MYPAGEコミュニティ『WeShare Beauty』vol.89

平成振り返りシリーズ ~平成の流行色~

ファッションにおいて欠かせない要素のひとつに「トレンドカラー」、つまり「流行色」があります。この流行色というのは、時代と密接な関わりを持っていて、その時代の空気感を映す鏡とも言われています。今回は、平成を振り返りながら、色に注目して、流行色の変化についてご紹介します。

流行色は2年前から

「今年の春の流行色は○○です」というように、毎年雑誌などで取りあげられる流行色は、実は2年も前から決められていることをご存知でしたか?「インターカラー(国際流行色委員会)」という、日本を含めて世界14ヵ国が参加する国際機関によって方向性が決まります。そして、そこで提案された内容を踏まえながら、実シーズンの1年半前に国内のカラートレンドを選定する組織「日本流行色協会(JAFCA)」で、国内市場向けのトレンドが話し合われ、正式にトレンドカラーが決定します。そのトレンドカラーをもとに、アパレルメーカーが商品企画を行い、実シーズンには似た傾向の色や素材、配色などが流行するといった仕組みです。流行色というのは、「今年はこの色」とあらかじめ決めておいて、「商品やムーブメントをみんなで作っていきましょう!」というものなんですね。

ベーシックカラーとトレンドカラー

とはいえ、「日本流行色協会(JAFCA)」によると、私たちの身のまわりのファッションアイテムの75%は、ベーシックカラーと呼ばれる白、黒、紺、茶、グレーが占めていて、それ以外のトピックカラーと呼ばれる色は、たったの25%しかないと言われています。そして、流行色というのは、このトピックカラーの中で最も多く見かけるものを指しています。なので、一口に「流行色」と言っても、世の中の色の3〜5%にすぎず、この数パーセントの色の中に、その時代を象徴する色や時代の背景がぎゅっと凝縮されていると言えるでしょう。
出典:『日本のファッションカラー100 流行色とトレンド 1945-2013』 一般社団法人日本流行色協会(JAFCA)

平成スタート:黒の時代からエコロジーカラーへ

では、実際に平成のトレンドカラーを振り返っていきましょう。
バブル期には、ボディコンで一部にビビッドカラーが流行したものの、昭和後期はDCブランドと呼ばれた国内ブランドの人気がピークの時期。川久保玲氏の「コム・デ・ギャルソン」、山本耀司氏の「ワイズ」など、パリのコレクションでも発表した特徴的な黒が流行し、全体的に黒、白、グレーなどのモノトーン志向でした。
そして、平成元年に環境サミットが開催され、オゾン層の破壊や酸性雨などが問題視されるようになると、エコロジーカラーと呼ばれるナチュラルカラーやアースカラーなどのブラウン系の色が、黒に代わって流行色として注目されるようになりました。「エコロジー」という言葉を盛んに聞くようになった時期でもあります。

平成初期:ネイビーとヒーリングカラー

前回、「vol.85 平成振り返り ~オフィスファッションの変遷~」のコラムでもご紹介したとおり、平成のはじめにバブル崩壊、カジュアルなファッションへ移行していく中で、本来トラッドなアイテムであるネイビーブレザーが、「紺ブレ」の略称で若者に大人気になりました。それまでのベーシックカラーは、白、黒、グレー、ベージュ、茶のナチュラルカラーが主流でしたが、ネイビーも定番色のひとつに加わっていきました。この頃は、景気の低迷と「癒されたい」というヒーリング志向が高まった時期ということもあって、ダークグレーやチョコレートブラウンなどの落ち着いた色が流行色でした。

平成中期:バック・トゥ・カラー

ベーシックカラー人気からようやく色が世の中に戻ってきたのは、平成10年(1998年)頃。カラフルな透明や半透明のスケルトンカラーと呼ばれる電卓やパソコン、携帯電話などに人気が集まりました。
ファッションでも、渋谷109ブームでカラフルなファッションが台頭し、平成12年(2000年)にはビビッドなローズピンク、平成13年(2001年)にはビビッドレッドなどが流行しています。
ファッションだけではなく、電化製品でも高級感のあるゴールドやモノトーンなど、色やテクスチャーに凝る傾向も増え、色が戻ってきた時代でした。

平成後期:景気回復兆候と2020年に向けて

リーマン・ショック、世界同時不況を背景に、ファストファッションが全盛になっていくと、鮮やかなビビッドカラーや目を惹くネオンカラーが流行しました。ただ、東日本大震災発生後は、落ち着いた癒しの色が広がりをみせ、そして、来年はいよいよ2020年。国際的なイベントなど、象徴的な出来事があると、それに関連する色が流行するとも言われています。その時代の空気感を映す鏡とも言える流行色に注目してみると、時代の移り変わりを色でも感じることができるので、面白いですね。

プロフィール

イメージコンサルタント・工藤亮子さん

パーソナルカラー診断や骨格分析、ショッピングの同行などを行っている工藤さん。これまでに9000人を超える方々と接してきた経験をベースに、経営者、起業家、政治家、芸能人、文化人、男女エグゼクティブのイメージ戦略、自分らしく生きたい女性の魅せ方まで、幅広く支援。また、協会、NPO法人などのブランディング、省庁、行政のHPコーディネート、スタイリスト向けの教材開発なども手がけています。

  • 工藤亮子さんは、パソナグループのグループ会社『プロフェリエ』に所属するプロの方です。