筋力トレーニングを始める前に知っておきたい4つのこと

筋力トレーニングを始めるにあたって、初心者の方はトレーニングの種目、強度、量、頻度等、どのように設定すればよいか迷うところだと思います。今回は、筋力トレーニングを開始するにあたって、まずは知っておきたい情報について紹介します。

1.筋力トレーニングを始めるにあたって

これまで筋トレとは全く無縁だった方は、「何をどのようにすればよいのか?」迷いますよね。もちろん、「筋トレをやろう」と思い立ったのには、何らかの理由があるはずなので、皆それぞれの目標はあると思います。

目標設定をしたら、今度はその目標を達成するためにどういう手段を取るかが重要になります。ただ、がむしゃらにウェイトを上げ下げしても身体は変わりません。エクササイズの種目、強度、量、頻度等の変数を個々の目標に応じて変化させていく必要があります。

さらに、トレーニングには5つの原則というものがあり、この原則に基づいてエクササイズを実施することで、合理的にトレーニングすることが可能になります。

トレーニングの5原則については、NSCAジャパン発行の「体力トレーニング検定3級問題集」にも紹介されているので、以下に紹介します。

2.トレーニングの5原則について

トレーニングの原則は下記のように「全面性」、「意識性」、「漸新性」「反復性」、「個別性」の5つからなります。

① 全面性:

全面性の原則とは、身体全体のバランスを考慮してトレーニングすることが重要だということです。例えば、偏ったトレーニング(体幹や四肢のどこか一部分のみに集中したトレーニング)を行うと、身体全体のバランスが崩れ、後々怪我につながる恐れもあるので、全身をまんべんなくトレーニングすることが必要ということです。

② 意識性:

意識性の原則は、漠然とただトレーニングするのではなく、現在実施しているトレーニングは目的に見合っているか、強度や頻度は適切かなど、目的や意義を意識してトレーニングを行うことの重要性について示したものです。

③ 漸進性:

漸進性の原則とは、過負荷の原理(日常生活で得られる負荷以上の強度を身体に与えなければ身体は発達しない)に共通する部分がありますが、体力が向上するにつれて、単にトレーニング負荷を徐々に上げていくことだけでなく、量、強度、種目、頻度、休息時間、動作速度など特定の変数に変化をもたせることで、進歩の停滞を防止することを示したものです。
これを漸進的過負荷といいます。

④ 反復性の原則:

継続してトレーニングを行うことで、効果が得られるということです。
何事も一朝一夕では達成することはできないのと同じで、トレーニングも継続して取り組む必要性について示したものです。

⑤ 個別性の原則:

個別性の原則とは、個々の身体能力や特性に応じてトレーニングを行う必要があるということです。
例えば、同じエクササイズでも年齢、性差、身長、体重、四肢の長さ、運動経験等、個々の特性や能力によって効果に違いが出るため、Aさんには向いているけどBさんには向いていないといったケースが出てきます。そのため、個々に見合ったプログラムを実施することが重要になるという意味です。

以上の5原則に則ってトレーニングを実施するのと、何も考えずにトレーニングするのとでは結果が全く違ってくるので、最初に覚えておきたいですね。

3.トレーニングの優先順位

筋力トレーニングにも様々な種目がありますが、大きく分けると単関節運動と多関節運動の2種類に大別されます。

単関節運動とは一つだけの関節が関与した運動で、多関節運動とは二つ以上の複数の関節が関与するエクササイズのことを指します。

例えば、ダンベルカール等のエクササイズは、肘関節の屈曲、伸展動作のみで実施可能なので単関節運動になります。

一方、スクワットは、しゃがんだり、立ち上がったりする動作の中に股関節、膝関節、足関節の3つの関節の屈曲・伸展動作が入るので多関節運動になります。

重要なことは、多関節運動の場合、複数の関節にまたがって多くの筋肉が使われる分、単関節運動に比べてエネルギー消費量が高くなることです。

多関節種目の代表格でもあるスクワットは、その上さらに、身体の中で一番大きな筋肉であるお尻(大殿筋)や太ももの前面(大腿四頭筋)、後面(ハムストリングス)、背筋等を使用するエクササイズなので、身体を作る(ボディメイク)上でもエネルギー消費(身体活動量を増やす)の面でも非常に有効なエクササイズといえます。

スクワットのほか、ベンチプレスやデッドリフト等、大筋群(足、背中、胸)が関与する多関節運動は、エネルギー消費量が高い分、身体が疲れていないフレッシュな(集中力が高い)状態でトレーニングするほうが怪我の危険性を少なくするだけでなく、高重量を扱うことや、量をこなすことも可能になります。

したがって、小さな筋群(腕、肩、腹筋等)をトレーニングする前に、大筋群のエクササイズから実施するようにしたほうが効率の良いトレーニングができます。

4.トレーニングフォームの重要性について

誰でも初めて行う動作というものは、スムーズに行うことができません。トレーニングフォームについても同じことがいえます。

最初から完璧なフォームでトレーニングできる人はいません。皆何回も何回も繰り返し反復練習を行うことで身に付けるものです。

むしろベテランになればなるほど、自分にとって最適なフォームを模索し続けています。
第1回目のコラムで少し触れましたが、バーベルやダンベル等のフリーウェイトでのエクササイズは自身でウェイトの軌道をコントロールする必要があります。

間違ったフォームで実施していると、後々関節を痛めたり筋肉を傷めたりする可能性も出てきてしまうのです。

そのため、自宅にトレーニングスペースがあって、一人でトレーニングをするような方は、間違ったフォームを覚え込まないよう、特に注意する必要があります。正しいフォームで実施できているかどうかに関しては、自分一人ではなかなか分からないものなので、必要であればスマートフォン等でトレーニング中の自分のフォームを撮影し、定期的に確認してみてもよいかもしれません。

あるいは、ジムでトレーニングするという方はインストラクターにフォームをチェックしてもらうかパーソナルトレーナーについてもらって、自分のフォームを客観的に評価してもらうのもよいでしょう。

特にスクワット、ベンチプレス、デッドリフトの3種目を正しいフォームで実施できるようになると、飛躍的に身体が変化していきますが、前述したように間違ったフォームで実施すると、腰や肩等を痛める危険性が高くなるので注意が必要です。

ただ、これらベーシックなエクササイズは、ダイエットにも筋力アップにも大変有効なエクササイズなので、しっかりと正しいフォームをマスターして、そして継続することが重要です。

まとめ

筋トレが好きでたまらないという人は別にして、筋トレにまだあまり慣れていない人は、それが「身体作り」であっても「ダイエット」であっても、最初から高い目標を掲げないことが重要です。小さな達成可能な目標をいくつも設定し、それを一つずつクリアしていくように心がけましょう。そして筋トレの効果は継続して初めて得られるものなので、途中でドロップアウトしないよう気をつけなければなりません。
筋トレがすばらしいのは、努力したら努力した分だけ、必ず自分に返ってくるところです。まずは、最初の一歩を踏み出してみましょう。

ライタープロフィール

特定非営利活動法人 NSCAジャパン
ヒューマンパフォーマンスセンター マネージャー
木須 久智 (きす ひさとも)

筑波大学大学院体育研究科修了、専門は運動生化学。「レジスタンス運動における内分泌応答と眼圧の関係について研究を行う」。修了後は医療福祉系専門学校の非常勤講師およびフリーランスのパーソナルトレーナーとして活動。2009年4月にNSCAジャパン事務局に入局、同事務局では試験、会員管理、広報等、各部署を担当し、2017年4月からNSCAジャパンヒューマンパフォーマンスセンターの施設長を務める。
資格:CSCS, NSCA-CPT
一言:筋トレを通じて健全なココロとカラダを手に入れましょう!

トレーナープロフィール

特定非営利活動法人 NSCAジャパン
ヒューマンパフォーマンスセンター ディレクター
ヘッドS&Cコーチ
吉田 直人 (よしだ なおと)

中央大学経済学部卒業後、一度は金融業に就職するも、トレーナーの道を選ぶ。ウイダートレーニングラボヘッドS&Cコーチとして、育成年代からプロ選手まであらゆる競技のアスリートを指導したほか、ビーチバレーの草野選手や、ミス・ユニバース・ジャパンのモデルらの身体作りにも従事。その後、ジャパンラグビートップリーグHonda HEATヘッドS&Cコーチとして5年間従事し、2017年4月よりNSCAジャパンヒューマンパフォーマンセンターヘッドS&Cコーチを務める。
資格:CSCS,NSCA-CPT

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