MYPAGEコミュニティ『WeShare Beauty』vol.33

~親子で楽しい絵本の世界【WeShare Beauty編集部】~

みなさん、こんにちは。今回、編集部からお届けする記事は「秋=読書」のキーワードから、大人も子どもも楽しめる絵本をご紹介したいと思います。
今年4月にオープンした『絵と言葉のライブラリー ミッカ』館長の山本曜子さんをお招きし、お話しを伺いました。山本さんはミッカの立ち上げにあたり、ヨーロッパ各地の図書館を視察された経験を持ち、絵本、図鑑、漫画など『絵と言葉のライブラリー ミッカ』に置かれている絵と言葉でできた3,000冊以上の本を選書。新しい読み聞かせを企画するなど日々絵本の魅力を発信されています。
山本さんに、絵本の特徴をはじめ、ライフスタイルやシーンに合う絵本を紹介していただきました。

大人が感じる本の面白さとは

大人の方に、最近、面白いと感じた本は何ですか?また、その理由は何ですか?
こう尋ねると、「◯◯な視点が新しかった」「ここの構成が良かった」「情報が得られた」など様々な理由が挙がります。ところが、それらの前提には「理解できた=面白い」という知識に基づいた楽しみが占める割合が多いと言われています。
人は大人になるにつれて知識を身につけますが、それは同時に直感的な感覚世界を覆ってしまうことがあるのかもしれません。

絵本は読み手の想像力をかきたてる

今回ご紹介するテーマは『絵本』です。絵本は、絵が表現できないことを文字が、文字が表現できないことを絵が支え合い、反応し合う表現と言われています。この反応があるからこそ、読み手は想像力を加速度的に膨らませます。また、絵本の大きな特徴は、ページとページの間に省略される要素がとても多いということ。連続するストーリーにもかかわらず、ページをめくると、舞台が家から空に移動したり、季節が移り変わったりと、時間や場所の変化がダイナミックなのです。これは小説、エッセイ、漫画、図鑑、写真集など、他のどの本とも異なります。
私たちは知らぬ間に、絵をよみ、ページとページの間をよむことが必要とされているのです。つまり、感覚的、直感的に想像力を働かせているのです。通常24ページか32ページで構成される物語絵本でも、読み応えがあるというのはこういうことなのかもしれません。
さて、今回はテーマごとにオススメの絵本をご紹介していきます。

家族との時間を丁寧に過ごしたくなる絵本

「おかあさん、きょうはなんのひだかしってるの?しらなきゃかいだん三だんめ」と謎かけをして小学校へ出かけていったまみこ。「ケーキのはこをごらんなさい」「おんがくもときどき、おさらいなさいませ」「お父さんのポケットのなか」と、お母さんはいろんなところに仕掛けられた手紙を追っていきます。そして集めた手紙をつなぎあわせていくと…。決して広くはない家の中で、母親の姿を追っていくシーンは映画でも観ているかのよう。
全てのページにそっと潜む「赤」にも惹きつけられてしまいます。
ロングセラー絵本が次々と生み出された1970年代に刊行された「きょうはなんのひ?」。作は、『よあけ』や『ナルニア国のものがたり』の訳でも知られた瀬田貞二さん、絵は林明子さん。『こんとあき』の作者、『はじめてのおつかい』共著者としても有名な林明子さんの絵本原画展は、2017年4月から2018年7月にわたり全国6か所で行われ、好評のうちに幕を閉じました。お二人の絵本人気は今もなお健在です。

小さな子どもと一緒に遊べる絵本

ページの片面が鏡のようにミラー加工された遊び絵本「かがみのえほん きょうのおやつは」です。タイトルにあるように、今日のおやつはなにかな~?というはじまりから、絵本の片面を垂直にしてページをめくっていくと、小麦粉や砂糖、牛乳をかき混ぜて入れて、ホットケーキが完成します。卵を割るシーン、おやつの時間が気になる愛らしい猫、リアリティのある絵の描写や、鏡の効果で立体的に浮かび上がり、読み手の頭の中に想像のストーリーがたくさん湧いてきます。鏡の仕掛けだけでもワクワクしてしまう子どもも大人も楽しい絵本です。

知られざるチェコのアニメーションと絵本

実は世界的にとても評価の高いチェコのアニメーション。カンヌやベネチアの国際映画祭の受賞歴も多く、世界中のクリエイターがアニメを勉強しにチェコに留学するほどなのです。NHKの人形劇「三国志」の人形を制作したことで有名な河本喜八郎さんもチェコアニメの巨匠イジー・トルンカに師事していたそうです。
なぜ、これほどまでにチェコアニメが賞賛されるのか、その理由は、歴史的背景にあります。チェコは1989年まで共産主義の国でした(現在は民主主義)。そのため芸術活動には厳しい規制があったそうです。ところが、アニメの制作に関しては「子どものもの」という概念から、比較的自由な表現が許されていたようです。そこで、創作に飢えていた芸術家たちはこぞってアニメ制作に取り組みました。絵画、音楽、小説、戯曲など高い水準の芸術家たちが、”アニメ”という表現にその才能と情熱の全てを注ぎ込んだのです。そうして出来上がったのが、美しい芸術作品でした。そんなチェコアニメの代表格『もぐらのクルテク』の絵本シリーズ。ぜひその豊かな色彩や表現に注目してみてください。絵本の内容に暴力や攻撃的なシーンが無いこともまた、争いを好まないチェコの人々の気質を象徴していす。この歴史背景からも頷けます。
絵本を選ぶときには、どこの国の絵本なのかも意識してみてみると面白いかもしれません。

世界中で愛される愛の詰まった絵本

1964年フランスでの初版以降、世界で100万部を越えて読み継がれている絵本「LOVE」です。このタイトルを扱うには一見頼りなさを感じてしまう表紙。ページをめくった途端その予想は裏切られます。色とりどりの紙の重なり、シンプルな線画、不規則に浮かび上がるような言葉たち。窓のような切り抜きがあったり、変形したページがあったり、建築も学んでいたという作者が絵本という表現を物理的に楽しんでいるのがよくわかります。
主人公は孤独で醜い小さな女の子。少し変わった絵本の仕掛けは、読み進めるごとに女の子の気持ちに入っていくような独特の効果を生み出し、最後には忘れかけていた「愛」が。ぐっと締め付けられるような想いすら感じさせてくれる絵本といえるでしょう。

お気に入りの音楽とともに楽しんでほしい絵本

夏が終わり、少し肌寒くなってくる頃。肌寒く、どこか寂しい静けさを感じる秋は、その分小さな温もりを際立たせてくれる気がします。そんな秋の感覚を彷彿させるような絵本が「ぴっぽのたび」です。
ひとりぼっちのカエルと小さなひつじが夢の中を旅するお話。圧倒的な絵の力で、ページをめくるごとに違った音が聞こえ、温度を感じるこの絵本。ぜひ、絵の背景をじっと見つめてみてください。どこまでも奥行きを感じさせる絵が優しさと安心感を生み出し、読み手を夢の旅へと誘い出してくれます。想像を加速させてくれます。ゆったりとしたお気に入りの音楽を聴きながら読むのもおすすめです。

英語に親しむ愉快な絵本

タイトルは「Ketchup on your Cornflakes?」です。意味は「”ケチャップ”を”コーンフレーク”にかけるのお好き?」となります。右側には簡単な英文、左側には絵が描かれているこの絵本。実はページが上下に分割されていていて、いろんな組み合わせができます。例えば、下のページだけをめくると、「“ケチャップ”を“レモネード”にいれるのお好き?」となってしまいます。「No〜!!」という子どもの叫び声が聞こえてくるようですね。
上は、ケチャップ、カスタード、氷、歯磨き粉など11種類で、下のページは、コーンフレーク、アップルパイ、フライドポテトなど11種類です。子どもと一緒に味や匂いを想像して遊びながら読める英語の絵本です。

自分との付き合い方を知る絵本

誰にも教わらない心のこと。大人、子どもに関わらず、すべての人に読んでもらいたい絵本「こころの家」です。大人の方には、少し心が疲れたなぁと思う時に読んでみてほしいです。真上から見下ろすような独特の視点で、一瞬冷たさすら感じる表紙の絵。韓国で生まれたこの絵本は、心を家に見立てることでその輪郭を浮き彫りにしていきます。本をめくるという動作を生かした表現、切り絵が混ざった不思議な絵、そこに寄り添う詩的な言葉。全ての要素が複雑なハーモニーを生み出し、心に染み渡ります。扉左側に書いてある最初の文をどうか見逃さないで。
世界最大の児童図書博覧会であるボローニャ国際児童図書館展にて、ラガッツィ大賞を受賞した絵本です。

文字が書けるようになってきた子どもと一緒に

なんと、絵が文字に変化した?!表紙をよく見ると…もしかして「たろう」と「はなこ」さんでしょうか?タイトルは「なんでももじもじ」です。
そう、この絵本では「なんでももじもじ〜!」と呪文を唱えるとすべての絵が文字になってしまうのです。こんな形の「や」があっていいの?学校でならったのとは違う!「文字を変形させて絵を描くことができる」この感覚を掴んだ子どもたちは、大喜びで様々なことに試してみたくなっちゃうミッカでも大人気の絵本です。作者はグラフィックデザイナーである「大日本タイポ組合」さんです。この記事の最後に出てくるミッカのロゴもよく見てみてくださいね。もしかして、文字が隠されている!?

いかがでしたか。みなさん、絵本を読むときは文字を中心に理解しようとせず、絵をじっくりとよんでみてください。頭ではなく自分の心の動きに大注目です。そうすれば、知識の陰に隠れていた自分が顔を出し、感覚世界を広く、深く旅することができるはずです。

『絵と言葉のライブラリー ミッカ』館長 山本曜子さん

はじめまして。『絵と言葉のライブラリー ミッカ』館長の山本曜子です。
ミッカは、絵と言葉の本だけを3,000冊以上揃えた小さな図書館。
18歳以上の大人のみでは入館できない子どものための楽園です。
本が好きな子も、そうでない子もついつい通っちゃう図書館を目指して、4つのゾーンを内包しています。
読み聞かせなど様々なパフォーマンスを行う真っ赤な「シアターゾーン」
色と素材が揃った工作所「アトリエゾーン」
変幻自在な展示室「ギャラリーゾーン」
ゆったりとしたソファーが広がる「リーディングゾーン」
元劇団員のなど個性豊かなスタッフをはじめ、外部ゲストもお招きし、ミュージシャンによる歌う絵本、落語家による紙芝居やこども落語、お笑い芸人が読む絵本、建築家とつくるお面ワークショップなど、毎日様々なパフォーマンスを行っています。
ミッカというの名前も、「いっちょやってミッカ!」「面白いことミッカった!」そう感じる何かと出会える場所でありたいという願いを込めました。
2018年4月にオープンしたばかりのミッカ。
図書館が大好きな私は、ミッカそのものの企画立案から、選書・現場運営までを行っています。
今回の記事が、日々忙しく働くみなさまにとって、絵本の世界をゆっくりと旅するきっかけとなれば嬉しいです。
絵本撮影/Uta Mukuo

〒125-0061 東京都葛飾区亀有3-26-1 リリオ館7F
JR常磐線 亀有駅南口 徒歩30秒 (東京メトロ千代田線直通)
電話番号03-6662-4315
営業時間10:00〜19:00(最終入館18:30)
休館:月曜・第4木曜(祝日の場合は翌日)、年末年始、リリオ館店休日(年2回)
入館料:1日券200yen、パスポート(6ヶ月)1,000yen、小学生以下無料

  • 18歳以上のみでの入館はできません。お子さまと一緒にお越しください。
    駐車場は隣接の亀有パーキングリリオ駐車場がご利用いただけます。(有料)

・未就学児のお子さまは保護者の同伴が必要となります。(大人1人につき、子ども3人まで)
・託児サービスはございません。
・団体利用(8名以上)、視察、取材をご希望の方はお問い合わせページよりご連絡ください。
・小さな図書館のため、本の貸出はしていません。ごめんなさい。
・パスポートの再発行には手数料200円がかかります。