派遣社員の社会保険料はどうやって決まる?
~定時決定と随時改定~

パソナ・名駅
2022年7月4日

給与明細を見たときに、「社会保険料って大きな金額が引かれているなあ」と感じたことはありませんか。転職してあらたな職場に移られた方や昇給した方などの中には、特に気になる方も多いと思います。
社会保険料の見直しには「定時決定」と「随時改定」があります。保険料額は「標準報酬月額」の等級で区分されており、「定時決定」と「随時改定」は、この等級を決める手続きになります。今回はそれぞれについて改めて解説します。

もくじ

社会保険料とは?

社会保険とは、病気やケガ、失業、老後の資金不足など、国民生活における万が一のリスクに備えるための公的保険制度です。 社会保険の仕組みは「相互扶助」によって成り立っていて、国民一人ひとりが社会保険料を支払うことで、自分を含めた全国民のリスクに備えています。
社会保険は「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つで構成されています。このうち「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険」の3つは総称し「狭義の社会保険」と、また「雇用保険」と「労災保険」は合わせて「労働保険」と呼ばれています。
一般的に会社勤めをしている方は、「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」を事業主と折半して毎月納めていて、その分が給与から引かれています。
詳細については、以下でご説明させていただきます。

健康保険

健康保険は、病気やけがなどで病院にかかったときにに本人の医療費負担を軽減してくれたり、それによる休業、出産や死亡のときに一時金や手当金が支給される公的な医療保険制度です。

厚生年金保険

厚生年金保険は、厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務する人が対象となり、経済状況など私的な家族の状況にかかわらず、安心・自立して老後を暮らせるための社会的な仕組みです。

介護保険

介護保険は、介護を必要とするようになったとき、少ない負担で介護サービスを受けられるようにする保険です。

雇用保険

雇用保険とは、ご本人が何らかの理由で働けなくなり失業状態となって収入がなくなったときに、失業してから再就職するまでの一定期間、給付の行われる制度です。また失業保険を受給している方の再就職やキャリア形成の支援として、一定の条件を満たせば再就職をしたときにも手当が支給されます。

労災保険

労災保険とは、ご本人が業務上または通勤により負傷したり、病気にかかったり、障がいが残ったとき等に、ご本人やその家族に対して給付の行われる制度です。保険料は全額派遣会社側の負担になるので、派遣社員の保険料負担はありません。

社会保険料の定時決定・随時改定はなぜ必要?

定時決定・随時改定は、給与から控除する社会保険関係する手続きです。
厚生年金保険と健康保険で控除する保険料額は、「標準報酬月額」の等級で区分されており、定時決定と随時改定は、この等級を決める手続きのこと。なぜ必要か?その目的は、スタッフの皆様の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないようにするためで、毎年の見直し(定時決定)や大きく収入が変更となった都度の見直し(随時改定)が必要になります。
そして、この定時決定は4~6月の給与で決定される為、パソナの場合は3~5月就業された期間が対象となります。

標準報酬月額とは?

被保険者であるスタッフの皆様が事業主(パソナ)から受ける給与・交通費などの報酬の月額を、区切りのよい幅で区分した等級で表し、社会保険料や「傷病手当金」「出産手当金」などの保険給付額を決めるための基準になる金額です。この報酬の月額を「標準報酬月額保険料表」というテーブルに当てはめて、被保険者の社会保険料が決定されることになります。健康保険料・介護保険料は1〜50等級、厚生年金保険料は1〜32等級に区分されています。

標準報酬月額に含まれるもの

含まれるもの

基本給、役職手当、職務手当、家族手当、休職手当、通勤手当、残業手当など

含まれないもの

年3回以下の賞与、退職手当、出張旅費、慶弔見舞金、傷病手当金など

社会保険の定時決定とは

社会保険料は加入時の条件(時間給・契約時間・出勤日数・通勤交通費)によって決定し、毎月社会保険料が給与天引きされています。この保険料は毎月変わることはなく、同じ額が徴収されます。つまり出勤日数によって変わったりはしません。
定時決定は、スタッフの皆様の実際に受け取っている報酬と、決められている標準報酬月額が大きくかけ離れないようにするため、パソナは毎年1回、すべてのスタッフの皆様について標準報酬月額の見直しを行い、決定しています。
これが「定時決定」と呼ばれるものです。

定時決定のタイミング

定時決定は、毎年4~6月に受け取った給与が基になります。パソナでは3~5月就業された期間が対象です。そして同年9月から定時決定後の等級で社会保険料が控除され、定時決定後、著しい収入の変化がない限りは、翌年8月までの1年間、同じ等級で社会保険料が控除されます。

3ヵ月の就労日数について

社会保険料は毎年4~6月に受け取った給与を基に計算されますが、勤務日数の少ない月を含めて計算すると適切な平均月額とならないため、3~5月の勤務日数17日以上(有給含む)と決められています。

■3ヶ月間すべて17日以上のとき
4月〜6月の3か月間で受け取った給与の合計額の平均額が標準報酬月額になります。
■17日未満の月があるとき
17日未満の月がある場合は、17日未満の月を除いて平均額を算出します。
■3ヶ月すべて17日未満のとき
定時決定はなし(対象外)、従来の保険料のままとなります。
■週20時間以上で社会保険加入の短時間区分のとき
月11日以上の出勤月が対象となります。

「4~6月分の残業のしすぎは損」は本当?

定時決定の算出基準となる3~5月は年度末・年度始めにあたる時期ですので、残業が一時的に増えるケースも多いと思います。3ヶ月間の残業手当が増えると、場合によっては標準報酬月額が上がり、9月からの手取りが減ってしまうかもしれません。しかし「損」かと言えば、一概にそうとは言えません。

たとえば厚生年金保険料は、将来の年金額に反映されます。短期的にみれば社会保険料が増えますが、何十年の保険料を納めた積み重ねが老後の年金額であり、働いているときに厚生年金保険料を多く払っておくことで将来の収入を増やすことができます。また健康保険料に関しても、病気やケガなどで働けなくなった際の傷病手当金や出産手当、育児休業給付金は標準報酬月額をもとに受給額を計算します。つまり標準報酬月額が多ければその分受給額が増えます。
このように4~6月分の給与が増え標準報酬月額が増えることはデメリットだけでなく、メリットもありますので、デメリットばかりを気にしにないほうがよいでしょう。

社会保険料の随時改定とは

社会保険料は、賃金に応じて負担額が定められています。昇給などの時間給や契約時間、通勤交通費など固定的賃金に大きな変更があったとき、次回の定時決定までに標準報酬月額が変わらなければ、給与額に見合わない社会保険料を支払い続けることになってしまい、将来受け取る年金額にも影響を与えかねない。そこで、実際の標準報酬月額に応じた社会保険料を支払えるようにするため、随時改定を実施して適切な社会保険料に変更しています。

随時改定のタイミング

変動のあった月から3ヵ月間の平均月額に該当する等級を計算し、現行の等級と2等級以上の差が生じた場合、変更から4ヵ月目の保険料から新しい保険料等級が適用されます。例えば、4月より固定賃金に変動があった場合、4ヶ月目となる8月分(9/15振込)の保険料から新しい保険料等級が適用されることになります。

まとめ

社会保険料の仕組みについては理解できましたでしょうか?
普段給与から自動的に控除されるため、あまり気にしない方も多いと思いますが、毎月の手取りや将来的なことにまで影響するとても大切なことになります。ご不明点がありましたらスタッフコンシェルジュまでお気軽にご相談ください。