健康経営度調査は、1年間の健康経営の状況を経産省に報告するものです。いわば、レポート提出による年一回の試験と言えます。試験であれば、過去問の傾向を読み解くことで、次年度に向けた対策を立てることができます。
過去の傾向を読み解くのに、もっとも役立つのが、健康経営度調査フィードバックシートです。フィードバックシートは、健康経営の通信簿であり、どうしてその評価点となったかを説明した“答え合わせの資料”です。
すでに、令和3年度のフィードバックシートが返ってきましたが、今年、大きな変化があったことにお気づきでしょうか?これらの変更点をじっくり考察してみると、令和4年度調査への準備を進めていく上で、非常に有益なヒントがたくさんあることに気づかされます。
本稿では、ホワイト500入りを目指す法人担当者のために、今年のフィードバックシートから見えてくる、令和4年度調査に備えるべき「傾向と対策」をお伝えします。健康経営を空回りさせないために、次年度は何に注力し、どう取り組めばいいかを明らかにしていただけると思います。
さて、詳しい解説に入る前に、まず結論からお伝えしておきます。令和4年度調査では、次の3つの傾向が予想されます。①「経営理念・方針」、「組織体制」の重要性がさらに高まる、②評価方法はより成果主義へ、③情報開示がホワイト500入りの鍵となる。これらはすでに令和3年度調査からの傾向で、今後ますますこの3点を意識した対策が必要となってきます。
なぜ、このような傾向が予想できるのか?実際にフィードバックシートを見ながら、解説していきたいと思います。
1. 「経営理念・方針」と「組織体制」の重要性がさらに高まる理由
ご存じのとおり、健康経営度調査の最終的な評価点は、以下の表に示すように、それぞれの側面での偏差値に、評価ウェイトを掛け合わせ、合計点が出されます。

こちらのケースでは、最終的な評価点は600点です。令和2年度調査では、590点台がホワイト500入りの最低ラインでした。なお、本稿の公開時点では、今年(令和3年度)のホワイト500はまだ発表されていません。
毎年、フィードバックシートと併せて返ってくる結果概要資料の中に、以下のような表がついています。

昨年度までは、どの設問が、どの側面に属しており、どういった配点であったか開示されていませんでした。今年から変更された点として、これらがすべて開示されています。これは非常に重要な情報で、今後の健康経営で、どこに力点を定めれば、高い得点を狙えるかわかってきます。
4つの側面をひとつずつ注意深く見てみましょう。「経営理念・方針」が12点満点、「組織体制」が11点満点、「制度・施策実行」が28点満点、「評価・改善」が19点満点です。それぞれの側面で、別々に偏差値がつけられるので、配点が小さい「経営理念・方針」と「組織体制」に関しては、1点の重みが大きくなることがわかります。
健康施策をやみくもに実施するのではなく、しっかりとした理念と方針に基づいて、PDCAを回していくことが、ここ数年求められてきました。ついに今年は、それらが直接的に評価に影響することが明らかになったのです。まさに社内に健康意識を浸透させるために、経営層の関与や組織体制の強化が“WANT”ではなく、 “MUST”事項となってきたことがわかります。戦略マップがなく、健康経営の理念・方針があいまいな法人は、今後淘汰されていくことが容易に想像できます。

2. 成果主義へと変わる健康経営度調査の評価方法
健康経営度調査の評価ウェイトに関して、2019年度に大きな変更があったことは、すでにご存じかと思います。「制度・施策実行」がウェイト3から2へ、「評価・改善」がウェイト2から3へ変更されました。この時点で、「評価・改善」の重要性が高まったのですが、今年はその「評価・改善」の中身が変わり、より成果にこだわった評価方法へ移ったことが、フィードバックシートからわかります。どういうことか説明しましょう。
これまで「評価・改善」に属する設問では、アウトカム指標、パフォーマンス指標、アウトプット指標の実績値を回答することとなっていました。それが今年から、アウトカム指標とパフォーマンス指標のみとなり、アウトプット指標は、評価ウェイトの低い「制度・施策実行」に移行されました。

つまり今年から、プロセス(アウトプット指標)よりも、成果(アウトカム指標、パフォーマンス指標)が重視されるようになったということです。
以下は、健康経営度調査票で回答が求められている指標一覧です。

セミナー参加率や検診受診率などを上げることは、もはや当たり前で、その結果、どんな健康成果があったのかということが高く評価されるポイントとなりました。いよいよ健康経営は、成果主義へと移行し始めたと言えます。
3. 健康成果の情報開示がますます求められる
一方、健康成果の情報開示が、今後のホワイト500入りの成否をわける重要なファクターであることもわかってきました。以下のグラフもまた、今年のフィードバックシートに掲載されているもので、調査票の設問(Q19 SQ3)における回答状況を示しています。
成果指標の回答状況を赤枠で囲いました。例えば、「休暇取得の状況」を開示している法人は、全体の48.4%にとどまり、半数以上の法人が開示できていないことがわかります。ほかの成果指標に至っては、さらに少ない状況です。

開示できない理由は大きく2つで、(1)経営層と追うべき成果指標が握れていないため、その結果、(2)実際に成果が出ていないためです。情報開示の有無は、「経営理念・方針」の偏差値にも影響するため、そもそも成果が出せていなければ、ダブルパンチで評価が下がってしまいます。成果が上がっていない法人は、ますますホワイト500入りが難しくなることが予想されます。
4. 令和4年度調査の最善対策は基本に立ち返ることから
さて、今年のフィードバックシートを振り返ることで、令和4年度調査は、成果主義へと移ってゆくことが予想されます。健康経営担当者にとっては、シビアな状況にも感じられますが、一方で成果導出のための確かな方法も示されています。今一度、経産省が提唱する健康経営のフレームワークを見直してみましょう。
成果指標をあげていくためには、しっかりとした「経営理念・方針」を掲げ、健康意識を社内浸透させていく「組織体制」を強化し、的確な施策と従業員に分かりやすい伝え方で、「制度・施策実行」を行っていくことに尽きます。
以下の図では、それぞれの評価側面において、改めて問い直すべき“問い”をまとめました。

これらの問いに良い答えができれば、あなたの会社はホワイト500入り目前と言えます。
最後に、本稿ではホワイト500を目指すすべての法人が意識すべき、令和4年度調査に予想される傾向と対策をまとめてきました。ただ、冒頭で申し上げたとおり、フィードバックシートは“通信簿”です。各社それぞれに書いてある内容が違います。ぜひ個別に振り返る時間を作っていただき、自社のウィークポイントを見定めて下さい。
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