コラム
2022/11/1 更新

中小企業特有の課題から逆算する健康経営基礎づくり3つのステップ

中小企業の健康経営はどのように始めれば良いのでしょうか。予算や人材、組織構造など、大企業とは異なる制約の中で、中小企業の健康経営には特有の課題があります。2021年度健康経営度調査における回答企業データを見ても、従業員300人未満の企業とそれ以上の企業では、健康経営の推進体制にかなりの差があることがわかります。

本稿では、従業員300人未満の企業を中小企業と定義し、はじめに中小企業を取り巻く健康経営の現状と課題を示します。その上で、中小企業がまず取り組むべき健康経営の基礎づくりについて、3つのステップで紹介していきます。この3つのステップは、会社を健康経営体質にするための土台となります。あくまで、これらすべてが出来れば、必ず健康経営が成功するわけではありません。逆に、これら3つのうち、一つでも抜け落ちれば、健康経営はうまくいきません。これから健康経営をはじめる企業トップや担当者の方にはご参考いただき、すでに健康経営をスタートさせている会社であれば、見直すきっかけとして、本稿をご活用いただければと思います。

 

 

 

1. なぜ健康経営に取り組む中小企業が今増えているのか?

中小企業の健康経営優良法人の申請数、認定数が年々増えています。

なぜ健康経営に取り組む中小企業が今増えているのか?

健康経営に取り組む理由は企業によりさまざまですが、主たる目的は次の2つと言えます。ひとつは従業員のサステナブルな生産性維持、もうひとつは採用力強化です。いずれも“人”にまつわるテコ入れとして、健康経営は経営戦略の新たな打ち手となりつつあります。

特に中小企業においては、従業員の高齢化が進むことで健康リスクが高まり、社内の健康管理や増進を積極的に行っていくことが求められています。冒頭に述べたデータにおいて、従業員300人未満の会社では、49%の従業員が40歳以上であることがわかります。若手の採用競争が激化する中、とりわけ中小企業において、今いる従業員の健康をいかに維持していくかということは、経営に直結する課題と言えます。一方、年々健康経営に取り掛かる企業が増えることで、健康経営の領域でも競争の原理が働き、今後の企業の生産性や採用力に差が出てくることは否定できません。特に採用力に関しては、中小企業の場合、地域人材に依存することが多く、強化策が求められます。

行政も中小企業の健康経営を後押ししています。昨今、多くの地方自治体で、健康経営に特化した補助制度が設けられています。今年、経産省は初めて中小企業における健康経営優良法人の取り組み事例集を出しました。この冊子の中で、各自治体が独自に設ける健康経営支援制度を一覧で確認することができます。

また、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、中小企業には国からさまざまな補助金制度も敷かれました。テレワーク推進やIT導入等に関する補助金は、健康経営の側面からも有意義であり、多くの企業が活用しています。

まさに今、中小企業の健康経営は、官民の足並みが揃い、積極的に推進されつつあると言えます。

2. 中小企業の健康経営の課題とは?

中小企業が健康経営を始めるにあたり、往々にして2つの課題が出てきます。ひとつは人材不足、もうひとつはノウハウ不足です。

健康経営を推進する人材の不足

中小企業の場合、人事労務の専任部門が存在することは少なく、総務や経理との兼任部署に、人事担当者が在籍していることがよくあります。先のデータでも、従業員300人未満の回答企業の約7割は、健康経営の専任部署や統括する組織を持っておらず、担当者や部署・事業所レベルで対応していることがわかります。

また、医療の専門家不足も顕著です。同データによると、従業員300人未満の回答企業の6割以上が非常勤の産業医を1名配置するのみに留まっています。保健師や看護師を配置する企業も非常に少なく、配置していたとしても1か月の延べ従事日数は5日未満と少ない状況です。産業医や保健師、看護師がいれば任せられる作業も、すべて人事担当者ひとりでやらざるを得ないため、大きな負担となるのです。これでは健康経営は進みません。

健康管理・増進策を形にするノウハウ不足

また、従業員300人未満の企業の半数近くが、管理職への健康に関する教育を行っていない、あるいは数年に1回のみに留まっているというデータも出ています。次項でも触れますが、健康経営は経営陣や管理職のコミットメントが必要不可欠です。組織の中核となる人物が、積極的に健康教育を受けることで、会社全体の健康管理・増進策を形にしていける体制が整い、具現化できるノウハウが社内に蓄積されていきます。

3. 健康経営推進の基礎づくり3ステップ

人材不足やノウハウ不足といった課題がある中で、いかにして健康経営を上手に進めていくか。ここが中小企業の健康経営担当者の腕の見せ所となります。選択と集中を適切に行い、省力化できるところは省力化し、注力すべきところに徹底的に取り組んでいきます。

では、健康経営の“選択と集中”は、どのように決まってくるのでしょうか?何をやるか、何をやらないか。この判断が中小企業の健康経営の命運をわけます。そして、その判断基準を“見える化”していく作業が、以下に紹介する健康経営の基礎づくり3つのステップです。

経営層が健康経営にコミットする(ステップ1)

ここまでお読みいただいた読者の皆さんであれば、お分かりいただけると思いますが、健康経営は“経営”です。持てる社内リソースを以下に振り分け、推進させていくかということは、経営層の関与なしに進めることはできません。まずやるべきことは、経営層がこれから健康経営に取り組むことを社内に宣言することです。そして、継続的にその意思を発信し続けていくことも極めて重要です。

目指す姿を明確化し、追うべき指標を決める(ステップ2)

限りある社内リソースをどこに投下すべきか。この問いには、健康経営を通してどんな姿を目指すかというビジョンの明確化により、答えを導き出せます。ステップ1で経営層の理解があれば、経営理念や中長期の事業目標とすり合わせながら、健康経営の役割を明確にし、健康経営におけるビジョンを共有することができます。ビジョンが明文化されれば、追うべきKPIを設定することができます。ただし、健康経営に初めて取り組む企業にとっては、これは不慣れな作業となります。ここはセオリーどおりに進めずとも、まずは何かしらの健康施策を実施してみて、PDCAを小さく回しながら、得られたフィードバックをもとに、KPIを絞り込んでいく方法でも問題ありません。

目指す姿を実現するための施策を決める(ステップ3)

KPI設定ができれば、これを達成できる具体的な健康施策を決めていきます。逆に言えば、KPI達成に無関係な、あるいは極めて影響力の少ないアクションや体制づくりは控えるべきと言えます。先に申し上げた通り、限られた社内リソースを選択と集中により、適切に振り分けていくことが重要です。

健康施策を発案する際は、仮説レベルで問題ありません。これだけの施策を実行すれば、今期設定したKPIは達成できるだろうという予測のもと、年間の施策実行計画を作っていきます。大切なことは、毎年計画を立て、PDCAを回していくことです。そうすることで、健康経営を着実に改善し、成果を上げていくことができます。なお、計画立案の際は、経産省が提唱する戦略マップのフォーマットが大変便利です。

以上に示した「健康経営推進の基礎づくり3ステップ」とは、「ビジョンの決定」「KPIの設定」「達成計画の立案」です。基本的にこれらすべての作業は、経営者や担当者がデスクに向かい、ひとりで検討し、決定することができます。一方、これ以降の作業、つまり「計画の実行」に関しては、医療の専門家や健康経営の専任部署、効果的な実行ノウハウがない限り、実現は難しいと言えます。仮に手さぐりで実行に移せたとしても、従業員からのレスポンスが薄かったり、PDCAを回すためのデータ取得があいまいになったりすれば、これで良かったのかという不安が常につきまといます。

4. ひとりで始められるオンライン健康推進室とは

限られたリソースとノウハウ不足の中で、中小企業の経営者や担当者はどのように健康施策を実行に移していけばよいのでしょうか?この問いに、弊社パソナが出す答えは「ONLINE健康推進室」の活用です。オンライン健康推進室とは、その名の通り、オンライン上に保健師や臨床心理士などの医療専門家をもつ仕組みです。従業員はオンライン上で医療専門家とつながるため、必要な時に必要な分だけ、健康相談をすることができます。実際に、保健師や臨床心理士を配置する場合と比較して、リーズナブルでありながら、専門性を落とすことなく、よりタイムリーに健康管理・増進のフォローを実現できます。日々の健康施策も専門家の監修のもと、オンライン上で実施していきます。オンライン健康推進室の具体的な仕組みや導入方法については、以下資料でご紹介しておりますので、ご興味のある方はぜひダウンロードください。

 

 

 

 

著者名:パソナ・健康経営コラム編集部

健康経営・産業保健の推進パートナーとして健康経営の「着実な一歩」を伴走サポートするパソナが運営しています。
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