8月21日に令和5年度健康経営度調査の調査票が公開されました。調査票は毎年少しずつ改訂が加えられます。本稿では、大規模法人部門における昨年度からの主な変更点についてまとめております。なお、今年度の回答期限は、10月13日(金)17時となっています。
調査票改訂の4つの狙いとは?
まず、今回の改訂の全体像をつかむ上で、調査票公開に先立って行われた第9回健康投資ワーキンググループの資料が参考になります。

(出所:健康・医療新産業協議会 第9回健康投資WG 事務局説明資料)
今回の改訂の狙いは4つで「情報開示の推進」「社会課題への対応」「健康経営の国際展開」「取組法人の裾野拡大」です。このうち、大規模法人部門に直接関係するのは、前者3つです。一つずつ見ていきたいと思います。
情報開示の推進
人的資本経営に注目が集まることを背景に、年々、健康経営の分野でも情報開示が求められるようになってきました。この方針は今年度も変わりません。
特定健診・保健指導の実施率が問われる
今回、調査法人にとって、非常にドラスティックな改訂と言えるのが、特定健診・保健指導の実施率が問われるようになった点でしょう。(Q51-SQ1、Q52-SQ1)

(出所:令和5年度健康経営度調査 調査票)
昨年度は、特定健診・保健指導の実施率は把握しているかどうかのみ問われていましたが、今年度は実施率の数値まで回答するよう求められています。特定保健指導に関しては、企業によって実施率に開きがあり、認定結果に影響が出ることが予想されます。
業務パフォーマンスの数値と測定方法の開示がホワイト500認定要件に
業務パフォーマンス指標に関する開示状況も、より具体的に問われるようになりました。(Q19-SQ3)昨年度までは、「測定方法」と「複数年度分の測定結果」の開示状況が問われるに留まっていましたが、今回は、業務パフォーマンス指標の数値とその測定方法の開示がホワイト500認定要件となります。さらに測定範囲(測定人数)と回答率の開示状況も問われるようになりました。業務パフォーマンス指標に関しても、昨年度に比べ、より具体的な情報開示が求められるようになったと言えます。

(出所:令和5年度健康経営度調査 調査票)
なお、業務パフォーマンス指標の測定は比較的着手しやすく、今からでも遅くはありません。まだの法人は調査票提出までに測定を済ませておきましょう。
※パソナのサービスでは、ライフスタイル調査がおススメです。
労働安全衛生に関する情報開示状況が新たに問われるように
さらに今年度調査は、労働安全衛生に関する情報の開示状況を問う設問が新たに追加されました。(Q19)

(出所:令和5年度健康経営度調査 調査票)
なお、今年度の時点では、労働安全衛生に関する情報の開示は、まだ必須の認定要件とはなっていません。ただし、次年度以降はこの領域に関する情報開示状況も詳しく問われる可能性を否定できません。早めに情報収集と整理をしておくことをお勧めします。
社会課題への対応
今年度の調査票改訂の狙いには、「社会課題への対応」もあります。
仕事と育児・介護の両立支援に関する新設問とは?
まず、仕事と育児・介護の両立支援に関する設問(Q46)が新設されました。Q45とQ46の両方に取り組んでいることが認定要件となっています。

(出所:令和5年度健康経営度調査 調査票)
重要度が増す「女性特有の健康課題」への対応
女性特有の健康課題への対応も、今回調査で重要度が増していると言えます。これを理解するために、まず認定要件の仕組みをおさらいしておきたいと思います。
毎年の調査票では、認定要件に指定されている設問のうち、確実に落としてはいけない設問(※説明の便宜上、「必須認定要件」とします。)がある一方で、複数の設問のうち、一定の設問数以上をクリアしていれば認定要件を満たす設問(※説明の便宜上、「非必須認定要件」とします。)があります。非必須認定要件において、昨年度であれば、16設問中、13設問以上クリアしていれば認定要件を満たせていました。

(出所:健康・医療新産業協議会 第9回健康投資WG 事務局説明資料をもとに弊社作成)
今回、女性特有の健康課題への対応状況に関する設問はQ57とQ58ですが、昨年度はこのいずれかに回答していれば、1設問分の認定要件を満たしたこととなっていました。それが今回は、Q57とQ58の両方の回答をもって、1設問分の認定要件とされています。女性特有の健康課題への対応が、より高いレベルで求められていることがわかります。

(出所:令和5年度健康経営度調査 調査票)
Q57については、女性向けに健康コンテンツやセミナーを展開しているかどうかが問われています。これからでも充分対応できる項目ではあるので、まだの法人は是非進めておきましょう。
※パソナでは「Kira+sup(女性の健康サポートプログラム)」をご提供しております。
生産性低下防止のための取り組みが新たに問われるように
また、「生産性低下防止のための取組」も新しく問われるようになりました。(Q56)

(出所:令和5年度健康経営度調査 調査票)
新型コロナおよび感染症予防対策を問う設問は?
それから、昨年度調査票にあった「新型コロナウイルス感染症への対応」を問う設問は、インフルエンザなど「感染症予防対策」を問う設問に統合されました。(Q63)

(出所:令和5年度健康経営度調査 調査票)
なお、新型コロナを限定して取り扱う設問は、一切なくなったわけではなく、今回はアンケート項目(Q76)として残っています。

(出所:令和5年度健康経営度調査 調査票)
健康経営の海外展開が問われるように
そして、「海外従業員への対応」を問う設問も新たに追加されました。(Q25)
評価には影響しませんが、健康経営の国際展開を見据えた新たな動きですので、今後を意識してできる範囲で情報整理をしておいてもいいと言えそうです。

(出所:令和5年度健康経営度調査 調査票)
以上、今年度調査票の主な変更点に関する解説でした。
調査票変更点一覧
以下に今回の調査票変更点を一覧でまとめております。ご参考下さい。
PDFでダウンロードご希望の方は、以下よりダウンロードページにお進みいただき、必要事項をご入力の上、ダウンロード下さいませ。

今年は、健康経営度調査がスタートしてちょうど10年となります。特にここ数年は、情報開示に関する設問がより具体的になり、これに伴い、さらに高いレベルで、且つデータを伴った健康経営が求められるようになってきました。この傾向は今後もしばらく変わらないことが予想されます。調査法人としては、健康経営に関するデータ収集を的確に行い、定量的に現状と対策を判断実行できる仕組みづくり、そして何より、目に見える形で確実な成果を上げることが急がれます。
健康経営のPDCAサイクルが回る仕組みづくりに関するご相談がございましたら、以下よりお問い合わせください。