コラム
2024/04/12 更新

令和6年度健康経営度調査の議論が本格スタート。第11回健康投資WGの要約と重要ポイントまとめ

3月15日に第11回健康投資ワーキンググループが開催されました。健康投資ワーキンググループとは、経済産業省が主導する健康投資に関する有識者会議です。年に数度行われていますが、毎年3月に開催される健康投資ワーキンググループ(以降、健康投資WG)では、昨年度の健康経営度調査の振り返りが行われ、今年度調査の方向性について議論が交わされます。調査票の改訂部分や追加設問なども具体的に意見交換されるため、健康経営担当者としては、最新情報として目を通しておく良い機会となります。本稿では、今回の健康投資WGで議論されたアジェンダの要約と令和6年度健康経営度調査に向けて今から押さえておくべき調査対策の重要ポイントをお伝え致します。また最後に、今年度調査に関する最新情報をお届けするセミナーのご案内をしております。ぜひ併せてご確認下さい。

 

 

 

順調に増加する調査票回答数・優良法人認定数

まず、令和6年度調査の議論に入る前に、令和5年度までの健康経営度調査回答数と健康経営優良法人(大規模法人部門)認定状況の推移が示されました。


順調に増加する調査票回答数・優良法人認定数

(出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料)

例年通り、回答数、認定数ともに順調に増加していることから、引き続き今年度も増加することが予想されます。なお、令和5年度調査から「健康経営銘柄2024」に選ばれたのは、27業種53社となっています。


健康経営銘柄2024

(出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料)

原則1業種1社ではありますが、業種によっては複数社が選ばれたり、全く選ばれなかったりする業種もあり、枠ありきの形式的な選出ではなく、実態に基づいた評価がきちんとされていると言えます。

業種別でみる調査票回答数の推移も発表されました。ほぼすべての業種で調査票回答数は増加傾向にあることがわかります。


業種別:調査回答数の推移

(出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料)

また、都道府県別の調査票回答数、認定数の状況も公開されました。ここでは、各都道府県における大企業数に占める回答数の割合も示され、上位5位、下位5位の県が割り出されています。

都道府県別:回答数及び認定数

(出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料)

不認定理由にみる産業保健チームの重要性

議論では、大規模法人部門における不認定理由についても言及されました。特筆すべきは、2番目に書かれている不認定理由です。

不認定理由

(出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料)

申請したが不認定となってしまった法人の8割以上が、健康経営の施策の実施には「産業保健スタッフは特に関与していない」と回答していることがわかりました。これは令和5年度調査票Q30の回答状況をもとに示されています。

Q30.健康経営施策の実施にあたって、産業医または保健師はどのように関与していますか。

(出所:令和5年度健康経営度調査票)

しかしながら、日々の健康施策を機動的に進めていくために産業医や保健師など、産業保健チームの体制づくりは必要不可欠であり、だからこそ認定取得の必須要件として問われていると言えます。健康経営における産業保健の役割や位置づけについては、過去コラムで詳しく解説しておりますので、併せてご一読下さい。

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情報開示は健康経営のスタンダードに

近年、健康経営の評価対象として重要度を増しているのが、情報の開示です。今回の健康投資WGでも情報開示に関する成果が多数報告されました。まず、フィードバックシートの開示状況です。例年通り、開示する法人は増えており、今後も増え続けることが予想できます。

フィードバックシートの一括開示

(出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料)

なお、以前のコラムでも書きましたが、フィードバックシートの開示データはとても参考になります。認定を受けた法人の評価結果や内訳を詳しく見ることができるため、認定を目指す法人であれば、自社のフィードバックシートと比較することで、今後力を入れていくべきポイントが明確になってきます。

それから、パフォーマンス指標の開示状況についても、示されました。

パフォーマンス指標の測定・開示状況

(出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料)

令和5年度調査では、直近実績値の開示有無と測定方法の開示有無が認定要件となっていました。パフォーマンス指標は、健康経営に取り組む意義を数値化する重要な役割を担います。今後もパフォーマンス指標に関わるデータ開示は継続して求められていくことが予想されます。

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令和6年度健康経営度調査の方向性は?

さて、以上が今回の健康投資WGで言及された昨年度の振り返りの主なポイントでした。これを踏まえ、今後国が進める健康経営の方針として示されたのが以下の3つです。

経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料

(出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料)

議論では、これら3つの方針を令和6年度調査にどう反映させるか言及がありましたので、以降で紹介したいと思います。

健康経営の可視化と質の向上

今後の方針として1つめにあげられたのが「健康経営の可視化と質の向上」です。これにはPHR(パーソナルヘルスレコード)の活用が期待されており、近年の健康投資WGでも毎回話題にあげられています。今回もPHRに関する意見が交わされ、令和6年度調査票への反映が検討されました。具体的にはQ44でPHRの活用に関する取組内容を新たに問う案が出されました。自由記述での回答が想定されており、現時点では評価対象とはしないことが示されています。

健康経営の可視化と質の向上

(出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料)

また、健康経営の質を向上させていく上で、効果検証の重要性についても言及されました。

今後の効果検証にあたっての示唆

(出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料)

効果検証の面で記憶に新しいのは、今年2月に経済産業省から発表されたレポート「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」です。

女性特有の健康課題による社会全体の経済損失

(出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料)

レポートでは、女性特有の健康課題による社会全体の経済損失が割り出され、これに対して健康経営に取り組んだ場合の試算結果が示されています。このことから、女性の健康課題に取り組む必要性は明らかであり、今後の健康経営度調査でも益々重要性が高まってくると言えます。

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新たなマーケットの創出

2つめにあげられた方針は「新たなマーケットの創出」です。ここで議論された内容は多岐に渡りますが、健康経営担当者として念頭に置いておくべき内容は、「健康経営の国際展開」についてです。

健康経営の国際展開1

(出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料)

具体的には、海外拠点をもつ企業には、海外従業員への健康施策などの対応が今後さらに求められることが予想されます。令和5年度の調査票でも、Q25で自由記述の回答欄がありましたが、評価対象項目ではありませんでした。

令和5年度健康経営度調査票

(出所:令和5年度健康経営度調査票)

令和6年度は、選択形式によるより具体的な設問が検討されています。ただし、今回もアンケート設問として想定されているため、評価対象項目とはならないと言えそうです。

健康経営の社会への浸透

3つめの方針は「健康経営の社会への浸透」です。健康経営を裾野広く社会へ浸透させていくために、非正社員等への対応の充実は不可欠と言えます。これを踏まえ、令和6年度調査では、対象範囲を非正社員等を含め調査回答する法人を加点対象とする案が出されました。

健康経営の社会への浸透

(出所:経済産業省 健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料)

以上、今後の健康経営の3つ方針が令和6年度健康経営度調査において、どう反映が検討されているか紹介致しました。

さて、令和6年度健康経営度調査まで約半年となりました。今年度に取り組む施策は明確でしょうか?まだの方は是非、昨年度調査のフィードバックシートを改めてご確認いただき、まずは振り返りを行って下さい。

令和6年度健康経営度調査に向けた最新情報ウェビナーのご案内

来る5月21日(火)、弊社パソナでは、健康投資WG委員であり健康経営研究会理事長の岡田邦夫先生をお招きし「健康経営最前線2024」ウェビナーを開催致します。本ウェビナーでは、昨年度の健康経営度調査の振り返りと令和6年度調査に関する最新情報をお届け致します。参加費は無料です。参加ご希望の方は以下のバナーから参加申込フォームにアクセス頂き、今すぐお申込み下さい。



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