コラム
2023/01/11 更新

ほんのひと工夫で10倍楽になる健康経営の年間計画の立て方

新年度の健康経営の年間計画を立てる時期がやってきました。本稿では、年間計画立案の際に、ほんの少しの工夫で来年度の健康経営の進みが圧倒的にスムーズになり、運用が楽になる方法をまとめました。紹介する工夫の方法は全部で5つ。いずれも初歩的でありながら、意外と見落とされている事項であり、少し意識をするだけで追加予算も工数もかけることなく、今すぐ実践ができます。計画立案の段階で押さえておけば、年間を通して、担当者の余計な手間を減らすことができ、健康経営をもう一段高いレベルで、効率的かつ効果的に進めることができるようになります。

 

 

 

1. 健康経営の全体像を捉え直す

まず、本題に入る前に、ひとつだけイメージとして捉えておいていただきたいものがあります。前回コラムで示した「健康経営の全体像」の図です。

 

上の図の通り、健康経営とは、健康セミナーやイベントなど、いわゆるポピュレーションアプローチの実施だけではなく、法令対応や産業保健も含め、従業員の健康管理を行っていく活動すべてのことを言います。ここに示された各活動項目は、健康経営を効率的かつ効果的に進める上で、どれも重要な役割を果たします。しかしながら、年間を通して、それぞれのタイミングが噛み合わなかっただけで、個々の活動の効果が薄れたり、最悪の場合、無駄な努力に終わってしまったりすることがあります。何をどのタイミングで実施するかは、極めて重要です。計画立案にひと工夫を加えるだけで、各活動の効果を最大化させながら、余計な工数は減らし、健康経営をスムーズに推進することができます。

2. 年間計画立案の5つの工夫ポイントとは?

さて、少々前置きが長くなりましたが、年間計画立案の5つの工夫ポイントを紹介していきましょう。これら5つを押さえるだけで、健康経営はさらに効率的かつ効果的に進められるようになります。

(1)労基署への健診結果の報告は速やかに済ませる

まず、一つ目の工夫ポイントです。それは、健康診断後の労基署への報告をできる限り速やかに済ませることです。早く済ませるほど、後々の余計な手間がかかってきません。法令上でも、「“遅滞なく”(中略)提出しなければならない」となっています。報告が遅くなったとしても明確な罰則規定は設けられていませんが、実際のところ、あまりに遅すぎると督促や監査対象となってしまう恐れがあります。本来やらなくてよかったはずの対応業務や追加作業が発生しかねません。

また、健康診断が終わってから、報告までの期間が空き過ぎると、従業員数が変わってしまうこともよくあります。すると報告書上、健康診断を受けていない人が出てくることになります。これでは誤報告であり、労基署から確認や指摘が入ることもあり得ます。

なお、労基署への報告には安衛法で定められた「定期健康診断結果報告書様式」に、集計結果をまとめて提出しますが、従業員一人ひとりの健診結果を担当者が一から集計することは手間のかかる作業です。健診機関(クリニックや健診センター等)によっては、報告書様式に合わせた形で集計データを作成してくれるところもあり、積極的に活用していくことをオススメします。

(2)健康診断の流れに合わせて産業保健活動のスケジュールを組む

年間計画立案の工夫ポイント、2つ目は、健康診断の流れに合わせて産業保健活動のスケジューリングをすることです。例えば、健康診断を4月から始める会社であれば、2月頃には案内を出し始めましょう。また、健診後は産業医による就業判定が待っています。これは予めわかっていることなので、健診後の産業医の就業スケジュールはしっかりと押さえておくことをオススメします。産業医の先生は、就業先の会社を複数かけ持ちされていることが多く、就業判定の時期が重なると、思うように来てもらえないケースが出てきます。また、就業判定の結果は、健康経営の施策を考える起点となるため、なるべく前倒しに把握できれば、健康経営の進みも良くなることは間違いありません。

(3)ストレスチェックの時期を最適化する

3つ目の工夫ポイントは、ストレスチェックの時期を最適化することです。ストレスチェックの最適な時期とはいつでしょうか?これには、ストレスチェックの本来の目的に立ち返ることが先決です。ストレスチェックの本来の目的は、企業が従業員のストレス状況を把握し、必要に応じて職場環境の改善を行うことで、メンタル不調者の発生を未然に防ぐことです。ストレスチェックの結果は、部門や部署毎に出てきます。このことを最大限に有効活用するならば、実施から結果が出て、職場改善に至るまでの期間は、人事異動の時期と重ならないようにするのがベストです。年間を通して、組織毎のストレス状況を把握できる唯一の機会にも関わらず、組織編制が入ってしまえば、得られたデータが無駄になってしまいます。また、高ストレス者からの面談希望があった際には、速やかに対応できるよう、産業医や産業看護職の就業頻度が高い時期から逆算して、ストレスチェックのタイミングを検討することも大切です。

(4)健康増進施策は参加しやすい時期に行う

4つ目の工夫ポイントです。健康増進施策は従業員が参加しやすい時期に開催する計画をしましょう。繁忙期がある会社は、これを避けるべきです。どれだけ良い施策を実施しても、参加してもらえないことが起こり得ます。

また、決算時期も同様に、どの部署も忙しいことが多く避けるべきです。例えば、3月、6月、9月、12月で四半期決算を出す会社が1か月間のウェルネス月間を設定する場合、決算月に重ならないようにすべきです。また1日で終わるような単発イベントやセミナーの場合は、月末や月初も避けた方が得策です。

逆に、参加者が増えやすい時期もあります。まず、健康診断の前後です。健康診断前は、結果を良くしたいと考える人が増えるため、運動系の施策やダイエット施策など、即効性のあるコンテンツに興味を持ってもらいやすくなります。健康診断後では、健康意識が高まるため、運動系の施策はもちろん、食事改善施策や喫煙、飲酒関連の施策などに参加意欲が高まります。

また、正月明けやお盆明け、GW明けなども、実施タイミングとして適しています。運動不足や食べ過ぎ、飲み過ぎを自覚しやすい時期なので、休肝日を設けたり、長期休み後のメンタル不調を改善する運動施策を行ったりすることができます。ウォーキングイベントなど、屋外で開催する施策に関しては、天候や気候の良い時期を選ぶことも参加率が上がるきっかけとなります。

(5)調査票提出のタイミングをおさえる

最後の工夫ポイントは、調査票提出のタイミングから逆算して計画を立てることです。これは健康経営のPDCAを着実に回していくためにも、大変重要です。調査票の提出は毎年10月です。前年度3月末までの健康診断の全体集計が手元に届くのは6月頃となるのが一般的です。なので、6月~7月頃にはデータを取りまとめ、8月~9月に分析評価をし、10月に調査票回答を行う流れがベストと言えます。

また、調査票には、前年度1年間で実施した施策内容に加え、今年度初めから調査票提出日までに行った施策も書くことができます。つまり、3月締めの会社であれば、前年度4月~3月で実施した施策に加え、今年度の10月までに実施した施策を調査票に反映させることができます。約1年半分の施策内容を回答することができるので、これを見据えて年間計画を立てれば、限られた時間や予算の中で、余計な施策を見直し、より効率的な健康経営を推進することができます。

3. 年間計画表サンプルのご案内

以上、健康経営の年間計画立案における5つの工夫ポイントを紹介してきました。読者の皆さんには本稿の内容を自社にすぐ適用いただけるよう、なるべく具体例をあげ、イメージがしやすい説明に努めました。そして今回、さらに理解を深め、お役立ていただけるように、具体的な年間計画表サンプルを期間限定で特別にご用意いたしました。こちらのサンプルは、本稿で紹介した工夫ポイントに対応した形で、健康経営施策および健康管理年間計画をまとめています。自社の年間計画を作成される際の基礎として、このサンプルをご利用いただくこともできます。以下よりダウンロードページにお進みいただき、必要事項をご入力の上、年間計画表サンプルを今すぐダウンロード下さい。

 

 

 

著者名:パソナ・健康経営コラム編集部

健康経営・産業保健の推進パートナーとして健康経営の「着実な一歩」を伴走サポートするパソナが運営しています。
企業のご支援経験だけでなく、パソナ自身が健康経営銘柄に初選出、ホワイト500を7年連続取得する過程で得たノウハウを踏まえ、皆様にお役に立つ情報を発信しています。
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