性別・年齢等で異なる運動や栄養素について

運動が健康に良いことは、皆さんよくご存知かと思います。しかし、単純に「運動」といっても様々な形態があり、運動の強度や量、あるいはどのような栄養を摂るかによって、効果も異なってきます。さらに、同じ運動をしていても、性別や年齢等によって効果の出方に違いが出てきます。そこで今回は、性別や年齢によって異なる運動の効果や、それぞれにおすすめの運動法、食事等についてご紹介します。

1.男性と女性の筋力差の理由

男性と女性の身体の大きな違いとして、上半身と下半身の骨格の違いが挙げられます。一般的に、男性は上半身が大きく、肩幅も広いのが特徴です。女性は上半身が小さく肩幅も狭いのですが、下半身は大きいというイメージがあります。そのイメージはお手洗いのサインをみてもわかると思います。

アスリートは別として、一般的に、女性は男性に比べると上半身の筋量が少ないため、腕立て伏せや、懸垂等が苦手な方が多いと思います。
ただ、これは女性だから弱いというわけではなく、男性に比べると女性の筋肉の絶対量が少ないというのが理由です。仮に男性と同じ筋肉量の女性がいたら、同じように腕立て伏せや懸垂を行うことができるでしょう。

つまり筋肉を形づくる「筋線維」の単位でみると男女差はないのです。

では、女性も男性と同じように頑張ってウェイトトレーニングをしたら、筋肉が太く大きくなるのでしょうか。実際には、女性が男性のように筋肉をつけることは非常に難しいのが現状です。それは、性ホルモンが関係しているためです。

2.性ホルモンの役割と重要性

筋肉は、常にホルモンの環境下にさらされています。そのため、トレーニングの効果は、バーベルやダンベル等による力学的な刺激以外に、ホルモンの影響も受けます。
特に男性ホルモンであるテストステロンは、たんぱく同化ホルモン(アナボリックステロイド)として知られており、筋肉の合成や成長に大きく関わっています。

ちなみに、男性ホルモン、女性ホルモン等の「性ホルモン」と、副腎から放出される「副腎皮質ホルモン」、それから「甲状腺ホルモン」の3種類を総称して「ステロイドホルモン」と呼びます。

ステロイドホルモンはコレステロールの構造を少し変えることでつくられるのですが、体内におけるテストステロンレベルが高い人ほど筋肉がつきやすいことがわかっています。
テストステロンは男性の場合、約95%は睾丸(精巣)で作られ、残る5%が副腎で作られます。テストステロン(男性ホルモン)は、もちろん女性にもあるのですが(*)、男性に比べると非常に量が少なく、女性の血中テストステロン濃度は男性の15分の1から20分の1と言われています。

(*)女性は副腎や卵巣でテストステロンが分泌されます。

上記のような理由で、基本的には女性が筋トレを行ってもなかなか筋肉がつきづらい(筋肥大しにくい)のですが、稀に筋肉がつきやすい女性も実際におり、体内のテストステロンレベルが比較的高い女性は、筋肉のサイズや筋力が増加しやすいと考えられています。(参考文献:1,2)

3.女性がトレーニングを行う上で注意したいこと

ここ数年で、女性の筋トレ愛好者もかなり増えてきました。
全身のシェイプアップはもちろん、きれいな形のお尻やお腹まわりの贅肉をすっきりさせること等を目的に、筋トレに取り組まれている方も大勢います。

しかし、自分の体型をどのように判断するかは、個人の主観的な価値観によるところが大きく、実際の見た目の良さとは必ずしも一致していないことがあります。
例えばよくあるのが、男性が理想とする女性の体型よりも、女性はさらに細い体型を求める傾向があり、自分の好みの女優やモデルさん等が細身の人だと、とにかく「その人に近づきたい」と願う方もいらっしゃるようです。

女性の痩身志向自体は全く問題ありません。しかし、気を付けなければならないのは、理想を追求するあまりに、行き過ぎたトレーニングやダイエットを行ってしまうと、貧血や月経障害、骨形成の低下等を引き起こしてしまう可能性があることです。

特に女性の場合は、体脂肪率が低くなればなるほど月経異常率も高くなり、体脂肪率が10%未満になるとほとんどの方が月経異常になるという報告があります。(参考文献:3)
女性の身体における脂肪は、第二次性徴期を迎えるあたりから増加しはじめ、女性らしい丸みを帯びた体型を形づくっているだけでなく、正常な月経周期にも大きく関係しています。

女性アスリートの月経異常が身体に及ぼす悪影響については、度々話題に挙がることもあります。ステロイドホルモンの一つであるアンドロゲン(男性ホルモン)は、脂肪によってエストロゲン(女性ホルモン)に転換されることから、体脂肪量が極端に少ない女性は、この転換率が低くなってしまい、結果的に高アンドロゲン状態をきたすことによって、月経異常を引き起こすと考えられています。(参考文献:3)

なお、エストロゲンは骨密度にも影響を及ぼすことが分かっており、低エストロゲン状態が続くと、骨が脆くなり、若くして骨粗しょう症と同じような状態を引き起こしてしまい、トレーニングによる疲労骨折を誘発することになります。

このようなことから、女性の体脂肪は性ホルモンの分泌等にも大きく関わっているので、美容目的のみで単純に減らせば良いという考えで運動に取り組んでいると、様々な面で健康を損なうことにもなりかねないので、注意が必要です。

なお、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの作用として、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の低下、骨量の維持、血糖のコントロール(インスリンの作用効果に影響を与える)等があります。
閉経後には前述の因子を調節している女性ホルモンが劇的に少なくなるので、体重の増加や2型糖尿病、動脈硬化、あるいは骨粗しょう症等、身体にとって不利益な疾患にかかりやすくなります。

しかし、大変興味深いことは思春期から閉経を迎えるまでの約30年間で分泌される女性ホルモンの量はティースプーン1杯分と言われていることです。たったこれだけの量で生涯の月経周期をはじめ、その他骨量の維持、血糖、血圧等を調節していることを考えると、驚かずにはいられません。

閉経後の女性は閉経前に比べて身体の状況が変わっていることを認識し、今の自分の体調等を考慮した上で、必要な運動や食事を取り入れると良いでしょう。

4.高齢者に必要な栄養素について

ここからは、年齢によって必要な栄養素の違いについてご紹介します。「牛や豚等、肉をよく食べている高齢者は元気である」とよく見聞きすることがありますが、実際にはどうなのでしょうか。

壮年期の働き盛りのサラリーマン等は、例えば牛肉等に含まれる脂肪やコレステロールが身体に不利益(動脈硬化や高血圧等)をもたらすとして、健康診断の際に「肉類よりも野菜や魚を中心とした食事を心がけるよう」にというアドバイスされることがあると思います。

このようなアドバイスは高齢者にとっても同じなのでしょうか。
高齢者の栄養状態を調べる指標の一つに、血清中のアルブミンというたんぱく質があるのですが、年を取るにつれて、このアルブミンの量が低下していくことが分かっています。

アルブミンは、肉や魚等のたんぱく質を元に、主に肝臓で作られるたんぱく質なのですが、血清中のアルブミンの量が正常値以下になってしまうと、筋量の減少や血管がもろくなり、免疫機能等が低下してしまいます。

アルブミンの値にはg/dl(グラム・パー・デシリットル)という単位が使われ、正常値は4.0以上ですが、アルブミンの数値が3.5以下になると何らかの疾病や栄養障害が疑われます。

たんぱく質が、アスリートのみならず、すべての人にとって重要な栄養素であることはご存知かと思います。しかし、たんぱく質を摂取する目的や必要性は、若者と高齢者では違ってきます。

例えば現代の若者の場合、胃腸等によほどの問題でも抱えていない限り、バランスの取れた食事を心がけていれば、たんぱく質が不足するようなことはほとんどないと思います。

一方、高齢者の場合は、若者に比べると食べる量も少なく、消化吸収能力も落ちているので、普段から必要なたんぱく質が不足気味になります。重要なことは、高齢者にとって必要最小限のたんぱく質を摂取しないと、様々な弊害が出てくるということです。

たんぱく質の摂取によって得られる恩恵は、身体を大きく・強くすることだけではありません。血管を丈夫にして、血管の栄養不足によって引き起こされる動脈壊死を防ぎ、脳血管障害の予防等に役立つといった効果もあります。

日本人の死因の第3位に脳血管障害(脳卒中等)がありますが、寝たきりの1番の原因が脳卒中であることを考えると、高齢者は意識してたんぱく質を摂取することが望まれます。もちろん、魚や大豆等でも、たんぱく質を摂取することは可能なのですが、牛や豚を摂ると、魚や大豆等にはない栄養素も補う事が可能です。

肉を食べている高齢者の誰もが元気かというと、必ずしもそうとは言えませんが、少なくとも習慣的に肉を食べている高齢者は、必要なアルブミンの量を満たしていると考えられます。結果としてそれが本人の活力となり、周りからも元気に見えるのかもしれません。

ちなみに、80歳で世界最高峰のエベレストに登頂したプロスキーヤーで登山家の三浦雄一郎氏は86歳の現在も、週に1,2回300gのステーキを食べ、月に1回は1.5kgのステーキを食べているそうです。

また、東京健康長寿医療センターが行った高齢者への栄養調査によると、アルブミン値が低い人はそうでない人に比べて生存率が低い傾向にあること、さらに認知機能の低下を引き起こすリスクが2倍、脳卒中、心臓病のリスクは2.5倍になるという結果が報告されています。(参考文献:4)

このようなことから、高齢者にとってたんぱく質の摂取がいかに重要であるかがわかると思います。ただ、高齢者の場合は、若い人に比べて食が細くなっている上、消化吸収能力も落ちているので、1回の食事で多量に摂るよりも、小まめに回数を増やしてたんぱく質を摂る方が効果的です。その方が、胃腸への負担も少ないので、消化・吸収に適していると言えるでしょう。この辺は個々の体調と相談しながら調整する必要があると思います。

いずれにせよ、高齢者にとってはたんぱく質が不足すると様々な弊害が出てくるということを覚えておきましょう。

まとめ

今回ご紹介したように、その方のライフステージによって、食べ物や運動の優先順位、必要性が変わってきます。さらに性別や年齢によっても、必要な運動や優先される食事等が変わってくるので、単純に「テレビで○○が良いと言っていたから」といって飛びつくのではなく、今の自分に必要な運動や食事を考慮して、実践したり、栄養摂取を考えたりすることが重要です。

【参考文献】

  1. Cumming, D, Wall, S, Galbraith, M, and Belcastro, A. Reproductive hormone responses to resistance exercise. Med Sci Sports Exerc 19:234-238,1987.
  2. Hakkinen, K, Pakarinen A, Kyrolinen, H, Cheng, S, Kim, D, and Komi, P. Neuromuscular adaptations and serum hormones in females during prolonged power training. Int J Sports Med 11:91-98, 1990.
  3. 日本体力医学会学術委員会監修:スポーツ医学[基礎と臨床]
  4. 一般社団法人全国発酵乳乳酸菌協会:東京都健康長寿医療センター研究所インタビュー「健康寿命と栄養摂取」

特定非営利活動法人 NSCAジャパン 沿革

1991年4月1日 NSCAジャパン設立。顧問に寬仁親王殿下、理事長に窪田登氏(早稲田大学名誉教授)就任。
1993年 NSCAジャパンにて英語で1回目のCSCS認定試験を開始。
1994年 会員向け機関誌『NSCAジャパン・ジャーナル』を創刊。
1995年 日本語でのNSCA-CPT試験を開始。
1999年 日本語でのCSCS試験を開始。
2001年 NSCAジャパン会員が1,000名を超え、東京都へNPO法人としての活動開始。
2016年 設立25周年を迎え、NSCAの第5回国際カンファレンスを日本(幕張メッセ)にて開催。
2017年 専用施設「NSCAジャパンHuman Performance Center」を千葉県流山市に開業。

ライタープロフィール

特定非営利活動法人 NSCAジャパン
ヒューマンパフォーマンスセンター マネージャー
木須 久智 (きす ひさとも)

筑波大学大学院体育研究科修了、専門は運動生化学。「レジスタンス運動における内分泌応答と眼圧の関係について研究を行う」。修了後は医療福祉系専門学校の非常勤講師およびフリーランスのパーソナルトレーナーとして活動。2009年4月にNSCAジャパン事務局に入局、同事務局では試験、会員管理、広報等、各部署を担当し、2017年4月からNSCAジャパンヒューマンパフォーマンスセンターの施設長を務める。
資格:CSCS, NSCA-CPT
一言:筋トレを通じて健全なココロとカラダを手に入れましょう!

トレーナープロフィール

特定非営利活動法人 NSCAジャパン
ヒューマンパフォーマンスセンター ディレクター
ヘッドS&Cコーチ
吉田 直人 (よしだ なおと)

中央大学経済学部卒業後、一度は金融業に就職するも、トレーナーの道を選ぶ。ウイダートレーニングラボヘッドS&Cコーチとして、育成年代からプロ選手まであらゆる競技のアスリートを指導したほか、ビーチバレーの草野選手や、ミス・ユニバース・ジャパンのモデルらの身体作りにも従事。その後、ジャパンラグビートップリーグHonda HEATヘッドS&Cコーチとして5年間従事し、2017年4月よりNSCAジャパンヒューマンパフォーマンセンターヘッドS&Cコーチを務める。
資格:CSCS,NSCA-CPT

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