サッカーの地域リーグに所属する選手のほとんどが、競技とは別に仕事を持つ、いわゆるダブルキャリアで収入を得ながら日々トレーニングに励んでいます。厳しい練習の合間を縫って選手たちはどのような仕事に就き、どうやってキャリアを磨いているのでしょうか。
株式会社つくばFC代表取締役 石川慎之助さんへのインタビューの【後編】では、石川さんがパソナに対して期待していることについてお話しいただきます。
インタビューは、パソナスポーツメイト担当としてアスリート支援を行う菊池康平が行いました。

－ 今後、石川さんはパソナにどのようなサポートを期待しますか？

パソナさんは、大手町牧場（パソナグループ JOB HUB SQUARE 13階）や、新しい観光案内所（同1階 TRAVEL HUB MIX）を運営するなど、人を集める仕掛けや盛り上げるノウハウを幅広くお持ちだと感じています。よって極端な話をすれば、つくばFCのホームゲームで移動動物園のような “試合×イベント” が出来たら面白いですよね。『クラブの選手を応援する・される』という表面的な関わりだけでなく、もう一段階深いレベルで、試合にお客さんが来たくなるイベントを実現出来れば、つくばFCにとっても、パソナさんにとっても良いことだと思います。

また2020年に向けて、ブラインドサッカーやデフサッカーなどを一般の方や視覚・聴覚障がいを持つ方たちに体験していただきたいです。パラスポーツの選手たちは、我々よりもさらに仕事選びに苦労していると聞いています。監督やコーチが選手への仕事のあっせんもされていて全く手が回っていないので、ぜひパソナさんにも関わってもらいスポーツ界全体を盛り上げてほしいです。

－ パソナスポーツメイトは、つくばFCさんをはじめとする複数のサッカークラブやスポーツ団体とパートナーシップを結び、所属している選手や指導者、トレーナーなどへキャリア支援をしております。実際に練習と仕事のダブルキャリアで活躍している選手が少しずつ増えているので、引き続き新たなチームや団体のサポートをしていければと考えています。キャリア支援をするにあたり、現場の状況をよく把握されている石川さんからアドバイスや課題を教えてください。

11月末から1月末までが選手の移籍シーズンになりますが、その時期に各クラブに訪問して、選手一人一人の本音や希望を聞き出してほしいです。選手たちは仕事が見つかりにくい現状もあって正直な気持ちを言わず、『本当は○○の仕事がしたかった』と後になって教えてくれるんです。事前に『何か困っていることはない？ 本当にしたいのはどんな仕事？』など本音を引き出し、そのうえで選手に一番合っている仕事を紹介してあげられると理想的ですね。

また、選手はステップアップできる環境に身を置きたいと思っています。なので、1月末に契約が切れる業務など、移籍シーズンに合わせて仕事のサイクルを調整してあげたり、パソナさんを駆け込み寺的存在に思っている選手に対しては『来月すぐに紹介できるお仕事は○○、待てるなら○○』のように、アスリート向けにアレンジしたお仕事紹介をしてもらえたりすると助かります。選手都合ばかりになってしまいますが…きっと他のチームもこのような仕組みが欲しいのではないでしょうか。

－ 他にダブルキャリアに関して困っているという話を聞かれたことはありますか？

あるサッカークラブが、新しく指導者を雇用したいが十分な給料は払えないと悩んでいました。これからの日本サッカーが強くなっていくために優秀な指導者は欠かせないですし、彼らへのキャリア支援も重要です。もし、指導者が将来的にチームのマネージメントを任されるようになったとき、自らにダブルキャリアの経験があれば、選手や後輩の指導者にもその必要性を伝えてくれるのではないでしょうか。

現在つくばFCには日本全国の地域リーグから視察に来ていただくことがあります。トップチームを持ちたいという相談を受けるのですが、いきなりプロ契約はできないので、選手や指導者たちはダブルキャリアで収入を得なければなりません。そこで、トップチームの立ち上げ段階で既に選手に仕事がある状態だと、とても喜んでもらえるでしょう。パソナさんにはぜひ、引き続き選手や指導者たちの生活を安定させてあげてほしいですね。

（2018年4月3日）

1979年生まれ。東京都出身。
小学校からサッカーを始める。筑波大学大学院在学中につくばFCの前身となる活動を引き継ぎ、2003年にNPO法人つくばフットボールクラブを、2005年に株式会社つくばFCを設立。トップチームをはじめ、社会人からキッズまでと幅広い年代のチームを抱えるまでに成長。現在、株式会社つくばFC代表取締役、NPO法人つくばフットボールクラブ理事長、一般財団法人日本クラブユースサッカー連盟理事。

1982年7月27日生まれ。
海外でプロサッカー選手になる夢を達成するべく、大学時代より複数の国の海外チームに飛び込みで挑戦。2008年にパソナを1年休職して渡ったボリビアでプロ契約を果たした。現在は16ヶ国でサッカーに挑戦した経験を夢先生などの活動を通して子どもたちに伝えている。また、パソナスポーツメイト事業の担当として、アスリートへの就労支援にも従事。