健康の維持・向上のため、運動について改めて考える

人生100年時代と言われる昨今ですが、何歳まで自立した生活を送ることができるか考えたことはあるでしょうか。人は誰でも平等に年を取りますが、個々の健康度や身体の強さに関しては皆同じではありません。身体を動かす・使うことがいかに重要か、また同じ運動でもどのような運動が必要か見ていきたいと思います。

1.普段から身体を動かしていますか?

あらゆることに効率性や利便性が求められる現代社会では、労力をかけずに短時間で物事を実行すること(できること)が良いとされています。

ある意味当然なのかもしれませんが、世の中が便利になり、人が労力をかけずに済むようになればなるほど身体活動量は低下していきます。

首都圏やその他の都心部では公共の交通手段が発達し、駅やビル等では、どこに行ってもエスカレーターやエレベーターが設置されています。エスカレーターやエレベーターがあれば人間の心理として、階段を昇るよりも楽なエスカレーター、エレベーターを使うことは当たり前のことだと思います。

そう考えると、デスクワークが中心で、日ごろから運動習慣のない人は、毎日の生活の中で身体を使う時間がほとんどないことに気付くはずです。身体を使うと言ってもせいぜい通勤の行き帰りに歩いたり、自転車をこいだりするぐらいではないでしょうか。それならまだしも、車通勤をしている方等は、さらにエネルギーを消費する場面がないので、普通に3食を取っているだけでも、太っていきます。その理由は、エネルギーを消費する場面がほとんどない上に、運動をしていないと加齢とともに筋量が減少し、基礎代謝量も共に落ちていくからです。

利便性を追求することは、社会の発展のために必要であり我々にとっても大変良いことなのですが、文明が進歩し、社会が発展すればするほど身体を動かす機会を喪失しているという点も頭の片隅に置いておかなければなりません。

運動嫌いの人の中には、「わざわざ身体を使ってまで、なぜ疲れることをしなければいけないのか」と思う人もいるかもしれませんが、運動が嫌いな人こそ、面倒臭がらずにまずはこまめに動くことが重要です。

例えば、時間に余裕があれば階段を利用する、電車内では座席が空いていても座らない等、工夫して身体を動かし、エネルギーを消費するところからはじめてみてはいかがでしょう。

2.日常生活での「筋力発揮」の場面を考える

さて、身体を動かすことの重要性については前述の通りですが、加齢とともに心肺持久力や、筋力が低下してきます。特に心肺持久力に関しては、筋力よりも早く低下することが知られているので、日ごろから運動不足の人は、まずは軽いジョギングやウォーキング等、基礎体力をつけるところからはじめると良いと思います。

ただ、我々の日常生活には、心肺持久力だけでなく、筋力発揮が必要な場面が比較的多く存在しています。

もちろん、日常生活内のことですから、筋力発揮といっても若い人では全く問題にならない程度のものばかりです。

しかし、これが年齢を重ねていくにつれて、容易にできなくなるものが出てくるのです。では、実際にどのような場面で筋力発揮が求められるのか、以下に簡単に一例を挙げてみました。

【日常で筋力発揮が求められるシーン】

  • ペットボトルのキャップを開ける時(主に握力や指の力を必要とする)
  • プルトップ付の缶詰のふたを引っ張りながら開ける時(主に前腕の筋力を必要とする)
  • ジャム等の瓶のふたを回して開ける時(主に握力や前腕の筋力を必要とする)
  • フライパン等を使用して調理をする時(主に握力や前腕の筋力を必要とする)
  • 重いドアを押したり引いたりする時(主に三角筋、上腕・前腕、胸筋、背筋等を必要とする)
  • 階段を昇り降りする時(主に大殿筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋、下腿三頭筋等を必要とする)
  • 椅子から立ち上がる時(主に大腿四頭筋、大腿二頭筋等を必要とする)
  • 大きな箱等の荷物を床から持ち上げる時(全身の筋肉を必要とする)
  • 頭上に荷物を持ち上げる時(主に三角筋、僧帽筋、脊柱起立筋等を必要とする)
  • 布団の上げ下ろしをする時(全身の筋肉を使用とする)

上記のような動作は日常生活の中のほんの一部分に過ぎませんが、様々なシーンで上半身や下半身をはじめとした全身の筋肉を使用していることが分かると思います。

つまり、日常生活の中には、本人の好き嫌いに関係なく筋力発揮を求められる場面が多くあり、このような筋力発揮に関する機能は、ウォーキング等の有酸素運動では改善することができないため筋トレが必要になってきます。

3.加齢による筋力低下の部位と特徴

過去の運動歴や日ごろの運動習慣によって多少の違いはあるものの、加齢とともに弱くなる筋肉は、身体の前面では首の前面にある胸鎖乳突筋、腹直筋、外腹斜筋、大腿四頭筋等で、背面では、僧帽筋、広背筋、大殿筋などが萎縮して筋力が弱っていきます。

つまり、年を取ると、首が細くなり、お腹まわりには脂肪がついて、背中やお尻が垂れてくるということです。

特に足腰の筋力低下が著しい場合は、椅子やベンチに座っても自力では立ち上がれないというケースも出てきます。自力で立ち上がれない状態では、トイレやお風呂にも1人で行くことができなくなります。身の回りのことが一人で出来なくなってくると、介助者が必要になり、要介護になってしまいます。

また筋力が低下すると、骨粗しょう症等の問題も出てきます。骨粗しょう症になると、転倒したり、ちょっと尻もちをついただけでも、大腿骨頚部骨折や大腿骨転子部骨折等が起こったりするので注意が必要です。

ちなみに骨粗しょう症は、女性に圧倒的に多い疾患で、大腿骨頚部骨折や大腿骨転子部骨折も高齢女性に頻繁に発生することが知られており、男女比も1:4程度と言われています。

そして加齢による筋力低下についてもう一つ重要なことがあります。

筋肉には大きく分けて速筋線維(筋肉の収縮速度が速く力も強い)と遅筋線維(筋肉の収縮速度が遅く力が弱い)があるのですが、「加齢とともに速筋線維の方が、遅筋線維よりも先に選択的に減少していく」ということです。

表1-1 速筋線維と遅筋線維の特徴
  遅筋線維 速筋線維
瞬発力・筋力発揮 低い 高い
疲労耐性 強い 弱い
エネルギー源 主に脂質 主に糖質

ちなみに、速筋線維は、筋肉を速く動かすための原動力となる筋線維で、大きな筋力発揮にも関わっています。一方で、遅筋線維は姿勢の維持や、歩いたりするとき等、強度の低い活動に優先的に使われる筋肉です。

年を取るにつれて、大きな力発揮ができなくなるのと同時に、素早い動きも出来なくなってくるのは、速筋線維が徐々に減少していくことが要因になっているからです。

4.大きな力を発揮することを考える

ヒトの身体は、負荷が小さいと速筋を使わずに遅筋を優先的に使って行動するようにできているので、意識して負荷をかけることが少ない日常生活では、速筋線維を刺激するのは難しいのが現状です。しかし、上記のような理由で加齢とともに速筋線維の選択的減少が起こると分かっているため、意識的に大きな力を発揮することも考えなければなりません。

では、速筋線維を刺激するのにどのような運動が良いのかというと、やはり筋トレが有効な手段の一つになります。特に大きな筋群をターゲットとしたスクワットやデッドリフト、ベンチプレス等の種目が推奨されます。

また、筋トレを行う環境がない場合は、他の運動でも代替することができます。

例えば、ジョギングであれば、通常のスピードに加え断続的に加速する(ダッシュ)部分を交互に数回設けたりすることで、速筋線維を刺激することができます。また、上り坂を全力でダッシュしたり、階段を2段飛ばしで可能な限り速く上ったりするような運動でも、速筋線維を刺激することができます。

ただし、これらの運動は自分が思っている以上に強度が高い(強度が低いと速筋線維が刺激されない)ため、いきなりはじめるのではなく、ジョギング等をしばらく続けて基礎体力をつけてからはじめるのが良いと思います。

今はきついかもしれませんが、後の人生において運動が役に立つときは必ず来ます。それをしっかりと心に留めて、チャレンジしてみてはいかがですか。

まとめ

一般的には加齢とともに筋力が低下するのは、ある程度仕方がないと考えられており、確かにこれらはある意味正しいのですが、年を取ること=筋力が低下するということではなく、年を取ることによって活動量が低下するために、結果的に筋力や体力が低下するといった方が正しいでしょう。

その証拠に、力仕事や畑仕事等、毎日身体を使って仕事をしている人は、常に身体に負荷をかけているので、高齢になっても重たいものを持ったり、力仕事に従事したりすることができます。

「継続は力なり」といいますが、運動は続けないと意味がありません。まずは、無理のない強度・量から運動に取り組んでみてはいかがでしょう。

ライタープロフィール

特定非営利活動法人 NSCAジャパン
ヒューマンパフォーマンスセンター マネージャー
木須 久智 (きす ひさとも)

筑波大学大学院体育研究科修了、専門は運動生化学。「レジスタンス運動における内分泌応答と眼圧の関係について研究を行う」。修了後は医療福祉系専門学校の非常勤講師およびフリーランスのパーソナルトレーナーとして活動。2009年4月にNSCAジャパン事務局に入局、同事務局では試験、会員管理、広報等、各部署を担当し、2017年4月からNSCAジャパンヒューマンパフォーマンスセンターの施設長を務める。
資格:CSCS, NSCA-CPT
一言:筋トレを通じて健全なココロとカラダを手に入れましょう!

トレーナープロフィール

特定非営利活動法人 NSCAジャパン
ヒューマンパフォーマンスセンター ディレクター
ヘッドS&Cコーチ
吉田 直人 (よしだ なおと)

中央大学経済学部卒業後、一度は金融業に就職するも、トレーナーの道を選ぶ。ウイダートレーニングラボヘッドS&Cコーチとして、育成年代からプロ選手まであらゆる競技のアスリートを指導したほか、ビーチバレーの草野選手や、ミス・ユニバース・ジャパンのモデルらの身体作りにも従事。その後、ジャパンラグビートップリーグHonda HEATヘッドS&Cコーチとして5年間従事し、2017年4月よりNSCAジャパンヒューマンパフォーマンセンターヘッドS&Cコーチを務める。
資格:CSCS,NSCA-CPT

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