートが公開

まず1つめとして、当日の議論で最も注目を集めた内容からお伝えしたいと思います。ここは是非押さえておいて下さい。

それは、前回の健康経営度調査における評価結果の公開についてです。令和3年度調査の全回答法人の約7割にあたる2000社分のフィードバックシートが、経産省のホームページで公開され、誰でも自由に閲覧できるようになりました。このことは、健康投資WGでも大きな進捗として評価されました。

公開の意味すること。健康経営に取り組む法人への影響は?

今回の公開にあたり、健康投資WGが期待することとして、健康経営に取り組む法人どうしの参考材料となること、それから学生等の就職希望者の企業選定材料となること等があげられました。

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第5回健康投資WG 事務局説明資料

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第5回健康投資WG 事務局説明資料

 

これまでのコラムでもお伝えしてきましたが、企業の健康経営の取り組み状況や成果の公開は、今後ますます求められることは間違いありません。求職者や金融機関、取引先、自治体など、あらゆるステークホルダーが企業関与において評価材料とする枠組みが整いつつあると言えます。

同業種の取り組みの情報収集をしておくと尚良し

また当日の議論では、業種によって評価結果にバラつきがあることにも、言及がありました。以下がそれを示す資料です。

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第5回健康投資WG 事務局説明資料

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第5回健康投資WG 事務局説明資料

 

オレンジ色の●印が各業種における平均偏差値を示しています。これを見ると、業種間で平均偏差値にかなり差があることがわかります。例えば、空運業や保険業では平均偏差値が60近くある一方、倉庫・運輸関連業や海運業、精密機器、機械などでは、50を下回っています。当然のことながら、業種によって、従業員の年齢や性別、働き方などには違いがあります。そう考えると、回答法人全体で一律的に比較するだけでなく、より健康経営の精度を高めていく上で、同業種間での比較や分析をすることも重要ではないかという意見がありました。同業種で成果を出す法人は、どんな取り組みをしているか、情報収集の上、チェックしておくこともおススメです。

公開データは積極的に活用を!

健康経営に取り組む法人にとって、2000社もの評価結果の公開データがあるならば、活用しない手はありません。公開データには2種類あり、「2000社分の評価結果データ一覧」としてExcelファイルにまとめられたものと、業種毎、個社別にフィードバックシートの詳細が閲覧できるPDFファイルがあります。

ここで注目しておきたいのが、Excelファイルでまとめられた評価結果データ一覧のほうです。

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第5回健康投資WG 事務局説明資料

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第5回健康投資WG 事務局説明資料

2000社分の評価結果が非常に細かく一覧でみることができます。総合偏差値のほか、「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」の4つの評価側面の偏差値も確認することができます。さらに、各側面の詳細項目ごとの偏差値も、ひとつずつ見ていくことができます。例えば「経営理念・方針」であれば、「明文化・社内浸透」と「情報開示・他社への普及」の2項目における評価まで確認することができるのです。

これだけ情報があれば、例えば、ホワイト500を目指す企業にとっては、自社が今どのあたりまで健闘しているか、容易に把握することができます。自社にとってベンチマークする法人があれば、各側面や詳細項目の偏差値をひとつずつ比較してみて、どの部分を強化していくべきか検討する上での資料とすることもできます。

とくに「健康診断・ストレスチェック偏差値」「労働時間・休職偏差値」「課題単位・施策全体の効果検証・改善偏差値」が低い法人は、成果が出ていないため、戦略を見直すことが先決です。 以前のコラムでも紹介したとおり、今後の健康経営度調査は、より成果にこだわった評価方法へ移ることが予想されるからです。

2. プレゼンティーズム、アブセンティーズム、ワークエンゲージメントの測定方法に改善の意見

次に、今回の健康投資WGから、健康経営担当者がキャッチアップしておくべき2つめのポイントをお伝えしたいと思います。

それは、プレゼンティーズム、アブセンティーズム、ワークエンゲージメントの“測定方法”に関する議論があったということです。どういうことかと言うと、令和3年度調査では、多くの回答法人でこれら3つの数値の把握が進み、一定の成果が得られました。しかしながら、各法人で測定方法が異なっていたことが課題にあがり、何らかの改善を求める意見が出されました。

なぜ、この3つの指標の測定方法について、改善の議論が進むのか。これをわかるために、健康投資WGの考える健康投資の意義について、今一度きっちりと理解を深めておきましょう。以降で説明したいと思います。

世界の投資家を意識した健康立国ニッポンへ

健康投資WGの目的のひとつに、「健康寿命が世界一の国として、健康経営を積極的に発信し、これを日本企業のブランドとする」というものがあります。世界中の投資家に対して、「健康経営に積極的に取り組む日本企業こそ、投資先として優良である」というメッセージを届けるのが狙いと言えます。

事実、「健康経営」に関する情報が、投資家の企業評価の際に活用されていることが、昨年12月の健康投資WGでも示されました。その時の資料では、16社の機関投資家向けにアンケートを行った結果、ESG投資の「S」について評価している項目として、「健康・安全」は、すべての投資家が「評価している」と回答したとされています。

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第4回健康投資WG 事務局説明資料①

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第4回健康投資WG 事務局説明資料①

投資家のニーズに応じた情報開示が進んだが…

そして、投資家が企業の「健康・安全」に関する状況を知りたいにも関わらず、企業側がそのニーズに応えきれていないという事実も、前回WGで報告されていました。以下がその資料です。

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第4回健康投資WG 事務局説明資料①

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第4回健康投資WG 事務局説明資料①

業務パフォーマンスでは、すべての項目において、投資家の要求に企業が充分応えられていなかったことがわかります。

このことを踏まえ、令和3年度調査では、プレゼンティーズム、アブセンティーズム、ワークエンゲージメントの把握が推し進められたのですが、測定方法がまちまちであったため、より情報公開に適した形をとるべく、測定方法の改善が今回検討されているという状況なのです。

測定方法にはどんな改善案が示されたか?

まず、ワークエンゲージメントの測定方法に対する言及について、紹介したいと思います。令和3年度調査では、全回答法人のうち、約4分の1の法人がワークエンゲージメントについて、以下のストレスチェック追加2項目のデータをもとに、回答していたことがわかりました。

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第5回健康投資WG 事務局説明資料

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第5回健康投資WG 事務局説明資料

比較的に多数の法人が、この方法を採用していたため、今後の調査票には、この2項目のデータについて、任意回答を求める設問を加えてもよいのではないかという意見が出されました。

上記のストレスチェック追加2項目のデータがまだない法人は、今年度、何らかの社内調査のタイミングで、追加的に取っておくのが良いのではないかと考えます。これまで民間事業者の提供するサーベイ等で行ってきたワークエンゲージメントの把握に加え、上記2項目のデータがあるだけで、回答法人の評価結果が公開された時に、他社との正確な比較ができるというメリットもあります。

なお、プレゼンティーズム、アブセンティーズムの測定方法に関しては、明確な言及はありませんでしたが、一律化か複数の測定方法の併存か、今後議論が進んでいきそうです。

3. 民営化で健康経営度調査はどうなるのか?

さて、最後です。今回の健康投資WGの内容で、健康経営担当者が押さえておくべき3つめの重要ポイントについて紹介しましょう。

健康投資WGでは、今後、健康経営の顕彰制度、つまり健康経営度調査の運営を民営化することが計画されています。顕彰制度の持続的な発展を目的に、民間事業者の創意工夫を活かすことが狙いです。令和4年度調査以降の民営化案の概要は以下の資料で確認することができます。

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第5回健康投資WG 事務局説明資料

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第5回健康投資WG 事務局説明資料

制度設計や認定主体などに関しては、これまで通り進められますが、運営事務局には補助事業者が入る形で民営化される予定です。一部国費負担ではあるものの、補助事業者には、調査票発送や集計、問合せ対応など、これまでの通常業務に加え、地域や業種ごとの関係団体へのメディアを通じた告知業務、さらには、認定法人に対する学生向けPRの場のアレンジ、研修サービスの提供等を任されることが検討されています。

また、今後は申請料がかかる可能性があることも、この資料から読み取れます。このあたりも視野に入れておくべきと言えます。

日経新聞社を幹事とした運営事務局が内定

さて、肝心の運営事務局となる民間企業ですが、日本経済新聞社を幹事として、また日本総合研究所と日経リサーチ等が実務支援会社として、内定しています。

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第5回健康投資WG 事務局説明資料

出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第5回健康投資WG 事務局説明資料

 

上の資料からもわかるように、日経グループには、同グループの強みを活かしたメディア露出や求職者へのアピール機会の創出などが期待されています。

求職者へのPR力を高める健康経営とは?

健康経営に取り組む法人としては、健康経営の推進が求職者へのアピールに繋がるのは喜ばしいことです。一方で、健康経営における競合が今後増えてくることを鑑みると、より自社の課題や特徴を踏まえた上で、独自性のある取り組みをしていくことが、一歩先を行くアクションとなるのではないでしょうか。自社ならではの健康経営に進化させるべく、改めて健康経営理念や取り組みの見直しをすることもおススメです。

4. 令和4年度健康経営度調査対策の第一歩とは?

令和4年度健康経営度調査まで、残り約半年です。やるべきことは明確でしょうか?明確でない方は、是非フィードバックシートを徹底的に振り返ってみて下さい。何といっても、健康経営はPDCAサイクルに基づいた戦略を描くことから始まります。とくに何年もやっていると「なんとなく頭打ち感がある」、「マンネリ化してきた」というお声も聞かれます。そんな時、突破口となるのがフィードバックシートであり、改善のヒントがたくさん得られます。本稿でも紹介したように、今年は2000社分のデータも公開されています。より客観的な視点で、自社の現状を分析することができます。

どう振り返り、分析していけばよいかわからないという方には、個別に無料コンサルティングをご提供しております。130社以上の健康経営コンサルティングを行ってきた弊社の経験豊富な健康経営コンサルタントが、オンライン会議にて30~60分程度、アドバイスさせていただきます。お気軽にご活用下さい。

 

 

 

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著者名:パソナ・健康経営コラム編集部

健康経営・産業保健の推進パートナーとして健康経営の「着実な一歩」を伴走サポートするパソナが運営しています。
企業のご支援経験だけでなく、パソナ自身が健康経営銘柄に初選出、ホワイト500を7年連続取得する過程で得たノウハウを踏まえ、皆様にお役に立つ情報を発信しています。
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