コラム
2023/05/8 更新

令和5年度健康経営度調査を先読み!第8回健康投資ワーキンググループから予想される傾向と対策とは?

2023年3月16日、第8回健康投資ワーキンググループ(以下、健康投資WG)が開催されました。健康投資WGとは、経済産業省が2014年に設置した、健康投資の促進などに関する有識者会議です。毎回の健康経営度調査の方針や運営方法は、ここで議論された内容が大きく反映されます。

※昨年コラム「健康投資ワーキンググループに参加してわかった令和4年度健康経営度調査に役立つ3つの視点」より抜粋。

健康投資WGは毎年3月、7月、12月の計3回開催されます。毎年3月回では、前年度から今年度にかけての調査動向が示されます。その上で、次年度調査票の設問改定案が出され、議論されることが通例となってきました。今回も例年どおりのアジェンダで行われ、令和5年度調査の方向性が明らかになってきましたので、ここで解説しておきたいと思います。

1. 堅調に伸びる調査票回答数・優良法人認定数

令和5年度調査の設問改定案の議論に先立ち、まず令和4年度調査を含めた年度別回答数および優良法人認定数の推移が発表されました。大規模法人部門、中小規模法人部門について、各々は以下の通りです。

(出所:健康・医療新産業協議会 第8回健康投資WG 事務局説明資料)

令和4年度も部門を問わず、回答数、認定数ともに堅調に伸びたことが示されました。令和4年度調査から、健康経営優良法人には認定申請料がかかることになりましたが、その影響はあまりなかったことが伺えます。

2. 2,238法人がフィードバックシート公開

また、申請企業のフィードバックシート(以下、FBS)の開示状況についても発表がありました。今年は2,238法人が開示許諾しており、前年比+238法人となっています。開示率は昨年から微増とはいうものの、7割を超える法人がFBSを開示するに至っています。

(出所:健康・医療新産業協議会 第8回健康投資WG 事務局説明資料)

昨年コラムでも解説の通り、FBSの開示データは非常に有用です。自社がベンチマークする企業の評価結果を確認したり、ホワイト500を目指すのであれば、実際に認定を受けている企業と自社を比較して、今後の強化すべきポイントを割り出したりすることにも役立ちます。

※詳しくは昨年コラム「健康投資ワーキンググループに参加してわかった令和4年度健康経営度調査に役立つ3つの視点」をご参考下さい。

3. 令和5年度調査票の主な設問改定案4つ

さて、令和5年度調査における設問改定案として、議論された内容を見ていきましょう。大きく4つの改定が検討されました。

業務パフォーマンスの測定実施有無が評価対象へ?

令和4年度調査票では、「評価・改善」項目のQ71において、プレゼンティーズム、アブセンティーズム、ワークエンゲージメントの測定実施の有無とそれらの数値が問われました。これらの回答内容は、令和4年度調査では評価に影響しないと説明されていましたが、令和5年度調査では、測定実施の有無に関しては評価対象とする提案がされました。

(出所:健康・医療新産業協議会 第8回健康投資WG 事務局説明資料)

労働安全衛生に関する新設問が重要箇所に追加検討

そして、2つめに提示された改定案です。それは、令和5年度調査から、労働安全衛生に関する設問を追加するというものです。具体的には、調査票の「経営理念・方針」項目にあるQ19に追加されることが検討されました。Q19と言えば、健康経営の目的と体制の開示状況が問われ、優良法人として認定を受けられるかどうかの重要な設問です。目的と体制のいずれか一方でも開示のない企業は、優良法人認定を受けるができません。労働安全衛生に関する取り組みについても、現状を整理しデータ集計などをして、開示準備を進めておくと良いと言えます。

(出所:健康・医療新産業協議会 第8回健康投資WG 事務局説明資料)

育児・介護支援の状況を問う設問の追加検討

3つめです。令和4年度調査票の「制度・施策実行」項目にあるQ44では、ワークライフバランスの推進が問われていました。具体的には、労働時間や有給休暇の取得率などの回答が求められていましたが、これらに追加して、令和5年度以降は育児や介護支援に関する設問を設けることが検討されています。特に仕事と介護の両立支援に関しては、4人に1人が75歳以上となる2025年問題が差し迫る中、ビジネスケアラーの急増に企業としてどう支援すべきか今後ますます問われることは間違いありません。

(出所:健康・医療新産業協議会 第8回健康投資WG 事務局説明資料)

ここでは、どのような取り組みや制度を設けていて、どの程度の利用率があるかを問うことが検討されていますが、上図にも記載の通り、利用率に関しては、少なくとも令和5年度では評価対象とならない旨も明示されています。

なお、例年の健康経営度調査を年度順に確認していくと、新しい設問が追加される際、一定の傾向が見られることがわかります。新しい設問は、まず取り組み状況や制度の有無のみを問う形で追加されます。そして次の年に、それらの取り組みに対する参加率や制度利用率が問われるようになりますが、評価にはまだ反映されません。さらに次の年、いよいよ参加率や制度利用率の数値が評価に反映されるようになります。新しい設問が追加される際には、このように段階を踏む傾向が見られるため、今回の「仕事と育児・介護の両立支援」に関する問いも、将来的には取り組み参加率や制度利用率が評価対象となる可能性があると言えそうです。

特定健診・保健指導の実施率が問われるように?

4つめは、厚生労働省から発案された内容です。「制度・施策実行」項目のQ48では、特定健診・特定保健指導の実施率の把握の有無のみが問われていましたが、今後は実施率の数値も問われる可能性があります。これは厚生労働省から毎回提案されてきましたが、今回は具体的な設問案が提示され、いよいよ新設問として入ることが予想されます。保険者との連携を強化して、実施率を高める対策を立てておくべきと言えます。

(出所:健康経営度調査における特定健診・保健指導実施率の評価案(第8回健康投資WG)参考資料1)

4. 中小では優良法人認定が補助金審査の加点対象へ

最後に、中小規模法人において、重要な改定があったことを紹介しておきましょう。それは、健康経営優良法人認定が中小企業向け補助金における審査加点対象となったことです。

(出所:健康・医療新産業協議会 第8回健康投資WG 事務局説明資料)

また今後、日本政策金融公庫の働き方改革推進支援資金の貸付対象に、健康経営優良法人の認定を受けていることが追加されます。

(出所:健康・医療新産業協議会 第8回健康投資WG 事務局説明資料)

以上が、今回の健康投資WGで議論された令和5年度調査における主な改定案でした。実際に改定が進むかどうかは、例年通りであれば、7月の健康投資WGで決まってきます。ただ、毎年の傾向を見ると、3月に議論されたことは概ね反映されており、現時点での改定案を念頭に令和5年度調査への対策を練り始めることは、今からでも決して早すぎることはないと言えます。

5. 令和5年度健康経営度調査票に向けて

令和5年度健康経営度調査まで、残り約半年です。やるべきことは明確でしょうか?明確でない方は、是非フィードバックシートを徹底的に振り返ってみて下さい。何といっても、健康経営はPDCAサイクルに基づいた戦略を描くことから始まります。とくに何年もやっていると「なんとなく頭打ち感がある」、「マンネリ化してきた」というお声も聞かれます。そんな時、突破口となるのがフィードバックシートであり、改善のヒントがたくさん得られます。

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著者名:パソナ・健康経営コラム編集部

健康経営・産業保健の推進パートナーとして健康経営の「着実な一歩」を伴走サポートするパソナが運営しています。
企業のご支援経験だけでなく、パソナ自身が健康経営銘柄に初選出、ホワイト500を7年連続取得する過程で得たノウハウを踏まえ、皆様にお役に立つ情報を発信しています。
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