いま、企業経営において“人的資本への投資”の機運が高まっています。人的資本への投資とは、従業員を投資の対象として捉え、人材に関するあらゆる投資を企業が行っていくことを指します。人的資本への投資は大きく4つに分類されます。人材育成のための投資、人材の多様化への投資、労働慣行への投資、そして従業員の健康・安全への投資です。もし、あなたの会社が上場企業やそのグループ子会社であるならば、今年中にも、健康経営を人的資本への投資として捉え直し、戦略の再設計を急ぐことをお勧めします。
なぜ、いま健康経営を“人的資本への投資”として、捉え直すべきなのでしょうか?本稿では、昨今の企業経営において、国内外で人的資本への投資が注目される背景を解説し、今後の健康経営への影響をわかりやすく示しました。2022年、健康経営は大きな変化を迎える年となることをご理解いただけると思います。
1. 人的資本への投資”が注目される背景とは?
「人的資本への投資」という考え方が注目されるようになった背景には、従業員の働き方の変化があります。
製造ラインや建設現場などで“作業”をメインとする仕事が多かった時代、従業員にかかる人件費はコストとして捉えられてきました。しかしながら昨今、デジタル化や自動化が進むことで、企業の競争力は、従業員の“よりクリエイティブな仕事”に支えられるところが大きくなってきました。従業員の良いアイデアや組織としてのオリジナリティが差別化を生み、競争優位となる時代です。このような状況で企業が成長を遂げていくためには、従業員を“人的資本”として捉え直し、人材や組織に積極投資していくことが重要になってきます。

2. 世界中の投資家が注目する人的資本
いまや、企業の成長は人的資本に大きく左右されると言っても過言ではありません。そのため、企業の人的資本情報は、投資家にとっても重要となります。事実、アメリカでは2020年8月に米国証券取引委員会(SEC)が同国の上場企業に対して、人的資本に関する情報開示を義務化しています。投資家が投資判断をする際に、人的資本に関する情報を参考にしているからこそ、このような義務化が進んだと言えます。
他にも海外で進む人的資本情報の開示に関する主な動きについて、経済産業省が出す資料を載せておきたいと思います。

出所:経済産業省「人的資本経営に関する調査について」
3. 国内でも急ピッチで進む人的資本の情報開示ガイドラインの整備
国内でも、人的資本の情報開示について、企業が参考とすべきガイドラインの整備が急ピッチで進んでいます。
2020年、経済産業省において「持続的な企業価値向上と人的資本に関する研究会」が開催され、その報告書「人材版伊藤レポート」が公表されました。次いで今年5月には、これに実践的な内容を盛り込んだ「人材版伊藤レポート2.0」が出されています。
また、内閣官房は今夏にも、人的資本への投資状況を企業がどのように情報開示すべきかをまとめる予定です。金融庁も動いています。2023年度には、有価証券報告書への人的資本情報の一部記載を義務付ける方針です。
昨年6月に、東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードの改定を行い、人的資本に関する記載が盛り込まれたことも記憶に新しいと思います。
人的資本に関する情報を開示していくことが、世界の投資家から積極的な投資を受ける機会を創出し、今後の日本企業の国際競争力を高めることに繋がるからです。

4. 健康経営は「従業員の健康」と「投資家ニーズの充足」の両立を
先にも述べたとおり、人的資本への投資には、従業員の健康・安全管理も含まれます。つまり、日々の健康経営の一挙手一投足が、人的資本への投資となり得るのです。
今後、日本企業において、人的資本の情報開示への期待は、ますます高まってくることは間違いありません。健康経営担当者としては、従来どおり、従業員の健康保持・増進や安全確保を目的に、健康経営に取り組む一方で、投資家ニーズを満たせる情報開示ができるように、自社の経営戦略に整合した健康経営を設計していく必要があります。
しかしながら、「投資家を意識した人的資本投資としての健康経営を進めよ」と言われても、一体どんな指標を立てれば投資家ニーズに応えられるのか、そして、その指標は現実的に改善できるのか。このような2つの疑問が沸いてきます。
5. 投資家は健康経営のどんな指標を知りたいのか?
従業員の健康・安全管理について、どんな指標(KPI)を立て、数値を開示することが、投資家の投資判断に役立つのでしょうか?
残念ながら、これに対する決定的な答えはまだありません。現時点では、政府も模索しながら、そのガイドラインを整備している段階にあります。
6月7日開催の経済財政諮問会議(令和4年第8回)・新しい資本主義実現会議(第9回)で作成された資料の中では、企業側でモニタリングすべき関連指標の選定と目標設定、また企業価値向上との関連付け等について、参考となる人的資本可視化指針を本年夏に公表すると伝えられています。

出所:経済財政諮問会議(令和4年第8回)・新しい資本主義実現会議(第9回)、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案)
政府が公表する人的資本可視化指針を待つ一方で、会社として独自の指標を立てることも検討すべきです。先述のとおり、経営戦略と整合した指標の開示ができれば、投資家の評価は得やすくなります。政府のガイドラインにかなった指標設定だけでなく、自社の経営戦略に根付いたバックロジックの強固な指標を立て、数値改善を追求していけば、投資家に対して、人的資本の差別化を図ることができると言えます。
6. 限りあるマンパワーと予算でどう指標改善していくか?
投資家ニーズに応えるわかりやすい指標を立てたとしても、実際にその数値が改善しなければ、投資家は離れていきます。しかしながら、高いレベルで健康経営を進めるにあたり、1次予防から3次予防まで、指標改善に充分な施策の実行や産業保健体制の構築は、一朝一夕にはいきません。

限られたマンパワーと予算の中で、いかに着実な健康経営を進め、“人的資本への投資” として、投資家に一目置かれる成果を上げていくか。これに対する一つの答えを最後に提案したいと思います。
7. 社外リソースを効率的に活用する「ONLINE健康推進室」とは?
健康経営は、その会社にとって最適な形を目指せば目指すほど、社内のリソース不足が顕著になってきます。
例えば、不調者の職場復帰や再発防止など、3次予防策には、産業看護職による面談が必要不可欠です。
2次予防にあたる不調者の早期発見や対応を強化していくのであれば、従業員にとって、いつでも開けた健康相談窓口を設けるべきです。ここには中心的に動いてくれる保健師の採用も欠かせません。
1次予防の取り組みとして、新たに健康情報をメール配信するとなれば、ここでもリソースが必要です。専門的かつ最新の健康情報を毎月リサーチし、コンテンツとして企画制作した後、社内でいくつもの承認を経て、ようやく配信に至ることができます。健康セミナーやイベントの実施となれば、さらに手がかかることは言うまでもありません。
もはや社内リソースだけでは理想的な健康経営を作り上げていくことは極めて難しいと言えます。
であるならば、このような健康推進室の機能を、社外リソースを活用し、オンラインで実現するのはどうでしょうか?
今年、弊社パソナが提供開始する「ONLINE健康推進室」(※以下、OKS)は、先に述べたような健康管理・増進を担う健康推進室をオンラインで実現できるサービスです。
専任の保健師を雇うことなく、社員はLINEでいつでもOKS所属の保健師に健康相談ができます。もちろん、健診後のフォロー面談も一人ひとりに細かく対応することが可能です。健康情報の配信や社内イベントの実施など、手間のかかるポピュレーションアプローチも企画する必要はありません。OKS所属の専門家が監修する健康コンテンツは10種類以上で、貴社に合わせた健康コンテンツをLINE上で配信致します。

もちろん、OKSは健康経営度調査の対策にもなります。調査票の設問に合わせた施策やコンテンツが充実しているため、早速今年の調査票回答時から役立たせることができます。
ONLINE健康推進室の提供開始は10月を予定しております。提供開始に伴い、7月22日より、サービス説明会をウェビナー開催致します。
参加は無料です。ご興味のある方は、今すぐ参加お申込下さい。