「地域リーグでダブルキャリアを磨くには?」
つくばFC代表、石川慎之助さんに聞く【中編】

サッカーの地域リーグに所属する選手のほとんどが、競技とは別に仕事を持つ、いわゆるダブルキャリアで収入を得ながら日々トレーニングに励んでいます。厳しい練習の合間を縫って選手たちはどのような仕事に就き、どうやってキャリアを磨いているのでしょうか。
株式会社つくばFC代表取締役 石川慎之助さんへのインタビューの【中編】では、地域リーグで活躍する選手のダブルキャリアの現状、そして、ダブルキャリア・セカンドキャリアに向けた選手教育についてお話しいただきました。
インタビューは、パソナスポーツメイト担当としてアスリート支援を行う菊池康平が行いました。

つくばFC所属選手たちにおけるダブルキャリアの現状

- 男子選手は昼間、女子選手は19時から毎日練習をしているとのことですが、選手たちのお仕事の現状はいかがでしょうか?

正直なところ、選手の仕事選びには苦労しています。選手が仕事を探している時期に、つくばFCと直接関係のある企業側からお声がけいただけると話はパッとまとまるのですが、なかなかタイミングが合いません。最近では、トップチームやセカンドチームに所属する “高卒で資格を持っていない選手” をどのような企業へ送り込むのかに一番苦労していますね。

いつでも選手を受け入れてくれる企業で比較的多いのは、工場作業など肉体労働系のお仕事です。ですが、練習でパフォーマンスを上げることを考えると、なるべく身体が疲れない仕事に就いてほしいし、オフィスワークで経験を積むことが出来れば引退後のセカンドキャリアにもつながると考えています。パソナさんもその点を考えてくれていて、オフィスワークの仕事を紹介してくれました。また、つくばFCに理解ある企業は、引退が近い選手を工場勤務から総務部や企画部へ異動させ、経験を積ませるなど工夫してくださるところもあります。

ただ、肉体労働系のお仕事にも、良い点もあります。それは、全国的に工場を持っている企業であれば、移籍に伴って引っ越しした際にお仕事を紹介してもらえる可能性が高いということ。上位リーグへステップアップしたいと考える選手にとって、ダブルキャリアの選択肢が広がります。また、選手によっては接客やコミュニケーションの多い仕事が苦手で、デスクワークよりも肉体労働系の方が楽だと感じる選手もいます。より選手とコミュニケーションをとり、希望を把握することが大切だと考えています。」

- すごく共感できる話です。つくばFCの選手にはパソナのつくば支店から、練習に通えるエリアにある、つくば市でのオフィスワークの仕事を紹介させて頂き、複数名の選手が実際に就業し活躍頂きましたよね。パソナも全国に支店があるので、移籍したとしても、新たなチームの最寄りのパソナの支店にて、仕事紹介をはじめとするキャリア支援が出来、選手とは長いお付き合いが出来ています。

コミュニティFMでしゃべる経験が実践的なトレーニングに

- 試合の翌日となる月曜のクールダウンの日に、練習の一環としてキャリアに役立つ研修を組み込むチームが現れてもいいなと思っていまして、何チームかには提案しましたがどう思いますか?

試合の翌日となる月曜のクールダウンの日に、練習の一環としてキャリアに役立つ研修を組み込むチームが現れてもいいなと思っていまして、何チームかには提案しましたがどう思いますか?

- 他のチームにはあまりない画期的な取り組みですね。

チームとして次の段階に進むためにも、2018年2月からは、SNSを使った情報の発信方法や、書く内容だけでなくアップする写真一枚においても “つくばFCの選手であること” を意識した上で公開すべきだといった内容を教育する “SNS研修” をスタートさせる予定です。SNSは使い方をひとつ間違えるだけで、大きな誤解を招くことがありますからね。

また、選手が着るウエアにはスポンサーロゴがあるので、写真撮影の際に腕を組んだり袖をまくったりしてロゴが隠れてしまわないよう、スポンサーしてくれている企業に対して敬意を払うよう伝えたいですね。選手に悪気はないので、ちょっとしたところから一つひとつ教育する必要性を感じています。

地域リーグは研修内容も自分たちで考える必要がある

- ここまできちんと選手教育しているクラブはなかなか無いので、運営側のロールモデルとなれると思います。

Jリーグなどに所属しているトップ選手たちの教育は、メディア対応の練習やキャリア研修も全てリーグがやってくれます。ですが、つくばFCの規模だとSNS研修なども自分たちでやる必要があるんです。そして、SNSを活用して発信を続けていかなければ応援してくれる人も増えないという現実も、しっかりと選手に伝えなければいけません。

発信力を今から磨いておけば、将来的に選手がタレント化した際もその能力を活かせますし、セカンドキャリアとして企業の広報という選択肢も広がりますよね。

- 現場を色々見ていますが、地域リーグはマンパワーが足りないので、つくばFCのような研修が必要だとわかっていてもどうしても後回しになってしまい、実践できていないという悩みを抱えるチームが多いようです。

SNS研修は実際に準備を進めているので、開催して選手の反応を見つつ、他のチームにも知見を広げていければと思います。仮に、『来週、つくばFCというクラブと対戦します!』といった告知を対戦相手がSNSで魅力的に発信してくれれば、我々にとっても良いことですよね。SNSについての勉強はどのチームも協力すべきで、情報発信・演出することで、もっとサッカーを盛り上げられるんじゃないでしょうか。

(2018年3月2日)

プロフィール

石川 慎之助

1979年生まれ。東京都出身。
小学校からサッカーを始める。筑波大学大学院在学中につくばFCの前身となる活動を引き継ぎ、2003年にNPO法人つくばフットボールクラブを、2005年に株式会社つくばFCを設立。トップチームをはじめ、社会人からキッズまでと幅広い年代のチームを抱えるまでに成長。現在、株式会社つくばFC代表取締役、NPO法人つくばフットボールクラブ理事長、一般財団法人日本クラブユースサッカー連盟理事。

ライタープロフィール

菊池 康平

1982年7月27日生まれ。
海外でプロサッカー選手になる夢を達成するべく、大学時代より複数の国の海外チームに飛び込みで挑戦。2008年にパソナを1年休職して渡ったボリビアでプロ契約を果たした。現在は16ヶ国でサッカーに挑戦した経験を夢先生などの活動を通して子どもたちに伝えている。また、パソナスポーツメイト事業の担当として、アスリートへの就労支援にも従事。

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