通訳ミニ辞典
逐次通訳
話者の話を数十秒~数分ごとに区切って順次訳していく通訳のスタイル。
発言→通訳→発言→通訳が繰り返される。同時通訳と比べてほぼ二倍の時間を要する。
同時通訳
話者の発言を聞くとほぼ同時に訳し始め、2~3秒遅れるくらいで訳し終える通訳のスタイル。
通訳者2~3人が通訳ブースに入り15分程度の間隔で交替する。通訳者の声は、通訳ブース内のマイクを通して聴衆のレシーバーに届けられる。
ウィスパリング
形式的には同時通訳と同じだが、機材は使わない。
通訳者は通訳を必要とする参加者の横、或いは斜め後方から、話者の発言と同時に通訳していく。参加者の耳元で囁く(ウィスパー)ように通訳するため、対象者の人数が少ない場合に限定される。
通訳ブース
同時通訳を行う際に会議・セミナー会場に設けられた通訳者専用スペース。
窓付きの小部屋のようなもので、同時通訳システム、机、手元灯等が備え付けられている。会議室に隣接した通訳ルームが完備されていない場合は、その都度、搬入して会場内に設営・撤去する。完全に囲われていない簡易的なブースもある。
レシーバー(受信機)
同時通訳が行われている会場で、聴衆が通訳者の訳を聴くために用いる機材。イヤフォンを接続して使う。
リレー通訳
三つ以上の言語が使用される場合の通訳方法。
日本では通常Key languageとして日本語が間に入ることが多い。例えば中国語・日本語・英語の通訳が必要な場合、話者が中国語で話すのであれば、まず日本語に訳し、次に日本語を英語へとリレー方式で通訳していく。話者が英語で話す場合は、英語→日本語→中国語の順で訳出しが行われる。日本語の場合は、中国語、英語へとそれぞれ同時に訳出しする。



アテンド通訳
空港・ホテルへの送迎、観光・買い物・食事などのサポートを行うほか、研修ツアー・市場視察・工場見学などの出張に同行し、通訳する。
随行通訳、同行通訳、エスコート通訳ともいう。
テクニカル・ビジット
専門的な分野・テーマに特化した視察旅行のこと。主なものに企業、工場、専門機関などを訪問する産業視察と、行政視察がある。
サイト・トランスレーション
サイトラ。文章を意味のかたまりごとにスラッシュで区切り、文頭から順次声に出して訳していく通訳方法。文字どおり、見て、翻訳していくスタイル。
シャドーイング
音声を聞きながら即座に復唱しながら、影のように追いかけていく技術。意味を理解しながらアウトプットすることが肝要。
リテンション
話者の発言内容を通訳者が一時的に記憶にとどめておくこと。主に逐次通訳の際に必要となる。
ノート・テーキング
逐次通訳の際に話者の発言の重要な部分をメモすること。記号や略語を用いて素早く、分かりやすく書くことが重要。
記号例
↗ | 上昇、増加 |
---|---|
↘ | 下降、減少 |
∴ | したがって |
∵ | なぜならば |
× | ~でない |
> | より大きい、多い |
< | より小さい、少ない |
略語例
gvm | 政府 |
---|---|
cop | 会社 |
asap | 早急に |
ex | 輸出 |
ec | 経済 |
pol | 政治 |
ア人 | アメリカ人 |
組み合わせ例
- g人< J
- ドイツの人口は日本の人口より少ない
- J大 E skill ↘
- 日本の大学生の英語力が落ちてきている
- A ec ↗
- アメリカの景気が回復のきざし
テクニカルターム(technical term)
専門用語。技術用語。特定の職業、業界、分野のみで使用される用語。
ジャーゴン(jargon)
特定の分野においては公的に通用するが、その分野に精通していない者には通じない業界専門用語。
テクニカル・ジャーゴンとも言う。社内用語もジャーゴンを含む場合がある。
インタープリター(interpreter)
通訳者のこと。オーラル・トランスレーター(oral translator)と呼ぶこともある。
トランスレーター(translator)
翻訳者のこと。オーラル・トランスレーター(oral translator)は通訳者を指す。
エージェント
クライアントから通訳案件の依頼を受け、通訳者を手配し派遣する会社。通訳エージェントともいう。
通常、通訳者はエージェントの社員ではなく「登録」という形態をとるが、なかには「専属」もいる。
アサイン
エージェントが通訳者に案件を割り当てること。
ブリーフィング
主催者、発表者同席のもとに行う、事前打合せ。資料の追加・差替や訳語についての確認、通訳席の位置や音響など通訳環境のチェックを行う。
業務終了報告
業務終了後、エージェントに業務の開始・終了時間、問題点、コメントなどを伝えること。
デブリーフィング、レポーティングと呼ぶこともある。
インハウス
インハウス通訳者のこと。特定の企業・団体内に常駐し、就業する。直接雇用される場合と、派遣会社・エージェントから派遣される場合がある。通訳業務の他に翻訳業務、秘書業務が含まれることもある。契約は中~長期で収入は安定している。
フリーランス
フリーランス通訳者のこと。特定の企業・団体に所属することなく、いくつかの通訳エージェントに登録し、独立して就業する。半日~全日単位の単発の案件が中心で、収入は保証されていない。
スケジュール管理、エージェントとの交渉等のマネージメントも自ら行う。
通訳者の仕事道具
- 水
- 常に声を出し続けている通訳者にとって、ボトルの水は必需品。
- チョコレート
- 長時間に渡り高い集中力を求められるため、甘いもので脳を活性化。
- アメ
- 常に声を出し続けているため、喉の保護に必要。
- メモ取り用ノート
- ノート・テーキング用に、大きさの異なる複数のメモ帳・ノートを携帯。通訳シーンによって使いわける。
- 付箋
- 必要な資料・頁をすぐに出せるようにするため、必携。大判の付箋はメモ代わりにもなるので重宝する。
- ペーパークリップ/ホチキス
- 原稿に追加・差替が生じた場合、間違いなくセットするために必須。
- マーカー/多色ボールペン
- キーワードに印をつけるのに必要。
- イヤフォン/ヘッドフォン
- 通訳ブース内にはヘッドフォンが設置されているが、長時間つけていると耳が痛くなることもあるため、持参したイヤフォンに切り替えて対応する。
- ストップウォッチ
- 同時通訳の場合は2~4名交替で行うため、担当時間を測るのに必要。
- 電子辞書
- 電池切れに備えて予備の電池は常に携帯。
- 双眼鏡
- PowerPointのスライドが遠くて見えづらい時、話者の口元を確認する時に便利。
- 手帳
- スケジュール管理を完璧にするため、肌身離さず携帯。
Interview(A.Y.さん)
活躍中の通訳者の声をご紹介します。