コラム
2026.1.27 更新

地域の未来を創造していく健康経営—福岡・天神で開催された健康経営Meet Up 2025 レポート

健康経営MeetUp

 

毎年、全国各地で開催しているパソナの「健康経営Meet Up」。 2025年は5月の淡路島、8月の大阪に続き、11月に福岡・天神にて開催されました。健康経営Meet Upは、「健康経営をもっと身近に、おもしろく」をコンセプトに、企業・団体の健康経営担当者が一堂に会し、組織や業種の垣根を越えて悩みや工夫、やりがいを共有する勉強会型の交流イベントです。

 

「健康経営」という言葉は広く浸透しつつある一方で、「どこから着手すればよいのか分からない」「制度は整えたが、現場に根付いている実感がない」「経営層にどう説明すれば腹落ちしてもらえるのか」といった悩みを抱える担当者は少なくありません。本Meet Upは、そうした“実務者のリアルな課題”に正面から向き合い、実践知を持ち帰ることを目的としています。

 

今回、九州エリアで初めての開催となり、福岡のみならず、大分、熊本からも広くご参加をいただきました。制度論にとどまらず、「なぜ取り組むのか」「どのように組織を動かしたのか」「その結果、何が変わったのか」といった背景やプロセスまで踏み込んだ議論が交わされ、終始熱量の高い時間となりました。

 

本稿では、当日の様子をダイジェスト版としてレポートします。イベントは二部構成で実施され、第一部ではセミナーおよびパネルディスカッション、第二部では懇親会形式でのグループ交流が行われました。

 

 

 

1. 第一部:肥後銀行に学ぶ、健康経営を「企業価値」へとつなげる実践

創立100周年を迎える地域金融機関が挑む健康経営

第一部の前半では、株式会社肥後銀行 人事部 人事企画・ダイバーシティ推進グループ 企画役代理の榊俊博氏より、同社における健康経営の取り組みが紹介されました。肥後銀行は2025年に創立100周年を迎える地域金融機関であり、九州フィナンシャルグループ(KFG)の中核企業として、熊本県を中心とした地域経済を支え続けています。

同社が掲げるパーパスは、「お客様や地域の皆さまとともに、資産や事業、地域の産業や自然・文化を育て、守り、引き継ぐことで、地域の未来を創造していく」こと。このパーパスを実現するために、「地域価値共創グループ」への進化をビジョンとして掲げています。

注目すべき点は、健康経営がこのパーパス・ビジョンと明確に接続されている点です。健康経営は人事施策の一部ではなく、経営理念を実現するための“経営の軸”として位置付けられています。

中期経営計画に組み込まれた健康経営の位置付け

肥後銀行では、第4次グループ中期経営計画「躍進(2024~2026年度)」において、健康経営を経営の重要テーマとして明確に位置付けています。

 

肥後銀行における健康経営は、
• 行員価値の向上(行員の心身の健康、エンゲージメント、生産性向上)
• 顧客価値の向上(質の高いサービス提供、顧客満足度向上)
• 地域価値の向上(地域企業・住民の健康増進、持続可能な地域づくり)
この三つの価値創出を同時に実現するための基盤施策として整理されています。

この考え方は、健康経営を「コスト」や「守りの施策」と捉えるのではなく、企業価値を高めるための「投資」であるという明確なメッセージを、行内外に発信するものとなっています。

トップ主導で推進される健康経営体制

肥後銀行が健康経営を継続的に推進できている背景には、強固な推進体制があります。2019年に「健康経営宣言」を実施し、代表取締役頭取自らが健康経営責任者に就任。経営トップが旗振り役となり、健康経営を全社テーマとして推進しています。

推進体制は、経営・人事、健康保険組合、産業医、衛生管理者、衛生委員会が密に連携する形で構築されています。頭取が「健康経営責任者」として統括し、人事担当役員が「健康経営推進責任者」と「介護と就業の両立支援責任者」を担当。さらに、「衛生委員会」で施策立案・検証し、衛生推進者が配置され、現場レベルでの課題の吸い上げや施策の浸透が図られています。

 

このように、経営層から現場まで一貫した体制を構築することで、「方針や施策はあるが、現場に浸透していない」といった形骸化を防いでいます。

戦略マップで描く健康経営の好循環

 

健康経営戦略マップを用いた施策と成果の因果関係についても、分かりやすく示されました。健康管理システムの導入、健康診断・再検査の徹底、運動促進、育児・介護との両立支援といった「健康投資」を行うことで、生活習慣の改善や労働時間削減、エンゲージメント向上といった結果が生まれます。

その結果、生産性向上につながり、最終的には顧客価値・地域価値の向上、企業価値の向上へとつながる——こうした好循環生み出すことを目指し、施策に取り組まれています。
健康経営を「行っているかどうか」ではなく、「どのような価値を生んでいるか」という視点で取り組んでいる点は、参加者にとって重要な示唆となりました。

データで示される実践の成果

健康経営の取り組みを定性的な満足度だけでなく、定量データで継続的に検証しています。2020年度と2024年度を比較すると、健康経営指標24項目中22項目が改善しています。これは、取り組みが一過性ではなく、継続した取り組みが、着実に効果を上げ、組織文化として根付いていることを示しています。

また、顧客向けサービス業務利益は2020年度の41億円から2024年度には97億円へと大きく伸長しています。新規採用数も増加しており、健康経営が採用力や事業成長にも寄与していることがうかがえます。

 

こうした数値は、健康経営の効果を社内外に説明する際の強力な根拠となっており、経営層の納得感を高める要素としても重要な役割を果たしています。

従業員一人ひとりに向き合う取り組み

従業員向け施策としては、6つのテーマ「健康診断・人間ドックの充実」、「働き方改革によるワークライフバランス向上」「運動習慣の促進」「育児・介護と仕事の両立支援」「エンゲージメント調査」「コミュニケーションの改善」など、多面的な取り組みが展開されています。

 

具体的な取り組みですが、健康診断・人間ドック受診率は100%で、精密検査受診率は2014年度38%→2024年度98%まで改善しました。受診率改善を促す声かけを一度だけではなく、何度も行うことで、徐々に受診率が高まりました。

 

また、健康管理システムの活用により、従業員自身が入行以来の健診データを閲覧することが可能となりました。従業員自身が経年変化などを捉えることで、主体的な改善行動がみられるようになりました。

 

さらに、コミュニケーション改善において力を入れたのは、「マイパーパス」の取り組みです。行員一人ひとりが「やりたいこと(WANT)」「すべきこと(MUST)」「できること(CAN)」を言語化し、自身を突き動かす価値観を明確にします。上司との1on1やチーム内での共有を通じて、仕事の意味づけや対人コミュニケーションの変化が生まれ、エンゲージメント向上に寄与しました。

 

本施策の最大の成果は、エンゲージメントを1回測って終わりではなく、年に3回振り返りを行うことで、一人一人の行動につなげていることです。データに基づく組織改善や管理職を巻き込んだ実行力、個別フォローなど、多くの企業にとって参考となるでしょう。

従業員家族まで含めた健康経営—PFS事業の挑戦

肥後銀行の健康経営の特徴として、従業員本人にとどまらず、家族の健康増進にも踏み込んでいる点が挙げられます。被扶養配偶者の特定健診受診率向上を目的に、経済産業省と連携した全国初の「企業・健保共同発注型PFS事業」を実施しています。

 

PFS(Pay for Success)とは、成果に応じて報酬が支払われる仕組みであり、民間事業者のノウハウを最大限活用しながら、実効性の高い施策運営を可能にします。対象は、肥後銀行の従業員の家族(被扶養配偶者)となり、40歳以上の被扶養配偶者の特定健康診査の受診率を高めることを成果としています。成果の改善状況に応じて、受注者に支払いが発生する成果連動方式です。受診勧奨や相談対応を強化した結果、被扶養配偶者の特定健診受診率は大きく向上しており、従業員の安心感や生産性向上にもつながっています。

地域へ広げる健康経営—銀行の枠を超えた価値提供

自社で培った健康経営ノウハウを地域へ還元する取り組みも進めています。行員の約78%が健康経営アドバイザー資格を取得し、地域企業への健康経営優良法人認定支援やコンサルティングを実施、延べ60社以上の支援実績を有しています。

また、2025年10月には健康経営を専門とする事業子会社「株式会社九州健康経営ラボ」を設立されました。地域の事業者の健康経営をサポートし、持続可能な未来を共創するパートナーとなることをビジョンとしています。

 

熊本、九州の企業に健康経営を普及・促進することで、雇用安定や生産性向上を実現し、将来的には熊本、九州の地域価値向上に貢献することを目指されています。

事業には4つの軸があり、健康経営コンサルティング、健康管理業務受託、福利厚生支援、地域健康スポーツ事業などで、地域企業の課題解決に取り組んでいます。
「その地域にどのような地方銀行があるかで、その地域の未来が変わる」というメッセージは、参加者の心に強く残る言葉となりました。

 

2. 第二部:対話が生む実践のヒント—懇親会・グループ交流

第二部では、懇親会形式での意見交換・グループ交流が行われました。業種や企業規模の異なる参加者同士が、自社の課題や取り組みを率直に語り合い、共感や新たな気づきを得る場となりました。

サービス業

サービス業

各社の素晴らしい取り組みを聞けた貴重な機会をありがとうございます。自社の課題も再確認できたので、今後最大限生かします。また、定期的に開催があるととても嬉しいです。

金融業

金融業

貴重な機会をありがとうございます。推進内容と各種指標を多く開示いただき、大変参考になりました。引き続き、宜しくお願いします。

製造業

製造業

他社ご担当者様と直接お話する機会がこれまでなかったため、今回の交流は非常に有意義でした。オフィス見学も感動の連続で、貴重な体験になりました。

3. 開催後記:健康経営は「続けること」で価値になる

健康経営にゴールはありません。重要なのは、企業理念やパーパスと結びつけ、PDCAサイクルを回しながら、組織文化として根付かせていくことです。
今回の健康経営Meet Up in福岡は、肥後銀行の実践事例を通じて、健康経営が企業価値・地域価値へとつながるプロセスを具体的に学ぶ機会となりました。
パソナでは、今後も全国各地で健康経営Meet Upを開催し、健康経営に取り組む皆さまの挑戦を支援して参ります。

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パソナ・健康経営コラム編集部

健康経営・産業保健の推進パートナーとして健康経営の「着実な一歩」を伴走サポートするパソナが運営しています。
企業のご支援経験だけでなく、パソナ自身が健康経営銘柄に初選出、ホワイト500を9年連続取得する過程で得たノウハウを踏まえ、皆様にお役に立つ情報を発信しています。
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