MYPAGEコミュニティ『WeShare Beauty』vol.129

気軽に楽しもう!からだが喜ぶ「五彩薬膳」<後編>

皆さん、こんにちは。師走に入り、街があわただしく感じる時期になってきましたね。バタバタと忙しい時こそ気をつけたいのが、体調管理や健康。そこで今回は、『WeShare Beauty』vol.124でご紹介した「五彩薬膳」の<前編>に続いて、<後編>をお届けします。今回も教えていただくのは、パソナグループのグループ会社「株式会社プロフェリエ」の登録プロフェッショナルである、五彩薬膳料理研究家/薬膳料理クリエイターの阿部ららさん。五彩薬膳の魅力について詳しくお話を伺いました。「食べることは生きること」といわれるほど、食事は大切なもの。冬の寒さや年末の忙しさからくる体の不調も、五彩薬膳で健康に乗り切りましょう。

五彩薬膳(ごさいやくぜん)についてのおさらい

  • 薬膳 = 体の調子を整え、健康の維持と病気の予防・改善のための料理。
  • 五彩薬膳 =「五色、五季、五臓、五性、五味」という5つの基本をもとに、薬膳を誰でも手軽に取り入れられるように阿部さんが考案したもの。
  • 五色 = 緑(青)、赤、黄、白、黒という5つの色をあらわし、五色をバランス良く食事に取り入れることで、体内のバランスが整い、季節による不調にも対応できるといわれている。

体質別オススメ食材

続いて、体質別のオススメ食材をご紹介します。<前編>でご紹介した「体質チェック」は、皆さんお試しになりましたか?体質チェックがまだの方は、<前編>をご確認くださいね。その際、一番多くチェックがついた体質の食材が、オススメ食材になります。まずは、体質チェックで自分の体の状態や必要なものを知り、身近な食材を取り入れてみるところから、薬膳をはじめてみましょう。

【気虚】(ききょ)

<症状>
「気」が不足した状態。エネルギー不足。疲れやすい・胃腸が弱い・体温が低いなど。
<オススメの食材>
黄の食材:とうもろこし、かぼちゃ、じゃがいも、大豆製品 など

【気滞】(きたい)

<症状>
「気」が滞っている状態。気分が不安定な状態。イライラしやすい・落ち込みやすい・片頭痛など。
<オススメ食材>
緑の食材:セロリ、春菊、三つ葉、セリなどの香味野菜 など

【血虚】(けつきょ)

<症状>
「血」が不足した状態。循環が悪くなる。貧血・めまい・しびれ・皮膚が荒れやすいなど。
<オススメ食材>
黒の食材:黒ごま、黒豆、きくらげ、ひじき、アジ など
赤の食材:豚肉、牛肉、カツオ、マグロ、クコの実 など

【瘀血】(おけつ)

<症状>
「血」が滞っている状態。体のあちこちに痛みがある。肌荒れ(ニキビ・しみ・くま)・肩こり・頭痛など。
<オススメ食材>
黒の食材:黒豆、きくらげ、なす、サバ、アジ など

【陰虚】(いんきょ)

<症状>
「水」が不足した状態。体に潤いがない。のぼせ・のどの渇き・乾燥肌・便秘・からぜきなど。
 <オススメの食材>
白の食材:大根、レンコン、白菜、梨、白きくらげ など

【水滞】(すいたい)

<症状>
「水」が滞っている状態。水分代謝が悪い。むくみ・吹き出もの・冷えやすいなど。
<オススメ食材>
黒の食材:わかめ、昆布、ひじき、貝類(あさり、ハマグリ)など
黄の食材:生姜、大豆製品、かぼちゃ、じゃがいも、ゴボウ など

  • 黒の食材である海藻・貝類は水分代謝に効果がある食材ですが、体を冷やす寒涼性のため、生姜・根菜類の黄の食材と合わせて使いましょう。

体質と食材の色は、深い関係があると考えられています。<前編>では、五色の色ごとに上記以外の食材もご紹介していますので、そちらも確認してみてくださいね。

薬膳の考え方:身体の基本「気」「血」「水」

ここで、薬膳において欠かせない「気」「血」「水」という3つの要素について説明します。この3つの要素は、全身を巡り、各臓腑(内臓)の機能を維持して、人間の体を構成しているというのが、薬膳の考え方です。そのため、これらのバランスが崩れると、体に不調があらわれるといわれています。

「気」 : 人が生きていくために必要な活動エネルギー
「血」 : 全身に栄養を運ぶ血液
「水」 : 血液以外に体内に存在する水分

先ほどの体質チェックは、この「気」「血」「水」の状態をチェックしたものになります。体の状態を把握し、足りないものは補い、「気」「血」「水」がスムーズに巡るように意識してみましょう。

五彩薬膳の基本:「五季」「五臓」「五味」「五性」

続いて、「五季」「五臓」「五味」「五性」について、それぞれ詳しく説明していきます。

五季

薬膳の考えでは、季節を5つに分けています。四季に加え、「長夏」という日本の梅雨に当たる季節があるため、「春・夏・長夏・秋・冬」となります。

五臓

薬膳では、内臓を「心(しん)・肝・脾(ひ)・肺・腎(じん)」と、5つに分けて考えます。

心 : 心臓と同じような循環器系に関係する臓器と機能のこと。
肺 : 呼吸器系の機能。皮膚や鼻・喉・気管支などの働きも含みます。
肝 : 肝臓のこと。
脾 : 胃腸と脾臓のこと。主に消化・吸収などの消化器系の機能をさします。
腎 : 腎臓のこと。

五味

五味とは、食べ物がもつ本来の味の分類「酸味・苦味・甘味・辛味・鹹(かん)味(塩味)」のことを指し、五味は五臓「心(しん)・肝・脾(ひ)・肺・腎(じん)」の5つの内臓を補う働きがあるといわれています。五味の代表的な食材や働きを知って、体質やその時の体調に合わせて摂取してみましょう。

  • 酸味(例:レモン・梅)
    汗を止め、下痢や吐き気を止めるのに効果的。つわりに苦しむ妊婦さんが本能的に酸っぱいものを欲するのも、酸味による効果を求めているからだといわれています。
  • 苦味(例:苦瓜・緑茶)
    体内の熱を冷まし、便秘・胃もたれを改善するいわれています。
  • 甘味(例:さつまいも・もち米)
    芋類や穀物類などが持つ天然の甘みで、疲れや虚弱体質の改善に効果的。
  • 辛味(例:ねぎ・しそ)
    体を温め、「気」「血」「水」の巡りをよくする効果が期待できます。生姜・ねぎ・にんにくなどの薬味は辛味にあたります。
  • 鹹味(例:昆布・いか)
    体内の老廃物の排出を促し、便秘の改善をサポートする効果があります。黒い海藻類・貝類など、海産物の多くが、この鹹味に属します。

味そのものが、五臓に対して特有の効果があるという考えは、薬膳ならではですね。とはいえ、食材の摂りすぎは反作用を引き起こすともいわれているので、五味の調和を考えた食事を心がけましょう。

五性

体を温めたり、冷やしたりする食材の性質を「熱・温・平・涼・寒」の5つに分類したものを「五性」といいます。

  • 温性/熱性の食材:内臓を温めることで、代謝や「気」「血」「水」の巡りもよくなるといわれ、貧血や冷え性に効果的です。
  • 寒性/涼性の食材:体内で発生した様々な炎症を抑え、血液の解毒作用や老廃物のデドックス作用があるといわれています。のぼせや高血圧にも効果的です。
  • 平性の食材:体を温めたり、冷やしたりする作用がない穏やかな食材ですが、滋養強壮作用があるといわれている食材です。主に穀類・いも類などがこれにあたるため、日常の食事で一番多く使用されています。

例えば、暑い夏には、体を冷やす寒性/涼性の食材であるトマト・きゅうり・スイカなどをよく食べますよね。また、寒い冬は、温性/熱性の食材であるマグロ・鮭・ねぎなどを欲しますが、これは体を温め、エネルギーを備えるためだといわれています。
ちなみに、女性が好きなスイーツに使われている糖類は、白砂糖や三温糖は「涼性」、てんさい糖・ハチミツは「平性」、黒砂糖・水飴は「温性」に分かれます。同じ糖分を摂取する際は、体を冷やす白砂糖よりも、ミネラルも豊富で体を冷やさない黒砂糖や、てんさい糖・ハチミツのほうがオススメです。このように、食材の性質を知って、季節や寒暖に合わせて、食材を摂取してみましょう。

五彩薬膳の相関関係

  • 各季節に対応する「五色」・「五性」・「五味」は、おおまかな分類であり、その色・性質・味の食材だけを推奨したものではありません。

上記の図は、これまでお伝えしてきた「五色・五季・五臓・五性・五味」の相関関係を表したものです。
五季をベースに五色と、各季節の横に明記されているのは、上から「五臓・五味・五性」をあらわしています。

見方として、例えば「冬」は、「腎」のバランスが崩れやすく、寒さで「瘀血」や「水滞」など、「気」「血」「水」が滞る状態になりやすくなるといわれています。そのため、ミネラルが豊富で、体内の老廃物の排出を促す「鹹味(塩味)」の「黒色」の食材(例:ワカメ・あさり)を適度に摂り、「温熱性」の食材(例:生姜・ねぎ)を摂取することで、内臓を温め、「腎」を補うことが大事であるということが分かります(※ただし、「鹹味(塩味)」の摂取量には気をつけましょう)。

五彩薬膳の相関関係の図は、季節ごとの「五色・五臓・五性・五味」を分かりやすく表しています。それぞれの季節に対応する食べ物の色や性質・味・臓腑(内臓)があることを、お分かりいただけますでしょうか。その時々の季節だけではなく、次の季節の体調も考えた食事を意識したいですね。

手軽にできる薬膳スープのレシピ

最後に、寒い冬にオススメの体が温まる薬膳スープのレシピをご紹介します。

<材料/2人前>
鶏団子(市販のもの) 6個
かぼちゃ 100g
ほうれん草 1/4束
れんこん 40g
エリンギ 1本
クコの実 4-6粒
昆布だし 500cc
料理酒 大さじ1
塩 適量

<作り方>

  1. れんこんの皮を剥き、厚めのいちょう切りにし、かぼちゃは乱切り、エリンギとほうれん草は食べやすいサイズに切ります。
  2. 鍋に昆布だしと料理酒を入れ、鶏団子、かぼちゃ、れんこん、エリンギを入れ、沸騰したら、弱火にして15分ほど煮込みます。ほうれん草とクコの実を加え、さらに3分ほど弱火で煮ます。
  3. 塩で味を調え、お椀に具材とスープを入れ、彩りよく盛り付けたら、完成です。

<メニューの薬膳解説>
緑の食材「ほうれん草」、赤の食材「クコの実」、黄の食材「かぼちゃ」、白の食材「鶏肉、れんこん、エリンギ」、黒の食材「昆布」という、五色の食材を取り揃えた手軽な薬膳スープです。
秋・冬は非常に乾燥する季節。漢方には「潤肺滋陰(じゅんぱいじいん)」という用語があり、そうした季節には、肺を潤し、皮膚や呼吸器系に必要な水分を補ってあげることをオススメしています。肺を潤す効果のある白の食材を中心にした、カンタンで美味しい五彩薬膳スープです。ぜひ、ご自宅で作ってみてください。

身近な食材で薬膳を

いかがでしたか?阿部さん直伝のレシピを見ると、使用するのはスーパーで買える食材ばかり。興味はあっても、自分で実践するのは難しいと思われがちな薬膳ですが、意外と自分の生活に取り入れやすいと感じたのではないでしょうか?
今回は、<前編><後編>で阿部さん考案の五彩薬膳のメソッドの一部をご紹介しましたが、まだまだご紹介しきれない内容があるほど奥が深い、薬膳の世界。まずは、自分の体質や体調に合った食材を選び、バランスを意識した食事に変えるところから、体質改善を心がけてみてはいかがでしょうか。
他にも薬膳について聞いてみたいことやご質問があれば、ぜひ『WeShare Beauty』のコミュニティにコメントをくださいね。
いよいよ暮れも押し迫ってまいりました。薬膳料理で栄養バランスのよい食事をとり、風邪などをひかないように、気をつけてお過ごしください。

プロフィール

五彩薬膳料理研究家 薬膳料理クリエイター 阿部ららさん

三代続く中国医学の家庭に生まれ、母の薬膳スープを飲みながら育つ。1999年留学で来日してから、大手企業で海外向け貿易戦略を担当した後、自ら薬膳で体質改善した経験から、薬膳を日本で広めようと決意。北京中医学大学で学び直し、2010年に国際中医薬膳師の資格を取得し、薬膳料理研究家へ転身。忙しい現代社会において、誰でも気軽に薬膳を楽しめるように、普段の食材で作れる「彩りよい・美味しい・分かりやすい」‟五彩薬膳”を立案・提唱。(‟五彩薬膳”は商標登録済)都内で料理教室、薬膳サロンを始め、企業・雑誌へのレシピ提供、特産物の薬膳アレンジ商品の開発、薬膳に関連した小説の企画協力・薬膳監修など、幅広く活動。

  • 阿部ららさんは、パソナグループのグループ会社『プロフェリエ』に所属するプロの方です。