人事の仕事内容とは?
業務一覧、必要なスキル、向いている人の特徴などを紹介
更新日:2025年06月09日

「人事の仕事に興味があるけれど、どんなスキルが必要とされるの?」「一般事務やOA事務からもチャレンジできる?」と考えている方も多いでしょう。
人事の役割、業務一覧とそれぞれの仕事内容、人事に必要なスキル、向いている人の特徴について紹介します。
人事の役割
人事は、企業の重要な経営資源である「人」に関わる業務全般を担っています。
事業を円滑に進め、収益を伸ばし、企業として成長していくためには、「人材を活かすこと」が人事の大きな役割です。
採用や育成はもちろん、従業員一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮できる環境や制度を整えていくことが求められます。
近年では、「人的資本経営」という考え方にも関心が高まりつつあります。これは、人を「コスト」ではなく「資本」として捉え、その可能性を最大限に引き出すことで、企業の価値を中長期的に高めていこうというものです。
こうした人的資本経営の実践において、人事部門の役割はますます重要になっていると言えるでしょう。
人事の仕事内容一覧

「人事」といっても、担当する仕事はさまざまな種類があります。主な仕事内容を一覧で紹介し、それぞれ詳しく解説します。
また、一人の人事担当者が担う業務範囲は、企業規模によって異なります。一般的に、規模が大きいほど担当業務が細かく分かれていることが多く、中小企業では複数の業務を兼務しているケースが多く見られます。
人材採用
経営戦略の実現に向けて、必要な人材を確保するため、人事部門では採用戦略の策定や採用計画の立案を行います。
新卒・キャリア採用それぞれの計画に基づき、募集から選考、採否の判断、受け入れまでの一連の採用活動を主導します。
近年、採用方法は多様化が進んでいます。これまでは求人メディアの広告掲載、転職エージェントを通じた紹介が一般的でしたが、最近では、企業から転職希望者に直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」も広がりを見せています。
また、スカウトサービスやSNSを活用した方法も一般的になってきました。オンライン型式の採用説明会やイベントの企画・運営にも取り組んでいます。
応募者が集まった後は、採用部署の責任者とも連携しながら、書類選考や面接日程の調整、面接の実施、そして採用・不採用の連絡などを進めていきます。
人事評価
「人事評価制度」を活用し、仕事での成果や実績、人事面談、自己評価アンケートなどをもとに従業員を評価します。
その評価を踏まえて、適性や能力に応じた昇給・昇格・異動などを検討・決定します。
公正な評価に基づいて、昇給や昇格、希望に沿った異動が実現すれば、従業員のモチベーション向上が期待できます。
モチベーションが高まれば、自社へのエンゲージメント(企業と個人の間にある信頼関係)も強まり、結果的に離職率の低下にもつながるでしょう。
人事異動・配置
経営戦略に基づいた人員計画に沿って、従業員の成果やスキル、そして組織全体のバランスを考慮しながら、最適な部署への配属や異動を行います。
近年では、従業員がキャリアを自ら選べるような仕組みを整える企業も増えてきました。例えば、希望する部署への異動に自ら手を挙げることができる「社内公募制度」を導入・運用するケースも見られます。
人事制度の整備
人事制度は、企業が人材マネジメントを行う際の基本的な枠組みであり、「等級制度」「評価制度」「報酬制度」などで構成されます。
従業員をどのような基準で評価し、その成果や能力をいかに報酬に反映させるかについては、社会全体や業界における水準、自社の経営方針などを考慮しながら制度設計を行います。
透明性と公平性のある人事制度を整えることは、従業員のモチベーション向上や離職防止につながる重要なポイントです。
人材育成・研修
人事部門では、従業員一人ひとりのスキルや能力の向上を目的として、さまざまな教育研修を実施しています。
「新入社員向け研修」「入社3年目研修」「マネジメント研修」など、従業員のキャリアステージや役割に応じた教育カリキュラムや研修プログラムを企画し、実施します。
研修によっては、人事部門が講師を務めることもありますが、研修の企画立案・運営を人事部門が担当し、講師は外部の専門家に依頼するケースも多く見られます。
研修実施後には、成果を振り返りながらカリキュラムを見直したり、社会の変化に合わせて新たな研修を取り入れたりと、常に内容の充実を図っています。
労務管理
「労務管理」の業務には、就業規則の運用・改定をはじめ、勤怠管理や給与計算、休暇管理、安全衛生管理、健康診断の実施、労働保険・社会保険の手続き、福利厚生制度の運用など、具体的な事務作業が含まれます。
また、給与規程や休暇規程などの各種社内規程の策定や改定も労務管理に含まれ、組織におけるルール整備の面でも重要な役割を担っています。
従業員一人ひとりが安心して働ける環境を整えることも、人事部門の大切な役割です。近年では心と体の健康を支える観点から「メンタルヘルスケア」にも力を入れる企業が増えています。
心と体の健康支援
働き方改革の進展やライフスタイルの多様化により、企業には従業員が心身ともに安心して働ける環境を整えることが、これまで以上に求められています。
人事には「ワークライフファシリテーター」としての役割が期待されており、従業員の健康と職場環境の整備を支える取り組みは、重要な業務の一つとなっています。
従業員一人ひとりが健やかに働ける環境を実現するためには以下のような施策があります。
・メンタルヘルスに関する研修の実施
・社内相談窓口の設置
・ストレスチェックの実施
・外部カウンセラーとの連携体制の整備
従業員の安心感や信頼感を高めることによって、離職率の低下や組織の安定的な成長にもつながります。
人事に必要なスキル

人事には、どのようなスキルが必要なのでしょうか。
企業によっても異なりますが、多くの企業で共通して重要とされている「基本的なスキル」を紹介します。
コミュニケーションスキル
人事は、自社のあらゆる部署・職種・役職の従業員と関わる機会が多いため、それぞれの立場や背景に配慮しながら、円滑なコミュニケーションを取るスキルが必要とされます。
特に採用業務を担う人事担当者は、求職者にとって最初に接する存在であり、「企業の顔」としての立場でもあります。
求職者が好印象を持ち、応募や入社を前向きに考えてもらうためには、安心感や信頼感を与えるような対応が不可欠です。
また、自社の魅力をわかりやすく伝える力に加えて、求職者が抱える疑問や気になっていることを汲み取り、丁寧に対応する力も大切です。
スケジュール管理スキル
人事の仕事には、「この時期にはこの業務を行う」といった年間スケジュールがある程度決まっています。
採用業務では、新卒採用の場合、4月入社を前提にスケジュールを逆算し、「○月から会社説明会の受付を開始」「○月から選考をスタート」などの流れが組まれます。キャリア採用では、「○月から始まるプロジェクトに向けて人材を確保する」といった目標から逆算して、募集や選考を進めます。
採用活動は人事部門だけで完結するものではないため、配属先や面接官のスケジュールにも配慮が必要で、調整力やスケジュール管理スキルが必要とされます。
また、労務管理では、夏・冬の賞与計算のほか、年末調整、労働保険・社会保険の手続きなど、期日が決まっている業務も多いため、計画的に対応するスキルが欠かせません。
特に中小企業では、一人の担当者が複数の業務を兼任するケースも多いため、業務全体を見通しながら計画的に遂行できる力が重視されます。
情報取集スキル
人事には、社内の課題を早期に把握し、対処する力も重要です。例えば、人員不足によって従業員の業務負荷が高まっている場合には、異動や採用による人員補充を検討する必要があります。また、人事評価制度への不満が従業員の間に広がっていれば、離職につながる前に対策を考えることが必要です。
こうした課題を適切に対処するために、情報収集スキルが欠かせません。各部署の責任者や従業員と日頃からコミュニケーションを取って、信頼関係を築いておくことが大切です。
社会トレンドに目を向ける「アンテナ力」
人事のお仕事は、社内の情報だけでなく、社会の流れや人事に関するトレンドに目を向けておくことも必要です。
働く人の価値観や労働市場の動きは日々変化しています。そうした変化をとらえながら、報酬やキャリアの仕組み、教育体制、採用方法や面接ツールなどを少しずつ見直していくことが、人材に選ばれる企業づくりにつながります。
また、労働基準法や育児・介護休業法など、法律の改正にも注意を払う必要もあります。制度の設計や運用に影響することが多いため、常に最新情報をチェックしておくと安心です。
最近では副業やリモートワークの普及など、働き方が多様化しています。こうした動きに柔軟に対応することで、社員一人ひとりのニーズに寄り添った組織運営がしやすくなります。
ダイバーシティやジェンダーへの配慮など、社会から求められるテーマにも目を向けて、社会の価値観の変化を受け止め、人事の取り組みに活かしていくことで、企業としての成長にもつながっていくでしょう。
守秘義務の意識
人事の仕事では、従業員の個人情報や評価・昇格に関する情報など、機密性の高い内容や、要配慮個人情報を扱う業務が多くあります。そのため、守秘義務をしっかりと守る意識が欠かせません。
たとえ何気ない雑談の中でも、うっかり個人情報を口にしてしまうようなことがあってはなりません。人事として機密情報を扱っているという自覚と、責任感を持って行動することが大切です。
戦略的思考
人事というと「管理部門」という位置づけで見られることも多くありますが、近年では会社の成長を支える「戦略人事」の重要性が高まっています。
経営戦略や将来のビジョンを踏まえて、それを実現するための人事戦略を描くことが、人事に求められるようになってきています。そのためには、経営的な視点を持つことはもちろん、競合他社と差別化を図るための採用・配置などの組織戦略、人事戦略を立てる力が必要です。
人事に向いている人の4つの特徴

どんな人が人事のお仕事に向いているのでしょうか?
人事に向いている人の特徴を紹介していきますので、人事のお仕事に興味がある方は、自分に向いているかどうか確認してみてください。
1. 人と関わることが好き
人事は、社内のさまざまな部署の従業員はもちろん、新卒・キャリア採用を問わず求職者や応募者とも関わるお仕事です。人と接することが好きな人や、人に興味がある方にとっては、やりがいを感じられる職種だと言えるでしょう。
人事の業務を通じて、従業員がイキイキと働く姿を見られたり、自分が採用に関わった人が職場で活躍している様子が見えたりすることは、喜びの一つです。
人への関心が強く、従業員の様子を日頃からよく観察できていれば、その人の適性や志向を見極め、キャリア形成をサポートすることもできるでしょう。また、日常的なコミュニケーションの中で小さな変化に気づき、メンタルヘルスケアの観点から早期に対処できる場合もあるかもしれません。
2. 危機管理能力がある
近年、長時間労働の抑制や、職場での「ハラスメントの防止」が重要視されています。こうした問題が起こらないように対策をしたり、兆候に気づいたら素早く対処したりする危機管理能力は、人事の仕事でも役立ちます。
また、採用活動でSNSを活用する際には、発信内容や表現の仕方に十分な配慮が必要です。従業員や採用選考に関わった人が、SNSで不適切な投稿をしてしまうリスクもゼロではありません。こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、情報管理に対するリテラシーを持ち、リスクに備えられる力が、人事の現場では重視されるでしょう。
3. 柔軟な対応ができる
人事は、「人」と向き合うことが求められるお仕事です。人は日々、考え方や行動が変化していくものです。
例えば、これまで意欲的に働いていた従業員が突然やる気を失ってしまうこともあれば、その逆に急にモチベーションが高まることもあります。
また、採用選考の過程では入社意欲を見せていた応募者が、内定後に迷い始めることもあります。こうした人の変化に柔軟に対応できる人であれば、相手の状況や気持ちを察知して、必要に応じて適切なサポートを行うことができるでしょう。
4. 共感性があり論理的な思考ができる
さまざまな部署や職種、役職の人と接する人事の仕事では、それぞれの立場に立って物事を考える姿勢が大切です。
一人ひとりの考え方や背景を理解しながら、将来のキャリアや働き方について適切なアドバイスや提案ができる人は、人事に向いていると言えるでしょう。
ただし、気持ちに寄り添うあまり、特別扱いをしてしまったり、結果的に組織全体のバランスを崩してしまったりすることは避けなければなりません。個人を尊重する気持ちと、公平公正な立場で組織全体を俯瞰して判断できる力。その両方を持ち合わせていることが、人事としての信頼や成果につながっていきます。
未経験から人事を目指す方には派遣がおすすめ

未経験から人事のお仕事を目指すのであれば、「派遣」という働き方からスタートするのも選択肢の一つです。
派遣には「人事事務」と呼ばれるお仕事があり、勤怠管理の補助やデータ入力、面接日程の調整など人事業務のサポートを担当します。
未経験OKの求人も多く、「人事サポート業務を始めてみたい!」という方には派遣がおすすめです。派遣の人事事務から始めて、実際の現場で経験を積みながら、人事の仕事に対する理解を深めていくことができるでしょう。
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